ZTE製のハイエンドスマートフォン「nubia Z70 Ultra」を使ってみた。「nubia」は独自性に注力するブランドで、2024年から日本市場向けにも端末を投入している。主にキャリア向けに供給するエントリーおよびミッドレンジモデルはZTEジャパン(ZTEの日本支社)が取り扱っているが、「nubia Z70 Ultra」はFastlane Japanという会社が取り扱っている。同社はZTE製のゲーミングスマホ「REDMAGIC」シリーズの日本総代理店で、ハイエンドの「nubia Z」シリーズも同じように取り扱うことになった。
nubia「nubia Z70 Ultra」。2025年2月10日一般販売開始。税込直販価格は122,800円〜
筆者が「nubia Z70 Ultra」を手にした第一印象は “ゴツい” だった。スクエアでフラットなボディの横幅は77.1mmで、厚さは8.6mm。カメラ部の出っ張りを含むと10mmを超える。重さは228g。片手では操作しにくいサイズ感で、ずっしりとした重みを感じた。
サイズは164.3(高さ)×77.1(幅)×8.6(厚さ)mmで、重さは228g
ディスプレイは6.85インチのAMOLED(有機EL)。画面サイズと重さは「iPhone 16 Pro Max」(6.9インチ、227g)や「Google Pixel 9 Pro XL」(約6.8インチ、221g)に近い。普段、標準的なサイズのスマホを使っている筆者には重く思えたが、大画面のハイエンドスマホとしては妥当な重さだろう。
カラバリはブラック、ストロー、スターレイナイトの3色。税込直販価格はブラックの12GBメモリー+256GBストレージモデルが122,800円、16GBメモリー+512GBストレージモデルが139,800円。ストローは16GBメモリー+512GBストレージモデルのみで139,800円。公式サイト限定販売のスターレイナイトは16GBメモリー+512GBストレージのみで149,800円
サイドフレームはアルミを研磨したと思われる美しい仕上がり。右側面には音量ボタンと電源ボタンを搭載し、さらにカメラボタンも備える。長押しでカメラを起動でき、シャッターとして使える仕様だ。
右から音量ボタン、電源ボタン、カメラボタン
左側面の上部には任意の設定ができるスライドスイッチを搭載。初期設定は「カメラ」になっているが、「GameSpace」「フラッシュライト」「ボイスレコーダー」「サウンドモード」へ変更もできる。
左側面によく使う機能を素早く起動できるスライドスイッチを搭載
上部には赤外線センサーとマイク。下部にSIMスロット、USB Type-Cポート、スピーカー、マイクが搭載されている。nanoSIMは2枚装着できるが、eSIMは非対応。microSDメモリーカードにも対応していない。スピーカーはステレオ。ディスプレイの上の受話口もスピーカーとして機能し、最大音量はかなり大きく、音質にも満足できた。
上部には赤外線センサーを配置
底部にSIMスロット、USB Type-Cポート、スピーカーを搭載
背面パネルは磨りガラスのようなサラサラとした手触り。カメラ部は出っ張っていて、3つのレンズをバラバラに配置する独特のデザイン。好みが分かれそうだ。
背面にトリプルカメラを搭載。3つのレンズが整然と並ぶのが一般的だが、「nubia Z70 Ultra」はメインカメラの下に黒い帯を設けて望遠カメラと超広角カメラを搭載するという斬新なデザインを採用
「nubia Z70 Ultra」の同梱品。スマホカバーも付いている
カバーを着けると、落ち着いた見栄えになる
6.85インチの有機ELディスプレイは、BOE(中国の大手ディスプレイメーカー)との共同開発によるもの。四方のベゼルはいずれも1.25mmと細く、高い画面専有率を実現している。ディスプレイ中央上部に搭載されたフロントカメラ(約1600万画素)がパッと見ではわからないことも特徴。これにより、画面がより広く感じられる。なお、指紋センサーもディスプレイ内に搭載されている。
