骨伝導ヘッドホン専業メーカーのAfterShokzから、この春ユニークな製品が登場した。その名も、「骨伝導ワイヤレスヘッドホン(テレビ用トランスミッター付き)」。ド直球なネーミングからなんとなく想像できると思うが、テレビにつなげてテレビの音をワイヤレス骨伝導ヘッドホンで楽しめるというものだ。さっそく実機を試す機会を得たので、実際の使用感をレポートしていこう。
AfterShokz「骨伝導ワイヤレスヘッドホン(テレビ用トランスミッター付き)」をレビュー
「骨伝導ワイヤレスヘッドホン(テレビ用トランスミッター付き)」のパッケージは、骨伝導ワイヤレスヘッドホン「AS801」とテレビ用のBluetoothトランスミッター「ABT01」が収められている。
骨伝導ワイヤレスヘッドホンAS801(写真左)とBluetoothトランスミッターABT01(右)
骨伝導ワイヤレスヘッドホンのAS801は、同社のスポーツ向け骨伝導ワイヤレスヘッドホンの「Aeropex」がベース。外観や装着感はもちろんのこと、IP67相当の防水性能や約8時間のバッテリー性能、各種ボタンのレイアウトや操作性までAeropexとまったく同じだ。機能面で唯一異なるのがBluetoothコーデックで、AS801はAeropexでは未対応のaptXに新たに対応。aptXに対応した付属のBluetoothトランスミッターABT01や、aptX対応のスマートフォンなどと組み合わせることで、映像試聴時に気になる遅延を最小限に抑えられるようになっている。
骨伝導ワイヤレスヘッドホンAS801は、付属の収納ポーチ含めてAeropexとまったく同じデザインだ
aptXコーデックをサポートしたのがAeropexとの大きな違い
付属のBluetoothトランスミッターABT01は、手のひらに収まるほどのコンパクトサイズで、本体天面には、ボリューム調整ボタン、接続ヘッドホン1と接続ヘッドホン2のコントロールボタンを、本体背面には電源スイッチ、音声入力用のアナログ入力と光デジタル入力、そして電源供給/PC接続用のmicroUSBポートが並ぶ。AS801とはあらかじめペアリングが完了しており、BluetoothトランスミッターのABT01をテレビに接続すれば、すぐにテレビの音をワイヤレス骨伝導ヘッドホンで楽しめるというわけだ。
BluetoothトランスミッターABT01。本体天面部分には、ボリューム調整と接続ヘッドホンのコントロール用物理ボタンのほか、接続状況を確認できるLEDインジケーターも用意されている
背面部分には、microUSBポート、音声入力用の光デジタル入力とアナログ入力、電源スイッチが並ぶ
また、ABT01は接続ヘッドホン1と接続ヘッドホン2のコントロールボタンが用意されていることからもお分かりの通り、最大2つのBluetoothヘッドホンに同時出力できるスペックを有している。コントロールボタンを長押ししてペアリングモードを立ち上げ、手持ちのBluetoothヘッドホン・イヤホンをペアリングし、骨伝導ワイヤレスヘッドホンのAS801と同時に使うことも可能だ。
なお、同時利用時は追加で接続したデバイスがaptXコーデックに対応していないと、標準コーデックのSBCに固定されてしまう。aptXコーデックに対応したAS801を最大限生かすなら、追加で接続するBluetoothヘッドホン・イヤホンのコーデックにも注意したほうがよさそうだ。
Bluetoothヘッドホン・イヤホンを2台同時接続したところ。接続した2台のデバイスがaptX対応ならaptXで接続されるが、片方がSBCまでの対応だと両方SBCに固定されるので注意
テレビとの接続用ケーブルは、電源供給用のmicroUSBケーブル、光デジタルケーブル、3.5mmアナログケーブル、3.5mmアナログ(メス)-アナログRCAケーブルの全4種類が付属。各ケーブルにはあらかじめ数字がラベリングされており、接続先のテレビの音声出力端子と添付のマニュアルを照らし合わせて、必要なケーブルをチョイスし、テレビと接続するだけで、だれでも簡単に接続できるようになっている。
付属のには数字がラベリングされており、マニュアルと照らし合わせて簡単に接続できるように工夫されている
一般的なテレビであれば、テレビの光デジタル出力を使った接続か、ヘッドホン出力を使ったアナログ接続のどちらかになるだろう。光デジタル接続の場合は、テレビのボリュームとAS801&ABT01のボリュームをそれぞれ別に管理できるというメリットがあり、ヘッドホン出力を使ったアナログ接続の場合は、テレビのボリュームとAS801&ABT01のボリュームが連動する代わりに、テレビリモコンで両方のボリュームを連動してコントロールできるというメリットがあるので、利用シーンに合わせて接続方法は選びたい。
光デジタル音声出力(写真左)に接続すれば、テレビのボリュームとAS801&ABT01のボリュームをそれぞれ別に管理できるが、ヘッドホン出力(右)に接続した場合は、テレビのボリュームとAS801&ABT01のボリュームが連動する
