ASUS JAPANは2024年2月14日、Chromebookの新モデル3シリーズ4機種を同日に発売すると発表した。3シリーズ中2シリーズは、Chromebookの新しいカテゴリーであるChromebook Plusだ。
ASUS JAPANが発表した新型Chromebook Plusの「ASUS Chromebook Plus CM34 Flip (CM3401)」(左)と新型Chromebookの「ASUS Chromebook CM30 Detachable(CM3001)」(右)
ラインアップと市場想定価格は以下のとおり。
ASUS Chromebook Plus CM34 Flip(CM3401)
市場想定価格:
・CM3401FFA-LZ0211(Ryzen 5モデル):104,800円
・CM3401FFA-LZ0194(Ryzen 3モデル):79,800円
ASUS Chromebook Plus CX34 (CX3402)
市場想定価格:79,800円
ASUS Chromebook CM30 Detachable(CM3001)
市場想定価格:69,800円
※価格は税込
今回はこの中から、Chromebook Plusの「ASUS Chromebook Plus CM34 Flip (CM3401)」(以下、「CM34 Flip」)とChromebookの「ASUS Chromebook CM30 Detachable(CM3001)」(以下、「CM30 Detachable」)の2モデルをレビューしていきたい。
Googleの「Chrome OS」を搭載するChromebookは、ChromeやGmailなどのWebアプリを利用するため、Windowsノートパソコンと比べるとハードウェアの仕様が低い(そのため価格も安い)。それに対して、Chromebookの新しいカテゴリーであるChromebook Plusはハードウェアの仕様が高めに設定されている。具体的なハードウェア仕様は以下のとおり。
Chromebook Plusの主な仕様
・CPU:インテルCore i3第3世代以降、AMD Ryzen 3 7000シリーズ以降
・メモリー:8GB以上
・ストレージ:128GB以上
・ディスプレイ:フルHD IPS(1920×1080)以上
・カメラ:1080p以上かつノイズ低減機能内蔵
Chromebookには明確な仕様のルールがなかったため、なかにはスペックのかなり低いモデルもあった。性能が低すぎると、Webアプリでも動作が重いと感じることがあり、ユーザー体験を損ねるケースもある。このミスマッチを防ぐため、Chromebook Plusはハードウェアの仕様が定められているのである。快適さだけでなく、Chromebookでも比較的ヘビーな作業を行いたい人にとってもChromebook Plusはぴったりだ。
ソフトウェア面も少し違う。「Googleフォト」のプレミアム機能や、進化したビデオ通話機能などChromebook Plus独自の機能を備える。AI機能を含む新たな機能も追加される予定だ。
「Googleフォト」では、Googleのスマートフォン「Pixel」シリーズでおなじみの「消しゴムマジック」、明るさやコントラストを補正するHDR効果などが利用可能。自動で印象的な動画を作成できるムービー作成ツールも備える。ただ、Chromebookの「CM30 Detachable」でも「消しゴムマジック」は利用できた。
AI機能を活用した「消しゴムマジック」。写真を選ぶと、自動で消去する候補を選んでくれる(「CM34 Flip」を使用)
「消しゴムマジック」の結果。拡大しても違和感はなく、きれい消えている
Chromebookの「CM30 Detachable」でも、追加というかたちで「消しゴムマジック」は利用できる。Chromebook Plusと精度に差は感じられない
ビデオ通話では、明瞭度と明るさの調整・バックグラウンドのノイズ除去・背景のぼかしなどを数回タップするだけで適用できる。なお、ビデオ通話中に自分の姿を常に画面中央に配置されるフレーミングや露出の自動調整はChromebook Plusの「CM34 Flip」のみで使えた。
