Nothingが2024年10月1日に発売したスマートフォン「CMF Phone 1」を使ってみた。「CMF」はNothingのサブブランドで、Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)の頭文字を組み合わせたもので、廉価版ながら、デザインに凝っていることが特徴。「CMF by Nothing」は、これまでにワイヤレスイヤホンやスマートウォッチをリリースしてきたが、「CMF Phone 1」は初のスマホになる。
「CMF Phone 1」。Nothing日本公式サイト(Nothing.tech)で購入できる8GBメモリー+256GBストレージモデルが44,800円(税込)、格安SIMの「IIJmio」が取り扱うIIJ限定モデル(8GBメモリー+128GBストレージ)が39,800円(税込)。いずれも発売中だ
「CMF Phone 1」のカラバリはブラック、オレンジ、ライトグリーンの3色。ただし、公式サイトで購入すると、着せ替え用のケース(ブルーかライトグリーン)が付く。このうちブラック、ライトグリーンがマット仕上げで、オレンジとブルーが皮革の質感に近いヴィーガンレザー仕上げとなっている。
「CMF Phone 1」は、6.67インチの有機ELディスプレイを搭載するミドルレンジモデル。筆者が試用したのは8+256GBモデルだ
本体サイズはマット仕上げの標準モデルが164(高さ)×77(幅)×8(厚さ)mmで、重さは197g。ヴィーガンレザーモデルは高さと幅はそのままで、厚さが1mm増の9mm、重さは5g増の202gだ。なお、IIJ限定モデルのカラバリはブラック、ライトグリーン、オレンジの3色で、着せ替え用ケースは付かない。
筆者が使ったのはブラック。背面パネルは樹脂製で、マット仕上げだ
ディスプレイは6.67インチのスーバーAMOLED(有機EL)。解像度は2400×1080で、輝度は最大2000ニト(通常は700ニト)。画面が明るくくっきりとした表示だ。ただし、フロントパネルは指紋が付着しやすいのが気になった。
6.67インチのディスプレイは明るく、視認性は良好
77mmのボディ幅は大きめだが、6.67インチの大画面ディスプレイを搭載していることを考えると妥当だろう。成人男性で標準的な手の大きさであれば、電話に応答したり、メッセージを確認して返信するといった基本的な操作は片手でこなせそうだ。
右側面に電源ボタン、左側面に音量ボタンを搭載。これは「Nothing Phone」シリーズと同じだ。上部にマイク、下部にnanoSIMとmicroSDのスロット、USB Type-Cの接続口、スピーカー、マイクを備える。SIMスロットにはnanoSIMを2枚装着し、デュアルSIMの運用も行える。2枚目のSIMの代わりに、microSDメモリーカード(最大2TB)を装着することもできる。なお、eSIMには対応していない。指紋センサーは画面内に搭載されていて、フロントカメラでの顔認証にも対応している。
右側面に電源ボタンを左側面に音量ボタンをそれぞれ配置
上部にはマイク(左写真)を、底部にSIMスロット、USB Type-Cポート、スピーカー、マイクをそれぞれ搭載(右写真)
筆者が借りたブラックの背面はマットでサラサラとした質感。落ち着いた色合いで、指紋汚れがほとんど目立たないことも利点だ。後ほど詳しく解説するように、背面をまるごと交換できるので、そのまま使うのが正解だろう。
ケースを固定するネジや、別売りのアクセサリーを取り付けるためのパーツにもこだわりが感じられ、デザイン上のアクセントになっている
「CMF Phone 1」の最大の特徴は、本体そのものをカスタマイズできること。Nothing日本公式サイトでは、カスタマイズ用のアクセサリーとして、ケース(4,980円)、スタンド(1,980円)、ストラップ(2,980円)、カードホルダー(2,980円)が用意されている(価格はすべて税込)。色はケースがブルーとライトグリーン、ほかのアクセサリーはオレンジが用意されている。今のところ別売品としてオレンジのケースは用意されていないようだが、筆者が借りたアクセサリーはすべてオレンジだった。
