レビュー

独自のデザイン「AQUOS R9」レビュー! 10万円以下で性能はハイエンド級

シャープのスマートフォン「AQUOS」シリーズの最新モデル「AQUOS R9」がNTTドコモとソフトバンクから7月12日に発売された。価格はドコモが117,040円、ソフトバンクが124,560円(税込。以下同)となっている。7月26日にはSIMフリーモデル(オープンマーケット向けモデル)も登場。価格.comでの最安価格は96,822円(2024年7月29日時点)だ。日本以外に台湾、シンガポール、インドネシアでも展開する、シャープにとっての意欲作でもある。筆者はシャープからSIMフリーモデルを借りて使用した。

SIMフリー版「AQUOS R9」の価格.com最安価格は96,822円(2024年7月29日時点)。7月12日から順次発売された

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2024/05/08 18:30

自由曲線を描くスクエアボディはエレガントな印象

「AQUOS R9」は、2023年8月に発売された「AQUOS R8」の後継モデルだ。今年は「AQUOS R8 Pro」の新モデルは発売されず、若干スペックが控えめで、使いやすさを重視した「AQUOS R9」だけがリリースされた形だ。

しかし、これまでに「AQUOS R」シリーズを使った経験があるなら、デザインが一新された「AQUOS R9」に、まったく新しいモデルという印象を受けるだろう。「AQUOS R9」のデザインには、プロダクトデザイナー・三宅一成氏が率いる「miyake design」を起用。前モデルはカメラを背面上部の中央に配置していたが、「AQUOS R9」ではカメラを左上に移動させ、カメラ部は正円ではなく自由曲線による円で囲まれている。

カメラ部は自由曲線で囲われ、新しいデザインの象徴となっている。サイズは約75(幅)×156(高さ)×8.9(厚さ)mmで、重さは約195g

カメラ部は自由曲線で囲われ、新しいデザインの象徴となっている。サイズは約75(幅)×156(高さ)×8.9(厚さ)mmで、重さは約195g

カラーバリエーションはGreenとWhiteの2色。筆者が借りたのはGreenで、背面パネルは深めの緑で光沢仕上げのツルツルとした質感。カメラ部は浅めの緑でマットな質感だ。

四角い背面パネルと円で囲われたカメラ部はそれぞれ質感が異なる

四角い背面パネルと円で囲われたカメラ部はそれぞれ質感が異なる

ディスプレイは約6.5インチの有機EL。ベゼルが細めで、“四角いスマホ”という印象が強い。「AQUOS」シリーズは、かつて “三辺狭額縁” をアピールしていたが、「AQUOS R9」は “三辺狭額縁” を進化させた “四辺狭額縁” といった風情だ。使っていると、背面の自由曲線の円が、この端末の角張った印象を中和させているようにも感じられた。全体的に上品でエレガントな印象だ。

ディスプレイは約6.5インチの「Pro IGZO OLED」。解像度はフルHD+(2340×1080)で、明るくクッキリとした画質だ

ディスプレイは約6.5インチの「Pro IGZO OLED」。解像度はフルHD+(2340×1080)で、明るくクッキリとした画質だ

右側面に音量ボタンと電源ボタンを搭載。上部にはSIMスロットとマイク、下部にUSB Type-Cの接続口、スピーカー、マイクを備える。なお、スピーカーはディスプレイの上部にもあり、ステレオサウンドを楽しめる。

右側面に音量ボタンと電源ボタンを搭載。電源ボタンは指紋センサーを兼ねる

右側面に音量ボタンと電源ボタンを搭載。電源ボタンは指紋センサーを兼ねる

上部のSIMスロットはSIMピン不要で指で開けられる。nanoSIMとmicroSDXCカード(最大1TB)を1枚ずつ装着できる

上部のSIMスロットはSIMピン不要で指で開けられる。nanoSIMとmicroSDXCカード(最大1TB)を1枚ずつ装着できる

底部にはUSB Type-C接続口とスピーカー、マイクを搭載

底部にはUSB Type-C接続口とスピーカー、マイクを搭載

サラリとした操作性に独自の魅力

SoCにはミドルハイ向け「Snapdragon 7+ Gen 3」を採用している。最大2.8GHzのオクタコアチップだが、発表会では「ハイエンドに近い性能を有する」との説明を受けた。前モデルの「AQUOS R8」に搭載されていたのはハイエンド向け「Snapdragon 8 Gen 2」(最大3.18GHz/オクタコア)なので、スペック的にはワンランク落としたと言える。しかし、実際の操作感は前モデルと比べて見劣りはなく、快適に操作できた。

