日立「ビートウォッシュ BW-V80A」
「洗濯機」カテゴリーは、価格.comの家電製品カテゴリーの中でも常に上位に位置する人気カテゴリーであるが、ここ数年、同カテゴリー内でのトップシェアは、常にパナソニックと日立の2社によって争われてきた。図1は、「洗濯機」カテゴリーにおける、過去2年間のPVシェアの推移を「価格.comトレンドサーチ」で示したものだが、これを見ても、パナソニックと日立の2社が、特にこの1年はほかのメーカーを大きく引き離して、熾烈なトップ争いをしていることがわかるだろう。
図1:「洗濯機」カテゴリーにおけるPVシェアの推移(過去2年間)
そんなパナソニックと日立から、ほぼ同時期にあたる6月中旬、縦型洗濯機の最新モデルが相次いで発売され、すでに2か月ほどが経過した。なかでも主力モデルである洗濯容量8kgのパナソニック「NA-FA80H3」と、日立「ビートウォッシュ BW-V80A」の争いが熾烈になってきている。2016年8月24日時点では、日立「ビートウォッシュ BW-V80A」が売れ筋ランキングで1位、パナソニック「NA-FA80H3」が6位と、その人気にやや差が付いているが、「価格.comトレンドサーチ」のデータを見ると、面白いことがわかってくる。
図2:日立「ビートウォッシュ BW-V80A」とパナソニック「NA-FA80H3」の詳細ページへのアクセス推移(過去3か月)
図2は、この2製品の詳細ページへのアクセス推移を示したもの。これを見ると、どちらの製品もさほどアクセス状況に変わりはないことがわかる。ただ、8月中旬以降、「ビートウォッシュ BW-V80A」のほうがアクセスを伸ばしているのに対し、「NA-FA80H3」のほうは頭打ちのような状況になってしまっているのが、わずかな差となって現れている。
図3:日立「ビートウォッシュ BW-V80A」とパナソニック「NA-FA80H3」の最安価格推移(過去3か月)
図3は、この2製品の最安価格の推移を示したもの。こちらを見ても、どちらも同じような形で価格が推移しており、115,000円近辺から売り出され、発売から約2か月で73,000〜75,000円程度まで価格が下落している。下落率はいずれも約35%で、おそらくこのあたりからはあまり大幅な下落はなくなるものと思われる。
図4:日立「ビートウォッシュ BW-V80A」とパナソニック「NA-FA80H3」の閲覧者数推移(過去3か月)
このように、注目度、価格とも、さほどの差がない両者であるが、実際の売れ行きとなると、意外な差が出てきている。図4は、日立「ビートウォッシュ BW-V80A」とパナソニック「NA-FA80H3」の閲覧者数(店舗訪問数)の推移であるが、こちらはより購買に近い数ということになる。これを見ると、8月に入ったくらいから、「ビートウォッシュ BW-V80A」の閲覧者数が徐々に増加しており、足踏み状態になっている「NA-FA80H3」を大きく引き離していることがわかる。両者とも注目度は同じくらいであるが、実際の高倍率については、「ビートウォッシュ BW-V80A」のほうがかなり高いという結果だ。この結果として、売れ筋ランキングでも両者の間に徐々に差が広がっていき、今の結果になって表れていると言えるだろう(図5)。
図5:日立「ビートウォッシュ BW-V80A」とパナソニック「NA-FA80H3」の売れ筋ランキング推移(過去3か月)
パナソニック「NA-FA80H3」
なぜここまでの差が両者の間に出てきているのか、その理由は明確ではないが、ひとつ大きく考えられるのは、日立の「ビートウォッシュ」というブランド力が増しているということだ。実は、この「ビートウォッシュ」シリーズは、価格.com上ではすでに何年も前からかなり人気の高いシリーズとなっており、特に「洗浄力」を重視するユーザーにとっては、ほぼ指名買いと言ってもいいくらいのブランド力を身につけていたのだ。
図6:「NA-FA80H1」「NA-FA80H2」の売れ筋ランキング推移(過去2年)
昨年2014年にパナソニックが発売した「NA-FA80H3」の2代前のモデル「NA-FA80H1」とそれに次ぐ「NA-FA80H2」は、ボディの大幅なモデルチェンジと、洗浄力をアップさせる「泡洗浄」モードの搭載などにより、パナソニックの縦型洗濯機としてはかなりのヒットになったモデルだが(図6)、新シリーズになってからまだ2年ということもあって、「ビートウォッシュ」シリーズほどのブランド力を身につけていないように思える。これに対して、「ビートウォッシュ」シリーズは、すでに10年というブランドの歴史があり、価格.com上でも高評価の洗浄力の高さに加え、最近のトレンドである「洗濯槽の洗浄機能」についても、独自の「ナイアガラすすぎ」を取り入れるなど、進化を続けている。また、昨年モデルの「BW-7WV」(洗濯容量7kg)は、「価格.comプロダクトアワード 2015」の生活家電部門で金賞を受賞するなど、総合的なブランド力に磨きがかかっている印象だ。
今後、パナソニック側の巻き返しもあり得るが、縦型洗濯機の市場では、現状まだ日立の「ビートウォッシュ」シリーズにブランド力の点ではアドバンテージがあると言えそうだ。