11月下旬発売の最新モデル「FXA11」の音質レビューも掲載

ギターの名門・Fenderが手がけるイヤホン全8モデルを徹底的に聴き比べてみた!

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ギターの名門・Fenderが手がけるイヤホン全8モデルを徹底的に聴き比べてみた!

音楽好きで知らない人はいない名門楽器メーカー、Fender(フェンダー)は、2016年からユニバーサルフィットタイプのIEM(インイヤーモニター)をリリースしており、プロ用としてだけでなく“リスニング用途”としても魅力のある製品として注目を集めている。というのも、何を隠そうこちらの製品、過日Fenderに買収されたカスタムIEMメーカー「Aurisonics」社が製作を担当しており、その背景により発売当初から完成度の高い製品がリリースされていたからだ。

とはいえ、ミュージシャン向けのプロ用製品という確かなコンセプトが与えられたことや、Fenderからのリクエストやアドバイスなどもあったのだろう。既存のAurisonics製品をベースとしつつも、着実なサウンドクオリティの進化やギターと同じ塗装技術を使った外観のクオリティアップなど、旧モデルとは一線を画す良質な製品に仕上がっているのは確かだ。これぞ、企業買収が良質な製品を生み出す好例のひとつかもしれない。

いっぽうで、リリース当初から5モデルをリリースし、その後3モデルが加わって現在8モデルものラインなアップを用意しているのは、過去にIEMメーカーとしてのベースがあってこそだが、ここまで幅広いラインアップを取りそろえると、どの製品がどういった特徴を持っているのかが分かりづらく、自分にとってベストな製品はどれになるのかを判断しづらいのも確か。そこで、今回の記事ではFender製イヤホンを全製品集めて、それぞれの特徴を紹介していきたいと思う。

まずは全8モデル共通の特徴をおさらい

では、まずはシリーズ共通の特徴から。これは、Aurisonics時代から続く独自技術なのだが、Fender製イヤホンには「Groove-tuned ベースポート」と呼ぶ空気孔を採用しており、これによって歪み感のないクリアな低域再生を実現している。また、2機種をのぞく“FXA”シリーズでは、3Dプリンターによって作り上げられたボディシェルを採用しているが、こちらによって各モデルに最適なドライバー位置/ポート位置を確保して、それぞれにベストなサウンドを追求(モデルによって形状やダンパーの種類などが違っているそうだが詳細は企業秘密のようだ)。同時に、外観デザインは数千以上の耳型を採取した成果から作り上げられ、オリジナルデザインのイヤーチップも合わせて、装着時の心地よさと遮音性の高さも両立させているという。また、最エントリーの「CXA1」を除くすべてのモデルで、MMCX端子または2pin端子による着脱式ケーブルが採用されている。このあたりも、IEMらしい仕様といえる。

Fender製イヤホンのアイデンティティともいえる「Groove-tuned ベースポート」

Fender製イヤホンのアイデンティティともいえる「Groove-tuned ベースポート」

さて、ここからは各モデルについて話していこう。先に挙げたが、現在Fender製イヤホンには、新製品の「FXA11」を含めて8モデルがラインアップされている。そこで、まずは各製品の主立った特徴をピックアップしてみた。

Fender製イヤホン全8モデルの特徴

Fender製イヤホン全8モデルの特徴

ご覧いただければ分かるとおり、ドライバー構成は高級IEMではポピュラーなBA(バランスド・アーマチュア)マルチもあるが、最上級モデルも含め、BAとダイナミックを掛け合わせたハイブリッドタイプが多いことに気がつくことだろう。実は、Aurisonics時代からこのハイブリッドモデルが好評で、Fenderになってもそれは引き継がれているのだ。さらにいえば、「Groove-tuned ベースポート」そのものが、コンパクトなボディシェルでハイブリッド搭載を実現させるための手段でもあったりする。ゆえに、Fender製イヤホンの音質的な特徴を知りたいという場合、まずはハイブリッドモデルから視聴してみることをオススメする。

