長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第35回は、家事の手間を大きく軽減してくれる便利家電「食器洗い機(食洗機)」について、最新のトレンドを解説しよう。
「食器洗い機」という家電製品の歴史は意外に長い。日本国内では、1960年にパナソニック(当時の松下電器産業)が初の食器洗い機を発売。これはカラーテレビの誕生とほぼ同じ時期のことで、すでに64年の歴史を持っている老舗カテゴリーなのである。しかしながら、その普及はなかなか進まず、2021年時点の調査でもその普及率は35%程度。3軒に1軒くらいしか食器洗い機を持っていないのだ。欧米での普及率は70%程度と、この点では、日本ははるかに遅れていることになる。
我が国において、食器洗い機が普及しない最大の理由は、設置スペースの問題だ。現在普及している食器洗い機はそのほとんどがビルトインタイプで、システムキッチンに組み込んで使うのが基本。このため、古い家屋などではなかなか導入が難しい。外付け型の製品もあるが、今度はシンク周りに置ける設置スペースが問題になる。キッチンスペースに限界のある日本の家庭においては、なかなか導入のハードルが高い製品なのである。
また、洗浄力の問題もある。食器洗い機は一度に多くの食器を自動で洗ってくれるから便利だが、「汚れが落ちきっていなかった」「結局もう一度洗うことになった」というような話はよく聞かれる。また、食器洗い機では洗浄と乾燥に1時間以上かかるのがザラだが、「手洗いしたほうが早い」という話もよく聞く。つまり、洗い上がりに不満があったり、時間が長かったりすることも、我が国で食器洗い機の普及が今ひとつ進まない理由なのだろう。
【図1】価格.com「食器洗い機」カテゴリーにおける、主要メーカーの閲覧者数推移(過去2年間)
こうした経緯があるため、食器洗い機の市場自体もなかなか大きくならず、むしろマンションなどにはビルトインタイプの食器洗い機が導入されるケースが増えてきたことから、外付け型の食器洗い機を製造しているメーカーはだいぶ少なくなってしまった。図1は、価格.com「食器洗い機」カテゴリーの過去2年における閲覧者数推移を示したものだが、わずかずつ右肩下がりの傾向にあることは間違いない。
【図2】価格.com「食器洗い機」カテゴリーにおける、主要メーカーの閲覧者数推移(過去2年間)
図2は、価格.com「食器洗い機」カテゴリーにおける主要メーカーの、過去2年における閲覧者数推移を示したものだが、国内におけるこのジャンルのパイオニアであるパナソニックが圧倒的な人気を誇っており、そのほかのメーカーはかなり差を付けられている形だ。もちろん、この数字には、工務店経由で設置されるビルトインタイプの製品の数はカウントされていないので、特にビルトインタイプに強みのあるリンナイなどとは実際にはこれほどの差は付いていないだろうが、こと外付けタイプに限って見れば、パナソニック一強という状況と言っても過言ではない。もちろん、それほどひんぱんにモデルチェンジを行うような製品でもなく、技術進化もそれほど早くはないジャンルと言ってよいだろう。
もちろん、メーカー側でも、上記の設置問題は把握しており、ここ数年は、狭めのシンク脇にも置けるコンパクトボディと、水栓工事不要の手軽さをアピールした製品が出てきては話題を呼んでいる。こうした製品は洗浄できる食器の数に限度があったり、自分で給水や排水を行う必要があるなど、不便さもあるものの、キッチンのスペースなどが理由で、食器洗い機を導入できなかった人にとっては、一定の支持を得つつあるようだ。
なお、図1を見るとわかるが、食器洗い機の需要は、およそ1〜3月の間が最も高く、それ以外の時期には下がる傾向にある。やはり4月から始まる新生活シーズンに向けて、この時期、引っ越しなどが多くなることから、同じタイミングで食器洗い機の導入を考える人が増えるのだろうと推察される。今年は昨年ほどの盛り上がりとはなっていないようだが、それでも昨年の暮れぐらいから需要は上がっており、4月に入った今でも需要は高いままで続いているのが特徴的だ。
【図3】価格.com「食器洗い機」カテゴリーにおける、人気5製品の閲覧者数推移(過去6か月)
