こんにちは、オグさんです。今回は「クラブフィッティング」というものについて説明したいと思います。クラブフィッティングとは、ゴルファー1人ひとりの個性や悩みに合わせて、適切なクラブを導き出すことです。かくいう私もクラブフィッターとして活動しておりまして、少しでも皆さんのゴルフライフのお手伝いができればと思いながらフィッティングをしております。
弾道計測器を使い、弾道データとスイングを確認しながらお客さんの悩みや理想とする弾道を総合的に判断してシャフトやヘッドをご提案しています
ゴルフクラブは、大きく分けてヘッドとシャフト、グリップで構成されているのですが、それぞれのパーツ(ヘッド、シャフトなど)には個性があり、弾道やミートしやすさに大きく影響します。パーツの個性をゴルファーの個性に合わせることで、自分なりのタイミングでスイングしたときに気持ちよく振れて理想の弾道が出やすいようにするわけです。特にシャフトは気持ちよくスイングするための重要なパーツで、ナイスショットの確率の向上やミスの幅の軽減など、スコアメイクや上達に非常に大きな効果があります
最近は、クラブフィッティングをクラブメーカーさんがそれぞれ独自の考え方で行っています。気軽に無料で体験できるものから、精密な機械を使って科学的に分析するものまでさまざまです。そのほんの一部ではありますが、3社(ダンロップ、ブリヂストンゴルフ、PING)のクラブフィッティングを今回取材させてもらいました。内容に各社の考え方が反映されていてとても興味深かったです。さっそくご紹介していきましょう。
■目次■
豊富なシャフトデータから最適診断!・ダンロップ
コンピューターによる"疑似試打"って!?・ブリヂストンゴルフ
「ライ角」を気にしたことありますか?・PING
最初にご紹介するのは、人気クラブXXIO(ゼクシオ)や松山英樹選手との契約で有名なダンロップです。最初に問診を行います。悩み、理想、ゴルフ歴、レッスン経験の有無などを聞かれます。そして今使っているクラブをクラブフィッター(ダンロップではクラブドクターと呼ぶ)に見せ、クラブの銘柄、スペックのデータを取ってから実際にボールを打ち、弾道やスイングのデータを計測します。問診で聞いた悩みがどこにあるのかを確認するためです。
まず悩みや改善したいポイントなど、クラブフィッティングを受けたいと思った動機を正直に話しましょう。クラブが自分に合っているかどうかを知りたいっていうのも立派な動機ですよ。ガンガン自分の疑問をぶつけましょう
今使っている自分のクラブを計測し、銘柄などをチェックしてもらいます
クラブを計測したら実際にボールを打ち、弾道を計測。実際の悩みが具体的にどんな弾道になっているのかを確認します。このとき、できるだけコースを思い描いて打ちましょう。ここでいい球を打っても意味がありません。ミスを減らすためにフィッティングを受けるのですから、いつものミスをフィッターに見せる必要があります
上記が実際の弾道データです。このデータを見ながらどんな症状を軽減したいのか? 最終的に自分がどうしたいのかをフィッターと相談します。フィッターはこのデータと悩みの内容に加え、実際のスイングを見て用意されているシャフトとヘッドを組み合わせたいくつかのクラブを提案してくれます。それらを再度打ってみてデータを計測し、理想の組み合わせを探していくのです
モデル別はもちろん、同じ種類でもロフト角や重さ違いのヘッドがたくさん用意されており、そこから理想の弾道が打ちやすいであろうモデルをフィッターが選んでくれます
私の弾道データをもとにフィッターが提案してくれたクラブです。これを打って再度データを取ることで症状が改善されたかどうかを確認し、これを何度か繰り返すことで効率のよい弾道が打てる振りやすいクラブを探し当てていきます
ダンロップは、シャフトのしなるポイントや硬さを4桁の数字にした「インターナショナルフレックスコード」というシステムを持っています。この数字はダンロップが開発したシャフトに記載されていて、どこがどのくらいしなるのかを目で見ることができる優れもの。自社のシャフトはもちろん他社製も含め(ダンロップで特注対応として扱うモデルのみ)、モデルやフレックス違いをデータ化して持っています。
これが「インターナショナルフレックスコード」です。数値が大きいほど硬いということを表していて、数値の桁の位置がしなるポイントを表しています。1の位がヘッド側、1000の位が手元側です
これはインターナショナルフレックスコードを当てはめたシャフトを特性別にまとめたデータ。こういったオリジナルのデータを用いながらシャフトの特性をわかりやすく説明してくれて、スイングにあったシャフトを瞬時に提案してくれます
そして実際に打ってみて悩みが解消されたかどうかを確認します。自分に合ったクラブを振るとよどみなく振れるので気持ちよく振りきれます。いや〜欲しくなっちゃいますねw
