2024年9月に「iPhone 16」シリーズが発売開始。次いで2025年2月には、廉価モデルの「iPhone 16e」が発売されています。現行モデルは「iPhone 16」ファミリーとなりますが、Apple Storeでは、2023年に発売された「iPhone 15」も引き続き購入できます。
「iPhone 16e」と「iPhone 15」は、それぞれどのようなユーザーが選択するべき端末なのか。それぞれの特徴や違いについてチェックしていきます。
・「Apple Intelligence」が使いたい人
・「アクションボタン」が欲しい人
・より長いバッテリー持続時間が欲しい人
・超広角カメラが欲しい人
・MagSafeを使いたい人
・「Dynamic Island」が欲しい人
「iPhone 16e」の大きな特徴は、廉価モデルというポジションながら、2025年4月1日より日本語に対応した「Apple Intelligence」の機能が、フルで利用できる点です。
「Apple Intelligence」では、テキストの要約や書き換えができる作文ツールや、より自然な日本語でのコミュニケーションができるようになったSiriなどが利用できます。作文ツール、Siriは、難しい処理をする際に、ChatGPTに接続できるのも大きな特徴でしょう。メールを書く、検索をするといった、スマートフォンでこれまで行ってきた作業が、AI機能によって、より便利になると感じます。
作文ツールやSiriはChatGPTに接続できる
オリジナル画像の生成ができる「Image Playground」や、周囲のものをカメラで映し、そのまま検索や翻訳ができる「ビジュアルインテリジェンス」も、使っていて楽しい機能です。
カメラを使って周囲のものを検索できる「ビジュアルインテリジェンス」
使っていて特に便利だと感じるのが、通知の要約機能。機能をオンにすると、ロック画面、通知センターに届く各アプリの通知の内容が、2行ほどにまとめられます。同じアプリから複数の通知がある場合には、ひとつにまとめてくれるのも、見やすくて気に入っているポイントです。
また、メールの要約は通知だけでなく、メールを開いた画面でも利用できます。複数スレッドにおよぶメールでも、まとめて要約してくれるため、どのようなやり取りをしているのかが、すぐに理解できます。
通知の要約が適用されるアプリにはまだ制限がありますが、アップデートでより多くのアプリが対応することにも期待ができます。
「iPhone 15」は、搭載しているチップセットやメモリーの関係からか、「Apple Intelligence」が利用できません。「Apple Intelligence」に対応していないことで、これまでのiPhoneシリーズと使い方が変わるというわけではないので、不便に感じることは、基本的にないはずです。
「Apple Intelligence」がソフトウェア的な違いだとすれば、ハードウェア的な大きな違いに「アクションボタン」があります。
「アクションボタン」は、「iPhone 15 Pro」、「iPhone 15 Pro Max」より搭載されたボタンです。音量ボタンの上に位置し、デフォルト設定では、長押しで、消音モードのオンオフ切り替えができます。
「iPhone 16e」は音量ボタンの上部にアクションボタンを搭載
「アクションボタン」の魅力は、消音モードの切り替えだけでなく、カメラアプリやフラッシュライトの起動といった、任意のショートカットを設定できる点です。普段はマナーモードにしていることが多い人などは、設定を切り替えることで、より便利にiPhoneを使えます。
筆者の場合は、QR決済アプリのショートカットを設定することで、レジの前でアプリを探す手間を省いています。ショートカットアプリを使い、より複雑な設定をワンボタンでできるようにも設定できるので、「アクションボタンをどれだけ使いこなすか」と追及するのもありでしょう。
「iPhone 15」は、「アクションボタン」がなく従来モデルから搭載されている「着信/サイレントスイッチ」が搭載されています。多くの人がご存じかと思いますが、スイッチを手前に引くと消音モードオフ、奥に倒すと消音モードオンに切り替わります。
「iPhone 15」は「着信/サイレントスイッチ」を搭載
単機能ではありますが、物理的に前後するスイッチであるため、目線を向けなくても、消音モードのオンオフが切り替えられるのはメリットです。ポケットの中に入れたままでも、とっさにマナーモードにするなど、意外と使用シーンは多く、わかりやすいのも利点でしょう。
