レビュー
ベストセラーモデル「MDR-1A」が3年超ぶりにリニューアル!

ソニー最新ヘッドホン「MDR-1AM2」は買いか? 装着感や音質を旧モデルと徹底比較

ソニー製ヘッドホンのラインアップのなかでも中核に位置するベストセラーモデル「MDR-1A」が、3年超ぶりにリニューアルが施され、「MDR-1AM2」へと生まれ変わった。

ソニー「MDR-1AM2」

ソニー「MDR-1AM2」

もともと、この「MDR-1」系モデルは、2012年に発売された「MDR-1R」をスタートとする高級ヘッドホンシリーズで、“良質なサウンドを持つポータブルヘッドホン”という明快なコンセプトが好評を博したことにより、発売直後から一躍人気モデルへと躍進。その後はBluetoothモデルやノイズキャンセリングモデル、オンイヤーモデルなどさまざまなバリエーションが誕生している。そして、2014年には2代目「MDR-1A」へと進化。デザインはそのままに、大きくクオリティアップしたサウンドによって、初代以上の人気モデルとなった。そんなベストセラーモデルに、3年超ぶりのリニューアルが施されたのだ。はたして、どういった変更が行われたのか、大いに気になるところだ。

「MDR-1AM2」という名前を見るかぎり、「MDR-1R」のときにあった「MK2」のようなマイナーチェンジのようにも感じるが、実は違う。なんと、ドライバーユニットをはじめとする音響まわりだけでなく(「MDR-1A」発売時にも行われなかった)外観デザインも一新され、音質、使い勝手ともに大きく進化したモデルに仕上がっているのだ。今回、発売に先駆けて試聴する機会を得たので、本稿では「MDR-1AM2」の進化点やサウンドをくわしくレポートしていきたい。

イヤーパッドの改良と本体の軽量化で装着感が大幅にアップ

まずは、外観から見ていこう。基本的なスタイルは先代「MDR-1A」と変わらない。しかしながら、ハウジング部がさらに小型化され、アラウンドイヤータイプとしてはギリギリの最小サイズといえる大きさへと変更。合わせて、ハウジング部にイヤーパッドと同色のカバーが掛けられ、ヨーク部もやや丸みを帯びたデザインへと変更されている。全体的には、ほんの少し柔らかいデザインにシフトした印象だ。それでいて、装着感や音質に関わる密閉性に悪影響を及ぼさないよう、イヤーパッドにはさまざまな改良が盛り込まれている。

「MDR-1A」と「MDR-1AM2」の大きさ比較

写真左が「MDR-1A」、右が「MDR-1AM2」だ。左右に並べてみると、本体サイズがかなりコンパクトになっていることがわかる

たとえば、装着時にイヤーパッドが内側に倒れ込む構造にすることで密閉性を高めたほか、表面には吸放湿性にすぐれた合皮を、内部には低反発のウレタンを採用することで、密着性と装着感を両立。加えて、イヤーパットの縫製を縫い目が頭や耳まわりに触れないコようにすることで、さらなる快適性の向上も追求している。そのほか、ヘッドホンバンド部も含めて全てのパーツを再検討し、結果として総重量を「MDR-1A」の約225gから約187g(ケーブル含まず)へと軽量化。それらによって、大きく装着感を向上させることに成功しているとアピールしている。

大きく変わったイヤーパッド部。クッション性が増し、気密性も高まったことで、「MDR-1A」に比べて音漏れもしにくくなっている

本体サイズの小型化や素材の見直し等により、「MDR-1A」に比べて約40gほど軽くなっている

本体サイズの小型化や素材の見直し等により、「MDR-1A」に比べて約40gほど軽くなっている

実際、試聴時に製品を装着してみたところ、確かに「MDR-1A」に対して“かなり軽く”感じた。わずか38gと思われるかもしれないが、総重量の17%近くも軽量化されていれば重さの印象は大きく変わってくる。また、しっとりとした触り心地と、首を左右に振ってもズレにくい安定感のあるイヤーパッドによっても、軽快感は高まってくれる。「MDR-1A」に対して、大きく装着感を向上させたのは確かだ。

