レビュー

透明スマホ「Nothing Phone(2a)」レビュー! FeliCa搭載高コスパ機

Nothing Technologyの最新スマートフォン「Nothing Phone(2a)」(以下「Phone(2a)」)をレビュー。上位モデルである「Nothing Phone(2)」(以下「Phone(2)」)のユーザーである筆者が、受け継がれた部分と省略された部分に注目しながら、1週間ほど使用しました。その特徴に迫ります。

待望の「おサイフケータイ」に対応したうえで、価格も抑えられた「Nothing Phone(2a)」

待望の「おサイフケータイ」に対応したうえで、価格も抑えられた「Nothing Phone(2a)」

128GBモデルは5万円以下のお手ごろ価格

「Phone(2a)」は、2024年3月末から始まった直販サイトでの先行予約販売に続き、4月22日から一般販売が開始されています。直販サイトのほか、量販店、Amazon、一部のMVNO事業者などで購入できます。

まず、本シリーズにおける「Phone(2a)」のポジションを確認しましょう。「Phone(2)」がハイエンド向けのプロセッサー(SoC)を搭載しているのに対して、「Phone(2a)」はミドルレンジ向けのSoCに変更。Googleの「Pixel 7」に対する「Pixel 7a」のような廉価版と考えるとわかりやすいかもしれません。なお、シリーズの大きな特徴であるLEDを並べた背面パネルはデザインを変更しつつ継承されています(詳細は後述します)。

Nothingの直販ストアにおいて「Phone(2a)」は、メモリー8GB+ストレージ128GBモデル(49,800円税込。以下同)とメモリー12GB+ストレージ256GBモデル(55,800円)の2モデルが用意されています。なお、上位モデルの「Phone(2)」はメモリー8GB+ストレージ128GBモデルが79,800円、メモリー12GB+ストレージ256GBモデルが99,800円なので、なかなかの割安感です。

方向性は同じだが味付けは控えめで軽くなった背面デザイン

「Phone(2a)」のボディを見てみましょう。

本体サイズは、約76.32(幅)×167.74(高さ)×8.55(厚さ)mm。いっぽう、「Phone(2)」は約76.4(幅)×162.1(高さ)×8.6(厚さ)mmで、両機のサイズ感はほぼ同じです。ただし、重量は200.68gから190gへと、10gほど軽くなりました。

左が「Phone(2)」、右が「Phone(2a)」。画面サイズは6.7インチで共通。前面パネル、背面パネルともにエッジ部はわずかに丸みを帯びているが基本的にはフラット。「Phone(2)」に比べると四方のカーブが強く、持った際の感触は少し異なる

左が「Phone(2)」、右が「Phone(2a)」。画面サイズは6.7インチで共通。前面パネル、背面パネルともにエッジ部はわずかに丸みを帯びているが基本的にはフラット。「Phone(2)」に比べると四方のカーブが強く、持った際の感触は少し異なる

ボタン配置は、右側面に電源ボタン、左側面に音量調整ボタンで「Phone(2)」と共通。「iPhone」とも同じなので、「iPhone」から乗り換える人は違和感なく操作できるでしょう。上部にはマイク、下部にはSIMカードスロット、USB Type-Cポート、マイク、スピーカーを装備します。SIMカードスロットは、nanoSIMカードを2枚装着でき、デュアルSIMの運用が可能です。なお、microSDメモリーカードには対応していません。スピーカーはディスプレイ上部にも搭載されていて、ステレオ音声を出力できます。

右側面に電源ボタンを搭載

右側面に電源ボタンを搭載

左側面に音量ボタンを搭載

左側面に音量ボタンを搭載

上部はマイクのみ

上部はマイクのみ

底部にSIMスロットやUSB Type-Cポートを搭載

底部にSIMスロットやUSB Type-Cポートを搭載

背面パネルの上部中央に、2つのレンズを横に並べたカメラを搭載。カメラの土台に大きな円があしらわれ、その左右にLEDを配置します。下部にはチューブがうねるデザインがあしらわれています。「Phone(2)」とは、カメラの配置が大きく異なるデザインで、好みが分かれそうです。

カラーバリエーションはミルクとブラックの2色で、検証はブラックで行いました。透明の強化ガラスを使った「Phone(2)」に対して、「Phone (2a)」の背面パネルは少し曇った樹脂製になります。総じて「Phone (2a)」のほうが落ち着いたデザインでしょう。

左が「Phone(2)」、右が「Phone(2a)」。背面デザインは、カメラやLEDの配置が異なる

左が「Phone(2)」、右が「Phone(2a)」。背面デザインは、カメラやLEDの配置が異なる

ミルクの背面。ブラックよりもミルクのほうが背面の樹脂パネルの透明度が高く、デザインがわかりやすい(新製品発表会で撮影)

