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完全ワイヤレスイヤホンの性能が飛躍的。DAPは中国メーカーが躍進

【2019年上半期】ポータブルオーディオ業界の振り返りと今後の展望

早いもので、あっという間に2019年も半ばが過ぎ去り、すでに下半期に突入している。特に今年は令和への改元や10連休となったゴールデンウイークなど、いろいろな話題が記憶に残る年となったが、それに加えて10月の消費税アップ(本当にするかどうかはまだ確定していないが)を各メーカーが念頭に置いているのか、オーディオ業界もこれまで以上に活況な様子が見られる。ということで、この6月までに発売&発表されたもののなかから注目の製品をピックアップするとともに、下半期、秋冬シーズンの予想を語っていきたいと思う。

2019年上半期で、もっとも注目の集まった製品といえば、やはり完全ワイヤレスイヤホンだろう。Qualcomm「QCC302x」シリーズを始めとする新型チップの投入などにより、接続性やバッテリー持続時間が大幅に向上。10時間前後の連続再生時間を確保した製品が次々と登場するなど、使い勝手の面で大幅なグレードアップが行われている。その結果、完全ワイヤレスイヤホンはこれまで以上に注目を集めることとなり、現在の価格.comの人気ランキングでも常に上位を占める存在となっている。

2019年上半期だけでもかなりの数の新製品が登場している完全ワイヤレスイヤホンだが、そのなかでも話題を集めたをのが、Qualcomm「QCC302x」シリーズを搭載した製品だろう。たとえばAVOITの「TE-D01g」は、「QCC3020」を搭載して約10時間の連続再生を実現しつつ音切れも低減、さらにIPX7対応やコンパクトな専用ケースなど使い勝手の面でも大幅に向上させつつ、1万円を下まわる実売価格を実現するなど、1年前からは想像できないコストパフォーマンスの高さを持ち合わせている。第2世代が登場したAirPodsと並ぶ、完全ワイヤレスイヤホンの新定番といっていい存在となっている。

AVOIT「TE-D01g」

AVOIT「TE-D01g」

また、同じくAVIOTからは2バランスドアーマチュア型+1ダイナミック型というハイブリッドドライバー構成を採用した完全ワイヤレスイヤホン「TE-BD21f」とヌードルワイヤレスイヤホン「WE-BD21d」の2機種にも注目したい。こちら、ワイヤレスイヤホンとは思えない良音質を確保していることに加え、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」常守朱(CV:花澤香菜)の声をボイスアナウンスに採用するピエール中野(凛として時雨のドラマー)コラボモデル「TE-BD21f-pnk」なども登場する予定となっている。

AVIOT「TE-BD21f」と「WE-BD21d」

AVIOT「TE-BD21f」と「WE-BD21d」

1万円前後の完全ワイヤレスイヤホンは、このほかにも注目株が多々ある。Skullcandyは2019年上半期に2モデルの完全ワイヤレスイヤホンを投入しているが、そのうち「Push」は装着感のよさや音切れの少なさ、ボーカルの歌声がしっかりと届いてくるサウンドなど、初の完全ワイヤレスイヤホンとは思えない、完成度の高い製品に仕上げられている。また、Astrotecブランドから登場した「S60」は、完全ワイヤレスイヤホンとしては珍しいBAドライバー搭載モデルで、良質なサウンドと小柄なイヤホン本体を両立しつつ、1万円以下の価格を実現するなど、なかなか意欲的な製品にまとめ上げられている。このように、完全ワイヤレスイヤホンは個性的なモデルが次々と登場しつつ、コストパフォーマンスもさらに高まっていることから、下半期もその動向を大いに注視したいと思う。

Skullcandy「Push」

Skullcandy「Push」

いっぽう、ワイヤードでも今年発売された注目製品が多々ある。そのなかでも、いまもっとも注目したい製品といえるのがAcoustuneのHSシリーズだろう。こちら、4.4mmバランス端子などを手がける日本ディックスの技術が生かされた製品で、人工皮膚や手術縫合糸などに使われるポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板に採用したダイナミック型ドライバーや、音響チャンバー部と機構ハウジング部を完全に分離したモジュラー構造などが特徴となっている。なかでも今年登場したステンレス筐体採用の「HS1670SS」は、キレのあるスピード感あふれるサウンドと、スムーズで丁寧な抑揚表現、細部のニュアンスまでしっかり伝わるディテール表現が絶妙にバランスされた、良音質を持ち合わせている。リファレンスとして活用したくなるくらい、魅力的なサウンドを持つ製品だ。

