空気が乾燥するこの季節に活躍する加湿器には、消費電力が少なく過加湿にもなりにくい気化式や、ヒーターで水を蒸発させるためパワフルに加湿できるスチーム式などいくつかのタイプがある。いずれの方式にもメリットとデメリットがあるが、高い加湿能力を有しながら電気代も抑えられることで人気なのが、ハイブリッド式だ。価格.comのハイブリッド式の加湿器 人気売れ筋ランキングを見てみると、上位10製品のうち7割がダイニチの加湿器となっていた(2016年2月2日現在)。最新モデル「RXシリーズ」を自宅で使用し、なぜダイニチが注目を集めるのか理由を探ってみる。
RXシリーズには、適用床面積(プレハブ洋室)8畳/14畳/19畳/24畳までの4機種が用意されている。今回使用するのは適用床面積〜19畳の「HD-RX715」。サイズは37.5(幅)×37.5(高さ)×21(奥行)cm
RXシリーズが採用するハイブリッド式とは、気化式と温風気化式を組み合わせた加湿方法。気化式は水を含んだフィルターに送風することで湿度を上げるため消費電力を抑えられるが、スピーディーな加湿は苦手だったりする。そこで、必要に応じてヒーターで暖めてから送風する温風気化式に切り替えられるようにしたのが、ハイブリッド式だ。素早い加湿と電気代上昇の抑制を両立している。
タンクには6.3Lの水が入れられ、標準運転で9時間加湿できる。たっぷり給水できるのは魅力だが、タンクの高さが30cmほどあるのでシンクによっては難儀するかも。困った時には、浴室で入れてしまうのも手だ
タンクの水はフィルター(青い部分)に吸水される
本体内にあるファンで送風し、フィルターに含まれた湿気を放出。また、ヒーターも内蔵しており、湿度が低い時には自動でON→温風で稼動となる
鉄筋コンクリート建てマンションのLDK(約12畳)で、HD-RX715を使ってみた。運転モードは「標準」のほかに、高めの湿度を保つように稼動する「のど・肌加湿」、消費電力を抑えた「エコ(eco)」モードがある。そして、静かな加湿のために「標準」よりも運転音が最大5dB抑えられる「静音」と「おやすみ加湿」も用意。今回は「標準」モードで湿度を60%に設定して、1時間でどれほど加湿されるかを確かめてみた。
「のど・肌加湿」と「おやすみ加湿」以外のモードでは、湿度を50%、60%、70%で設定できる
加湿を始める前に部屋の中心部の湿度を測定してみると、36%と表示された
HD-RX715を窓側に設置し、運転をスタートする。部屋の中央より窓側のほうが湿度は低めなのか、本体で測定した湿度は30%を示した
加湿をスタートしてから1時間後、本体の表示は54%となり、部屋の中ほどの場所は59%にまで湿度が上昇
適用床面積に対し部屋が少し小さめではあったが、たった1時間で部屋中をほぼ60%の湿度にできたのは、やはり温風気化式による素早い加湿のおかげかもしれない。前述のとおり、HD-RX715はハイブリッド方式を採用している。湿度が低い時には温風気化式で稼動し、設定した湿度に近づくと気化式に切り替えるというものだ。電気代のムダが低減できることがウリの1つでもあるが、実際にどれほど消費電力が変わるのかをワット計でチェックしてみた。
加湿がフルパワーで行われている温風気化式時の消費電力は306Wだったが、設定した湿度に近づくと気化式に切り替わったのか8.1Wまでダウン。もしも1日8時間で1か月使用すると前者では1,983円ほどかかってしまうが、後者ならば52円程度で済む(1kWhあたりの電力量料金は27円で算出)。常に一定の方式で稼働してはいないが、効率のよい加湿であることは間違いない
ちなみに、ヒーターがONになる温風気化式時でも吹出口付近は熱くならない。気化式時と比べても3℃程度高いぐらいだ。フィルターで水が気化する際に熱が奪われるため、高温にならないのだそう
タンクに水を溜める加湿器は、手入れが何よりも大切だ。フィルターやトレイは水に浸っているため、放置しておくと水道水に含まれるミネラル分が固まって水アカとなったり、雑菌が繁殖することも。悪臭を空間に放出してしまうだけでなく、加湿量の低下や騒音の原因にもなるのでこまめなメンテナンスを行おう。HD-RX715は、フィルターとトレイを2週間に1回洗浄することが推奨されている。
手入れを促すように、2週間に1度のタイミングで「お手入れ」ボタンが点灯する
2週間使用したところ、水アカやカルキのような白いものが表面に付着していた。フィルター寿命は、こまめに手入れした場合で5シーズンが目安
フィルターは2つ折りになっており、簡単に広げられるので奥まで洗える
抗菌加工が施されたトレイには雑菌・カビの繁殖を抑えるフィルターも搭載されているが、水洗いはきちんと行おう。凸凹とした部分も広めなので、スポンジでの洗浄もしやすい
1か月に1度は、クエン酸洗浄液で浸け洗いするとベスト
水周りの手入れだけでなく、吸気口の掃除も忘れずに。吸気口には3層のフィルターが搭載されており、空気中に漂うアレル物質やウイルス、雑菌を捕える。キレイな空気で加湿するためには、フィルターのろ過性能も高いまま保持しておきたい。フィルターの手入れの目安は週に1回。取り外して、掃除機などを使って付着したホコリなどを取り除く。
左側にあるパーツが一番外側に装着されており、大きなホコリをキャッチ。その奥に順に装備される除菌フィルター(黒)と抗ウイルスエアフィルター(青)は、花粉やダニの死がいといったアレル物質を捕集し、ウイルスの繁殖や活動を抑える
スチーム式や超音波式に比べると気化式は加湿能力や拡散力が弱い印象があったが、ハイブリッド式であればそのような心配も不要。スピーディーに部屋をまんべんなく加湿しつつも、電力が必要最小限で抑えられるのはうれしい。蒸気やミストを放出しないので床が濡れたり、過加湿になりにくいのも魅力だろう。
また、標準モードでも運転音が最大32dBである点も見逃せない。静かなのでストレスなく利用できる。さらに、就寝時に役立つ「おやすみ加湿」がとても便利。「おやすみ加湿」とは、風量を最小にして約1時間運転した後、湿度50%設定を保ちながら9時間稼動して自動停止するというモードだ。運転音が最小13dBになるうえ、表示される湿度の照度も暗くなる。眠りにつく邪魔にも、睡眠の妨げにもならないので重宝した。
インテリア性の高い製品に目を奪われてしまいやすいが、実用性で言えば低ランニングコストで優れた加湿ができ、メンテナンスにも苦労しないことが望ましい。RXシリーズは、まさに加湿器に必要な要素が過不足なく備えられている印象だ。基本性能が高く手入れもしやすい、質実剛健な作りこそが人気の理由ではないだろうか。
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