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3月31日発売開始。アップル「iPad Pro 9.7インチ」はiPad人気凋落の救世主となるか?

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アップル「iPad Pro 9.7インチ」

アップル「iPad Pro 9.7インチ」

2016年3月31日、アップルの新型スマートフォン「iPhone SE」の発売と同日に、タブレット端末「iPad Pro 9.7インチ」も発売となった。その発売から1週間が経ったわけだが、はたして「iPad Pro 9.7インチ」の売れ行き・注目度はどのようになっているのだろうか。「価格.comトレンドサーチ」のデータから紐解いてみよう。

スタートダッシュはそこそこ好調。アップルは久々にメーカーPVシェアで首位返り咲き

2016年3月22日(日本時間)に発表され、その翌週3月31日より発売が開始されたアップル「iPad Pro 9.7インチ」。昨年2015年11月に発売された「iPad Pro」の画面サイズを12.9インチから9.7インチへと小さくした、言わばコンパクトタイプの「iPad Pro」であるが、その発売から1週間経った今、消費者からは本製品がどのように受け止められているのだろうか。

図1:「タブレットPC」カテゴリーのアクセス数推移(過去2年間)

図1:「タブレットPC」カテゴリーのアクセス数推移(過去2年間)

まずはタブレット端末全体を取り巻く状況から見てみよう。図1は、過去2年間における「タブレットPC」カテゴリーのアクセス数推移を示したものだ。これを見るとわかるように、「タブレットPC」カテゴリーのアクセス数はここ2年で若干下がりつつある。ここ1年はほぼ横ばいで推移しているものの、2年前、1年前と比べると、その勢いは徐々に下がってきており、人気は頭打ちの状態が続いている。

図2:「タブレットPC」カテゴリーにおける主要5メーカー別のアクセス数推移(過去2年間)

図2:「タブレットPC」カテゴリーにおける主要5メーカー別のアクセス数推移(過去2年間)

図3:「タブレットPC」カテゴリーにおける主要5メーカー別のアクセス数推移(過去3か月)

図3:「タブレットPC」カテゴリーにおける主要5メーカー別のアクセス数推移(過去3か月)

図2は、過去2年間における「タブレットPC」カテゴリーにおける主要5メーカー別のアクセス数推移を示したもの。これを見ると、ここ2年間ほぼ首位をキープし続けてきたのは、「iPad」でこのカテゴリーを牽引してきたアップルではなく、AndroidやWindowsを搭載する各種タブレット端末をラインアップするASUSであったことがわかる。アップルは現状ではほぼ単独2位というポジションで推移しており、なかなか首位のASUSをとらえることができずにいた。しかし、今回の「iPad Pro 9.7インチ」が発表されたタイミングで、久々に首位ASUSを抜き去り、首位の座に返り咲いている。

図3の過去3か月のグラフで見るとより明らかだが、「iPad Pro 9.7インチ」製品発表のあった3月22日に大きくアクセスが上がり、製品発売日の3月31日を過ぎてもアクセスは落ちることなく安定的に推移している。逆にこれまで首位を走ってきたASUSは、2016年の1月くらいを境にアクセスが下落してきており、それがちょうど3月22日の段階で入れ替わったような形だ。

図4:「タブレットPC」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス数推移(過去3か月)

図4:「タブレットPC」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス数推移(過去3か月)

図5:「タブレットPC」カテゴリーにおける人気5製品の売れ筋ランキング推移(過去3か月)

図5:「タブレットPC」カテゴリーにおける人気5製品の売れ筋ランキング推移(過去3か月)

次は製品別に見てみよう。図4は、過去3か月における「タブレットPC」カテゴリー気5製品のアクセス数推移を示したものだ。これを見ると、これまでこのカテゴリーで人気を牽引してきた、格安Androidタブレット・BLUEDOT「BNT-71W」や、Windows10タブレット・ASUS「TransBook T100HA」などの人気が下落してきているいっぽうで、3月22日以降、アップルの「iPad Air 2 (64GB)」と、「iPad Pro 9.7インチ(32GB)」の人気が急激に高まっていることがわかる。これに、ASUSの「ZenPad 7.0」を交えた5製品が混戦状態のような接戦となっているのが今の現状だ。なお、2016年4月6日時点での売れ筋ランキングでは、「iPad Air 2 (64GB)」が2位、「iPad Pro 9.7インチ(32GB)」が5位の順位にそれぞれつけている(図5)。

図6:「スマートフォン」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス数推移(過去1か月)

図6:「スマートフォン」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス数推移(過去1か月)

なお、同日に発売されたスマートフォン「iPhone SE」のその後の様子はどうだったのか。図4は、過去1か月における「スマートフォン」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス数推移を示したものだが、これを見ると、現状人気1位の「iPhone SE 16GB SIMフリー」は、3月31日の発売日前後は盛り上がったが、その後は一転して下落。2位以下の製品と大差ないアクセス数にまで下がってしまっている。2番人気の「iPhone SE 64GB SIMフリー」は比較的安定しているが、盛り上がり度合いは少なく、上位5製品の僅差の中でかろうじて2位をキープしているという状況だ。このように、「iPhone SE」の人気が発売日を境に下がってきているのに対して、「iPad Pro 9.7インチ」のほうは比較的安定した人気を維持していると言っていいだろう。