ミルクの背面。ブラックよりもミルクのほうが背面の樹脂パネルの透明度が高く、デザインがわかりやすい(新製品発表会で撮影)

ディスプレイは6.7インチの有機ELディスプレイ(フレキシブルAMOLED)で、解像度は1084×2412。10bit表示に対応しており、約10.7億色の表示が可能です。スペックは「Phone (2)」と共通する点が多いですが、最大輝度は1300nits、通常輝度は700nitsで、「Phone (2)」の最大輝度1600nits、通常輝度1000nitsと比べると、直射日光の当たるような明るい場所での見やすさには違いがあるでしょう。ただし、一般的な環境においては、「Phone(2a)」でもWebページの細かい文字や、写真や動画を見る際でも満足できる視認性が得られます。

ディスプレイの画質は上々。30Hz〜120Hzの可変リフレッシュレートに対応

ディスプレイの画質は上々。30Hz〜120Hzの可変リフレッシュレートに対応

日常用途ならパワー&スタミナは必要十分。メモリーを拡張できるのも魅力

SoCはMediaTekの「MediaTek Dimensity 7200 Pro」を採用。このSoCは、汎用品ではなく、この機種のためにNothingがMediaTekと共同開発したものとのこと。4nmプロセスで製造されたオクタコアのチップセットで、クロック周波数は最大2.8GHz。MediaTekの7000番台という型番からミドルレンジ向けと判断してよいでしょう。

筆者が実際に使った範囲では、操作感は軽快で、タッチ反応の鈍さや動作にもたつきを感じることはありませんでした。アプリの切り替え、カメラの撮影モードの切り替えなどもサクサクと行え、基本アプリの操作性は上位モデルと同等という印象です。

しかし、処理速度を客観的に比較するためベンチマークアプリ「Geekbench 6」でテストしたところ、「Phone(2)」と「Phone(2a)」には、3〜4割という大きなスコアの差がありました。「Phone(2a)」は普段使いに支障はないものの、大容量のアプリを起動するような負荷がかかる状況では、ミドルレンジ相応のパフォーマンスとなるでしょう。

「Geekbench 6」アプリでベンチマークを測定した結果。「Phone(2)」(左)、「Phone(2a)」(右)で大きな差がついた。ただし、「Phone(2a)」もミッドレンジとしては悪いほうではない

「Geekbench 6」アプリでベンチマークを測定した結果。「Phone(2)」(左)、「Phone(2a)」(右)で大きな差がついた。ただし、「Phone(2a)」もミッドレンジとしては悪いほうではない

「Phone(2a)」には、ストレージの使っていない領域を用いて、メモリーを拡張できる仮想メモリー機能が追加されています。12GB+256GBモデルの場合は、最大8GBを拡張でき、合計20GB相当のメモリーを使えます。マルチタスク操作が多い人や、データサイズが大きいゲームを楽しみたい人には心強い機能でしょう。

「設定」→「システム」→「RAM拡張」でRAMの拡張を設定可能。「Phone(2)」にはない新しい機能だ

「設定」→「システム」→「RAM拡張」でRAMの拡張を設定可能。「Phone(2)」にはない新しい機能だ

バッテリー容量は5000mAh。「Phone(2)」よりも300mAh多く、標準的な使い方であれば1日は余裕で持ち、使い方によっては2日以上持たせることもできるでしょう。充電器は付属していませんが、45Wの急速充電にも対応。なお、「Phone(2)」で対応していたワイヤレス充電は省略されています。

ライトが減った「Glyph Interface」は物足りなさを感じたが……

歴代のNothing製スマートフォンは、透明の背面パネルの内部に白色LEDを並べた「Glyph Interface(グリフ・インターフェイス)」が大きな特徴です。これは、着信時やアラーム設定時などに点灯する仕組みで、通知ごとに点滅パターンを変更したり、連絡先に紐付けて、発光パターンで誰からの着信かわかるというものです。

「Phone (2a)」の着信音は10種類がプリインストールされていて、それぞれ点滅パターンが異なります。さらに、着信音を自作するアプリ「Glyphコンポーザー」をインストールすれば、自分で作った音色やリズムに合わせて意図的に激しく点滅するパターンを作成することもできます。

「Phone(1)」では5か所、「Phone(2)」では11か所のLEDが背面に搭載されているのに対して、「Phone(2a)」に搭載されているLEDはカメラ周辺の3か所のみ。従来モデルを知る人は物足りなく感じるかもしれません。