提案されたクラブで計測したデータです。私はバックスピンが多めなのが悩みの1つですが、かなり改善されていることがわかります
ダンロップの考え方は、トップからインパクトまでの間にシャフトのどこがどのタイミングでしなってくれるとタイミングがとりやすいのかを確認し、それを先ほど紹介したインターナショナルフレックスコードを用いて、タイミングの取りやすいシャフトを探し出します。
トップからの切り返しではシャフトの一番手元側に負荷がかかり、インパクトに向かうにつれて負荷のかかるポイントが先端側に移動していくのですが、どのタイミングで一番シャフトに負荷をかけているかというのがゴルファーによって変わるのです。その負荷のかかるポイントがしっかりしている―つまり硬めであるシャフトこそが振りやすいシャフトということになります。
私は、トップからの切り返しからダウンスイングでシャフトが水平になるくらいまでに強い負荷をかけているようで、手元側の硬いシャフトがタイミングをとりやすいという診断になりました。
私は、切り返しからすぐのタイミングで最もシャフトに負荷をかけているようなので(写真左)手元側が硬いシャフトが合うという診断に。手元側が柔らかいシャフトを打つとこの負荷をかける瞬間にシャフトが負けていまい、ヘッドを加速させられずタイミングがずれてしまうのです(同右)。つまりヘッドがインパクトで正しい位置に戻しづらくなり、結果ボールが曲がってしまうのです
決まった組み合わせは、スリクソン Z765(10.5度)のヘッドと、ダンロップ製の「Miyazaki Kaula MIZU 6X 6666」の組み合わせです。6Xだけでもいろいろあるので、フィッティングが肝要というわけです。
とても振りやすかったので、このまま持って返りたいくらいでした…
ダンロップは予約制ですが、フィッティングを無料で行っています。定期的に来店し、「健康診断」的な考え方でスイングチェックをしてもらうといった使い方でもありですね。計測したデータは出力してもらい持ち帰れるので、スランプに陥ったときにも役立つでしょう。
スイングを客観的に見てくれて、タイミングの合うクラブの特徴も知ってくれている方がいるっていうのはとても心強いですよ
ダンロップクラブハウス赤坂店
〒107-0052
東京都港区赤坂1-1-12 溜池明産ビル1階
TEL:03-3586-3967
定休日:日曜・祝日
営業時間:月〜土 10:00〜19:00
料金:無料
完全予約制
詳細はコチラ
さて次に私はブリヂストンゴルフ(以下ブリヂストン)のフィッティングに行ってきました。ここではクラブフィッティングだけでなく、スイングの解析やスキルアップのためのメニューが用意がされています。
ブリヂストンは基本有料ですが、その分いろいろな機材を駆使し、目では見ることのできない詳細なスイングのデータを確認できます。スイングとクラブの両面からスキルアップを目指すことができる施設です。
エプソンのM-tracerをクラブに装着し、クラブの挙動を解析
クラブフィッティングの流れは、問診してから自分のクラブでの弾道データを確認し、現状を確認するところまでは同じです。次にクラブにセンサー(エプソンのM-tracer)を付けてスイング中のクラブの挙動をデータ化し、どんなスイングをして、どんなクラブの使い方をしているかを可視化してくれます。こんなスイングをしてこんなクラブの使い方をして、こんな弾道を打っています。はい。もうぐうの音も出ません…そして弾道データとスイング中のクラブデータをもとに独自のシステムが悩みとスイングを踏まえた理想のヘッドとシャフトの組み合わせを“自動的に”複数選んでくれます。
その後は、選んでくれたクラブを実際に打って悩みや問題点が改善されているかを確認するといった流れ。より自分のスイングを突き詰めたり、理想の弾道を厳しく追い求めたりする方には、一度受けてみる価値があると思いますね。
ヘッドにも種類がたくさんありますし、ロフト違いもあります
シャフトも同様にモデル数がたくさんある中で、重さ、フレックスでの違いを入れると膨大な数になります
驚いたのは、ブリヂストン独自開発の解析システム「スイングシミュレーション」。一度取り込んだ自分のスイングのデータをもとにヘッドとシャフトの何千通りの組み合わせをコンピューターが"仮想試打"してくれるんです。これはスゴいですよ。
膨大な数のヘッドの中からいくつかを選び…
同じく膨大な数のシャフトの中からフィッターと相談した銘柄とスペックをいくつか選んでコンピューターに入力すると…
取り込んだスイングデータのヘッドの入射角やヘッドスピードなどを計算し…
弾道データを予測して表示してくれるんです。膨大な数を試打しなくても弾道データを知ることができるんです。機械が代わりに打ってくれるようなものですね!
