アンビエント機構搭載イヤホンの新たな使い方発見!

どれがベスト? Westone「AM Pro」シリーズで映画と音声ガイダンスの相性をチェックしてみた

このエントリーをはてなブックマークに追加

WestoneのユニバーサルIEM「AM Pro」シリーズは、なかなかに個性的でユニークな存在だ。というのも、密閉性の高いカナル型イヤホンであるのにもかかわらず、外部の音がしっかり聴こえるという、普通には相容れないはずの特徴をあわせ持つ製品となっているからだ。

Westone「AM Pro」シリーズ

実はこちら、アンビエント型や開放型イヤーモニターなどと呼ばれるキャラクターを持つ製品で、ステージ上でモニターイヤホンとして活用できる遮音性と装着感を確保しつつも、まわりの音が多少なり聴こえるようにするという、アーティストのリクエストによって作られたもの。一般的には、シェルに穴を空けるなどして外部の音を取り入れることになるのだが、この方法だと外の音は聴こえるようになるものの、イヤホン本来の音がバランスを崩してしまうことがある。それを独自の手法を使って解決したのが、今回取り上げる「AM Pro」シリーズだ。

キモとなっているのは、シェル外側に配置されたフィルターと内部空間をつなぐ、独自技術「SLED」ユニットによる特殊な構造の部分。これによって、イヤホン本来の音質低下を防ぎつつ、外部の音もしっかり聴こえる製品となっている。

周囲の音はWestoneロゴをあしらった「TRUオーディオフィルター」を通って内部に取り込まれる

周囲の音はWestoneロゴをあしらった「TRUオーディオフィルター」を通って内部に取り込まれる

写真はAM Pro30の分解図。緑色のパーツが特許技術の「SLEDテクノロジー」のキモになるパーツだ。このパーツにより、周波数レスポンスを下げることなく、周囲の音とイヤホンから流れる音を自然にミックスしているというわけだ

このように、アンビエント型ユニバーサルIEM(ステージモニター)として生み出された「AM Pro」だが、先日、ひょんなことからまったく別の活用方法を思いついた。それは、映画館で“音声ガイダンス”と“映画本来の音”を同時に楽しむという、画期的な方法だ。

音声ガイダンス用のイヤホンは、一般的には片耳のカナル型が多く、映画を見る場合などは“片耳で音声ガイダンス”を聴きつつ“もういっぽうの耳で映画の音”を聴くことになる。これだと、“音も含めた”映画本来の魅力を存分に楽しむことはなかなか難しい。しかしながら、「AM Pro」はイヤホン音声を聴きながらもまわりの音も届いてくるという特徴がある。映画館の音声が比較的大きいこともあり、音声ガイダンスと映画そのものの音が巧みにバランスしてくれるのでは、と思いついたのだ(このアイディアはWestoneの開発者であるカールライト兄弟にも「ナイスアイディア!ほかに美術館などでも使えるかも!」と言ってもらった)。

そこで、筆者がシステムコーディネートのお手伝いをしている日本初のバリアフリー映画館「Cinema Chupki Tabata(シネマチュプキタバタ )」に、実験的に導入していただくことにした。結果、評判は上々。音声ガイダンスの音を聴きつつ映画を楽しめると、試してみた方々から肯定的な感想をいくつもいただいた。

Cinema Chupki Tabataは、目の不自由な人や耳の不自由な人でも映画を楽しめる日本初のバリアフリー映画。映画館の座席には、音声ガイドや本編の音の増幅ができるイヤホンジャックが用意されており、今回はこちらを使って検証を行った

そこで、試してみたくなったのが“どの「AM Pro」が映画館でベストなのか”ということだ。「AM Pro」シリーズにはフルレンジBAドライバーを1基搭載する「AM Pro10」、2BAドライバーによる2ウェイシステムを搭載する「AM Pro20」、BAドライバー3基による3ウェイ構成の「AM Pro30」という、3モデルがラインアップされている。また、耳型を採取して作るカスタムIEMにも、「AM Pro」シリーズと同じアンビエント機構を備えた「EAS」シリーズがラインアップされている。そこで「劇場版ガールズ&パンツァー」上映中の「Cinema Chupki Tabata」に「AM Pro」3機種と、「EAS」シリーズのトップエンドモデル「EAS30」を持ち込んで、相性の程を試してみた。