「MDR-1A」と「MDR-1AM2」を装着したところ。本体が小型・軽量化されているが、イヤーパッドの改良等により、装着感はかなり向上している

ドライバーユニットに上位モデルの技術を投入。4.4mm5極バランスケーブルも標準で付属

続いて、肝心のサウンドについて触れていこう。「MDR-1AM2」では、ドライバーユニットまわりにハイエンドモデル「MDR-Z1R」で培った技術を投入。新形状のアルミニウムコートLCP振動板を採用した40mm口径ドライバーユニットを開発し、グリルにはフィボナッチパターングリルを採用。ハウジング素材に、制振性にすぐれた樹脂材料を用いるなど、先代に対してさらなるクオリティアップを推し進めている。いっぽう、ハウジングに設けたポートにより低域の音質や特性を改善する「ビートレスポンスコントロール」などは、先代に引き続き採用されている。

「MDR-1AM2」に搭載された新開発の40mmHDドライバーユニットには、フラッグシップモデル「MDR-Z1R」で採用されたフィボナッチパターングリルなど、上位モデルで培った技術が多数投入されている

また、こちらも先代同様左側からの片出しとなる着脱式ケーブルは、銀コートOFC線を採用するなど、基本的には変わらず。しかしながら、マイク&リモコン付ケーブルに加えて、4.4mm5極端子のバランスケーブルが同梱されており、ウォークマン「ZX300」などで最良の音質を楽しめる点は嬉しいかぎり。

ちなみに価格は、発売当時の実売が28000円前後だった「MDR-1A」に対して、新しい「MDR-1AM2」の実売価格は3万円前後。大幅な各部改良に加えて、バランスケーブルも同梱されていると考えると、なかなか戦略的な価格といえるかもしれない。

3.5mm4極端子を採用したマイク/リモコン付き標準ケーブルに加え、ウォークマンと組み合わせて使うときに便利な4.4mm5極端子を採用したバランス接続ケーブルも付属

方向性を変えずにさらなるクオリティアップを果たした「MDR-1AM2」

さて、先ほど装着感については紹介したので、ここからは音質についてのレビューをお届けしよう。試聴時、「MDR-1A」のサンプル機も用意されていたので、じっくり比較試聴してみた。

「MDR-1AM2」のサウンドキャラクターをひとことで表現するならば、基本は変わらず、それでいてクオリティは大幅にグレードアップ、といったイメージだろうか。とにかく、解像感の向上が際立っている。ピアノのタッチのニュアンスやチェロのボーイングの様子、ドラムのタムのたわみなど、演奏のニュアンスが事細かに伝わってくる情報量の多さを持ち合わせているのだ。

「MDR-1A」もなかなか良質なニュアンス表現だったが、どちらかというとメリハリのよさやグルーブ感の高さに目が向く印象で、ここまでの解像感や表現の緻密さは持ち合わせていなかった。対して、この「MDR-1AM2」では、全体の表現がきめ細やかになったことに加え、高域も緻密な表現となり、全体の音色傾向がずいぶん丁寧な表現へと変化したイメージとなっている。5mm方眼紙が1mm方眼紙に変わった、というほどオーバーではないが、アコースティックギターの胴鳴りがしっかりと伝わってくることで表情豊かな演奏に感じられたり、ピアノの音もホールの響きまでもしっかり伝わってくるのでライブ感が増していたりと、上質で上品な音色にシフトした印象を感じる。結果、「MDR-1A」に対して1グレード上の製品に感じられるようになったのだ。人によっては、2グレード近く上級の製品と感じるかもしれない。それほどまで、こと“音質”に関しては素晴らしいアップグレードといえる。

いっぽうで、「MDR-1A」に惚れ込んでいる人が無条件に買い換えてもOKかどうかは、あえて“条件付き”といわせてもらいたい。というのも、基本的に、メリハリよく、キレのよい低域がしっかり張り出していて音の重心が低く、ハードロックからポップス、ジャズまで幅広いジャンルの音楽でグルーブ感の高いサウンドが楽しめる、というキャラクターは変化無いのだが、音の情報量が向上したことと、高域がややジェントルな表現になったおかげで、おとなしい音色傾向にシフトしたようにも感じられるのだ。結果として、クラシックやボーカルものなど、全ての音楽ジャンルに幅広く対応できるようにもなったが、「MDR-1A」ならではの“疾走感のあるハードロック”などを求めるユーザーには、やや刺激が物足りないように感じるかもしれない。

「MDR-1A」ユーザーが「MDR-1AM2」の購入を検討する際には、まずは「MDR-1AM2」をしっかり試聴して、自分のよく聴く音楽ジャンルを好みのサウンドで再生してくれるかを確認しよう。そして、できれば現在所有している「MDR-1A」は手元に置いたままで、「MDR-1AM2」を買い足し、音楽ジャンルや楽曲などによって使いわけることをオススメしたい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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