ブリヂストンでは、ツアーB XD-3(9.5度)のヘッドと、フジクラ・スピーダーエボリューション757Xの組み合わせを提案してもらいました。やっぱり私は硬いシャフトのほうが結果が出るみたいです。このフィッティングは全国にあるブリヂストンゴルフの直営店で受けられます。
コンピューターが選んだ組み合わせを実際に打ってみましたが、いい球が出ましたよ! 今回の組み合わせはカタログにはありませんが、フィッティングを受ければカスタムオーダーができるんです
ブリヂストンでは、クラブフィッティング以外に高度な解析システムを使ったパーソナルレッスンを行っていて、これがスゴかったのでちょっとご紹介。体にセンサーを付けて、体の部位の細かい動きから、打席下に埋まったセンサーでスイング中の重心の移動までをデータ化してお客さんのスキルレベルを可視化、自分のポテンシャルにあった最大値のスイングを目指そうという内容で、かなりアスリートなゴルファー向けのレッスンです。このパーソナルレッスンは丸の内の「ブリヂストンゴルフガーデンTOKYO」で受けることができますよ。
体に機械を取り付けて…
球を打つと…
スイング診断や…
分析と今後に向けてのアドバイスをしてくれます
ブリヂストンのレッスンはクラブとスイングの両面から上達をサポートしてくれます。自分で納得しながら本気でうまくなりたい! 自分のポテンシャルを最大限発揮して飛ばしたい! なんて考える方におすすめですよ〜。あと、この「ブリヂストンゴルフガーデンTOKYO」は仲間みんなでインドアゴルフを楽しめるんです。クラブやシューズのレンタルもあるので、手ぶらでOK。ゴルフ未経験の友人を誘ってまずはボールを打ってみる、なんて楽しみ方が人気です。
ブリヂストンゴルフガーデンTOKYO
東京都千代田区丸の内1丁目6番1号
丸の内センタービルディング 1階
TEL:03-5218-1011
定休日:祝日
営業時間:平日:7:00〜22:00
土日:10:00〜18:00
料金:ドライバーフィッティング-7500円(60分・税込)
トータルフィッティング-12000円(100分・税込)
TOUR Bパーソナルメソッド-97,200円(50分×5回・税込)など
詳細はお問い合わせください。
完全予約制
フィッティングの詳細はコチラ
パーソナルレッスンの詳細はコチラ
最後はPING(ピン)です。こちらは編集部のNさんが行ってきてくれました。というのも私オグさんは、PINGの公認クラブフィッターの資格を持っておりまして、私がやってもよかったのですが、やはりメーカーの方にご紹介してもらおうということで新宿のフィッティングスタジオでの取材をお願いしました。ピンはアイアンのフィッティングに特に定評があり、今回はそれをご紹介します。
ピンはフィッティングに際して独自の基準「カラーコード」を持っています。これは、身長や体格に合わせてクラブ長とライ角を合わせるためのものをわかりやすくしたもの。身長160cmの人と200cmの人は適正なクラブ長、ライ角が違います。それを色分けすることでわかりやすく、そして覚えやすくしてくれているのです。
こちらがカラーコードをわかりやすくした表です
身長に合ったクラブ長の目安などが書いてあります
身長と、手首から地面までの距離、手のひら、中指の長さを計測し、カラーコードと合わせてクラブの長さを仮決めします
お客さんの要望を聞き、ヘッドとシャフトを選んで試打に入ります。その後の結果を見ながら相談し、ヘッドの種類やシャフトは変わることも少なくありません
グリップも太さ違いでいろいろと用意されています
