空気が乾燥する冬場は、加湿器を使ったほうがいいことは知っていますが、筆者は、ほとんど風邪をひいたことがなく、お手入れも面倒そうなので、これまで加湿器を使ったことがありませんでした。しかし、昨年末に風邪をひき、2週間経っても咳が止まらない(インフルエンザや新型コロナではありません)! ほぼ治りましたが、もうあんなつらい思いはしなくないので、風邪予防のひとつとして加湿器を購入。使ってみたところ、なんで早く使わなかったのかと思うほど快適さがアップしました。
加湿器には複数の種類がありますが、筆者の性格的に、こまめなお手入れは絶対にできないので、フィルターのないスチーム式一択。筆者のまわりでも使っている人が多い、象印の加湿器にしようと決めていました。
価格.comの加湿器 人気売れ筋ランキングでも象印のスチーム式加湿器が上位を占有
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象印のスチーム式加湿器には、「EE-DD」型(EE-DD35/EE-DD50)と「EE-RS」型(EE-RS35/EE-RS50)があり、どちらも適用床面積(プレハブ洋室)〜10畳と〜13畳の2モデルが用意されています。
筆者が製品を選ぶときに見比べたスペックを抜粋。「EE-DD」型にはグレーも用意されています
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加湿の基本的な仕組みは同じですが、「EE-DD」型と「EE-RS」型ではデザインのほか、タンク容量、本体サイズ、連続加湿時間、連続運転やタイマーで選べる数、表示ランプの明るさ切り替え機能の有無など違いがあります。
デザイン的には質感がマットな「EE-DD」型のほうが好みですが、「EE-RS」型よりタンク容量が大きく、連続加湿時間も長いこともあり、「EE-DD」型のほうが価格は高め。数千円の差なので気にするほどではないのですが、すでに象印の加湿器を使っている人たちが「思っているよりデカイ」と話していたので、使用する部屋と適用床面積が合うモデルの中で本体サイズがいちばん小さい「EE-RS35」を選びました。
サイズは240(幅)×260(奥行)×275(高さ)mm。電気ポットを想像してしまうため、いちばん小さい「EE-RS35」でも、実物を見たときは「デカッ!」と感じるかもしれませんが、気化式の加湿器などと比べたらコンパクト
若干機能は違いますが、基本的な構造は「EE-DD」型と「EE-RS」型共通。従来モデルも基本的な部分は変わらないので、詳しい使い方やお手入れ方法などは従来モデルのレビュー記事で確認してください。
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使用する部屋の広さは7畳なので、スペック(適用床面積)的には問題なし。ただ、部屋の気密性は低く、隙間風が入ってくるため、「EE-RS35」で十分なのか? と、購入してから不安になりました。なので、加湿力を確かめてみましょう。
運転モードは、湿度センサーと室温センサーで快適な湿度に自動コントロールする「自動」と、一定の加湿量で加湿する「連続」(「強」は350mL/h、「弱」は80mL/h)の2種類。加湿不足や過加湿を防ぎたいので、自動運転の「標準」を選択しました。
冬の時期は「しっかり」、秋口は「ひかえめ」が最適とのことですが、「標準」で試します
ちなみに、スチーム式加湿器で最も大きな電力が必要なのは湯沸かし時。「EE-RS35」の消費電力は、湯沸かし時が985Wで、加湿時が305Wです。水温20度の水を満水まで入れ、室温20度の部屋で加湿した場合、加湿が開始されるまでの時間は約20分かかるとのことですが、湯沸かしの時間を短縮すれば、電気代を抑えられ、素早い加湿が可能。象印のスチーム式加湿器はぬるま湯を入れてもOKなので、今回は最初からぬるま湯を使いました。
40度くらいのぬるま湯を満水の位置まで入れて検証します
暖房をつけていなかったので、加湿器と同時に暖房もオン。湿度50%に到達するまで1時間くらいかかりました。なお、筆者宅の暖房器具は空気が乾燥するタイプです。
最適な湿度は50〜60%なので、ちょうどいい感じ。それにしても、暖房をつけない状態で湿度32%とはすごく乾燥した環境で過ごしていたようです
別の日にも同じように、加湿器と暖房を同時に稼働させ、湿度の変化をチェック。自動運転の「標準」で加湿しましたが、加湿前の湿度が前回検証した日よりも高い40%だったので、30分程度で湿度50%になりました。
スタート時の湿度は違いますが、2回検証した結果を見ると、加湿スピードは安定している印象
部屋の湿度が30%台や40%台から50〜60%になったことで、気づいたことがあります。湿度が高くなると体感温度が上がると言われていますが、まさに、それを実感!