全8モデルを横並びにして一斉に聴き比べ

ということで、ここからはお待ちかね、各モデルそれぞれの特徴やサウンド傾向について紹介していこう。

FXA11(4BA+14.2mmダイナミック)

FXA11

2017年11月より発売が開始された、Fender製イヤホンの最新モデルにして新しいフラッグシップモデル。ドライバーは高域用BA2基、中域用BA型2基、ダイナミック型1基という、5ユニットによるハイブリッド・ドライバー構成を採用するモデル。このうち、ダイナミック型ドライバーはシリーズ最大の14.2mm口径を搭載している。また、2pinコネクターを採用する着脱式ケーブルは、導体に銀メッキ仕上げの低酸素銅が使われている。また、ケーブルは標準の3.5mm端子に加え、2.5mmバランス端子ケーブルも同梱されている。

4BA+ダイナミック型というドライバー構成の割に、ボディシェルはコンパクトにまとめられており、装着感は良好。そして、肝心のサウンドはというと、豊かな低域の響きをともなった、厚みのある音。広がり感のある、やさしい響きの低域と、伸びやかさはあるものの刺激の少ないセンシティブな高域とが組み合わされており、ハイファイ調とも呼ぶべき落ち着いた印象のサウンドキャラクターが作り上げられている。チェロは芯がやや曖昧だが、そのぶん心地よい響きを楽しませてくれる。男性ボーカルも、ちょっと鼻にかかったやさしい歌い方をしているのだが、これはこれで好印象だ。とはいえ、もっとも一番マッチしていたのは女性ボーカルだろう。たとえばサラ・オレインを聴くと、ほんの少しかすれた、いつもより美しさの増した響きの、情感豊かな歌声を楽しませてくれる。ほかにも何人か女性ボーカルを聴いてみたが、総じて大人っぽい、それていて自然なエコーがかけられたような、響きの美しい歌声が印象的だった。

心地よいサウンドを楽しみたい。できれば長時間、ストレスなく楽しみたい。そんなニーズにマッチしそうな、とても聴き心地のよいサウンドだ。

FXA9 (6BA)

FXA9

このモデルのために新規開発されたというBAドライバーを、高域用に1基、中域用に1基、低域用2基、超低域2基搭載。合計6基のBAドライバーによる「HEXAD configuration」と呼ぶシステムが採用されているハイエンドモデル。また、超低域を担当する2基のBAドライバーには、「Groove-tuned ベースポート」技術が投入され、ポートを設けるとともに、超低域2基のための専用チャンバーが組み合わされている。これによって、一般的なBAマルチ・イヤホンとは一線を画す、独自のサウンドを作り上げることができたという。また、ノズル部分の音導管にはベリリウム鋼材をチョイス。これに24k金メッキを施している。

着脱式ケーブルはMMCX端子を採用。カラーバリエーションはカメレオン、ブロンズ、ホワイトの計3色が用意されている。

中高域に関してはごくごく一般的なBAマルチとそう変わりないサウンドといっていい。解像感が高く細部のディテールまで感じられ、同時にキレのよいリズムを聴かせてくれる。とはいっても、音色傾向に関してはFenderならではのといえるもので、耳障りな印象が一切ない、落ち着き感のある絶妙なチューニングが好ましい。また、低域も程よいフォーカス感を保ちつつ、たっぷりとした量感や聴き心地のよさも確保しているあたり、Fenderらしさを感じる。結果として、音楽ジャンルの相性は「FXA11」ほど選ばす、まずまずのオールラウンダーさを発揮する。オススメは、アース、ウインド・アンド・ファイアやTOTOなどの洋楽ロック/ポップス系。Jポップを楽しむのも悪くない。

FXA7 (2BA+9.25mmダイナミック)