歴代「iPad」に比べると注目度は低め。比較の結果「iPad Air 2」の購入を決める人も

図7:歴代「iPad」人気モデルのアクセス数推移(過去2年間)

図7:歴代「iPad」人気モデルのアクセス数推移(過去2年間)

このように、比較的安定したスタートを切ったように見える「iPad Pro 9.7インチ」であるが、従来の「iPad」シリーズと比べた場合に、どれくらいの人気となっているのだろうか。図7は、歴代「iPad」人気モデルのアクセス数推移を過去2年間で示したものだが、ここ2年の間に発売されたモデルの中では、2014年9月に発売された「iPad Air 2」の盛り上がりが最大。次いで、2015年11月の「iPad Pro」(12.9インチ)の盛り上がりが大きい。今回の「iPad Pro 9.7インチ」の盛り上がりはそれらに比べるとやや弱く、歴代「iPad」の中でも、注目度が取り分けて高いというわけではなさそうだ。

図8:歴代「iPad」人気モデルのアクセス数推移(過去1か月)

図8:歴代「iPad」人気モデルのアクセス数推移(過去1か月)

面白いのは、「iPad Pro 9.7インチ」の発売にともなって、むしろ1年半前に発売された「iPad Air 2」の人気が再燃していることだ。図8は、上記の歴代「iPad」人気モデルのここ1か月のアクセス数推移を示したものだが、「iPad Pro 9.7インチ」が発表された3月22日を境に、「iPad」シリーズ全般のアクセスが上がっており、なかでも、「iPad Air 2(64GB)」の人気がかなり再燃していることだ。図4、図5でも見たように、現状、売れ筋ランキングの2位まで売れ行きが上昇しており、その人気は新モデルの「iPad Pro 9.7インチ」を上回っているほどだ。

図9:歴代「iPad」人気モデルの最安価格推移(過去1か月)

図9:歴代「iPad」人気モデルの最安価格推移(過去1か月)

このような現象が起こった背景には、いくつかの理由があると思われるが、そのうちのひとつが「iPad」シリーズの販売価格だ。図9は、上記の歴代「iPad」人気モデルの最安価格推移を示したものだが、見ておわかりのように、現在の「iPad」シリーズは、価格統制がしっかりしており、ほとんど値下がりしない。今回発売された「iPad Pro 9.7インチ(32GB)」の最安価格は72,133円であるが、それに比べて「iPad Air 2(64GB)」の最安価格は58,500円(いずれも、2016年4月5日時点)。その差は13,633円である。この差をどうとらえるかは、ユーザーの間でもかなり分かれているところだ。

と言うのも、画面サイズの小さくなった「iPad Pro 9.7インチ」と「iPad Air 2」では、外見も含め似ている点が多い。サイズ169.5×6.1×240mm、重量437gと、まったく同じ。画面サイズも解像度も同じである。違っているのは、「iPad Pro 9.7インチ」のほうがプロセッサが「A8X」から「A9X」へと代替わりしていることと、カメラ性能がアップしていることくらい。そのほかの点では、「iPad Pro 9.7インチ」のオプションとして用意されたデジタイザペン「Apple Pencil」の存在があるが、こちらを使わない限り、1年半前に発売された「iPad Air 2」とさほど変わらないのではないか、という意見が、クチコミ上でも見受けられる。しかも、この2者間ではメモリー容量が「iPad Air 2(64GB)」のほうが倍であり、この点でも「iPad Air 2(64GB)」のコストパフォーマンスの高さが浮かび上がってくる。

ここのところ、アップル製品は為替相場の変動などを理由に何度かの価格改定を行うなど、値上がりを続けてきていたが、その反動がにわかに出てきたというべきなのかもしれない。今回発売された「iPad Pro 9.7インチ」は、予想よりも安い価格設定となったが、それでもまだ9.7インチのタブレット端末として考えれば、かなり高い部類に入る。最新のプロセッサやカメラ機能、「Apple Pencil」などの点にこだわらないのであれば、コストパフォーマンスの高い「iPad Air 2」を購入しておいたほうがリーズナブルだという判断をする人が多いのもやむを得ないところだろう。

ひとまずは安定したスタートを切った「iPad Pro 9.7インチ」であるが、実は当面のライバルは、同じアップルの「iPad Air 2」の存在と言えそうだ。

鎌田 剛(編集部)
Writer / Editor
鎌田 剛(編集部)
1996年にソフトバンクにて複数のパソコン情報誌の編集・立ち上げに携わった後、2002年にカカクコム入社。2006年「価格.comマガジン」を創刊。以降、編集長としてメディア運営に携わる。日経MJにてコラム連載、ラジオ出演なども幅広く行う。家電製品アドバイザー資格保持者。
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