ハードウェア面での大きな違いに、アウトカメラがあります。「iPhone 16e」はシングルレンズ、「iPhone 15」は2眼レンズとなっているので、それぞれチェックしていきましょう。
「iPhone 16e」のアウトカメラは、4800万画素Fusionカメラとなります。超広角カメラ、望遠カメラは搭載されていませんが、光学相当の2倍ズーム、最大10倍のデジタルズームが利用できます。
メインカメラは4800万画素Fusionカメラ
等倍撮影は、さすがiPhoneという仕上がり。上位モデルとはセンサーサイズなどに違いがあるはずですが、うまくチューニングされており、簡単にきれいな写真が撮影できるのが魅力です。
4800万画素Fusionカメラ
夜景モード
ポートレートモード
動画撮影においても、シングルカメラながら4K60FPSに対応するなど、性能面での不満はあまり感じません。Proモデルと比べると、ボケ感の表現などに違いは見られますが、10万円未満のスマートフォンと考えれば、満足のいく仕上がりだと感じます。風切り音の低減や、オーディオミックスといった、AI機能を含む編集機能が利用できるのも、「iPhone 16e」の強みです。
「iPhone 15」のアウトカメラは、4800万画素カメラ、F1.6と、1200万画素超広角カメラ、F2.4の2眼構成となります。超広角カメラを搭載することで、撮影パターンが増えるのが強みです。
「iPhone 15」は2眼カメラを搭載
メインカメラは、「iPhone 16」ファミリーに搭載されている4800万画素Fusionカメラとは違うものになりますが、使用感、仕上がりに極端な違いはありません。基本的には、iPhoneらしい、パキっとした色味の写真が撮影できます。もちろん、夜景モードといった機能面も充実しています。
4800万画素カメラ
ナイトモード
ポートレートモード
超広角カメラでは120度と広い画角での撮影ができるため、集合写真や、風景写真を撮影する際に重宝します。使用頻度が人によって大きく異なる機能ですが、シーンごとに適した撮影モードが選べる安心感は魅力です。
超広角カメラでの撮影
動画撮影の画質はこちらも4K60FPSに対応するなど、高水準を維持。個人的には、センサーシフト光学式手ブレ補正、アクションモードが利用できるのが大きなポイントだと感じます。ハードウェア、ソフトウェアの両面で手ブレが補正されるので、動きの多い状況での動画撮影に強みを発揮します。
「iPhone 16e」と「iPhone 15」には、バッテリー、充電関連の機能にも違いが見られます。ちなみに、両方とも充電ポートはUSB Type-Cです。
「iPhone 16e」は、ビデオ再生最大26時間、ビデオ再生(ストリーミング)最大21時間、オーディオ再生最大90時間に対応しています。廉価モデルながら、6.1インチディスプレイを搭載したiPhoneシリーズの中では、最長のバッテリー持続時間を誇ります。
近年のスマートフォンには、長いバッテリー持続時間と、高速な充電速度の両方が求められていますが、「iPhone 16e」はわかりやすく、持続時間を長くしたモデルと言えます。とはいえ、30分で最大50%充電ができるなど、それなりに高速の充電が可能なので、使用感は上々です。
実際に使っていても、バッテリー持続時間が長く、日中外出する程度であれば、モバイルバッテリーを使わない日がほとんど。電池切れを気にしなくていいという安心感は、かなりストレスを減らせます。
MagSafeの充電には対応していませんが、Qi規格のワイヤレス充電には対応しています。充電速度はあまり出ませんが、あると便利なシーンも多いです。
「iPhone 15」は、ビデオ再生最大20時間、ビデオ再生(ストリーミング)最大16時間、オーディオ再生最大80時間に対応。動画視聴などを長時間楽しんでいると、バッテリーの消耗が激しく感じることもありますが、極端にバッテリー性能が悪いというわけではありません。筆者のようにヘビーに使う人は、モバイルバッテリーが必要かもしれませんが、基本的には1日の使用に耐えられるバッテリー持続時間です。
重要なのは、最大15Wのワイヤレス充電ができるMagSafeに対応している点。ワイヤレスでも充電速度がある程度出るのはもちろんですが、磁石でiPhoneの背面に取り付けられる、さまざまな周辺機器が使用できるのが、大きなメリットだと感じます。モバイルバッテリーなども、MagSafeのおかげで、ケーブルレスに使用できる製品が多いので、「iPhone 15」はかなり使いやすさを感じます。