ベンチマークアプリ「Geekbench 6」で処理性能を測定してみると、「AQUOS R8」のスコアよりも、わずかに低かった。しかし、ミッドレンジとしては上々のスコアで、パフォーマンスは、メーカーの言うように「ハイエンドに近い」。

「Geekbench 6」アプリでベンチマークを測定した結果。左は、前モデルの「AQUOS R8」で発売当時に測定したもの。右が今回、「AQUOS R9」で測定したもの。スコアは前モデルより若干低かった

「Geekbench 6」アプリでベンチマークを測定した結果。左は、前モデルの「AQUOS R8」で発売当時に測定したもの。右が今回、「AQUOS R9」で測定したもの。スコアは前モデルより若干低かった

スマートフォンの操作感を伝えるために、よく「ヌルサク」という表現が使われる。しかし、筆者の個人的な感覚では、「AQUOS R9」の操作感は「ヌルサク」とは微妙に異なる。画面スクロールがスルスルと進み、アプリの切り替えも軽やかに行える。「ヌル」「サク」というより「スル」「サラ」といった感触だ。

メモリー(RAM)は、前モデルの8GBから12GBへとパワーアップ。12GBはハイエンドモデルの標準的な容量だ。さらに、最大8GBの「仮想メモリ」を追加できる。ストレージ(ROM)は256GBなので、物足りないと思う人もいるだろうが、microSDXCカード(最大1TB)に、写真・動画や書籍のような大きいデータを退避させ、ストレージをアプリのインストール先に使い分ければ不便が生じることはないだろう。

最大8GBの「仮想メモリ」を追加できる

最大8GBの「仮想メモリ」を追加できる

高性能を意識せず、誰でもキレイに撮れるカメラ

「AQUOS R9」の大きな優位性となるのがカメラだ。ライカ監修のカメラを搭載し、高画質で撮影できることをアピールしている。筆者が実際に使った印象を先に述べると、「AQUOS R9」のカメラの魅力は「ライカを意識することなく、何でもキレイに撮れる」ということ。フルオートの「写真」で、「AI」をオンにして(初期設定がオンになっている)シャッターを切るだけで、ナチュラルな色調で、光のバランスもちょうどよい感じの写真が撮れるのだ。

ライカ監修のカメラを搭載していることは大きなアドバンテージ

ライカ監修のカメラを搭載していることは大きなアドバンテージ

アウトカメラは、標準(約5030万画素/F値1.9)+広角(約5030万画素/F値2.2)という構成。標準カメラは焦点距離が23mm相当、広角カメラは13mm相当(いずれも35mm換算の焦点距離)なので、本来はそれぞれ「広角」「超広角」と呼ぶほうが他社の製品と比較しやすいだろう。どちらのカメラで撮った画像も、デフォルトでは約1258万画素(4096×3072)で記録される。これは、4つの画素を1つに結合して明るく撮影できるピクセルビニングによるもの。なお、撮影モードを「ハイレゾ」に切り替えると、ピクセルビニングが解除され、約5030万画素(8192×6144)で記録される。写真の一部を高解像度で切り抜きたいといったケースを除けば、「ハイレゾ」が必要となる場面はないだろう。

