象印マホービンは、圧力IH炊飯器「極め炊き」シリーズの最上位新モデルとして「南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10」(以下、NW-AS10)を8月21日より発売すると発表。同社の「極め炊き」といえば、昔ながらの“かまど炊きの大火力”に徹底的にこだわった炊飯器。その実力がユーザーから高い評価を得ている人気シリーズで、同社独自の羽釜形状の内釜や大火力・高圧力が最大の特徴となっている。最新モデルではどのように進化したのか。発売先立って開催された説明会では実際にNW-AS10炊いたご飯を試食することもできたので、あわせてレポートしよう。
南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10サイズは、30.5(幅)×24.5(高さ)×40(奥行)cm、重量は11.5kg。炊飯容量(白米)は0.09〜1.0L(5.5合)。1回あたりの炊飯時消費電力量は151Wh、1時間あたりの保温時消費電力量は17.1Wh。内釜の形状が大きく変化した
カラーは、写真の「プライムブラック」のみ。天面部は汚れを拭き取りやすいトップパネルデザイン。光沢がある素材だが、うっすらと木目模様が施されており手垢などの汚れが目立ちにくくなっている。高級感が漂う
NW-AS10の価格はオープンで、市場想定価格は14万円前後(税別)となっている。
NW-AS10では、2010年から採用する内釜の基本形状である「羽釜」が大きく変化している。前モデルとの違いとしてまず気が付くのは、「羽」の形状と大きさ。伝統工芸品の南部鉄器を使用している点は従来どおりだが、上の写真でもわかるように羽部分がかなり大きくなっている。
大きくなった羽はやや斜め下に伸びて付いている。これにより、羽釜と炊飯器本体壁面との間にできる空間が大きくなり、さらに、その空間にフタをする構造になっているため、より大きな熱対流を発生できるようになっているのだ。
新形状となったNW-AS10の内釜「極め羽釜」。素材に南部鉄器を使用する点や広くて浅い基本形状は変更ないが、羽部分が大きく変化。内釜自体の重さは従来と変わっていない
従来モデル(左)との比較でもわかるように、羽部分が大きく出ている
羽根を大きくすることで、羽釜と炊飯器本体との間に従来モデル(NP-W型)よりも広い断熱空間が作れる。この空間にヒーターの熱を加えることで、より強い熱対流が起こり均一に熱を伝えることがでるようになった
なお、側面から加熱する「かまどヒーター」の火力も従来モデルから1.25倍にパワーアップされている。
また、この大火力を生かすため釜底の形状も進化。角度つけた部分と平な部分を設けることで、より激しい対流が起こるように改良されている。
左が従来モデル、右がNW-AS10の釜底。NW-AS10では底面の一部は平らだが、その周囲を巡るように角度をつけた斜めの底が形成されている
新しい底形状では、平らな部分から真っ直ぐ泡が立ち上がり、斜めの底部分からは鍋肌から中心に向かって泡が発生するため、複雑で激しい対流が起こる
ちなみに、広くて浅い形状の羽釜は、釜底から水面までの距離が近いため釜全体に効率よく熱が伝わるのだという。
羽釜形状の改良とともにNW-AS10の大きな進化点となるのが、業界初となる「最大1,450W」の高火力(平均1,250W、最大火力1,450W)と、「1.5気圧」の高圧力を実現したことである。この高火力と高圧力により、いわゆる“中パッパ”の状態が大きく進化。従来以上の激しい対流を起こすことが可能になった。
以下の動画(擬似米を入れた実験映像)で、その対流のようすをご確認いただきたい。従来モデル(右)よりも、NW-AS10(左)のほうが泡が激しく強い様子がわかる。
この激しい対流により、お米の芯にまで水分と熱が一気に浸透。甘み成分となるでんぷん粒を引出しすばやくα化(でんぷん粒が甘み成分になる変化)。水中に溶け出した甘み成分は、お米ひと粒ひと粒をコーティングする。そして、ここで「1.5気圧」が登場。沸騰維持工程の後半で“追い加圧”として約1分1.5気圧の状態にし、その後一気に1.15気圧に減圧する。この“急激な減圧”によって、お米ひと粒ひと粒をコーティングしていた甘み成分が米の中に染み込むというわだ。以下の動画で、この温度と気圧の変化とお米の状態をイメージしていただけるはずだ。
これまで“中パッパ”の状態にするために、1250Wの火力で沸騰させ維持時に1.15気圧をかけていたが、NW-AS10では、中パッパの最初に1,450Wで一気に高温にし1.15気圧で沸騰維持。後炊き上がる前に1.5気圧を1分間かけ、その後一気に1.15気圧に減圧する工程となっている
これらの新工程と従来どおりの内ぶたに施された「プラチナ&遠赤外線(セラミック素材使用)」の効果により、NW-AS10で炊飯したご飯は、従来モデルに比べ、甘み成分は(還元糖)は約68%アップ、うまみ成分(アミノ酸)は約13%アップしているという。
NW-AS10で炊いたご飯を試食。左が「白米ふつう」メニュー、右が冷めてもおいしい「お弁当」メニューで炊いたご飯。いずれも甘く、かなりもちもち。ご飯好きにはたまらない旨さだろう。「おいしいご飯はそれだけでごちそう!」といった感じ。反面、軽い食感のあっさりとしたご飯が好みの方にはややヘビーかも
なお、1.5気圧が可能になったことで、従来モデルでも得意としていた「玄米炊き」をより美味しく炊き上げられるようになった点や、本体とふたのすき間をなくす「断熱フレーム」の採用によりこれまで以上に保温ご飯を美味しく維持できるようになっているという点も、NW-AS10の大きな特徴といえるだろう。
フタのフチ部分には、本体とフタにすき間をなくすための「断熱フレーム」(赤い矢印部分)が新たに付けられた。これにより、水分と熱を逃しにくくなり保温中の温度ムラが抑えられるようになった
使い勝手の面では、お手入れの手間を軽減するための新機構になっていることが大きな進化ポイントだ。従来モデルでは炊飯後に洗うパーツが6点だったのに対し、NW-AS10では3点になった。毎日使うものだからこそありがたい進化といえるだろう。
吹きこぼれを押さえ大火力を維持するほかお米の水分を保持する役割を果たす「うるおい二重ぶた」の性能はそのままに、機構を改良することで蒸気口の洗浄が不要に。毎回洗浄が必要なパーツが3点になった
もう1つ、ユニークなのが自動でフタが閉る「スマートクローズ」機能の搭載。茶碗としゃもじを持ち手がふさがっている状態でも、フタ前面の「close」ボタンを軽く押すと、自動でフタが閉るという仕組みだ。以下の動画でその動きをご確認いただきたい。
NW-AS10のほか、「極め羽釜シリーズ」として、内釜に南部鉄器を使用しない「鉄器コート 極め羽釜 NW-AA10」も8月21に発売される。価格は、11万円前後(税別)となっている。