図3は、価格.com「食器洗い機」カテゴリーにおける、直近半年での人気製品の閲覧者数推移を示したもの。やはり、老舗のパナソニック製品が人気の中心を占めているが、意外に、AQUA「ADW-L4-W」や、サンコー「ラクアmini Plus TK-MDW22B」といった製品が健闘していることがわかる。前者は大型の5人用の食器洗い機で、実勢価格が安いことから人気があり、後者はコンパクトで水栓工事も不要なタンク式の食器洗い機と、出自は異なるが、それぞれの特徴を武器に善戦していると言えるだろう。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年4月2日 時点のものです。
価格.com最安価格:68,920円
発売日:2020年9月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.14(46人)
対象人数:約5人分
工事:分岐水栓の取り付けが必要
パナソニックのファミリー向けレギュラータイプ食器洗い機の中核的モデル。2020年の発売ながら価格.com上でもずっと高い人気を保っており、同社の食器洗い機の代表格と言える。約5人分の食器(40点)を洗える50Lの大容量で、家族の多い家庭に最適。大きさは550(幅)×598(高さ)×344(奥行)mmで、運転音は38dBと比較的静か。洗浄と同時に食器の除菌もできる「ストリーム除菌洗浄」にも対応する。運転時間の目安は約84分(50Hz)/約79分(60Hz)。
価格.com最安価格:67,851円
発売日:2021年11月15日発売
ユーザー満足度・評価:★4.38(21人)
対象人数:約4人分
工事:分岐水栓の取り付けが必要
パナソニックのファミリー向けスリムタイプの食器洗い機の中核的モデル。約4人分の食器(24点)を洗える36Lの容量を持ち、2〜3名の家族に向いた製品。大きさは550(幅)×500(高さ)×290(奥行)mmで、シンク脇に300mmのスペースがあれば設置可能。運転音は39dBと比較的静か。上方に開く「リフトアップオープンドア」を採用しており、水栓にも当たりにくい。洗浄と同時に食器の除菌もできる「ストリーム除菌洗浄」にも対応する。運転時間の目安は約93分(50Hz)/約88分(60Hz)。
価格.com最安価格:41,860円
発売日:2023年11月24日発売
ユーザー満足度・評価:★3.00(2人)
対象人数:約3人分
工事:分岐水栓の取り付けが必要
2023年11月に発売されたばかりの、パナソニックの少人数向けプチタイプの食器洗い機。約3人分の食器(18点)を洗える24Lの容量で、夫婦世帯などに向いた製品だ。大きさは470(幅)×460(高さ)×300(奥行)mmで、水切りかごサイズのスペースに設置可能。高さがないので、トレイは1段仕様となる。洗浄と同時に食器の除菌もできる「ストリーム除菌洗浄」にも対応。運転時間の目安は約99分(50Hz)/約94分(60Hz)。
価格.com最安価格:50,411円
発売日:2023年9月13日発売
ユーザー満足度・評価:★4.55(6人)
対象人数:約5人分
工事:分岐水栓の取り付けが必要
5人分の食器(40点)を洗える大容量タイプの食器洗い機。人気のパナソニック「NP-TA4」と似たスペックを持ちながらも、実勢価格が2万円近く安いのが特徴だ。4基のノズルからシャワーが噴出する「クアトロシャワー除菌洗浄」を搭載し、食器をキレイに洗い上げ、除菌もしてくれる。乾燥運転中にはUVライトを照射し仕上げるモードも搭載する。サイズは550(幅)×500(高さ)×360(奥行)mmで、高さが抑えられているため、圧迫感が少ない。また、前面ガラスから内部が見えるので、中の様子がわかりやすいのも特徴だ。
価格.com最安価格:26,800円
発売日:2022年10月17日発売
ユーザー満足度・評価:★3.57(10人)
対象人数:1〜2人分
工事:不要
アイデア家電でおなじみのサンコーが販売する小型の食器洗い機。食器を11〜12点程度収納でき、1〜2人くらいの食器を洗うことが可能。最大の特徴は、水栓の工事が不要で使えることで、洗浄の都度、自分で給水して使うタンク式を採用。排水はシンクに行うほか、バケツなどに排水することも可能で、設置の自由度が高い。本体サイズは308(幅)×415(高さ)×315(奥行)mmで、かなりコンパクトだ。賃貸のひとり暮らしでも食器洗い機を使いたいという方に向いた製品と言える。