FXA7

高域用のBAドライバー2基と、9.25mm口径のダイナミック型ドライバーを組み合わせたハイブリッドモデル。もちろん、ほかのモデル同様、「Groove-tuned ベースポート」技術や3Dプリンターで製作されたボディシェルが採用されている。MMCX端子採用の着脱式ケーブルは、導体に銀メッキの低酸素銅ケーブルがチョイスされている。ボディカラーはゴールドとメタリックブラックの2色が用意されている。

カラッと晴れ渡った青空のような、のびのびとした軽快な高域と、たっぷりとした量感を持ちつつも、芯のしっかりした低域のアンサンプル。それでいてどこかやさしげな響き。これぞFenderイヤホンを代表するサウンドといいたくなる、キャラクターの際だった音だ。おかげで、アース、ウインド・アンド・ファイアなどを聴くと、グルーブ感の高い生き生きとしたサウンドが楽しめるし、RADWIMPSなどのJポップ/Jロック系も、普段より幾分パワーの増した、勢いのある演奏が楽しめる。いっぽうで、ボーカルは男性も女性も歌声自身はニュートラルなのだが、普段より力のこもった、活気ある得た声に聴こえるから面白い。抑揚の表現が、普段よりちょっとだけ大きく感じるのだ。なかなかに絶妙なバランス、チューニングといえる。ロックやポップスなどをメインに、ボーカルものをメインに聴く人にオススメしたい。

FXA6 (1BA+9.25mmダイナミック)

FXA6

高域用のBAドライバー1基と、9.25mm口径のダイナミック型ドライバーを組み合わせたハイブリッドモデル。このうち、ダイナミック型ドライバーには「Groove-tuned ベースポート」技術が組み合わされている。また、3Dプリンターによって製作されたボディシェルは、コンパクトにまとめ上げられており、独自のイヤーチップとあわせ、良好な装着感を提供してくれる。MMCX端子採用の着脱式ケーブルは、導体に銀メッキの低酸素銅ケーブルがチョイスされている。ボディカラーはレッドとメタリックブラックの2色が用意されている。

システム的には「FXA7」のBAドライバーを1基に減らしただけのようにも思えるが、そのサウンドキャラクターはかなり傾向が異なる。BAドライバー数が減ったため、より直接な音になり、聴感上のクリアさが高まって、清々しい印象の音色へとなっているのだ。とはいえ、高域は「FXA7」などの上位モデルと変わらず、ハイハットがざらつかない、ジェントルな表現だし、低域の量感もたっぷりとした量感を与えられている。結果として、Fenderならではの特徴を維持しつつも、聴き馴染みのよいポップなサウンドにシフトしている。和洋問わずポップス系をメインに聴く人には、こちらを試してみて欲しい。

FXA5 (2BA)

FXA5

高域用1基、低域用1基のBAドライバーを搭載したモデル。このうち、低域用のBAドライバーに「Groove-tuned ベースポート」技術が組み合わされている。

MMCX端子による着脱式ケーブルは、上位モデルと同じく銀メッキの低酸素銅導体を採用する。ボディカラーはレッドとメタリックブラックの2色が用意されている。

BAドライバーらしい音色傾向ではあるものの、帯域バランスや、押し出しの強さよりも聴き心地のよさや広がり感を重視した低域など、中域を大切にしたチューニングはFenderならでは。イヤーモニターの種類でいえば、ボーカル用のステージモニターといってイメージか。とにかく、歌声がグッと前に押し出してきて、明朗快活な歌声を聴かせてくれる。なお、ボーカルは基本的にはニュートラル志向で、高域の倍音特性がすぐれているのか、張り上げた声が伸びやかに聴こえる。また、ほんのちょっとだけファニーな要素も混ざっていて、女性ボーカルがどことなく可愛らしく感じられるのもいい。女性ボーカルをメインに聴く人にオススメしたい。

FXA2 (9.25mmダイナミック)

FXA2

3Dブリンターによって製作されたボディシェルをもつ、FXAシリーズのエントリーモデル。ドライバーは、上位モデルと同じ9.25mm口径のダイナミック型が搭載されている。IEMとしてはある意味希少な、ダイナミック型ドライバーをシングルで搭載するモデルだ。