BluetoothトランスミッターABT01への電源供給は、付属のmicroUSBケーブルを利用する。ここ最近のテレビであれば、電源供給用のUSBポートが付いているので、基本的にはそれを利用する形だが、もし電源供給用のUSBポートが付いていない場合は、USB電源アダプターが付属していないため、別途用意する必要があるので気を付けてほしい。
テレビとの接続が完了したら、あとはAS801とABT01の電源をそれぞれONにするだけでテレビの音をワイヤレスで楽しめる。
テレビに接続したABT01の背面スイッチと、AS801の電源ボタンの両方ONにすればテレビの音をワイヤレスで楽しめる
AS801とABT01を使って実際にいろいろなコンテンツを視聴してみた
実際にテレビと接続していろいろなコンテンツを楽しんでみたが、aptXへ対応したこともあってか、音楽番組などでたまに気になる音と口元のズレ(リップシンク)はまったく気にならなかった。音の聴こえ方もなかなかクリアで、人の声もはっきりと聴こえるので、ドラマやバラエティ番組など人の声の成分が多い番組も違和感なく楽しめた。ちなみに、アクション映画の爆発シーンなどの重低音成分が多いコンテンツだと、耳元がブルブルと震えてこそばゆく感じることがあったが、こちらはAeropex同様に、AS801のボリュームの+と-を同時押しして低域をカットするイコライザーに変更すれば、ある程度は回避できそうだ。
骨伝導ヘッドホン自体が26gと非常に軽いこともあってか、付け心地もかなりいい感じだ。AS801&ABT01のように、テレビの音を耳元で流しながら周囲の音も聴けるジャンルの製品としては“ネックスピーカー”があるが、AS801は頭部を挟みこむように装着するので、視聴時の態勢に制約が少なく、ネックスピーカーのように肩への負担が少ないのもうれしい。音漏れについてもボリュームを上げると多少周囲に漏れるが、ネックバンドスピーカーのような盛大な漏れ方ではないので、寝ている人の真横で使うといったことがなければ問題なさそうだ。
また、実際にAS801とABT01の組み合わせで使ってみて驚いたのが、接続安定性の高さ。リビングに設置したテレビから直線距離で5mほど離れた納戸に移動したときや、リビングから扉3枚隔てたお風呂に移動したときも、音が途切れることが一度もなかった。カタログスペックに書かれた“最大30mの送信距離、部屋を移動した際も利用できる”といううたい文句も伊達じゃなさそうだ。
AS801とABT01は製品名からテレビ向けの製品というイメージが強いが、実はパソコンとの接続にも対応していたりする。しかも、パソコンとの接続はテレビ向けの接続よりもさらに簡単で、ABT01をmicroUSBケーブルで接続するだけ。こういったオーディオ製品の中には専用のドライバーソフトをインストールしないといけないというモデルも多いが、ABT01はドライバーソフトのインストールが不要で、OSの標準ドライバーだけで動くようになっている。
ここ最近は新型コロナウイルスの影響で、自宅からテレワークという人も増えてきた。音声チャットやビデオ会議などを行うためにヘッドセットをつなげたいが、会社から貸与されているPCはセキュリティが厳しく、ドライバーソフトのインストールができないということも多いが、AS801とABT01なら、ケーブル1本で簡単にヘッドセット環境を構築できてしまうわけだ。
セキュリティが厳しいパソコンにも、ケーブル1本で簡単に接続できるのは便利
実際に自宅でテレワークをしている際にAS801とABT01を使ってみたが、普段いない時間帯に自宅で仕事をしていると、たとえば宅配便のインターホンや固定電話にかかってきた電話への対応、スマホの緊急地震速報や地域の防災無線など、周囲の音が聴こえたほうがいい場合という状況は意外に多く、軽量な骨伝導ヘッドホンのおかげで長時間装着しても苦にならず、周囲の音を聴き逃すことなく音声チャットやビデオ会議などにもしっかりと備えられるAS801とABT01はかなりよかった。AS801を装着しながら普通に周囲の人とも会話できるので、自宅待機している子供から目が離せないという人にもぴったりだ。どうしても外部からのノイズをシャットダウンして仕事に集中したいという場合を除けば、テレワークでも大いに活躍してくれそうだ。
AS801とABT01をワンパッケージにし、骨伝導ヘッドホンをテレビでも簡単に使えるようにした「骨伝導ワイヤレスヘッドホン(テレビ用トランスミッター付き)」。骨伝導ヘッドホンAS801のベースモデルのAeropexもなかなかできがよかったが、aptXに対応したことで遅延もさらに少なくなり、骨伝導ヘッドホンとしての完成度もさらに高まっていた。
直販価格は23,880円(税別)。Aeropexの実売価格とは約8,000円の差で、ワイヤレスヘッドホンとしては少々値が張るが、IPX67相当の防水性能でスポーツヘッドホンとしても使えるAS801と、最大30mの送信距離で家じゅうまるまるカバーできるほどの接続安定性を実現したABT01がセットになっていて、1台で家の中も屋外でも使える点を考慮すると決して高くない。スポーツ用ヘッドホンやテレビ用のネックスピーカーを検討している人は、「骨伝導ワイヤレスヘッドホン(テレビ用トランスミッター付き)」はいい選択肢になるはずだ。
PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。