「iPhone 15」はMagSafe充電に対応
「iPhone 16e」と「iPhone 15」では、それぞれ異なるチップセットを搭載しています。いずれもアップルが開発しているものですが、世代が異なるため、スペック的にも違いが生まれます。
「iPhone 16e」には、「iPhone 16」「iPhone 16 Plus」と同じ型番の「A18 Bionic」が搭載されています。厳密には、GPUコア数が1つ少なくなっていますが、最新チップということもあり、動作は高速かつ安定。「Apple Intelligence」の機能が利用できるのも、最新チップセットの影響が大きいでしょう。
廉価モデルながら、最新チップセットを搭載したことで、ゲームアプリなどもかなり快適にプレイできます。長時間使っていると、どうしても発熱を感じる部分はありますが、多くの人が満足できる性能でしょう。
「iPhone 15」に搭載されているチップセットは「A16 Bionic」。発売時期が少し前になるため、今となっては型落ちのチップセットではありますが、現役で活躍できるパワフルな性能を持ちます。
極端に負荷の大きいゲームアプリなどをしない限りは、正直性能不足を感じるシーンはほぼありません。先に触れたとおり、「Apple Intelligence」が利用できないのは残念ですが、一般的なスマートフォンの使い方であれば、チップセットの違いは、そこまで気にする必要はないでしょう。
ここからは、「iPhone 16e」と「iPhone 15」の共通点についても紹介していきます。
「iPhone 16e」と「iPhone 15」は、いずれも6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイを搭載しています。解像度にも極端な違いはありません。若干、「iPhone 15」のほうが明るく表示できるので、気にするとすれば、ここがポイントとなるでしょう。
ディスプレイはどちらも6.1インチ
本体サイズもほぼ変わらない
ただし、「iPhone 15」にはアウトカメラが2つ搭載されていることもあり、机に平置きすると、がたがたとして安定感がありません。「iPhone 16e」はシングルカメラで、でっぱりも少ないので、安定して使えるのが魅力です。
カメラの出っ張りは「iPhone 15」のほうが大きい
生体認証は、どちらもフロントカメラを使ったFace IDとなります。「iPhone SE」シリーズに搭載されていた、ホームボタンでのTouch IDには非対応となり、現行iPhoneシリーズは、すべて顔認証に統一された形となります。
フロントカメラ部分は、「iPhone 16e」がノッチデザイン、「iPhone 15」が「Dynamic Island」を採用。「Dynamic Island」では、バックグラウンドで実行中のアプリの、進捗状況を確認できるなど、細かいながら便利な機能になっています。
フロントカメラは「iPhone 16e」がノッチ、「iPhone 15」がDynamic Island
ストレージ容量は、どちらも128GB、256GB、512GBの3モデル構成となります。ヘビーユーザー、ライトユーザーのどちらにも対応できる構成とも言えるでしょう。
また、SIMカードとeSIM、もしくはeSIMとeSIMのデュアルSIM構成で利用できるのもポイント。近年は、KDDIの衛星通信サービスなど、「サブ回線」としての回線契約も推奨されているだけに、eSIMが2つ登録できるのは、非常に便利です。
「iPhone 16e」は、最新シリーズの廉価モデルというポジションになるため、「Apple Intelligence」や「アクションボタン」を搭載し、アップルがiPhoneにて提供する最新の体験ができるのが魅力。超広角カメラやMagSafeなど、必須ではない&舶ェを削ることで、iPhoneシリーズとしては低価格を実現しています。
いっぽう「iPhone 15」は、型落ちではありますが、スタンダードモデルとして、超広角カメラやMagSafe充電など、幅広い機能に対応しているのが特徴となります。
公式ストアでの販売価格の差は13,000円と、近しい値段になっていますが、搭載機能には明確な違いがあるので、自分に必要な部分をしっかりと確認するのが吉でしょう。