ケースは、背面の4つのネジを外し、ストラップなどを取り付けるためのボタンのようなネジ、SIMスロットも抜いて、取り外す。説明書にしたがって、隙間に爪を入れてゆっくりはがした。難しくはないが、ケースを破損しないように注意は要する。作業は、久しぶりに工作をしているようで楽しかった。筆者はブラックからオレンジに着せ替えたが、カメラ部とネジの色が変わり、質感まで変わるので、使う気分も変わるだろう。着せ替えは簡単だが5分くらいはかかる。ひんぱんに交換するものではなく、ケースが汚れたり、飽きたりした際に、異なるカラーに変えるのがよいだろう。
まず、付属のドライバーでネジをゆるめる
ケースの取り外しは簡単だが、慎重に行う必要がある
こちらが新たに取り付けるオレンジのケース。作業に必要な工具も付いている
着せ替え完了
スタンドとストラップは、ボタン上のネジを手で回して外して装着する。どちらも簡単なので、必要な場合だけ取り付けるのもよさそうだ。
丸いボタン上のネジは、手でクルクルと回すだけで外せる。ブラックの背面に、オレンジのスタンドを組み合わせるのもアリだろう
スタンドは動画を視聴する際に便利。右の写真のように縦に立てることもできる
ストラップはホルダーを取り付けて、そこにフックを掛ける仕組み。そのため、自分が使いたいストラップを付けることも可能
カードホルダーは、3つのネジとボタン上のネジを外して、取り付ける仕様。カードは3枚まで収納でき、取り出す向きは変えられる。プラスチックカード3枚がスムーズに収まるが、ケースの下段にあるカードは出しにくい。よく使うカードを1枚だけ入れる、または、その下にひんぱんには使わないが、携帯はしておきたいカードを入れておくとよいだろう。「CMF Phone 1」はおサイフケータイに対応していないので、SuicaやPASMOなどを入れておくのがよさそうだ。なお、カードホルダーは、スタンドやストラップと併用できる。
おサイフケータイに対応していないので、交通系ICカードを入れておくと便利だ
SoCはミドルレンジ向け「MediaTek Dimensity 7300」を採用する。TSMCの4nmプロセスで作られ、クロック周波数は最大2.5GHz。ベンチマークアプリ「Geekbench 6」でCPUの処理性能を測定したところ、ミドルレンジ相応のスコアをマークした。
「Geekbench 6」アプリでベンチマークを測定した結果。ちなみに、「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載するハイエンドの「Nothing Phone(2)」で測定すると、シングルコアが1685、マルチコアが4425だった
RAMは8GBで、最大8GBまでの仮想RAMの拡張が可能。初期設定で「2GB」に設定されていた。
画面リフレッシュレートは最大120Hzに設定可能。タッチサンプリングレートは最大240Hzだ。これらのディスプレイ性能はハイエンド級の仕様と言ってよい。実際に使っていても、タッチ反応が鈍く感じることはなく、基本アプリはストレスなく操作できるように思えた。
バッテリー容量は5000mAh。5Gスマホとしては十分な容量で、筆者が1週間使った範囲では、1日で電池残量がピンチになることはなかった。省電力モードはAndroidの標準の「バッテリーセーバー」のみ。バッテリー寿命を延ばす「スマート充電モード」なども備えている。
スマホとしての基本性能は必要十分といった印象だ。強いて不満点をあげるなら、内蔵スピーカーが近ごろ増えているステレオではなくモノラルであることだ。音量は結構大きくできるのだが、音楽を聴くには物足りなく、映画や動画を視聴する場合もバランスが悪く思えた。
OSはAndroid 14がベースの「Nothing OS 2.6」を搭載している。上位の「Nothing Phone」シリーズと同じように、モノクロを基調とするホーム画面が初期設定されていて、独自のウィジェットで画面をカスタマイズできる。使いにくく感じる場合は、アイコンをカラー表示にすることも可能だ。
初期設定のホーム画面とアプリ一覧画面