シャッタースピードやISO感度を自由に設定する「マニュアル写真」モードも用意。「その他」の撮影モードから「ハイレゾ」を選択すると高解像度で撮影できる

シャッタースピードやISO感度を自由に設定する「マニュアル写真」モードも用意。「その他」の撮影モードから「ハイレゾ」を選択すると高解像度で撮影できる

標準カメラはライカの「HEKTOR(ヘクトール)」レンズを採用。イメージセンサーが1/1.55インチと大きく、光学式と電子式の両方の手ブレ補正機能を備えていることも利点だ。望遠カメラは搭載していないが、2倍は光学ズーム相当の画質で撮影できる。デジタルズームは最大8倍で、スマートフォンの画面で見る分には、画質劣化はそこまで気にならない。

広角(0.6×)で撮影

35mm換算の焦点距離13mm相当なので他社の製品では超広角に分類される。周辺部分に偽色がわずかに見られるが、超広角らしい迫力がある

35mm換算の焦点距離13mm相当なので他社の製品では超広角に分類される。周辺部分に偽色がわずかに見られるが、超広角らしい迫力がある

標準(1×)で撮影

上と同じ構図を撮影。構図の中央はもちろんだが隅まで解像感がぐっと高まる

上と同じ構図を撮影。構図の中央はもちろんだが隅まで解像感がぐっと高まる

2倍(2×)で撮影

2倍(2×)にはワンタップで切り替えられ、光学ズーム相当のクッキリとした画質で写る

2倍(2×)にはワンタップで切り替えられ、光学ズーム相当のクッキリとした画質で写る

最大8倍のデジタルズームで撮影

さすがに画質は粗くなるが、スマートフォンの画面に表示させて見るには気にならない程度

さすがに画質は粗くなるが、スマートフォンの画面に表示させて見るには気にならない程度

標準(1×)で撮影

室内で料理を撮った作例。実際よりもやや明るく写った

室内で料理を撮った作例。実際よりもやや明るく写った

「ポートレート」モードで撮影

「ポートレート」モードで愛犬を撮影。背景ボケの度合いは調整可能。境界の処理も自然だ

「ポートレート」モードで愛犬を撮影。背景ボケの度合いは調整可能。境界の処理も自然だ

「ナイト」モードで撮影

なお、「ナイト」モードにすると、露光時間が長くなり、明るく写る。星空や花火を撮影するためのモードも用意されている

なお、「ナイト」モードにすると、露光時間が長くなり、明るく写る。星空や花火を撮影するためのモードも用意されている

なお、AIを用いた写真の機能として、「料理の影を消す」機能が追加された。これは、AIが料理を認識して撮影を行う場合に、料理にかかる影を検出して消してくれる機能だ。使ってみるとかなり精度が高く、今後、料理以外の撮影にも適用されるようになることを期待したい。

左は「料理の影を消す」をオフにして撮影したもの。右は「料理の影を消す」をオンに切り替えたもの。ここまで自然に影が消える

左は「料理の影を消す」をオフにして撮影したもの。右は「料理の影を消す」をオンに切り替えたもの。ここまで自然に影が消える

インカメラも約5030万画素。F値2.2のレンズで、焦点距離は23mm相当になる。シングルレンズだが、1倍、1.5倍、2倍と画角を変えて撮影可能。「ポートレート」モードにすると、背景をぼかして撮影できるほか、美肌、小顔、色合い、明るさなどの手動調整できる。実際よりも明るくきれいな肌で写せること請け合いだ。

生成AIを用いた「伝言アシスタント」の使い勝手は?

AQUOSには「AQUOSトリック」と総称される多彩な便利機能が搭載されている。たとえば、指紋センサーをロック解除した後に、事前に指定したアプリを素早く起動できる「Payトリガー」、WebやSNSの画面が自動でスクロールされる「スクロールオート」などだ。画面の右上隅または左上隅を長押しするだけでスクリーンショットが撮れる「Clip Now」も便利だ。