加湿器を使っていなかったとき、筆者の部屋は暖房20度でもなんとなく寒さを感じていたのですが、「EE-RS35」で加湿すると、湿度が54%を超えたくらいから体感温度が変わったのか、普段よりも暖かく感じるように。暖房の設定温度を20度から18度に下げたほどです。就寝時には暖房を止めて加湿器だけでしたが、朝起きたら湿度が60%近かったおかげか、ほんのり暖かく感じました。
暖房をつけていなくても湿度が高いからか、寒くて布団から出たくないという気持ちになることがなく、スッと出られました。朝はギリギリまで寝ているので、これはうれしい!
今回、自動運転の「標準」で加湿しましたが、結構なスピードでタンク内の水がなくなります。それだけ加湿されているということですが、5時間30分くらいで満水だったタンクが空になりました。「EE-RS35」の加湿時間(カタログ値)は連続運転の「強」で6時間、「弱」で27時間。センサーで最適な湿度にコントロールする自動運転の場合、部屋の構造や湿度によっては連続運転の「強」よりも短い時間でタンクが空になることがあるようです。
タンクが空になると自動停止するので、空炊きの心配はありません
起きているときはすぐに給水できますが、睡眠中は対応できません。筆者の場合、6時間以上寝るので、後半40分くらいは加湿されていない状況になります。筆者宅では40分くらい加湿が止まっても湿度60%くらいを保持できていたので問題ないと言えばないのですが、もっと長い時間寝ることもあるので、自動運転の「ひかえめ」に切り替えてみたところ、55%だった湿度が52%に下がってしまいました。
「標準」時は湿度55%でしたが、「ひかえめ」に切り替えて15分後に湿度54%になり、40分後には52%に!
自動運転は湿度センサーと温度センサーで最適な湿度になるように加湿量を自動でコントロールしてくれますが、加湿時のヒーターの出力は一定(305W)。ヒーターのオン/オフを繰り返す間欠運転で加湿量を調節しており、「ひかえめ」はオフになる時間が長く、「しっかり」はオフになる時間が短く設定されています。
加湿時の消費電力は自動運転も連続運転も同じ305W。各モードでヒーターをオン/オフにする間隔を変えることで、加湿量をコントロールしています
そのため、目標の湿度が同じでも、「標準」から「ひかえめ」に切り替えると、ヒーターをオフにして加湿を止める時間が増えるので、湿度が下がってしまったというわけ。それでも湿度は最適な範囲内なので問題ありませんが、このまま下がり続けるのではないかと不安です……。
でも、自動運転の「ひかえめ」にすれば「標準」よりもタンク内の水の減りが遅くなり、起床まで加湿を続けられるのではないかという期待もあります。それを確かめるべく、いつもどおり暖房をオフにし、加湿器は自動運転の「ひかえめ」で就寝。2時間30分後に目覚めてしまったので、そのタイミングでチェックすると、湿度はちょうどいい55%でした。
自動運転の「ひかえめ」でも湿度は55%
目覚めたついでに、タンク内の水がどのくらい残っているか見てみると、0.8Lくらい減っていました。残りは1.4L。2時間30分で0.8L減るということは、単純計算すると7時間までなら持ちそう。
「ひかえめ」のほうが長く加湿できましたが、思っていたより水は早く減る印象
長時間加湿したい場合は、27時間加湿できる連続運転の「弱」を使うという手もあります。加湿量80mL/hなので冬場には適さないだろうとスルーしていたのですが、「EE-RS35」の加湿力がすごいので、「弱」でも使えるシーンがあるのではないかと考え、暖房をオフにする睡眠中に使ってみたところ、起床時の湿度は60%! 就寝前まで自動運転で加湿し、就寝するタイミングで連続運転の「弱」に切り替えたからかもしれませんが、想像を上回る加湿力でした。
先に自動運転で湿度をしっかり上げておけば、加湿量80mL/hの連続運転の「弱」に切り替えても最適な湿度をキープできそう
スチーム式加湿器は、気化式や超音波式の加湿器と比べて消費電力が大きいため、電気代がかかります。「EE-RS35」のカタログ値を使って電気代を計算してみましょう。
給水は3回必要なため、消費電力985Wで20分加熱される湯沸かし運転が3回行われる
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湯沸かし1回にかかる電気代は約10円。3回なので、約30円かかる
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湯沸かし後の加湿時間は、12時間−1時間(20分×3回)で11時間
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加湿時の消費電力305Wで11時間運転すると電気代は約104円かかる