Acoustune「HS1670SS」

Acoustune「HS1670SS」

エントリークラスの有線モデルにも、注目したい製品がいくつかある。Skullcandy「Ink'd+」は、人気モデルの後継機種で名前に“+”が付いただけだが、新開発の10mm口径ダイナミック型ドライバーが搭載されていたり、イヤホン本体がまったく新しいデザインになっていたりと、大幅な変更が行われている。結果、クリアでメリハリのよい、明朗快活なサウンドが楽しめる良モデルへと進化した。この価格帯としては、かなり魅力的なサウンドといっていいだろう。

Skullcandy「Ink'd+」

Skullcandy「Ink'd+」

また、発売は今秋になるが、ZERO AUDIOの新製品、ジルコニアハウジングを採用する3機種にも注目したい。“ZIRCO DUOZA III”「M-DWX30-ZD」はデュアルダイナミック、“ZIRCO TENORE”「M-DX200-ZT」は5.78mm口径のマイクロユニット、“ZIRCO BASSO”「M-DX210-ZB」は量感ある低音を持つ8.5mm口径ダイナミック型と、それぞれ搭載ドライバーは異なるが、いずれもジルコニアとアルミを組み合わせた筐体を採用しているのが特徴となっている。3機種ともに、表情豊かな、それでいてキレのある良質なサウンドを持ち合わせているので、発売後、そのサウンドをチェックしてみて欲しい。

ZERO AUDIO「ZIRCO DUOZA III M-DWX30-ZD」

ZERO AUDIO「ZIRCO DUOZA III M-DWX30-ZD」

2019年上半期はハイレゾ対応ポータブルDAPも、すぐれた製品がいくつも登場している。そのなかでも注目は、3万円以下のエントリークラスと、5〜10万円のミドル〜ハイクラスの製品だ。

まずエントリークラスの製品では、HiBy「R3」やHIDIZS「AP80」、FiiO「M6」の3製品だ。このうち、機能面では「M6」の優秀さが光っている。AirPlayやDLNAに対応したWiFiや、apt X HD/LDAC/HWA(LHDC)といった高音質コーデックに対応するBluetooth、USBオーディオ出力&USB DAC機能、「FiiO Link」アプリによってスマートフォンからの遠隔操作が可能など、2万円前後の価格からは想像できないハイスペックぶりだ。いっぽうで、音質面では「R3」が侮りがたい存在だ。2.5mmバランス接続端子を搭載するほか、11.2MHzのDSDネイティブ再生に対応するなど、このクラスとは思えない良質なサウンドを楽しませてくれる。

HiBy「R3」

HiBy「R3」

FiiO「M6」

FiiO「M6」

続いてミドル〜ハイクラスの製品だが、こちらはいくつかある新製品のなかでも6万円前後の価格帯となるFiiO「M11」と10万円超の価格帯となるiBasso Audio「DX220」の2製品に注目したい。「M11」は2.5mmと4.4mm、2つのバランス接続端子を搭載して、さまざまなケーブルを活用することができるし、音質も聴き応えのある良質さを持ち合わせている。WiFi機能やaptX HDコーデック対応のBluetoothも装備し、ネットワーク系も完璧。完成度の高い、素晴らしい製品だ。もうひとつの「DX220」は、音楽再生はもちろんフルHD映像が楽しめることに加え、音質面でもフォーカス感が高くメリハリのよい、そして音楽性が豊かに感じられる“iBasso”らしいサウンドが戻ってきた。さらに、ヘッドホンアンプ部分が交換できる機構も、新たなアンプモジュールとして「Nutube」搭載の「AM9」が追加されるなど、カスタム性にさらなる広がりを見せている。

iBasso Audio「DX220」

iBasso Audio「DX220」

このように、ポータブルDAPもなかなか“活気ある”状況となっているが、特徴的なのは、いずれも中国ブランドであること。開発スピードやコストパフォーマンスの高さなど、中国メーカーのメリットが大いに生きた結果なのだと思う。とはいえ、この先は40周年を迎えたソニー・ウォークマンに何らかの動きがあるだろう。2019年下半期は日本製のポータブルDAPにも注目したい。

40周年といえば、ポータブルオーディオではないものの、アナログレコードプレーヤー、Technics「SL1200」シリーズも40周年を迎え、待望のDJ向けモデル「SL1200 MK7」やMMフォノイコライザー内蔵&オルトフォン製カートリッジ同梱モデル「SL1500C」が登場するなど、新たなるフェーズがスタートしている。アナログレコードに興味のある方は、是非こちらの動向にも注目して欲しい。

Technics「SL1200 MK7」

Technics「SL1200 MK7」

このように、2019年上半期のポータブルオーディオはなかなかに活況な様相を呈していた。さらに下半期も、Bluetoothワイヤレス製品を中心に、さまざまな新製品が登場してきそうだし、有線イヤホンだけでなくヘッドホンも注目モデルが登場してきそうだったりする(ヘッドホンは秋冬がメインなので)。2019年の残り半分も、オーディオ製品の動向を、是非チェックし続けて欲しい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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