レビュー

得意・不得意は? 1円スマホ「nubia S 5G」を徹底調査!

ワイモバイルで販売中のエントリースマートフォン「nubia S 5G」(ヌビア製)をレビュー。MNP契約または新規契約なら1円で購入できる今や貴重な1円スマホだが、どのような特徴があるか徹底的に調べた。

ヌビア「nubia S 5G」。2025年1月16日発売、ワイモバイルのオンラインショップにおける価格は21,996円(税込)

ヌビア「nubia S 5G」。2025年1月16日発売、ワイモバイルのオンラインショップにおける価格は21,996円(税込)

クセがなくパーソナリティを選びにくいデザインは美点

スマートフォンは高騰したままで、しばらく値下がりは望めそうにない。しかも、政府の規制で通信事業者の端末割引に厳しいルールが設けられており、高性能なスマートフォンを格安で手に入れることは難しくなった。

しかし、性能を問わないのであれば、格安のスマートフォンはまだある。そのひとつが、今回取り上げる「nubia S 5G」。ワイモバイル専売で定価は21,996円(税込)で、新規契約かMNP契約とセットなら割引が適用されて1円で購入できる。

「nubia S 5G」のボディサイズは、約77(幅)×168(高さ)×8.7(厚さ)mmで、重量が約197g。ディスプレイは2400×1080のフルHD+表示に対応する約6.7インチの液晶だ。大きめに感じられるが、スマートフォンは年々大きくなっており、登場した2025年時点では一般的なサイズに収まる。ボディも段差や継ぎ目が少なく一体感があり現代的なデザインだ。

近ごろのヌビアのスマートフォンは「nubia Z70 Ultra」など個性派が目立つが、本機はオーソドックスなデザイン。カラーバリエーションは写真のブラックのほか、ホワイトとライトパープルが選べる

近ごろのヌビアのスマートフォンは「nubia Z70 Ultra」など個性派が目立つが、本機はオーソドックスなデザイン。カラーバリエーションは写真のブラックのほか、ホワイトとライトパープルが選べる

ディスプレイは、120Hzの倍速駆動に対応している。タッチサンプリングレートは非公開だが、ツールを使った計測値は240Hzだった。なお、HDR10+およびHLGにも対応しており、YouTubeのHDR再生も行える。ただし、通常モードであるSDRとの画質の違いがはっきりしなかった。また、著作権保護システムのWidevineは、セキュリティレベルがL3にとどめられているため、サブスク動画では高画質の再生に制約が発生するおそれがある。サウンド性能を見ると、ヘッドホン端子は非搭載、スピーカーはモノラル。これらの点を考慮すると、動画や音声などのコンテンツ再生としての適性はそこまで高くはないと判断できる。

著作権保護システムのWidevineは、セキュリティレベル(黄色でマークした部分)がL3となっている

著作権保護システムのWidevineは、セキュリティレベル(黄色でマークした部分)がL3となっている

なお、防水はIPX5およびIPX8等級、防塵はIP6Xに対応している。おサイフケータイにも対応しており、指紋認証センサーも備える。日常使うスマートフォンとしての機能は及第点と言えるだろう。

USB Type-Cポートは、22.5WのUSB PDの充電に対応。DPオルタネートモードの映像出力は確認できなかった

USB Type-Cポートは、22.5WのUSB PDの充電に対応。DPオルタネートモードの映像出力は確認できなかった

本機のハードウェア上の特徴は、ボディ右側面に、ファンクションボタン「スマートスタートボタン」を備えていることだ。「スマートスタートボタン」は、LEDライトの点灯、スクリーンショットの撮影、指定したアプリの起動が行える。初期設定では「PayPay」アプリが割り当てられていたが、カメラの起動などにも利用できる。なお、長押しや2度押しなどの使い分けはなく、割り当てられるアプリや機能は1つのみになる。

側面に並ぶボタン類。左から、指紋認証センサー付きの電源ボタン、ボリュームボタン、そして本機の特徴である「スマートスタートボタン」

側面に並ぶボタン類。左から、指紋認証センサー付きの電源ボタン、ボリュームボタン、そして本機の特徴である「スマートスタートボタン」

「スマートスタートボタン」は自分の好みの機能を割り当てられる

「スマートスタートボタン」は自分の好みの機能を割り当てられる

ホーム画面は、アイコンや文字を大きくする「シンプルホーム」も用意されている

ホーム画面は、アイコンや文字を大きくする「シンプルホーム」も用意されている

素直な画質のカメラだが手ぶれには注意

カメラの性能を見てみよう。メインカメラは約5000万画素の広角カメラと約200万画素のマクロカメラ、構図を計測する被写界深度センサーを組み合わせる。なお、デジタルズームは最大10倍だが、1.3倍、2倍、3倍をボタン1つで切り替えられる。超広角カメラは搭載されない。

以下に静止画の作例を掲載する。いずれも、初期設定のままシャッターボタンを押すだけの撮影を行っている。

曇天の日中。映えやインパクトを重視した色の誇張は抑えて、肉眼の印象に近い画質を志向しているようだ。解像感など特別にすぐれた点はないが、不満はない

曇天の日中。映えやインパクトを重視した色の誇張は抑えて、肉眼の印象に近い画質を志向しているようだ。解像感など特別にすぐれた点はないが、不満はない

陰影の大きな日中の構図。構図奥のハイライトから手前のシャドウ部分まで、HDRが適切に動作しており、階調の大きな破綻は見られない

陰影の大きな日中の構図。構図奥のハイライトから手前のシャドウ部分まで、HDRが適切に動作しており、階調の大きな破綻は見られない

明るめの夜景を撮影。ディテールは荒いが明るさは十分。なお、手ぶれが起こりやすく、この程度の明るさであっても両手でしっかり構えたうえに多めに撮影しておくのが現実的に思えた