ChromebookとChromebook Plusのソフトウェア面での差は曖昧な印象だ。ファイルの扱いや使えるアプリ自体に違いはなく、細かく見なければ、その違いはわからない。今後、AI機能が増えて、同機能を利用するにはある程度の性能が欠かせないとなれば、Chromebook Plusでしか使えないアプリや機能が増えてくるのかもしれない。このあたりは、今後どうなっていくのか見ていきたい。
Chromebook Plusの「CM34 Flip」だけで利用できる「フレーミング」。自分の姿が常に画面中央に配置される。こちらは同機能オフの状態
「フレーミング」をオンにすると、自分の姿が大きくなり、中央に配置される。1080pのカメラなので、デジタルズームでも画質が崩壊することはない
このほか、ストレージ容量が128GB以上のChromebook Plusでは、オフラインで作業しやすいのもポイント。同期できるデータが増えるため、オフライン環境でも作業しやすい。オフライン環境で使う機会が多いユーザーにとってもChromebook Plusは心強いモデルと言えるだろう。
続いて、それぞれのモデルをチェックしていこう。まずはChromebook Plusの「CM34 Flip」だ。
今回試した「CM34 Flip」は、Ryzen 5モデルの「CM3401FFA-LZ0211」。市場想定価格は104,800円(税込)
「CM34 Flip」は、14型のディスプレイを搭載したChromebook Plus。ディスプレイが360度回転するフリップ型だ。エルゴリフトヒンジにより、どんな角度でもディスプレイをしっかりと固定してくれる。これにより、ラップトップスタイルやタブレットスタイル、テントスタイルなど、さまざまなスタイルで利用可能。
カラーは「ジンク」という、ガンメタリックに近い色味。樹脂ボディと思われるが、チープな感じはしない。
テントモードなど、使い方によってさまざまなスタイルで利用できる
エルゴリフトヒンジは金属で、精密な作り。固すぎず、やわらかすぎず、ディスプレイを好みの位置にしっかりと固定できる
ボディの作りはかなりしっかりしている分、重量は約1.85kgで、14型のノートパソコンと考えると、重い部類に入る。ひんぱんに持ち歩くと重く感じるかもしれない。バッテリー駆動時間は最大約13.5時間(カタログスペック)と長めなので、社内や学校、オフィスなどで、ACアダプターなしで持ち歩くのにはいいだろう。
CPUは「Ryzen 5 7520C」(4コア/8スレッド)、メモリーは8GB(LPDDR5)、126GB SSD(PCIe 3.0)とChromebook Plusの仕様をしっかりクリア。通信機能はWi-Fi 6とBluetooth 5.3に対応する。なお、もう1台の「CM3401FFA-LZ0194」は、CPUが「Ryzen 3 7320C」で、その他の主な仕様は変わらない。
高性能さは、ふだん使いではそれほど恩恵を感じられないが、Chromebookの「CM30 Detachable」よりもビデオ通話アプリの「Meet」の起動が速く、フィルターの反映もスムーズな印象だ。画像編集など、負荷の高い作業なら、その恩恵をより受けられるのかもしれない。
アドビの「Photoshop」や「Express」などで画像や動画の編集も、Chromebook Plusなら快適に行える
ディスプレイはアスペクト比が16:10の14型。解像度は1920×1200だ。光沢のあるグレアタイプなので、メリハリはあるものの、利用する場所によっては映り込みが気になりそうだ。harman/kardonのステレオスピーカー(1W×2)を搭載しており、音質も上々。音がこもった感じもなくクリアに聞こえる。
キーボードは同社のWindowsノートパソコンと比べてもそん色ない打鍵感。バックライト付きで、暗い場所でも使いやすかった。Webカメラは207万画素のフルHD。シャッター付きでセキュリティも万全だ。
14型ディスプレイの視野角は水平・垂直ともに170度と広め。上部ベゼルの中央のオレンジ色はWebカメラのシャッター
キーボードの打鍵感は同社のWindowsノートパソコンと比べてもそん色ないレベル。キーピッチは実測で19mmあり、快適にタイピングできた。タッチパッドは面積が狭く、画面をタッチしたほうがスムーズに操作できるかもしれない。マウスを使うのもアリだ
15秒の充電で最大約45分使える「ASUS USI Pen」が付属する。4096段階の筆圧検知に対応しており、滑らかな書き心地。スタイラスペンは細めで握りやすくはないが、メモ程度なら問題なし。本体に格納できるのも便利
