制作陣のこだわりやHDR/Dolby Atmosといった最先端技術への取り組みを副監督に直撃

話題の3DCGアニメ『BLAME!』の制作スタジオ、ポリゴン・ピクチュアズ潜入取材レポート

このエントリーをはてなブックマークに追加

Netflixオリジナル作品として5月20日より世界190か国で配信開始された『BLAME!』(ブラム)。講談社「アフタヌーン」にて1997年から2003年に連載された弐瓶勉氏の漫画を原作として日本から世界へと発信された同作は、Netflixによるストリーミング配信だけでなく劇場映画としても上映。Dolby VisionのHDR映像と、Dolby Atmosの立体音響で制作と、テクニカル面でも最先端の取り組みが行われたビッグタイトルだ。

最先端の3DCG映画タイトルの制作はどのように進められたのか−−実際の作品制作あたったポリゴン・ピクチュアズの制作現場にアジア各国から招待されたアジア各国の海外メディアとともに潜入。副監督の吉平“Tady”直弘氏に制作の裏話を取材した。

『BLAME!(ブラム)』 Netflix オリジナル映画『BLAME!』は好評配信中©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

Netflix オリジナル映画『BLAME!』は好評配信中
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

『BLAME!』の吉平“Tady”直弘副監督

『BLAME!』の吉平“Tady”直弘副監督

『BLAME!』を制作した最新3DCGアニメーションの現場

『BLAME!』(ブラム)の制作にあたったポリゴン・ピクチュアズは、日本のアニメファンは既にご存知の人も多いかもしれないが『シドニアの騎士』『亜人』といった、2Dアニメーション風の”セルルック”による3DCGアニメを得意とする、3DCDアニメーションスタジオ。今回は『BLAME!』の副監督である吉平“Tady”直弘氏の案内で、スタジオ内で作品完成までの流れを見学させていただいたので、ますはそのレポートから。

3DCGで制作された『BLAME!』における最初の制作は、モデリングと呼ばれるキャラクターを3Dデータとして作成する作業から始まる。使用する3DCGツールは主に「Maya」で、「ZBrush」という造形ソフトを用いて服のシワといった質感を付ける組み合わせだ。

『BLAME!』のキャラクターについては「女性キャラクターのづるは日本アニメらしい“今風のキャラ”の顔立ち、もうひとりの女性キャラクターのシボは西洋風の彫りの深い顔として作った」と、その実際のモデルデータをともに解説。モデリングでは、人間の体のやわらかさとともに、メカニカルなパーツの硬さの質感を再現する部分まで制作が行われるという。

『BLAME!』のキャラクターのモデリング 『BLAME!』のキャラクターのモデリング

『BLAME!』のキャラクターのモデリング

3DCGのモデル制作の次のステップが、キャラを動かすリグを付ける”リギング”。自体の関節の繋がりを再現する形でモデルに可動部を付ける工程だ。

特に今作でもっともも強い“セーフガード”であるサナカンは「人間のような肉体とともに体に鎧のようなパーツが取り付けられており、人間のように動かすのが難しかった」キャラ。お尻にあるディスクのようなパーツの形状が崩れないように動きをつけられるように作っているという。またシボの背中には硬い弓のようなパーツがあり、その硬さを維持したまま動かすのに苦労したということだ。なお、このパーツの意味は「Netflixが『BALAME!2』に資金を出してくれたらお話します」とのことだ。

キャラクターの可動部のリグが付けられる キャラクターの可動部のリグが付けられる

キャラクターの可動部のリグが付けられる

続いて行われるのがアニメーションだ。

3DCGで行われるアニメーションとは、リギングが行われたモデルデータを実際に動きの演技を付ける工程と呼ぶべきもので、同時にシーン全体のカメラワークを付ける演出の役割も兼ねている。

『BLAME!』で特にこだわったのは、カメラワークを駆使したカッコイイアクションだ。『BLAME!』の作中のシーンで多用されたのがステディカム風のシーン。キャラ3人のシーンでは、4人目の誰かの視点のようなカメラワークを用いたもので、臨場感あるアニメーションの演出に一役買っている。ほかにもジャパニメーション作品らしい所が、リミテッド・アニメーションと呼ばれるコマ数を押さえた演出が用いられているということ。『BLAME!』全体としてはアニメーションのコマ数は可変としていて、アクションシーンでは滑らかなフルアニメーション、ドラマシーンではリミテッドという形で使い分けが行われている。

こだわったシーンとしては、づるがヘルメットを脱ぐシーン。ヘルメットがスムーズに脱げない人体の柔らかさ、また少し間を置いて見つける仕草に人間らしい動きが加えられている。こうした細かな動きの再現こそが、3DCGの世界にアリリティを与えているという訳だ。