ボディカラーはブルーとメタリックブラックの2バリエーションを用意。上位機種同様、MMCX端子による着脱式ケーブルが採用されている。

基本的にはとても自然な音色で、解像感も広がり感もなかなかのレベルを持ち合わせている。チェロの演奏などはリアルさを感じる音色で、ピアノの響きも美しい。小編成によるアコースティック楽器の演奏、スローテンポのジャズなどとは相性がよさそうだ。いっぽう、ボーカルものは「FXA5」のようなボーカルにフォーカスしたものではなく、全体を俯瞰的に、バランスよく聴かせてくれるイメージ。バスドラムやベースの音色が小気味よく響き、それにギターや歌声が重なった、一体感のあるサウンドを聴かせてくれる。自然な音色、ニュートラルな帯域バランスや定位感を持つサウンドが欲しい、という人は気に入ってもらえそうだ。

DXA1 (8.5mmダイナミック)

DXA1

チタン製8.5mm口径ダイナミック型ドライバーを搭載するエントリーモデル。ボディシェルはコストとサイズの両面から3Dプリンターではなく型を使ったものを採用。コンパクトで扱いやすい、コストパフォーマンスの高いモデルを作り上げている。

ボディカラーはスモークがかったクリアをチョイス。MMCX端子による着脱式ケーブルも採用している。

鳴りっぷりのいい、ダイナミックな音。古典的なイヤーモニターとでも例えるべきサウンドキャラクターで、バスドラやベースの音がクッキリハッキリしており、グルーブ感の高いサウンドが楽しめる。ボーカルも明瞭で、男性ボーカルは歌い方の強弱や感情表現がよく伝わってくる。いっぽう、女性ボーカルはややウォーミーな、距離感の近い歌声が楽しめる。逆に、弦楽器などはもうちょっと細かいニュアンス表現が欲しいところだが、価格を考えると相応といえる。

CXA1 (8.5mmダイナミック)

CXA1

搭載されるドライバーは8.5mmダイナミック型で、シェルデザインもほぼ「DXA1」と変わらないが、iOS/Androidの両OSに対応したインライン・リモコンを付属したケーブルを採用するなど、よりコンシューマー向けにフォーカスした製品となっている。ボディカラーはブルーとブラック、ホワイトの3色がラインナップされている。

ドライバーも筐体もほぼ同じであるにもかかわらず、「DXA1」とはまったくといっていいほどサウンドキャラクターが異なる。ピュアでジェントルな、バランスのよいサウンドが楽しめるのだ。たとえばチェロを聴くと、ボーイング時の直接音はそれほど感じられないものの、すっきりとした心地よい響きを楽しませてくれる。ピアノの音も、弾んでメロディアスに感じられる。定位感の確実さ、帯域バランスのよさは「FXA5」に近いが、プラスして、しっかりとボーカルが前に出てきてくれているところがいい。おかげで、女性ボーカルは距離感の近い明瞭な歌声を楽しめるし、男性ボーカルもメリハリがよく艶やか。なかなか魅力あるサウンドだ。音楽ジャンルもあまり選ばず、さまざまなサウンドが楽しめのもいい。

まとめ

このように、フェンター製イヤホンは、共通するエンジニアリングやサウンドポリシーこそしっかりしているものの、あえて各モデルの個性を強調する方向でまとめ上げたかのような、それぞれバラエティーに富んだサウンドキャラクターを持ち合わせているのが特徴だ。当然、使い方や音の好みによってベストとなる製品が変わってくるので、是非とも実際に試聴して、自分にピッタリの1台を見つけ出して欲しい。

ちなみに、「FXA11」と「FXA9」はぜひ一度聴いてもらいたい製品だが、用途をリスニングに限定した場合、コントパフォーマンスも加味すると「FXA7」「FXA6」「CXA1」あたりが筆者としてはオススメだ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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2017.12.9 更新
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