外部インターフェイスはUSB 3.2 Type-C(Gen2)×2、USB 3.2 Type-A(Gen2)、4K出力できるHDMI 2.1、microSDメモリーカードスロットを搭載する。USB Type-C経由で充電できるので、手持ちの対応アダプターでも充電可能だ。
外部インターフェイスは両サイドに配置されている
Chromebookの「CM30 Detachable」。市場想定価格は69,800円(税込)
「CM30 Detachable」は、タブレットと着脱式のキーボードからなるデタッチャブル型のChromebook。10.5型のディスプレイを搭載したタブレット部分の重量は約609g。タブレットを自立させるスタンドカバー(着脱式)を含めると、重量は約738g。そして着脱式キーボードを含めると約988g。全部でも1kgを切る軽さが、本モデルの一番の特徴と言えるだろう。
スタンドカバーはマグネットで固定する仕組み
ペン入力がしやすいのも、デタッチャブル型の特徴
10.5型のディスプレイは1920×1200。グレアタイプで視野角は水平・垂直ともに170度と広い。ただ、ベゼルが太く、最新のノートパソコンやスマホと比べると、やぼったく見える。
ディスプレイは1920×1200の10.5型液晶。ベゼルが太くやぼったさはあるが、手で持ったときに画面に指がかからないのがいいところ
スタンドカバーとキーボードには、本体を保護する役割もある。サンドブラス風の加工で質感がよく、手にもよくなじむ。キーボードは専用端子でタブレットと接続し、スタンドカバーはマグネットで固定する仕組みだ。
スタンドカバーと着脱式キーボードはサンドブラス加工のようなさらっとした質感。カメラはインカメラ、アウトカメラともに約503万画素で、アウトカメラはオートフォーカス対応
キーボードは簡易的なものだが、キーピッチは実測で19mm、ストロークは実測で2mmはある。厚みがなく、強くタイピングすると底にすぐ指が当たる感じはするが、タイピング自体はスムーズにできた。
キー配置などは「CM34 Flip」と変わらない。コンパクトだがキーピッチは実測で19mmは確保されている
CPUはMediaTekの「Komanio 520」、メモリーは8GB、ストレージは128GB eMMCと、Chromebook Plusの「CM34 Flip」よりは控えめのスペックだ。「Geekbench 5」のCPUの結果はシングルコアが453、マルチコアが1402。「CM34 Flip」はシングルコアが942、マルチコアが3192だったので、その差は歴然だ。
通信機能はWi-Fi 6とBluetooth 5.2に対応する。基本スペックは低めだが無線LANはWi-Fi 6をサポートしており、ChromeやGmail、YouTubeなどはストレスなく利用できる。Meetなどは「CM34 Flip」のほうがスムーズに動作する印象はあるものの、日常使いには十分だろう。
市場想定価格は69,800円(税込)で手ごろで、子ども用や持ち運び用として選ぶといいかもしれない。
本体に収納できるスタイラスペン
外部インターフェイスは左側面のマイク入力/ヘッドホン出力、USB 3.2 Type-C(Gen1)。左右に1W×2のステレオスピーカーを内蔵する
Chromebook Plusの高性能さは、長く使う場合や、オフラインでいろいろ作業したい人にメリットがありそうだ。価格が高いのが難点だが、その分長く快適に使えるなら、という考え方もできるだろう。「CM34 Flip」はChromebook Plusの中でもトップクラスのスペックを誇るのではないだろうか。重いのが難点だが、見やすい画面に、使いやすいキーボードなど完成度はさすがの高さ。価格は約10万円で、Windowsノートパソコンが買えるほどだ。Chromebookを日常的に使っている人など、ターゲットは絞られそうだが、高性能なChromebookを探している人にとっては有力な選択肢になりそうだ。
いっぽう、Chromebookの「CM30 Detachable」は、約7万円と手ごろな価格。発売から時間が経てば、もう少し安くなる可能性もある。スペックだけ見ると、Chromebook Plusに劣るものの、価格を含め、気軽に使えるという点では、幅広いユーザーにすすめられるモデルだ。