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湯沸かし時の電気代(3回分)約30円+加湿時の電気代(11時間分)約104円=約134円
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毎日同じように使った場合、1か月(30日)で4,020円かかる
同じ時間使ったとしても、運転モードや使用環境で電気代は変わるので、あくまでも参考ですが、ある程度、電気代はかかると言えます。
ちなみに、同じような条件で、筆者宅で使った電気代をワットモニターで計測してみました。湯沸かし時間は、ぬるま湯で短縮しましたが、自動運転の「標準」で、満水の状態から水がなくなるまで5時間30分加湿したときの電気代は約52円でした。
平日は出社しているので、加湿器を使う時間は10時間以下。休日は24時間近く使ったと設定し、ざっくり計算してみると、筆者の使い方の場合、加湿器にかかる1か月の電気代は4,000円弱です。さらに、自動運転の「ひかえめ」や連続運転の「弱」を組み合わせれば、電気代は抑えられそう
安いとは言えませんが、これだけ電気代がかかるのは冬場だけでしょうし、筆者の場合、加湿器を使うことで暖房の設定温度を控えめにできたので、少しは電気代を相殺できていそう。何より、フィルターの交換費用が必要なく、お手入れの手間もかからず、雑菌も繁殖しにくいなどのメリットのほうが、個人的には電気代よりも魅力です。
象印のスチーム式加湿器を使っている人から、加湿力は申し分ないけれど「お湯が沸騰する音がうるさい」という話を聞いていたので、これについても触れておきましょう。
「EE-RS35」の場合、沸騰時の運転音はカタログ値で39dB。電気ケトルでお湯を沸かすような音(下の動画参照)がしますが、会話やテレビの音が聞こえなくなるほどではないので、筆者は気になりませんでした。
湯沸かし音を抑える「湯沸かし音セーブモード」を使えば8dBほど小さくなりますが、その分、沸騰するまでの時間が10分程度延びるので、個人的には、ぬるま湯を使って湯沸かしにかかる時間を短縮するほうがいいと思います。
沸騰した後も無音になる時間はほぼない印象。自動運転の「ひかえめ」や連続運転の「弱」ではヒーターがオフになる時間が長くなり、静かになる時間は増えますが、それほど長時間ではないので運転音はすると思っておくほうがいいでしょう。最初の湯沸かしよりは小さいものの沸騰している音が続き、同時に、熱された金属に水が触れて蒸発するような音と蒸気が出る音がします(下の動画参照)。
上の動画は加湿器に近い位置で撮影しているので大きく感じますが、実際に聞こえる音はもっと小さいです。就寝時や睡眠中もこの音は続くため、寝つきづらく感じる人はいるかもしれませんが、筆者の場合、問題なく眠れました。なお、連続運転の「弱」にして就寝した際には、「あれ?止まってる?」と思うくらい静かだったので、寝るときはこのモードがいいかもしれません。
「EE-RS35」は加湿性能がすごくいいようで、加湿不足になることはありませんでした。ただ、使用する時期や環境、設置場所などで湿度の上がり方は変わるので、今回、筆者が試した運転モードで使っても同じようにならない可能性は大いにあります。
また、目標湿度を設定できる機能はないため、使用時に最適な運転モードや自分の家に合った運転モードを導き出すには、何度か使って判断する必要があるでしょう。部屋の湿度状況を「高湿/適湿/低湿」で確認はできるものの数値では表示されないので、湿度計は用意したほうが絶対にいい! 筆者宅は結露しやすいので目標湿度を設定したい気持ちはありますが、それでもお手入れの楽さなどを考えると、象印のスチーム式加湿器を選んでよかったと思っています。
購入したとき、風邪は治りかけだったものの横になると咳が出ていましたが「EE-RS35」を使ってからは咳が出なくなったので、喉の粘膜の乾燥は防げているよう。さらに、湿度が上がることで体感温度が上がり、加湿器がなかったころよりも暖かく過ごせるようになったのもよかったポイント。部屋の湿度が変わるだけでこんなにも快適になるなんて。もう、加湿器のない冬には戻れないと感じるほどです。
ただ、「EE-DD」型のほうがよかったかも……と思うことも。筆者は暖房をつけているときは自動運転で加湿することが多いため、タンクの水がかなり早く減ります。「EE-RS35」と同じ適用床面積(プレハブ洋室)〜10畳ながら、加湿時間(連続運転「強」)が2時間長い「EE-DD35」を買ったほうが給水の回数を減らせるので、もっと快適に過ごせたかもしれません。
筆者がこっちにすればよかったと思っている「EE-DD35」。サイズは240(幅)×275(奧行)×325(高さ)mmで、「EE-RS35」と比べて奧行と高さが少し大きいくらい。湯沸かし時と加湿時の消費電力は「EE-RS35」と同じ