ちなみに、「Cinema Chupki Tabata」の音響設備については、アニメ音響監督の岩浪美和氏がサウンドプロデュースを行っており、「劇場版ガールズ&パンツァー」上映についても音響監督自身が調整を行っている。また、こちらの音声ガイダンスは秋山優花里役の中山育美さんが担当(何と取り下ろし!)したこともあって、一般の人もガイド音声を聴きつつ本編を楽しむという、とても個性的な上映となっていた。

ということで、この上映会で試してみた感想を、製品ごと個別に書いていこう。

AM Pro10

AM Pro10

AM Pro10

フルレンジBAドライバーの特徴か、ぐっと前に出てきたかのような、ハキハキとした言葉が聴こえる。「劇場版ガールズ&パンツァー」の爆音の中でも、しっかりと声が届いてくる印象だ。逆にいえば、音声ガイダンスの存在感がやや強過ぎるようにも感じられ、ボリュームを多少なり下げたくなる。さらに驚いたのが、まわりの映画の音声と、解像感の不一致が感じられたことだ。これは、音声ガイダンスと映画自身の音声とが聴感上一体化した結果の違和感なのだが、こちらに関しては「AM Pro10」の内外のサウンドミックスの自然さを褒めるべきだろう。ちなみに、「Cinema Chupki Tabata」の音響設備は優秀な解像度感を誇るため、一般的な環境ではそれほどの違和感はないはず。美術館や博物館で音声ガイダンスを聴きながらいろいろと見て回るには、こちらのほうがいいかもしれない。この映画館ならではの特殊な感想、といえる。

AM Pro20

AM Pro20

AM Pro20

音声ガイダンスは、正面のちょっと距離の奥まった位置に定位。高域特性がよくなったのか、声の通りもとくなり、小さめのボリュームでもよく届く。映画を見つつ、音声ガイドも聴きたい、という今回の活用方法には絶妙なマッチングを見せるバランスだ。「AM Pro10」よりも確実に向上した解像感によって、映画自身の音声との馴染みも良い。

今回のような、外部の音をしっかりと取り込みたい活用方法、場合によってはイヤホン音声が脇役となる場合も考え羅列活用方法には、相性のいい製品といえる。

AM Pro30

AM Pro30

AM Pro30

3ウェイ3BAドライバーによる恩恵か、表現力の高いメリハリに富んだサウンド。中山育美さんの声が、とても感情豊かに聴こえる。音の広がり音も大きく、リスニング用途では3モデル中最も上質なサウンドといえるだろう。

しかしながら、今回の活用の仕方では“音がよすぎて”そっちに目が行きすぎてしまい、かえって内外のバランスは取りづらい。音声ガイドがメイン、映画そのものの音はBGM的に聴こえればよいというニーズにはピッタリだが、個人的には情報量がありすぎるという、贅沢な感想を持った。とはいえ、普段はイヤホンとして活用し、時々今回のような使い方もする場合は、この「AM Pro30」も魅力的な候補となりうる。まあ、そういったシチュエーションはあまりないかもしれないが。

EAS30

EAS30

EAS30

高域・中域・低域にそれぞれ1基のBAドライバーを搭載した3ウェイ構成のカスタムIEM。基本システムは「AM Pro30」とほぼ同じだが、遮音性の高さによるものか、音声ガイダンスがさらにピュアに聴こえる。目の前で中山育美さんが話しかけてくれているかのようだ。また、外部の音は完全に分離して聴こえ、レイヤーの異なる空間に広がっているかのような隔絶感がある。よって今回のテーマ、音声ガイダンスと映画の音を合わせて楽しむという点ではもっとも不利だが、外部音声にまったく影響なく、イヤホンの音が十全に届いてくる点ことには感心させられた。今回のようなシチュエーションではなく、屋外で音楽を聴くにはピッタリの製品といえる。

まとめ

このように、結論としては「AM Pro20」のバランスのよさが光るカタチとなった。しかしながら、美術館や博物館などまわりの音も聴こえつつも音声ガイドを優先したいシチュエーションでは、言葉が聞き取りやすい「AM Pro10」がよさそう。いっぽうで、あくまでもイヤホン音声側のクオリティを重視したい場合は、「AM Pro30」または「EAS30」がピッタリともいえる。好みによっても、結論は多少変わってくるはず。あまり“映画館で音声ガイドを楽しむ”というシチュエーションは少ないかもしれないが、(「Cinema Chupki Tabata」では「AM Pro10」が貸し出しされていたりするので)機会を作って積極的に体験してほしい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
特別企画最新記事
特別企画記事一覧
2017.11.17 更新
ページトップへ戻る