近ごろ増えている、高性能で比較的安価なAndroidタブレット。そのなかで11インチサイズの最新モデルとして人気を分け合っているのが、シャオミの「Xiaomi Pad 6」とサムスンの「Galaxy Tab S9 FE」だ。いずれもミドルレンジ向けの製品で、どちらを選ぶか悩んでいる人もいることだろう。両モデルの特徴を徹底比較した。
右が「Xiaomi Pad 6」で、左が「Galaxy Tab S9 FE」。いずれも、多目的に使えるミドルレンジ向けの11インチタブレットだ
最近のAndroidタブレットは、価格最重視の安価なモデルだけでなく、性能と価格のバランスにすぐれたミドルレンジ向けのモデルが増えてきている。今回取り上げるシャオミ「Xiaomi Pad 6」(価格.com最安価格4万円台後半、税込)とサムスン「Galaxy Tab S9 FE」(同6万円台後半、税込)は、そうしたモデルの代表格だ。
両モデルは一見すると2万円近い価格差がある。しかし、「Galaxy Tab S9 FE」には高価なペンデバイス「Sペン」が同梱するいっぽうで、「Xiaomi Pad 6」にはペンデバイスが同梱しない。ペンデバイスが必要なら14,800円(税込)の「Xiaomi スマートペン (第2世代)」を追加する必要がある。ペンデバイス込みの価格で見ると、両モデルは同クラスの製品と見なせるのである。
両モデルのボディ周りの概要を見てみよう。
両モデルとも11インチタブレットでボディのサイズはほとんど同じ。ただし、細かい特徴は異なっていて、「Galaxy Tab S9 FE」はIP68の水没まで耐える防水仕様をクリアしている。「Xiaomi Pad 6」は「Galaxy Tab S9 FE」よりも30gほど軽い。
この違いを考慮すると、水回りで使うなら「Galaxy Tab S9 FE」、持ち運びやすさを追求するなら「Xiaomi Pad 6」といったように、使い方にあわせて適性が分かれると言えるだろう。
両モデルのサイズは非常に近い。ただし、「Galaxy Tab S9 FE」は水没まで耐える防水仕様をクリアしている。「Xiaomi Pad 6」は防水非対応だが、30gほど軽量だ
ディスプレイのスペックを細かく見てみよう。
解像度は、「Xiaomi Pad 6」が2880×1800で、「Galaxy Tab S9 FE」が2304×1440。数値上は「Xiaomi Pad 6」のほうが高精細だが、電子書籍や動画、Webコンテンツを閲覧するような用途では大きな違いはない。YouTubeの再生解像度の上限が2160pでHDR対応なのも共通している。
また、いずれも、WideVineセキュリティレベル「L1」に対応しているので、Netflixなどの動画配信サービスで再生解像度の制約はない。HDRについては、「Xiaomi Pad 6」がHDR10+やDolby Visionといったより高画質な規格に対応している点では有利だ。
最大リフレッシュレートは「Xiaomi Pad 6」が144Hzで、「Galaxy Tab S9 FE」が90Hz。リフレッシュレートが高いとSNSや地図アプリなどのスクロールを行ったときに、滑らかで残像感の少ない操作が行える。また、タッチサンプリングレートが高いほうがゲームでの操作性では有利だ。この点で、「Xiaomi Pad 6」のほうがよりゲーム用途に適していると言える。
次にサウンド機能を比較しよう。
いずれもステレオ出力対応で、ヘッドホン端子は非搭載。Dolby Atmos対応も共通だ。両モデルともスピーカーはなかなか迫力のある音を出してくれる。4スピーカー仕様の「Xiaomi Pad 6」は、本体のスピーカーだけでより再現性の高いバーチャルサラウンド再生が行える。
両モデルのような11インチタブレットは、より多くの用途が想定される。そこで重要になるのが、周辺機器とそれに関係するソフトウェアだ。この点で両モデルを比較してみよう。
アナログ入力に対応した本格的なペンデバイス。プリインストールアプリとの組み合わせなら超低遅延の入力が可能だ
キーボード付きのフリップケース。カラーバリエーションはブラックのみ
こちらはキーボードのないフリップケース。カラーは写真のブルーのほかにブラックとホワイトも用意される
