特別企画
ユーザー体験のさまざまな側面を最新技術や仕組みを使って解決

世界最大の映像配信サービス「Netflix」を支える最新技術に迫る

「Marvel アイアン・フィスト」の3月17日の世界同時配信スタートに先駆けて、米国・カリフォルニア州のロスガトスにあるNetflix本社で行われた「Netflix Lab Day 2017」。昨日公開された全世界配信開始の舞台裏のレポート記事に引き続き、ここでは「Netflix Lab Day 2017」で披露された世界最大の映像配信サービスを支える世界一の技術の数々を紹介していこう。

米ロスガトスのNetflix本社を取材

米ロスガトスのNetflix本社を取材

本社エントランスにはNetflixの映像技術に対する貢献を称えるトロフィーが多数飾られている

本社エントランスにはNetflixの映像技術に対する貢献を称えるトロフィーが多数飾られている

すべてのデバイスで快適に視聴できるUIとビッグデータによるパーソナライゼーション

薄型テレビはもちろん、スマホ、ゲーム機といったさまざまなデバイスで視聴できるNetflix。こういった異なるデバイスに対して同一のサービスを提供する上で、もっとも重要になるのがUI(ユーザーインターフェイス)だ。リモコンやタッチパネル、コントローラーなど、入力インターフェイスはデバイスによってまったく異なるが、同社はそういった違いをユーザーが意識することなく、どんなデバイスでも快適に使えるよう、常に改良を続けているという。

ユーザー体験を監修するNetflixプロダクト・イノベーション担当バイスプレジデントのトッド・イェリン氏

ユーザー体験を監修するNetflixプロダクト・イノベーション担当バイスプレジデントのトッド・イェリン氏

UI改良をする際の手法としてNetflixが用いているのが、Netflixの全世界約9380万人のNetflix会員のビッグデータの活用とABテストという手法だ。ABテストというのはユーザーの知らない間にUIデザインを変えたパターンを表示して、統計的・機械的に学習して改良する手法。このABテストを繰り返し行い、改良を重ねていくことで、よりよいユーザー体験を追い求めているのだ。

また、NetflixのUIを語るうえで欠かせないのが“パーソナライゼーション”だ。Netflixでは、ユーザーの好みを1300のコミュニティーに分類し、その趣向に応じてレコメンド表示する内容をカスタマイズしている。そのカスタマイズ内容を決めるのに使われるのが、ユーザーの“視聴履歴”。同社によると、基本的な考え方としては、「ユーザーがどんな番組を視聴したのかがもっとも重要」だという。もちろん、視聴履歴だけではレコメンドされる作品の傾向が偏ってしまうため、同時にリストの多様性も確保する配慮を行っているという。

ユーザー別にパーソナライゼーションして表示されるNetflixのUI

ユーザー別にパーソナライゼーションして表示されるNetflixのUI

Netflixには視聴した作品を5つ星でレーティングする機能もあるが、数週間後にはこのレーティング機能もリニューアルされ、親指上下の「いいね!」風のデザインに変更されることも初公開された。同時にユニークな機能として、Netflixのアルゴリズムへのマッチング率を55〜100%マッチというようにユーザーも確認できる仕組みになる。

UIの改善、そしてパーソナライゼーションをビッグデータから調査し改良を続ける、そんな所がNetflixのカルチャーという訳だ。

数週間先に5つ星レーティングに変わって実装される「いいね!」風の評価システム

数週間先に5つ星レーティングに変わって実装される「いいね!」風の評価システム

快適に視聴できるテレビを定めた「Netflix RECOMMENDED TV」

Netflixを視聴できる機種は、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などさまざまあるが、特に薄型テレビには「Netflix RECOMMENDED TV」という基準も設けられており、その検証もすべてロスガトスのNetflix本社で行われている。

「Netflix RECOMMENDED TV」の基準は毎年アップグレードされているが、2017年版「Netflix RECOMMENDED TV」の基準は3月17日に公開された。 公開時点の対応モデルはLG、サムスン、ソニーの3社の一部機種だ。

「Netflix RECOMMENDED TV」を監修しているのがNetflix チーフ・ビジネス・ディベロップメント・オフィサーのビル・ホームズ氏

2017年版「Netflix RECOMMENDED TV」対応モデル

2017年版「Netflix RECOMMENDED TV」対応モデル

その基準は以下の6つだ。

・「TV Instant on」(テレビの高速起動)
・「Fast App Lunch」(アプリの高速起動)
・「Netflix Button」(リモコンにNetflixボタンがあり電源オフから直接起動すること)
・「Easy Netflix Icon Access」(TVメニューから簡単にアクセスできること)
・「TV Resume」(Netflix視聴時に電源を落としてもNetflix視聴画面に復帰すること)
・「High-res Netflix Interface」(1080p解像度のNetflixのUI表示に対応すること)

