グーグルは2015年9月3日、定額制の音楽配信サービス「Google Play Music」を日本国内で開始した。月額980円で3500万曲以上を楽しめる。登録から30日間無料で使える“お試し期間”を設けるほか、10月18日までに登録すれば、通常より安い月額780円で使い続けられる。対応機器はグーグルの「Android」、アップルの「iOS」を搭載したスマートフォンやタブレット。パソコンからもブラウザー上で利用できる。
AndroidスマートフォンやiPhoneなどで利用できるGoogle Play Music。モバイル向けに設計されたサービスだが、パソコンでもブラウザー上で使える
Google Play Musicの利用料金は月額980円。10月18日までに登録すれば、月額780円で使い続けられる特典も用意する
毎月一定の料金を支払うことで音楽が聴き放題となる定額制の音楽配信サービスは、今年5月に「AWA」、6月に「LINE MUSIC」、9月に「Apple Music」と立て続けにスタート。そこに検索最大手のグーグルも参入し、今年は定額制の音楽配信サービスの「元年」と言える状況となっている。各サービスの主力プランの月額料金は、いずれも1,000円前後と横並びだが、Google Play Musicは期間限定で安く利用できるプランを用意。先行してサービスを開始していた各社のお試し期間が終わるタイミングと重なっており、ユーザーを獲得するのに悪くないタイミングでのサービス開始となった。
左からサイバーエージェントとエイベックス・デジタルが手がけるAWA、アップルのApple Music、LINEやソニー・ミュージックエンタテインメントなどが運営するLINE MUSIC
Google Play Musicは、(1)月額980円で3500万曲以上を聴き放題の定額制の音楽配信サービス、(2)曲やアルバ単位で音楽を150円から購入できるストア、(3)CDから取り込んだ音楽など5万曲までクラウドに保存できる無料のロッカー型サービスの3つのサービスから構成される。(1)と(2)はアップルのApple Musicおよび「iTunes」と同様のサービスで、ロッカー型サービスは「iTunes Music Match」に近い。
Google Play Musicは、使えば使うほど利用者の好みを学習してアルゴリズムによってユーザーに合った音楽をレコメンドする機能を搭載する。好みのアーティストやよく聴く曲を起点としたプレイリストも自動で生成する。ユーザー自身がプレイリストを作成し、SNSなどを通じて友達や家族と共有することも可能だ。Google Play Musicのコンシェルジュ(音楽のエキスパート)が厳選したプレイリストも用意し、アルゴリズムではおすすめできない曲との出会いもサポートする。
ストリーミングの品質は最大320kbps。ネットワークの速度に応じて自動的に調整する仕組みだが、設定で低・標準・高の3つの品質から選択することも可能だ。オフラインでの再生もサポートしており、「ダウンロード済みのみ」を選択すると、オフラインで再生できる曲だけが表示される。マルチデバイス対応の強みを活かし、別のデバイスで続きを再生するといった使い方もできる。
検索大手のグーグルだけに検索機能も強力だ。英語やカタカナのアーティスト名をひらがなで入力しても正しいアーティストを一発で検索できる。Google検索でおなじみの「I'm Feeling Lucky」の音楽版もある。
楽曲を提供するのは、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ、キングレコード、JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント、スペースシャワーネットワーク、ソニー・ミュージックエンタテインメント、徳間ジャパンコミュニケーションズ、日本クラウン、日本コロムビア、バップ、ポニーキャニオン、ユニバーサル ミュージック合同会社、ワーナーミュージック・ジャパンなど200社以上。
Google Play Musicの定額制の音楽配信サービスやストアで楽曲を配信するレーベルおよびアグリゲーター
ロッカーは、CDから取り込んだ曲やiTunesから購入した音楽ファイルを最大5万曲までクラウドに保存できるサービスだ。アップロードした曲はストリーミングで再生できるので、デバイスに音楽データを保存する必要がないのがメリットだ。特に内蔵ストレージの少ないスマートフォンではありがたい。
対応端末はAndroid 2.2以上、iOS 7.0以上を搭載したスマートフォンおよびタブレット、パソコン(ブラウザーを利用)。データのアップロードはパソコンからしか行えない。対応のファイル形式はMP3/AAC/WMA/FLAC/OGG、DRM保護されたAAC/ALAC。ファイルの最大サイズは300MB。
先行する他社のサービスと比較すると、定額制の音楽配信サービスで楽しめる楽曲数が多いのが特徴だ。Apple Musicの3000万曲以上(米国)を上回っている。また、ロッカーサービスにアップロードした曲を含めたプレイリストの作成もできるので、膨大なライブラリーを持つ音楽好きにとっても使い勝手はよさそうだ。iPhone上で試したところ、アプリケーションの動作は滑らかだった。ユーザーインターフェイスは、同社のほかのアプリと近い設計で、親しみやすい。聴きたい曲がない場合に便利そうなのが「ステーションのブラウズ」だ。好きなジャンルの曲をラジオ形式で楽しめるほか、作業用BGMや通勤・通学などさまざまなシチュエーションに合った曲もラジオ形式で楽しめる。
ロッカーに楽曲をアップロードできるのはパソコンだけで、「Chrome」で試したが、最初にChrome版の「Google Play Music」をインストールするように促された。インストールすると、ドラッグアンドドロップでアップロードできた。アップロードした曲は「マイラブラリ」から再生できる。
オフラインでも再生できて、他社が苦戦しているマルチデバイスもサポートするなど、機能の充実ぶりが目立つGoogle Play Music。定額制の音楽配信サービスの肝であるプレイリストも多彩だ。後発ではあるが、試してみる価値はありそうだ。
使い始める前に「おすすめをカスタマイズ」を選択し、好みのジャンルとアーティストを選択すると、レコメンドの精度が高まる
再生画面の右上のボタンをタップすると、画面の下からメニューが表示される(左)。ここからマイライブラリやプレイリストへの追加ができる。ステーションのブラウズではジャンル別にラジオ型の再生が可能(中央)。アクティビティは作業用BGMや通勤・通学、運動といったさまざまなシーンに適した音楽を楽しめる。ストリーミング品質は低・標準・高の3段階から選択可能
ブラウザーでもスマートフォンと同じように利用できる。マイライブラリや作成したプレイリストは同期される
Google Play Musicは米国など59か国でサービスを展開しており、日本は60か国目となる。グーグルの音楽パートナーシップ担当ディレクターのサミ・ヴァルコネン氏は、「日本の音楽市場は、ダウンロード(デジタル)販売の割合が17%で、ほかの国と比べると低い。将来は間違いなくデジタルであり、業界をサポートし、スムーズな成長をお手伝いたい」と語った。
グーグルの音楽パートナーシップ担当ディレクター サミ・ヴァルコネン氏。Google Play Musicのグローバルにおける登録者数は2014年に倍増しており、「日本でも多くのユーザーに利用してもらいたい」と意気込みを語った