ディスプレイの視認性は良好。ディスプレイの上部中央にアンダーディスプレイカメラを搭載。普段は見えないが、顔認証やフロントカメラでの撮影時には場所がわかるようにガイドが表示される
大画面でなおかつベゼルが細いので、写真や動画を表示すると迫力が感じられる
解像度は2688×1216ドット。リフレッシュレートは最大144Hzに設定できる。ゲームや動画を存分に楽しみたい人にも適している。ピーク輝度は2000nitsと明るく、晴れた日の屋外で見やすいことも利点だ。
リフレッシュレートは最大144Hzに設定できる
リアカメラはメイン(約5000万画素)+超広角(約5000万画素)+望遠(約6400万画素)という構成。広角カメラには1/1.56インチのソニー製のイメージセンサーを採用。F1.59〜F4.0の物理可変絞り機能も備えている。3つのカメラはいずれも光学式手ブレ補正に対応。さらに、超広角と望遠はマクロ撮影にも対応している。
メインカメラの焦点距離は35mm相当。人間の視野に近く、普段使いに最適の画角と言えよう
撮影時は超広角(35mm換算の焦点距離は18mm。以下の焦点距離も35mm換算で統一している)、メイン(35mm)、望遠(85mm)をワンタップで切り替えられ、どのレンズで撮る場合でも、右側面のシャッターボタンの半押しでピント合わせが可能。シャッターボタンがあるためデジタルカメラに近い感覚で撮影できる。
オートの「フォト」の撮影画面。「18mm」「35mm」「85mm」をタップして画角を切り替えられる。デジタルズームは最大50倍
誇張を抑えた自然な画質。超広角としては少し長めな18mmの焦点距離もあり、超広角特有のゆがみが少ない
スマートフォンでは珍しい焦点距離。青空の階調も自然で構図の隅まで非常に安定した画質だ
光学2.4倍だが焦点距離は長く、一般的なスマートフォンなら3.5倍くらいの倍率に相当する
画質もスマホのカメラというよりはデジタルカメラに近い印象を受けた。筆者は、被写体や撮影シーンに合わせて最適化する「スマートAI」をオンにして撮影したが、過度に色が補われたり、鮮やかさが強調されたりすることはなく、比較的ナチュラルな色味で写る。
夕景もナチュラルな色調で写った
マニュアルの「プロショット」では絞り値を調整可能。F4.0にして夜景を撮ると、光源を美しく写せた
室内で料理を撮った作例。背景ボケもナチュラル
室内で愛犬を撮った作例。光と影をそのまま描写し、立体的に撮影できた
いわゆる “映える” 写真を撮りたい人が重宝しそうな「ストリート」という撮影モードも用意されている。多彩なフィルターを使って、独特の雰囲気の写真を撮れ、細かい設定も素早く行える。オートの「フォト」では利用できない可変絞り機能も利用できる。
「ストリート」の撮影画面。右下のアイコンをタップすると、露出、ホワイトバランス、絞り値など、細かい設定を行える
「ストリート」でモノクロのフィルターを設定して撮った作例
リアルではない色調にして、エモさを演出することも可能
ほかにも、「星空の軌跡」「ムーンライト」「ライトドロー」「ドキュメント」「マルチ露光」など、多彩な撮影モードが用意されている。自然に忠実な写真を撮りたい人も、エフェクトで遊びたい人も、どちらも満足できること必至だ。
多彩な撮影モードを搭載
プロセッサーは「Snapdragon 8 Elite」。クアルコムが2024年10月に発表した最新のハイエンド向けチップセットで、クロック周波数は最大4.32GHz。Androidで使われるものとしては2025年2月現在、最も高性能なプロセッサーと呼んで差し支えないだろう。スマホメーカー各社がフラッグシップモデルに採用している。
実際の操作感も良好。カメラの撮影モードの切り替え、画像編集、マルチタスク作業などを行っても、もたつきや引っかかりを感じることはなく、スムーズに操作できた。ハイエンドのスマホでは、タッチ反応が敏感すぎて、指先が軽く触れただけで誤反応することがあるが、「nubia Z70 Ultra」ではそうしたこともなかった。ユーザーが意図するタッチ操作だけを正しく認識してくれる印象だ。