以上の基準をみると実際にNetflixを使っていれば、たしかにそうであって欲しいと思うことばかりだ。特に日本人の基準として面白いのが「TV Resume」で、実は以前の機種ではNetflix視聴中に電源を落とすと復帰時には放送画面に戻ってしまい、そこからNetflixを起動すると2分近くかかってしまうことがあった。これを「Netflixボタン」で復帰すれば、すぐに視聴中の番組へと復帰できるという訳だ。これはまさに、インターネット放送をTVチャンネルのように扱う時代だからこそ必要な基準だ。

世界190か国に作品を配信するコンテンツデリバリー

Netflixの映像配信の技術の会社たらしめているのが、全世界190か国で映像配信を手がけている実績だ。Netflixはインターネットの回線を使って届けられるが、コンテンツデリバリーの考え方としてインターネットプロバイダーに無料の「Open Connect Appliances」を公開し、Netflixの作品が配信される作品のインターネット回線をプロバイダーにダイレクトに配信されている仕組みがとられている。

日本のように米国外の地域で新作を配信する際には、トラフィックの空いているタイミングにコピーすることで自動的に地域内のほかのサーバーで共有する仕組み。サーバーはHDDとSSDで構成されたサーバーでHDDにカタログすべてを収め、アクセスの多いものをSDDに映すような仕組みがとられ、日本も含むアジア地域へのサーバーも設置が進められている。また、光ファイバーの施設も勧めている。

Netflixのコンテンツデリバリーを解説

Netflixのコンテンツデリバリーを解説

世界中のISPと提携して直接作品を届ける

世界中のISPと提携して直接作品を届ける

Netflixが自社で改善を続けているのが映像を動画として配信するエンコーダーだ。NetflixはスマートTVからスマホの小画面まで提供しているが、今注力しているのがモバイル回線。特にモバイル回線ではデータ制限にかかることを想定し、できるだけ低いビットレートでも高画質に視聴できる研究が行われている。

Netflixによるエンコードは3分単位で分割されているが、特に最新の高画質化で用いられているのが「Per Chunk Encode Optimization」という仕組みで、被写体と背景を認識することですべてのショットで最適化、ビットを割り当てるといものだ。

Netflixの会議室で行われたデモンストレーションでは、100kbs同士では圧倒的なほどに最新技術が高画質。現行の555kbpsの映像と将来の277kbsが同等か277kbsの方がキレイに見えるほど。これもNetflixの高画質と安定した配信を支えるものとなっているのだ。

以前のエンコードと新技術で100kbpでの画質を比較

以前のエンコードと新技術で100kbpでの画質を比較

以前のエンコードの555kbpsと新技術の277kbpsを比較

以前のエンコードの555kbpsと新技術の277kbpsを比較

「Marvel アイアン・フィスト」を20か国に届けた高品質な翻訳

Netflixは映像配信サービスであると同時に、自社でオリジナル作品を製作しているコンテンツの会社でもある。特に世界190か国に作品を配信する上で重要となるのが翻訳だ。「Marvel アイアン・フィスト」では実に20か国語で世界中に配信が行われている。特に重要になっているのは文化間の違いや言い回し、また翻訳者の得意とするジャンルといったものだ。Netflixは最高品質の翻訳を届けるためにソーシャルメディアなどのフィードバックを重視し、もし間違いがあればすぐに修正する対応が進められている。

Netflixのコンテンツパートナー・オペレーション担当ディレクタークリス・フェトナー氏

Netflixのコンテンツパートナー・オペレーション担当ディレクタークリス・フェトナー氏

特に難しいというコメディ作品も、各国で意味が通じるように高品質に翻訳

特に難しいというコメディ作品も、各国で意味が通じるように高品質に翻訳

また、同社は「HERMES」という翻訳者発掘プログラムを進めている。これはNetflixが運営するオンラインで受けられるオンラインテストのもので、Netflixが仕事する才能ある翻訳者を発掘し、インデックス化するためのものだ。

テストは無限とも呼べるパターンからランダムに出題され、何度受けても同じ問題が出題されないように工夫されている。英語のテストから各国語への正しい翻訳を選ぶ、TOEFLのようなテストだ。

Netflixによる「HERMES」(https://tests.hermes.nflx.io/)

Netflixによる「HERMES」(https://tests.hermes.nflx.io/)

以上、Netflixの各セクションの仕事をみると、動画視聴というユーザー体験のさまざまな側面を最新技術や仕組みをうまく組み合わせて課題解決を目指していることがわかる。全世界9380万人がNetflixを支持する理由は、そんな先進的な企業姿勢にあるのかもしれない。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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