「Payトリガー」には「Googleウォレット」が初期設定されていたが、ほかの決済アプリや、決済以外のアプリを設定することも可能

「Payトリガー」には「Googleウォレット」が初期設定されていたが、ほかの決済アプリや、決済以外のアプリを設定することも可能

「スクロールオート」は画面をゆっくりなぞると現れる矢印のアイコンに触れたり、2本の指でなぞったりすることで起動する

「スクロールオート」は画面をゆっくりなぞると現れる矢印のアイコンに触れたり、2本の指でなぞったりすることで起動する

長押しだけでスクショが撮れる「Clip Now」も非常に便利

長押しだけでスクショが撮れる「Clip Now」も非常に便利

「AQUOS R9」には「AQUOSトリック」とは別に、AIを用いた便利な機能が追加されている。そのひとつが「伝言アシスタント」機能だ。従来のAQUOSには、かかってきた電話に出られない場合に、相手の音声メッセージを録音する機能「簡易留守録(伝言メモ)」があった。「伝言アシスタント」は、それに代わるもので、生成AIによって伝言メモが文字起こしされて、要約が表示される。つまり、録音されたメッセージを再生しなくても、素早く用件を確認できる趣向だ。文字起こし、要約の精度は音声の状態に依存するが、精度はかなり高いと感じられた。電話の利用が多い人には役立ちそうだ。

電池持ちは良好だが充電にはやや時間を要する

バッテリー容量は5000mAh。電池持ちは良好で、移動中にゲームや動画視聴を行っても、1日で電池がピンチになる心配は少なそうだ。省電力設定で電池を長く持たせる「長エネスイッチ」や、充電時の電池への負荷を減らして電池寿命を長くする「インテリジェントチャージ」機能も備えている。

物足りなく感じたのは充電の速度だ。標準的な急速充電規格「USB Power delivery Revision3.0(USB PD 3.0)」には対応しているが、満充電には約130分かかる。最近は、急場しのぎに必要なだけのエネルギーを数分でチャージできる機種も増えている。充電をし忘れることが多く、充電速度を重視する人は、慎重に検討すべきポイントとなるだろう

気になったのは充電時間程度、心地よく使い続けられる

「AQUOS R9」を1週間ほど使って、不便を感じることはまったくなかった。ディスプレイは美しく、SNSにアップされている同じ映像であっても、本機のほうがより鮮やかに見える。試用した期間は、日差しが強い日が続いていたが、屋外での視認性もよかった。

約6.5インチの「Pro IGZO OLED」ディスプレイは鮮やかな表示で、自分好みのカスタマイズも可能。リフレッシュレートは最大240Hz(毎秒120回の表示更新の間に黒画面を挿入して240回の更新を実現)で、1〜240Hzの可変駆動に対応

期待していた以上だったのは内部スピーカーの音質だ。左右のバランスがよく、厚みのあるサウンドを楽しめた。音質にこだわる人は、「ドルビーサウンド」で細かい設定を行うこともできる。

臨場感のある立体的な音質を実現するドルビーサウンドに対応し、カスタマイズも可能。さらに、「ドルビー空間オーディオ」にも対応

臨場感のある立体的な音質を実現するドルビーサウンドに対応し、カスタマイズも可能。さらに、「ドルビー空間オーディオ」にも対応

「AQUOS R9」は上品なたたずまいだが、実はかなり頑強だ。防水(IPX5/IPX8)・防塵(IP6X)に加えて、米国国防総省の資材調達基準であるMIL-STD-810Gに準拠する耐衝撃性能や、耐振動、高温動作といったタフネス性能も備えている。5Gの対応周波数は、ドコモだけが使う「n79」にもしっかり対応させているのでSIMカードを選ばない。

OSアップデートは発売日から最大3回、セキュリティアップデートは発売日から5年を保証しており、長く使い続けるうえでも安心だ。もちろんFeliCaポート搭載で、おサイフケータイやマイナンバーの「スマホ用電子証明書」にも対応している。

充電に時間がかかることを除けば、これといった欠点は見当たらず、とても心地よく使える端末だった。また、SIMフリー版の価格は10万円を下回っており、キャリア版よりも割安。近年のハイエンドスマートフォンの価格を考えるとなかなかのお値打ちだろう。

村元正剛
Writer
村元正剛
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの企画・編集などにも携わっている。
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田中 巧(編集部)
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田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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