透明のガラス製プロテクター
ワコムのペンタブレットの技術を取り入れた本格的なペンデバイス。本体に同梱される
キーボード付きのフリップケース。「Sペン」を収納できるスペースも設けられている
スタンドを備えた頑丈なカバー
透明の保護ガラス。反射を抑える表面コーティングが施されている
両モデルとも専用のペンデバイスが用意される。価格差のところでも紹介したが、「Galaxy Tab S9 FE」には「Sペン」が同梱。「Xiaomi Pad 6」でペンデバイスを使うには、別売の「Xiaomi スマートペン (第2世代)」を追加で購入する必要がある。
ソフトウェアを見てみると、「Galaxy Tab S9 FE」はペン入力に対応したアプリや機能が豊富で、スクリーンショットにメモを加えての共有が初期状態でも簡単に行える。いっぽう、「Xiaomi Pad 6」はプリインストールアプリの一部が超低遅延で動作するものの、「Galaxy Tab S9 FE」ほどの充実度ではない。ペン入力を行うのであれば「Galaxy Tab S9 FE」のほうが適していると言えるだろう。
また、両モデルともに、カバーと一体のキーボードが用意されている。「Galaxy Tab S9 FE」には、PCのような操作性に切り替える「DeX」モードが備わっている。本格的に使うのであれば、こちらのほうが断然使いやすい。いっぽう、「Xiaomi Pad 6」は、そこまで凝ったキーボード向けの操作環境はない。
「Galaxy Tab S9 FE」に備わる「DeX」モードならPCのような操作性に切り替えられる
このほかの純正アクセサリーのラインアップを見ると、両モデルの違いは少なく、「Galaxy Tab S9 FE」にはプロテクトカバーが用意されているくらいの違いだ。ペンデバイスとキーボードに注目しても、ハードウェアは両者にそれほどの差はない。ただし、ソフトウェアを見ると、「Galaxy Tab S9 FE」のほうが使い勝手は良好だった。
両モデルの基本性能を以下の表にまとめた。
SoCを見ると、「Xiaomi Pad 6」にはミドルハイからハイエンド向けの「Snapdragon 870」が、「Galaxy A54 5G」にはミドルレンジ向けの「Exynos 1380」が搭載されている。
両者の処理性能とグラフィック性能を「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」で調べたところ、総合スコアは「Xiaomi Pad 6」が775766、「Galaxy Tab S9 FE」が515244で意外と大きな差となった。
しかし、スコアの詳細をよく見ると、基本的な処理性能である「CPU」のスコア差は30000程度でそこまで大きくない。いっぽうグラフィック性能を示す「GPU」の差は倍以上に開いた。この結果から、グラフィック性能が重要なゲームでは「Xiaomi Pad 6」のほうが有利と言えるだろう。
ただし、ゲーム以外の用途ではそこまでの差はなく、アプリの起動にかかる時間など体感速度に目立つ違いはない。むしろ、増設用のmicroSDメモリーカードを備えた「Galaxy Tab S9 FE」のほうが、キーボードやペンデバイスを使って作成したデータを保存するには適していると言えるだろう。
「AnTuTuベンチマーク」の結果。左が「Xiaomi Pad 6」で、右が「Galaxy Tab S9 FE」。基本性能では「Xiaomi Pad 6」のほうが有利なようだ
ペンデバイスを含めるとサイズと価格の近い両モデルだが、性能を比較すると、それぞれの狙いがはっきりする。
ディスプレイや処理性能の高さでは「Xiaomi Pad 6」のほうが有利だ。動画をより高品質で再生したり、ゲームを楽しんだりといった用途で真価を発揮するエンターテインメント向けの製品と言えるだろう。
いっぽうの「Galaxy Tab S9 FE」は、「Sペン」を同梱したうえで、それを生かすソフトウェアが整備されているのが強みだ。そのため、モバイルPCの代替として使ったり、液晶タブレットのように使ったりと、クリエイティブな用途に向いている。microSDメモリーカードを利用できるので、作成したデータを保存するにもこちらのほうが適している。