「Glyph Interface」の設定画面。着信音ごとに連絡先を設定することも可能

「Glyph Interface」の設定画面。着信音ごとに連絡先を設定することも可能

 好みの音色を選んで、LEDの光り方を確認しながら着信音を作れる「Glyphコンポーザー」。簡単な操作で最大10秒の着信音を作れる

好みの音色を選んで、LEDの光り方を確認しながら着信音を作れる「Glyphコンポーザー」。簡単な操作で最大10秒の着信音を作れる

「Glyph Interface」はユニークで楽しい機能ですが、音声通話の機会が減っている昨今では生かせる場面がそれほど多くないかもしれません。「Phone(2)」を使っている筆者が日常的に使用していて役立つと感じるのは、残り時間を照明で表示する「Glyphタイマー」と、撮影時の補助ライトくらい。そのため、LEDの数が減った「Phone(2a)」でも、機能性ならこれで十分と思える人も少なくないでしょう。

Nothing独自のモノトーン画面はカスタマイズも楽しめる

「Phone(2a)」は洗練された画面デザインや、カスタマイズの自由度が高いことも魅力。ホーム画面とアプリ一覧画面では、アプリのアイコンがモノクロで表示され、独自の世界観を演出しています。

ただし、プリインストールされる「おサイフケータイ」や、ダウンロードしたアプリのアイコンはカラーで表示されます。世界観を徹底させたいならアプリ「Nothing Icon Pack」を追加することで、カラー表示のアイコンもモノクロ表示に変更可能です。なお、「Nothing Icon Pack」では、ホーム画面をモノクロ表示、アプリ一覧画面ではカラー表示に分けることもでき、ホーム画面でスタイルを維持しながら、アプリの探しやすさを両立させることもできます。

初期設定のホーム画面(左)とアプリ一覧画面(右)。「おサイフケータイ」のアイコンはカラーで表示される

初期設定のホーム画面(左)とアプリ一覧画面(右)。「おサイフケータイ」のアイコンはカラーで表示される

「Nothing Icon Pack」をインストールし、「設定」→「カスタマイズ」→「アイコンパック」に進むと、アイコンの色を変更できる

「Nothing Icon Pack」をインストールし、「設定」→「カスタマイズ」→「アイコンパック」に進むと、アイコンの色を変更できる

左の画面のようにすべてのアイコンをモノクロにしたり、逆に右の画面のようにカラーにすることも可能

左の画面のようにすべてのアイコンをモノクロにしたり、逆に右の画面のようにカラーにすることも可能

壁紙はモノクロのアイコンが映えるデザインを多数プリインストール。ユーザーの好みに合わせた壁紙が自動で生成される機能も備えている

壁紙はモノクロのアイコンが映えるデザインを多数プリインストール。ユーザーの好みに合わせた壁紙が自動で生成される機能も備えている

モノトーンの画面に合う多彩なウィジェットがプリインストールされている

モノトーンの画面に合う多彩なウィジェットがプリインストールされている

デュアルカメラは明るくナチュラルな色調で撮れる

カメラの性能に迫ります。背面には広角のメインカメラ(約5000万画素、F1.88)と超広角カメラ(約5000万画素、F2.2)のデュアルカメラを搭載。性能が抑えられがちな超広角カメラにも高画素センサーを採用していることは競合品と比べて優位な点です。使用されているイメージセンサー名は公表されていませんが、有効画素数とレンズの絞り値のスペックは上位モデルの「Phone(2)」と共通。なお、フロントカメラは約3200万画素、F2.2です。

メイン(広角)+超広角のデュアルカメラを搭載。カメラ部は少し盛り上がっている

メイン(広角)+超広角のデュアルカメラを搭載。カメラ部は少し盛り上がっている

イメージセンサーは約5000万画素ですが、通常の撮影では、4つの画素をひとつにまとめるピクセルビニングによって、約1250万画素として使用します。これにより感度が向上し、暗い場所でも明るく鮮明に撮影でき、手ブレを抑えることもできます。

さまざまな被写体、構図で撮影しましたが、どれも明るく鮮やかな発色でした。空の青や木々の緑が過剰に色濃くなったりすることはなく、ナチュラルな色調で、光量が少なめの曇天、夕刻、室内での撮影にも強いようです。

