大画面テレビが自宅にある人も多いと思うが、映画やゲームを本格的に楽しむなら映画館さながらのスクリーンや壁への投写による80〜100インチクラスの大画面にチャレンジしてはどうだろうか。
“ホームシアター”と呼ぶと映画好きの大金持ちの趣味と思われがちだが、近年低価格化が進んでおり、予算は10万円以下から始められる。導入ついても、専用ルームではなくリビング設置、さらに設置スペースも取らない超短焦点タイプも登場し導入のハードルもグッと下がっている。
映画好きの趣味というだけでなく、ゲームを大画面でプレイしたい、レコーダーを接続してスポーツ中継を家族や友人といったスタイル目当てで導入する”カジュアルシアター”がここ最近の主流だ。
リビングを映画館にする、そんなスタイルも最近のトレンドだ
プロジェクター導入の大きな障壁となっていたプロジェクターの置き場所問題についても、壁間際の設置が可能な超短焦点プロジェクターの登場で改善しつつある
そこで今回は、自宅で大画面を実現できるプロジェクターを入門機からハイエンドの4Kまでタイプ別に紹介しよう。なお“自宅で大画面”というテーマなので、スマホとともに外に持ち出すモバイルプロジェクターは対象外としている。
実際の製品を紹介する前に、まずはプロジェクター選びで押さえておきたいキーワードについて簡単に説明しておこう。
プロジェクターのスペックでよく現れるのが「DLP」「液晶」等の映像素子。画面を投写する前にプロジェクター内部で映像を表示するデバイスのことで、各方式の中にも画素数やパネルサイズで性能がある。
プロジェクターのスペックに必ず書かれているもので、薄型テレビやスマホの画面と同じ表示解像度のことをあらわす。入門クラスは1280×720、主流は1920×1080のフルHD。ハイエンド向けの4Kモデルもあるが、3840×2160ドット以上のパネルはごく一部で、DLP、液晶それぞれ疑似4K方式も用いられている。
画面を投写するランプの最大輝度性能を表すスペック。プロジェクターの表示画質は部屋の明るさの影響を受けやすいので、できれば暗室での投写が理想だが、最大輝度が高いほど照明を付けたままでも鮮明に投写できる。
プロジェクターは離れた位置から映像を投写するが、その際に必要な距離が投写距離。日本の家庭では基本的に短い方が扱いやすい。ズームレンズにより1.x倍程度とサイズ拡大も可能だ。本記事では目安として80インチ投写時の最短距離を表記している。
プロジェクターは画面正面に設置するのが基本だが、家具が邪魔になったりとハードルが高い。高さ位置のみは各機種本体の足で調整可能だが、斜め投写やレンズシフトに対応した機種はより自由度が高く、他機種で設置できない部屋でも導入可能だ。
現在のプロジェクターはどの機種もHDMI端子による映像入力が基本なので、レコーダーやゲーム機はどれも接続可能。ほとんどの機種でD-Sub端子もあるのでPC接続も行える。Wi-FiやBluetoothでスマホやPCと接続できる機種もある。
プロジェクターは多くの機種で本体にスピーカーを内蔵している。ただし、あくまで確認程度のもので本格的に使うには別途スピーカーを用意しよう。なお、4K対応などハイエンド機ではスピーカーを省略した機種が多い。
自宅にプロジェクターを導入し、映画館のようなシアタールームを再現するのであればスクリーンも必要だ。もっとも、ホームシアター入門では白い壁でも代用可能なので本記事では省略した。別途購入するなら予算2万円程度から。
プロジェクターを導入して自宅で大画面を始める予算ギリギリと呼べるクラスが10万円以内。今回ピックップしたのは、まったく方向性の異なる3モデルだ。
2019年のプロジェクター選びで外せないモデルが「popIn Aladdin(ポップインアラジン)」だろう。世界初のスマートライトとして登場した「popIn Aladdin」は、シーリングライトとして取り付けができて、壁投写で映像を楽しむモデル。HDMI端子もなく、Wi-Fi接続で映像配信やYouTubeなどを視聴するコンセプトは従来のプロジェクターの域を超えているが、ネット配信の選択肢の増えた今なら実用品と呼べるはずだ。
照明機器を設置する天井シーリングに固定する「popIn Aladdin」。本体はAndroidベースのオリジナルソフトが内蔵されていて、YouTubeやNetflix、Amazonプライム・ビデオにも対応できる。表示画素数は1200×800ドット
画面サイズは壁との投写距離によって決まるが、約2.06mで80インチの距離となる。導入の際には壁との位置関係と距離をしっかり確認しよう。輝度スペックは700lmとほどほど
いっぽう、エプソンの「EH-TW650S」は正統派ホームシアターの入門機とも呼ぶべきモデルで、斜め投写対応など自宅に設置しやすい工夫が満載。80型のスクリーンもセットで販売するパッケージもあり、サポートの手厚さはさすが国内メーカーだ。
エプソン「EH-TW650S」は、3LCD方式でフルHDパネルを搭載したホームシアタープロジェクター。斜め横からでも投写できる「ピタッと補正」の便利さは圧倒的。輝度スペックは3100lm。80インチの最短投写距離は約1.81mとなっている
正統派とカジュアルの中間として2016年の発売以来のロングセラーとなっているモデルがソニーの「LSPX-P1」だ。入力部と投写部がワイヤレス接続、壁から約28cmで80インチ投写、スタンド設置可能とプロジェクターは異例のモデルだが、HDMI入力はしっかりある。片手で持ち運びできるほどの非常にコンパクトなモデルで、他製品と比べ設置場所も取らないし、設置も超簡単。部屋にプロジェクターを設置して投写するスペースなんて……と思っていた人もソニーの「LSPX-P1」だけはぜひともチェックしてみほしい。
ソニー「LSPX-P1」は、生活空間を映像で演出するLife Space UXコンセプトから生まれたSXRDデバイスの720pプロジェクター。壁際ぴったりで22インチ、壁から約28センチで80インチ投写に対応している。輝度スペックは100lmと若干暗めだ
スタンドに設置して壁近くにおいて設置もできるリビング向きのモデル