イメージや素材を指定すると、オリジナルの壁紙が作成される機能「Wallpaper Studio」も備えている。Google Pixelの「AI壁紙」と同様な機能だが、「Wallpaper Studio」ではNothingのホーム画面に合うシンプルでアーティスティックな壁紙が提案される。
2つの条件を設定して、オリジナルの壁紙を作成できる「Wallpaper Studio」
生成AIサービス「ChatGPT」を便利に使える機能も備えている。「CMF Phone 1」に「ChatGPT」アプリをインストールしておけば、Webページの文章をコピーしたり、スクリーンショットを撮ったりするだけで、それを「ChatGPT」アプリに素早く共有でき、知りたいことを調べられる仕組みだ。
Webページのテキストをコピーして、すぐに「ChatGPT」アプリに共有できる
リアカメラは二眼に見えるが、実際には約5000万画素のシングルカメラで、もうひとつは深度センサーだ。なお、センサーはソニー製で、レンズのF値は1.8相当、画角は79度の広角だ。
横向きで、左が約5000万画素カメラ、右は深度センサー
デフォルトでは、品質が「12MP」に設定されていて、撮影画質は1200万画素相当で記録される。「12MP」モードでは、ワンタップでデジタル2倍ズームに切り替えられ、最大10倍まで上げられる。「50MP」モードに切り替えると、5000万画素の画像を撮影可能。デジタルズームは利用できない。
筆者は「12MP」モードで、いろいろな被写体を撮影してみた。自然な色合いで写る「自然モード」と、明るさを高めて色合いを豊かにする「鮮明モード」を切り替えられるが、どちらを好むかはユーザーによって分かれそうだ。
左は「自然モード」、実際に見えるのに近いナチュラルな色合いで写る。右は「鮮明モード」、空と海の青が濃くなった。いわゆる “映え” を求める人に適している
室内で撮影。左は「自然モード」、右は「鮮明モード」でそれぞれ撮影。「鮮明モード」は料理の色味が強調されたが、不自然に見えるほどではない
「ポートレートモード」で撮影する場合は、「自然モード」か「鮮明モード」は選べない。背景のボケ具合は調整できる
画質はミドルクラスとしては及第点といった印象。明るい場所では細部まで鮮明に写るが、室内で撮ったり、夜景を撮ったりすると、やや色が沈むことがあった。
夕方に撮った写真。自動で夜景モードが起動し、バランスのよい色合いで写った
夜に撮った写真。夜景モードになるが、暗い部分はつぶれてしまう
フロンカメラは約1600万画素。背景をぼかす「ポートレート」モードが使えて、肌理を補正する「レタッチ処理」は「オフ」「自然」「強調」から選択可能。画質は満足できるものだった。
通信ネットワークは国内の全キャリアに対応している。ただし、国内では一般的な周波数帯にいくつか対応していないものがあるので、注意が必要だ。
5Gの対応バンドは、国内4キャリアが使う「n77」と「n78」には対応しているが、ドコモだけが使う「n79」には非対応。ドコモの5Gエリアは多くを「n78」と「n79」の組み合わせで作っているので、理屈のうえでは5Gエリアの半分を利用できないことになる。
4G LTEの対応バンドでは、ドコモのプラチナバンド「B19」と、KDDIのプラチナバンド「B18(B26)」に対応していない。プラチナバンドは、人の少ない郊外や山間部、都市部でも電波の届きにくい建物の奥や地下などエリアの隙間を埋めることに使われる。そのため、ドコモおよびKDDI、加えてKDDIのプラチナバンドを借用する楽天モバイルの回線で使う場合、つながりにくかったり、通信速度が遅くなったりする場所が増える可能性は覚悟しておきたい。
ちなみに筆者はドコモ回線の「IIJmio」、KDDIのオンライン専用プラン「povo 2.0」、ソフトバンクの「LINEMO」のSIMを差し替えて使ってみたが、いずれも不便を感じることはなかった。
「CMF Phone 1」はおサイフケータイには対応せず、カメラがシングルであることに妥協できるのであれば、使い勝手には満足できそうな端末だ。個性的なデザインのうえに本体をカスタマイズできることも、所有満足度を高めてくれそうだ。着せ替え用のケース付きで44,800円という価格設定には、かなりおトク感がある。使う環境によっては通信品質に不満が生じる恐れがあるので、そこだけは注意しよう。