明るめの夜景を撮影。ディテールは荒いが明るさは十分。なお、手ぶれが起こりやすく、この程度の明るさであっても両手でしっかり構えたうえに多めに撮影しておくのが現実的に思えた

搭載されるエフェクトのひとつ「単色撮影」。モノクロ撮影をベースにタッチした部分の色だけがカラーになる

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マクロカメラを使用。最短2cmまで被写体に寄れるが、200万画素という少なめの画素数やレンズの性能もあり、マクロ撮影らしい解像感はあまり期待できない

マクロカメラを使用。最短2cmまで被写体に寄れるが、200万画素という少なめの画素数やレンズの性能もあり、マクロ撮影らしい解像感はあまり期待できない

安価なスマートフォンではカメラに妥協を求められることが一般的だ。本機の場合、広角カメラの画質は価格帯としては素直で悪くない。いっぽう超広角撮影ができないことや、夜景撮影の場合は手ぶれに注意が必要など、価格相応の部分もあるため撮影者の腕で補う必要がありそうだ。

メモリーは少なめだが日常用途なら性能は十分

基本性能に大きな影響を与えるSoCには中国のファブレスメーカーUNISOCの「UNISOC T760」を採用する。メモリーは4GBでストレージは128GB、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを備える。OSはAndroid 14だ。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコアは437342だった。ワイモバイルで発売中のエントリースマートフォンであるシャープ「AQUOS wish4」のスコア373452と比べると2割ほど高い(スコアはいずれも価格.comマガジン調べのもの)。

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「GeekBench 6」のスコア。シングルコアが756、マルチコアが2301。こちらも2万円前後のエントリー機としてはまずまず

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グラフィック性能を計測する「3DMark」(Wild Life Extreme)の結果。エントリーモデルなので仕方ないが、438というスコアは、グラフィックを重視した新しいゲームを動作させるにはそれなりの制約がある

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体感速度に、多少の引っかかりはあるが、オッポ「OPPO A3 5G」や、シャープ「AQUOS wish4」あたりの競合しそうな製品と比べれば本機のほうが有利だろう。ただ、本機に限らずこのクラスの製品はメモリーの容量に余裕がないため、アプリをたくさん起動して切り替えるような使い方は向いていない。また、128GBのストレージも、大容量化するアプリ、主にゲームアプリではきゅうくつに感じるかもしれない。幸い本機はmicroSDXCメモリーカードを使って、撮影した写真や動画、電子書籍データなどを保存できる。

最良ではないが満足できるバッテリー持ち

電源周辺を見てみよう。バッテリーの容量は5000mAhで、カタログスペックを見ると連続通話時間(FDD-LTE)が2700分、連続待ち受け時間(FDD-LTE)が約475時間。バッテリー持ちのよさが魅力のシャープ「AQUOS wish4」では連続通話時間(FDD-LTE)が3200分、連続待ち受け時間(FDD-LTE)が約770時間となっており、本機のほうが見劣りする。ただし、本機の数値も決して悪いほうではない。

実際の検証でも1日に2時間程度使用したところ、24時間で20〜30%くらいのバッテリー消費で、単純計算するとフル充電で3〜5日程度はバッテリーが持続することになる。筆者の利用ペースなら3泊程度の旅行なら充電器は不要だろう。充電性能は、22.5WのUSB PDに対応しており、約83分でフル充電が行える。なお、充電器は別売りになる。

【まとめ】日常の使い勝手を重視したスマートフォン

おサイフケータイに対応し、条件が合えば1円で購入できるワイモバイルの製品は、本機のほかに、モトローラ「Moto g64y 5G」、オッポ「OPPO A3 5G」、そして2月下旬に発売予定のサムスン「Galaxy A25 5G」がある。これらの製品が競合製品になるだろう。(1円スマホの対象は2025年02月18日現在のもの)

本機の注力点はまずはディスプレイだ。フルHD+の解像度が確保された大画面で、表示の緻密さはHDクラスとはひと味違う。リフレッシュレートも120Hzあり、対応するアプリなどではスクロールが滑らかだ。おサイフケータイや防塵・防水、アプリの起動を割り当てられる「スマートスタートボタン」、シンプルモードを用意するなど、日常の操作を快適に使うための配慮は豊富だ。いっぽうサウンド機能はあまり充実しておらず、WidevineのセキュリティレベルがL3と低いためサブスク動画の画質にも制限がある。加えて、ディスプレイはHDR対応ではあるが、実際の画質は標準画質(SDR)とあまり変わらない。動画視聴用途としてはもう少し適したものがある。

競合するシャープ「AQUOS wish4」はバッテリーの持続性が魅力、モトローラ「Moto g64y 5G」は、Dolby Atmosに対応したステレオスピーカーやWidevineのL1に対応している点で動画の視聴に向いている。発表直後のサムスン「Galaxy A25 5G」はまだ情報が限られているが、「AQUOS wish4」に準じたバッテリー持ちを実現しているようだ。

本機のような安価なスマートフォンは、制約が大きいため、競合製品と比較を行う場合、何に注力しているかをしっかり把握して選ぶのが失敗しないコツだろう。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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