超広角カメラで撮影。画質が劣化しやすい四隅もきれい。鮮やかだが誇張の目立たない絵作りだ

超広角カメラで撮影。画質が劣化しやすい四隅もきれい。鮮やかだが誇張の目立たない絵作りだ

上と同じ構図を広角カメラに切り替えた。2つのカメラでトーンの変化が少なく、しっかりとチューニングしていることがわかる

上と同じ構図を広角カメラに切り替えた。2つのカメラでトーンの変化が少なく、しっかりとチューニングしていることがわかる

デジタルズーム2倍で撮影。ベースとなるイメージセンサーが高精細なので鮮明な画質は維持される

デジタルズーム2倍で撮影。ベースとなるイメージセンサーが高精細なので鮮明な画質は維持される

デジタルズーム10倍で撮影。さすがに画質は粗くなり、きれいに撮るには少し厳しい

デジタルズーム10倍で撮影。さすがに画質は粗くなり、きれいに撮るには少し厳しい

晴れた日に撮影した作例。青空や海の鮮やかさは自然に感じられるレベル

晴れた日に撮影した作例。青空や海の鮮やかさは自然に感じられるレベル

夕景を撮影した作例。夕日と山影で明暗が大きく、カメラに負担のかかる構図だが、ノイズは抑えられている

夕景を撮影した作例。夕日と山影で明暗が大きく、カメラに負担のかかる構図だが、ノイズは抑えられている

室内で料理を撮った作例。暖色の照明の雰囲気を維持しつつ、鮮やかに撮れている

室内で料理を撮った作例。暖色の照明の雰囲気を維持しつつ、鮮やかに撮れている

夜景を明るく撮れる「ナイトモード」、背景を好みの度合いでぼかせる「ポートレート」、露出、ISO感度、シャッタースピードなどを手動で設定できる「エキスパート」も搭載。機能面で不足を感じることはないでしょう。

「ナイトモード」で撮った作例。長時間の露光を行うが、照明部分が明るくなり過ぎず、夜の風情やヨットの細部も生かされる

「ナイトモード」で撮った作例。長時間の露光を行うが、照明部分が明るくなり過ぎず、夜の風情やヨットの細部も生かされる

「ポートレート」でのボケは、F0.95〜F16の範囲で調整可能

「ポートレート」でのボケは、F0.95〜F16の範囲で調整可能

待望の「おサイフケータイ」に対応。ChatGPTを直接利用できる

「Phone(2a)」が「Phone(2)」に勝る点として、FeliCa搭載があります。これによって「おサイフケータイ」でSuica、PASMO、nanaco、楽天Edy、WAONなどが利用可能になります。「Googleウォレット」 では、クレジットカードのタッチ決済に加えて、電子マネーも利用できます。

FeliCaの搭載によって、「おサイフケータイ」が利用可能に。電子マネーは「おサイフケータイ」、「Googleウォレット」のどちらからでも設定可能

FeliCaの搭載によって、「おサイフケータイ」が利用可能に。電子マネーは「おサイフケータイ」、「Googleウォレット」のどちらからでも設定可能

Nothingは、2024年4月18日に同社のスマホやイヤホンで生成AI「ChatGPT」と連携できる機能を発表しました。筆者が検証したタイミングでは、「ChatGPT」の実装はまだでしたが、「Phone(2a)」にアプリ「ChatGPT」をインストールしたうえで、Nothing製イヤホンのユーティリティアプリ「Nothing X」で設定を行えば、イヤホンから声で「ChatGPT」を起動できるようになる見込みです。

また、アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」シリーズを使っている場合、「設定」画面で「AirPods」の電池残量を確認することなどが可能です。これは、Androidスマホでは珍しい機能でしょう。

また、アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」シリーズを使っている場合、「設定」画面で「AirPods」の電池残量を確認することなどが可能です。これは、Androidスマホでは珍しい機能でしょう。

埋没しない個性に加えてライバルに並ぶコスパ、そして機能性

「Phone(2a)」は、シリーズの廉価版に当たりますが、日常的な用途において、性能で「Phone(2)」に大きく劣る部分はなさそうです。むしろ、「おサイフケータイ」に対応したことはアドバンテージと言えます。

「Phone(2)」との大きな差分は、SoCの性能と「Glyph Interface」の簡略化、そしてワイヤレス充電の対応の有無くらい。コストパフォーマンスでは圧倒的に「Phone(2a)」に軍配が上がります。

また、50,000円前後の他社製品には、Google「Pixel 7a」やシャープ「AQUOS sense8」のような人気モデルが存在します。「Phone(2a)」はそれらと比べても機能性で遜色ないうえに、ディスプレイが120Hz駆動に対応しているという優位点もあります(「Pixel 7a」と「AQUOS sense8」は90Hz駆動)。「Phone(2)」よりも穏やかですが、デザインは十分個性的。コスパや機能性も大切だがデザインにもこだわりたい、そんなユーザーに向けた製品でしょう。

村元正剛
Writer
村元正剛
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの企画・編集などにも携わっている。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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