なぜここまで仔細(しさい)に調べるのかというと、ピンは「ライ角」をとても重要視しているからです。ライ角とは、地面に水平に置いたソールとシャフトの傾きが作る角度のこと。この角度が大きくなると「フラット」といって右に飛びやすくなり、反対に小さくなると「アップライト」といって左に飛びやすくなります。どんなにすぐれたアイアンでも、ライ角が使い手に合っていなければそのクラブのポテンシャルを発揮することはできません。身長や体格がそれぞれ違うのに、みな同じ長さやライ角のクラブが合うはずはありません。自分にマッチした道具を使うことで初めてゴルファー、クラブ、それぞれのポテンシャルが発揮されるとピンは考えているのです。
下記2枚の写真は同じモデルのアイアンでライ角が4度異なるもの。これだけの違いかと思うかもしれませんが、弾道に大きな影響を与えるんです。
カラーコードや手の長さなどで導き出されたクラブの長さやライ角でクラブを組み、次は試打に入ります。カラーコードや手の長さで決まったライ角はあくまでスタートライン。重要なのは、実際に打ったときの「インパクトのライ角」が合っているかどうかなんです。なぜなら、スイング中にシャフトがしなり、インパクト付近ではヘッドの先端が下を向く「トゥダウン」という現象が起こります。すると、構えたときのライ角と微妙に異なる角度で当たります。この角度がボールの行方に大きな影響を及ぼすのです。さらにここで、ゴルファー個々のスイングのクセ(手首や腕などを動かすタイミングやスピードの違い)が入ってくるため、インパクト時のライ角は人によってさまざまなんです。ですから、実際にスイングしたときのライ角に合わせることが非常に重要なのです。
アイアンのソール面にシールを貼り、このライボードの上でボールを打ちます。適正なライ角でインパクトできているかを見るためです
違うライ角のアイアンをNさんが2本打ってみました
上はソールの真ん中に当たっているので適正、下は真ん中からずれた位置で当たっているため、ボールはまっすぐ飛びません
このように、ピンではライ角に重きをおいたアイアンフィッティングが行われています。アイアンがどうもまっすぐ打てない、そんな悩みを抱えている方はもしかしたらライ角が適正でないのかもしれません。また、ピンではアイアンを1本からオーダーできるため、長い番手と短い番手を異なるモデルで組み合わせることも可能です。
中には7、9、W、Uの4本をオーダーした女性のお客さんもいたそうです。うまくなったら間の番手を足すんですね
ピンでは独自に開発したアプリとスマートフォンを用いたパターフィッティングも行っています。スイングテンポやアーク(スイング中ヘッドが描く軌道)を確認し、動きに合わせた使いやすいパターを提案してくれます。大型ヘッドが合っていると自分で思っていた方が、実は小振りなパターのほうが合っていたなんてことは日常茶飯事です。
パターにスマホを取り付けて計測します
「ライ角」に重きをおいたピンフィッティング、いかがでしたか? 実はパターもライ角を調整できるんですよ! 自分ではいいスイングをしているのに球が散っている方は、一度適正ライ角を測定しに行くのもいいでしょう。
PING フィッティングスタジオ
東京都新宿区西新宿2-4-1
新宿NSビル1階
予約専用TEL:03-6327-5226
定休日:火曜日
営業時間:平日11:00〜20:00
土日祝9:00〜18:00
料金:無料
完全予約制
詳細はコチラ
フィッティングはうまくなってからするものとか、下手なうちは受けても意味がないとかいう方がいらっしゃいますが、そうではありません。むしろある程度打てるようになったらなるべく早く受けたほうがいいと私は思っています。自分に合わないクラブで練習しても上達するスピードが遅くなるだけだからです。フィッティングを受けて自分にあったクラブで練習するほうが上達スピードは何倍も上がるはず。うまくなりたいと考えている方は、ぜひフィッティングを受けましょう〜!
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