筆者はスマホの処理速度比較のために、ベンチマークアプリ「Geekbench 6」を使っている。「nubia Z70 Ultra」のベンチマークを測定すると、筆者がこれまでに測定した機種で最高のスコアをマークした。
「Geekbench 6」でベンチマークを測定した結果。左がCPU、右がGPUのスコア。特にCPUのスコアの高さが際立った
バッテリー容量は6150mAh。5Gスマホのバッテリー容量は4000〜5000mAhあたりが多い。それを大きく上回る容量で、電池持ちは非常によかった。筆者は1週間ほど使った範囲では、1日で50%以上減ることはなかった。一般的な使い方であれば余裕で2日は持続しそうだ。
電池は余裕で1日以上持つが、省電力モードも用意されている
充電器は同梱されていないが、最大80Wでの急速充電が可能。別売りの充電器(3,280円/メーカー直販サイトなら特典としてスマートフォンに同梱される)を購入すれば、充電もスピーディーに行える。充電しながらゲームをしたいときなどに便利な「充電分離」機能も搭載。これにより、充電中の発熱を抑えられる。
バッテリーではなく、スマホ本体にダイレクトに給電する「充電分離」機能を備えている
OSはAndroid 15をベースにした「Nebula AIOS」。中国のスマホメーカーは、Androidをカスタマイズして独自のOSを搭載するのが一般的。Googleの純正アプリとは別に、メーカー独自のアプリをプリインストールしていて、どちらを使えばいいのかを迷うこともある。しかし、「nubia Z70 Ultra」はメーカー独自アプリが少なく、一般的なAndroidスマホに近い仕様になっている。おそらく中国向けと海外向けとで、プリインストールするアプリを変えているのだろう。
「Nebula AIOS」はAIにも注力したOSで、「Snapdragon 8 Elite」もAIの処理性能を向上させたチップセットだ。しかし、メーカー独自のAI機能は少なく感じた。「設定」に「nubia AI」という項目があるが、開いて確認してみると、AIを用いた便利機能として役立ちそうなのは「AI翻訳」くらいだった。「対話翻訳」というアプリがプリインされていて、日本語、英語、中国語、フランス語、スペイン語などに対応。言語を設定して、「日本語」「中国語」などと書かれたボタンを長押しして話すと、瞬時に翻訳される仕組み。翻訳結果は画面に表示され、音声でも聞こえる。翻訳はスピーディーで実用的と思えた。しかし、プリインされている「レコーダー」アプリには文字起こし、翻訳、要約といった機能はなく、ハイエンドスマホとしては物足りない印象を受けた。
「設定」に「nubia AI」という項目があるが、機能は少ない
「対話翻訳」アプリは主要言語に対応。瞬時に翻訳され、使いやすい印象
AIによる画像編集を楽しむにはGoogleの「フォト」を使うのがベスト。チャット式でいろいろなことを調べたいのならGoogleの「Gemini」アプリをインストールすべきだ。要するに、一般的なAndroidスマホと同じなので、他メーカーから乗り換えたとしても、さほど迷うことなく使いこなせるだろう。
“ゴツい” という第一印象だった「nubia Z70 Ultra」だが、実際に使ってみると、大きさと重さには、それ相応の価値があることがわかった。フロントカメラが見えず、ベゼルが細いディスプレイは迫力があり、カメラも高性能。パフォーマンスは文句なしで、バッテリーも長持ち。ユーザーインターフェイスもシンプルでわかりやすい。IP68、IP69の防水・防塵性能も備えている。
ただし、注意しなければならないことがある。おサイフケータイに対応していないのだ。日本で発売されるZTE製スマホは、おサイフケータイに対応しているものが多く、「nubia Z70 Ultra」と同時に発表されたゲーミングスマートフォン「REDMAGIC 10 Pro」も対応した。「Google ウォレット」アプリはプリインされているが、Suica、PASMO、nanacoなどの電子マネーは使えないので要注意。しかし、そこが気にならないのであれば、122,800円〜という価格は格安のハイエンドスマートフォンだろう。