細かな感情が込められたアニメーション 細かな感情が込められたアニメーション

細かな感情が込められたアニメーション

最後に行われるのがライティングとコンポジットの作業。これは従来の手書きアニメーションでの撮影に相当する。ライティングについては3Dソフトを用いて光の当たり方のプレビューを付けて行われ、コンポジットはキャラのモデル、背景、そして顔に付けられたスクラッチを合成していく。こういった細かな作業工程を経て、ハイクオリティなアニメーションは作られていくのだ。

『BLAME!』のこだわりを副監督の吉平“Tady”直弘氏に直撃

スタジオオツアーの後には、アジア各国のプレスとともに副監督の吉平“Tady”直弘氏への取材が行われた。

海外メディアからの質問に対応する吉平“Tady”直弘氏

海外メディアからの質問に対応する吉平“Tady”直弘氏

まず、『BLAME!』のようにポリゴン・ピクチュアズが制作するアニメーションスタジオの作品は果たしてアニメなのか? という海外メディアからの問に対しては、「日本のアニメとは大幅に違うし、ピクサーのアニメーションとも違う、キャラクターの演技のさせかたや、カット演出デザインに至るまでジャパニメーションの演出を取り入れている」として、「僕らが作っているのはCGによるVFXではない、アーティスティックなショートフィルムでもない、3DCGアニメである」と強調。

Netflixを通しての反応は、「確実にこのスタイルのファンはいますし、このスタイルを好まない人がいることもわかっています。3Dゲームが出た時に気持ち悪いと言われた時もあったし、新しいものが出た時に以前の体験由来の違和感はあります。手書きと同じではなく、受け入れられるようにしていく」とのことだ。

3DCGによるアニメーション制作については、ポリゴン・ピクチュアズの制作期間と作品内の時間としては1日あたり3秒程度と、ハリウッドのアニメーションの1/3〜1/5程度で作られているという。海外メディアから手書きアニメーションと予算の違いを問われると「まず、初期費用としては3DCGアニメの方がかかります。優秀アーティストを使いキャラクターのモデルを作るためです。ただし1シーズン24話、2シーズンという形で作っていくとアセット(投資)を回収していけるし、僕らのアニメーションの生産性としてはクオリティを安定させて長く作っていくと、リユースもできる」と、3DCGの効率的な制作体制が明かされた。

作品の質問から3DCGの制作までに及ぶ幅広い質問が行われた

作品の質問から3DCGの制作までに及ぶ幅広い質問が行われた

『BLAME!』の映像にHD/HDRというフォーマットが用いられたことに対しては、「HDRというのは制作初期からあり、技術的なアプローチとしてはレンダリングのツール、納品の作り方を変えています。ただし、同時に考えたのはHDRで観るお客様の割合で、HDRで作ったものを単純でSDRで観た時に劣化したバージョンになってしまってはいけないということ。映像制作時には暗闇と光の階調をフルレンジで持つようにして、照明としてドラマが描き出される演出にしました。SDRでも観られるし、HDRではさらに作品の魅力が現れるようにしています」とのことだ。

4Kではなく「HD」(2K)であることについては「単純にいうとバジェットとしての問題ですが、技術的には“4K/HDR”も考えたワークフローが作ってありました。ただ、技術の過渡期の今、劇場で上映するということも考えて、2年前に決めた時点でHD/HDRのフォーマットを選びました」とのこと。3DCG制作なので、4K制作への対応についても技術的には容易に可能とのことだ。

7月28日より、Netflixが『BLAME!(ブラム)』のDolby Atmos配信を全世界でスタートさせたことは別記事でもレポートしたが、このDolby Atmos採用については、「新しい技術を使っているという付加価値として採用を決めた」とのことだ。

同日ドルビー・ジャパンで行われたHDR/HDRの比較デモ

同日ドルビー・ジャパンで行われたHDR/HDRの比較デモ

LGエレクトロニクスの最新有機ELテレビを用いたDolby Atmosのデモも行われた

LGエレクトロニクスの最新有機ELテレビを用いたDolby Atmosのデモも行われた

海外メディアとともにポリゴン・ピクチュアズで取材に実際にあたってみると、やはり日本初の3DCGアニメーションという作品のユニークな立ち位置、そして『BLAME!』という作品を成立させたNetflixとポリゴン・ピクチュアズの先進性がよくわかる。

3DCGでアニメの常識も変えていく、そんな両社の今後の取り組みとさらなる新作のリリースにも期待しよう。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
特別企画最新記事
特別企画記事一覧
2017.8.9 更新
ページトップへ戻る