ASUS「ZenPad S 8.0 Z580CA」
タブレット市場が今曲がり角に来ている。図1は、「価格.comトレンドサーチ」で見た、価格.comの「ノートパソコン」「デスクトップパソコン」「タブレットPC(端末)・PDA」という3カテゴリーのアクセス推移(過去2年間)を示したものだが、これを見るとわかるように、この2年間でどのカテゴリーもアクセスが減少している。この中では、タブレットの人気がノートパソコンを抜いて高い状態が続いてきたが、その勢いも2015年に入ったくらいからかなり弱まってきており、直近では再びノートパソコンと同等レベルにまで落ち込んでいることがわかる。
図1:「ノートパソコン」「デスクトップパソコン」「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリーのアクセス推移(過去2年間)
このように、一時期ほどの人気を失っているタブレット端末であるが、その中身を見ると、人気メーカーや人気モデルの顔ぶれが2年前とはまったく異なっていることに気付くだろう。図2は、同カテゴリー内での人気上位5メーカーのアクセス数推移を示したものだが、これを見ると、1位はダントツでASUS。かなり引き離された2位にアップル、その下にLenovo、ソニー、マイクロソフトが続くという顔ぶれになっている。かつては、ダントツで「iPad」のアップル、これに続いて「Nexus」シリーズのGoogleやソニーが並ぶという展開だったが、もはやその様相は完全に崩れ、どちらかといえば後発メーカーであるASUSやLenovoが上位の常連となっている。なお、ASUSやLenovoは、Android機とWindows機のいずれも生産・販売しており、単OSのアップルやソニー、マイクロソフトなどと比べると、ラインアップ上は有利であることは押さえておきたい。
図2:「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリー人気上位5メーカーのアクセス数推移(過去3か月)
人気モデルの様子を見ると、その様子がより一層明らかとなる。図3は、同カテゴリーの人気5製品(2015年10月14日現在)のアクセス推移を示したものだが、1位はASUSの7.9インチAndroidタブレット「ZenPad S 8.0(32GB)」で、2位がGoogleの7インチAndroidタブレット「Nexus 7(16GB)」、3位が僅差でASUSの7インチAndroidタブレット「MeMO Pad 7(16GB)」、4位がソニーの10.1インチAndroidタブレット「Xperia Z4 Tablet(32GB)」で、5位がマウスコンピューターの8.9インチWindowsタブレット「WN891(32GB)」となっている。これを見るとわかる通り、上位はほぼ7〜8インチのAndroidタブレットで固められており、10インチクラスは少数。その下にはWindowsタブレットが続くという状況だ。しかも、ベスト5の中にアップルの「iPad」シリーズは1モデルも入っていない。
アップルといえば、2015年9月10日に新モデル「iPad mini 4」が発売されたばかりだが、本製品はもっとも人気のある64GBモデルがようやく8位に顔を出す程度だ。その1つ上の7位には、上位モデルの「iPad Air 2」がランキングされているが、いずれも、上位のAndroidタブレットと比べると、アクセス数ではかなり水を開けられている(図4)。
図3:「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリー人気上位5製品のアクセス数推移(過去3か月)
図4:「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリーの上位人気モデルとアップル製品とのアクセス数推移(過去3か月)
かつてはカテゴリーの牽引役であり、発売と同時に人気が沸騰していたアップルの「iPad」であるが、なぜここまでライバル製品との間に人気の差が出てしまっているのか。その理由はいくつかあるが、ひとつ大きい要素としては、販売価格の高さがある。図5は、7〜8インチクラスのタブレットの人気モデルと、8.9インチの「iPad mini 4(64GBモデル)」との最安価格を比較したものだが、この中では、「iPad mini 4」が飛び抜けて高く、56,272円(2015年10月14日時点)という最安価格となっている。
次に高いのは、「iPad mini 4」とほぼ同時期に発売された人気モデル、ASUS「ZenPad S 8.0」だが、こちらはメモリー容量は32GBとややスペックは低いものの、最安価格は38,475円(2015年10月14日時点)と、「iPad mini 4(64GBモデル)」とは2万円近い開きがある。その他のモデルはいずれも昨年より前に発売されたモデルではあるものの、最安価格は軒並み2万円前後と、さらに半額程度となっている。「iPad mini 4」はもっとも安い16GBモデルでも最安価格で44,361円(2015年10月14日時点)であり、やはりかなり高額に感じられる。この価格差が、「iPad mini 4」にとっては逆風を呼び込んでいる原因のひとつと言えそうだ。
図5:「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリーの上位人気モデルとアップル「iPad mini 4(64GBモデル)」との最安価格推移(過去3か月)
実際のところ、「iPad mini 4(64GBモデル)」を購入する人は、どんな製品と比較しているのかを示すのが図6のライバルランキング(2015年10月13日時点)だ。これを見ると、ライバル1位はやはり同等スペックの人気モデルASUS「ZenPad S 8.0」だ。こちらには41%の確率で負け越している。2位は「iPad Air 2」、3位は「iPad mini 4(16GBモデル)」、4位は「iPad mini 4(128GBモデル)」と、同じ「iPad」製品が並んでおり、勝敗はほぼ同率。5位には10.1インチのAndroidタブレット、ソニー「Xperia Z4 Tablet」が来ているが、こちらには33%と大きく負け越している。
図6:「iPad mini 4(64GBモデル)」のライバルランキング
この結果から、「iPad mini 4」の購入検討者は、同じアップルの「iPad」シリーズ以外に、Androidタブレットとも比較検討しており、その結果Androidタブレットを選ぶ人が意外に多いということが見えてくる。かつては、「iPad一択」という状態がスタンダードだったほどのブランド力を持った「iPad」だが、そのブランド力も、安いAndroidタブレットとの価格差の前では、以前ほど通用しなくなってきているようだ。