マランツは、Hi-Fiコンポーネント“6000”シリーズの新モデルを発表。CDプレーヤー「CD6007」とプリメインアンプ「PM6007」の2機種が、2020年9月中旬に発売される。マランツサウンドを享受できるHi-Fi製品の入門ラインとして国内外で人気を博す6000シリーズは、4年ぶりにどんなクオリティアップを遂げたのか? その詳細を順番に紹介していこう。
まずは、CDプレーヤーのCD6007から見ていこう。2016年に発売された「CD6006」の後継機となり、メーカー希望小売価格は50,000円(税別)。ディスク再生のほか、USBメモリー内の音楽ファイル再生にも対応しており、最大192/24bit PCM、5.6MHz DSDをサポートする。ぱっと見のデザインこそ前世代モデルを踏襲しているが、内部の細かい構成は大きくブラッシュアップした。
本体サイズは440(幅)×105(高さ)×341(奥行)mmで、重量は6.5kg。音声出力端子は、アナログアンバランス、同軸デジタル、光デジタル、ヘッドホンを1系統ずつ搭載する。また、USB入力端子はUSBメモリー接続用のみ(USB-Aポート)で、いわゆるUSB-DAC機能には非対応
その特徴は、まず心臓となるDAC部にある。本機はエントリーモデルでありながら、マランツの上位モデル「AV8805」や「PM7000N」に搭載されるのと同じ32bitステレオDAC「AK4490EQ」を新たに採用。さらにデジタルフィルターの切り替え機能も新しく搭載し、再生する楽曲や好みに合わせてフィルター1(スローロールオフ)とフィルター2(シャープロールオフ)を切り替えることができるようになった。
旭化成エレクトロニクス製の32bit DAC「AK4490EQ」を採用するDAC部
続いて、D/Aコンバーター以降のアナログ出力回路も、新DACに最適化することでノイズレベルの大幅改善を実現した。アナログ出力回路はフルディスクリート構成で、マランツ独自の高速アンプモジュールHDAMとHDAM-SA2によってフィルターアンプ兼送り出しアンプを構成する。
また、アナログオーディオ用電源回路に定電流回路を追加し、電源ラインのノイズを大幅に低減しているのもポイントだ。
精緻で立体的なサウンドステージを再現するため、左右チャンネルのアナログ出力回路はシンメトリーにレイアウト。等長、平行配置を徹底し、チャンネルセパレーション、空間表現力を高めた
ヘッドホン部にもこだわっており、新開発の低ノイズ・低歪オペアンプ「OPA1678」に、同社独自のHDAM-SA2型ディスクリート高速電流バッファーアンプを組み合わせた構成としている。この回路は、ヘッドホン接続時に自動的に回路がONになる仕組みで、ヘッドホン未使用時は回路への信号と電源供給がオフになり、オーディオ回路への影響を最小化する設計になっている。
HDAM-SA2型高速バッファーアンプにより、情報量が豊かで鮮度の高いヘッドホンサウンドを実現。3段階のゲイン切替機能も搭載する
また、CD6007専用の新開発カスタムパーツをふんだんに使用していることにも注目したい。アナログ出力回路には、上級モデルと同様にオーディオグレードのフィルムコンデンサーを採用するほか、カスタム・ブロックコンデンサー、ショットキーバリアダイオード、金属皮膜抵抗、精密メルフ抵抗などの高品位部品を搭載している。
アナログ回路電源用には、新規に開発した2,200μFのエルナー製カスタム・ブロックコンデンサーを搭載
続いて、プリメインアンプのPM6007を見ていこう。メーカー希望小売価格は64,000円(税別)で、前世代モデル「PM6006」の後継機となる。同軸デジタル入力を1系統、光デジタル入力を2系統備えており、ネットワークメディアプレーヤーやテレビ、PCなどからのデジタル音声入力に対応。最大192kHz/24bit PCMのハイレゾ再生も行える。こちらも、外観は前世代モデルとほぼ同じだが、内部の構成がクオリティアップしている。
本体サイズは440(幅)×105(高さ)×370(奥行)mmで、重量は7.8kg。音声出力端子は、アナログアンバランス×4、PHONO×1、同軸デジタル×1、光デジタル×2、音声出力端子はアナログアンバランス×1、サブウーハープリアウト、ヘッドホン×1を装備する
その内部は、上位モデルと同じ電流帰還型回路のプリアンプとパワーアンプを搭載。マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM」を採用した、フルディスクリート構成が特徴だ。HDAM-SA2とHDAM-SA3を用い、極めてハイスピードなサウンドを実現する。
さらにDAC部とアナログ出力回路は、上述のCD6007と同等の構成を採用。こちらにも32bitステレオDAC「AK4490EQ」を採用し、デジタル入力部を強化している。また、アナログステージにはHDAMによるローパスフィルターおよびHDAM-SA2による出力バッファーを用いた。
プリアンプからパワーアンプ、グラウンドラインに至るまで、左右チャンネルが完全に同じ長さ、対称のシンメトリー・レイアウトで構成される
HDAM-SA2搭載プリアンプと、HDAM-SA3搭載パワーアンプ。アイドリング電流の安定性を改良し、定常状態への復帰を速めた
D6007と同等のD/Aコンバーター&アナログ出力回路。こちらも、デジタルフィルター切り替え機能を搭載し、フィルター1(スローロールオフ)とフィルター2(シャープロールオフ)を切り替えることが可能
デジタル入力回路は、専用のシールドボックスに封入して配置。デジタル入力が選択されていないときはデジタル入力回路への電源供給を停止し、アナログ入力の音質に影響を与えない設計になっている
原電部もこだわっており、入門機ながらシールドケースに封入したトロイダルトランスを採用するのもポイント
さらに本機は、MMカートリッジ対応のフォノイコライザーも搭載しており、アナログレコードのサウンド再生も楽しめる。新たにJFET入力を採用することで、入力部のカップリングコンデンサーを使用しない回路構成とし、鮮度の高いサウンドを再生。なお、この新開発フォノイコライザーにより、10dBのノイズ改善も実現した。
フォノイコライザーは、以前よりマランツがこだわって開発したきたポイントでもある。低ノイズ、低歪なオペアンプを採用し、情報量豊かなサウンドを再生
また、CD6007と同じく、専用の新開発カスタムパーツをふんだんに採用している。上級機と同様にオーディオグレードのフィルムコンデンサーを使用するほか、金属皮膜抵抗や低ESR導電性高分子コンデンサーなどの高品質パーツを新たに採用し、音質を磨き上げた。
パワーアンプ用電源回路には、新規に開発した12,000μFのエルナー製カスタム・ブロックコンデンサーを搭載。ハイスピードで安定した電源供給を実現する
というわけで、4年ぶりにブラッシュアップした新しい6000シリーズを見てきたが、いかがだっただろうか? マランツによれば今回の6007ラインは、定評ある6000シリーズのサウンドをさらに一段高いレベルに引き上げるべく、細部に至るまで徹底したサウンドチューニングを施したという。手軽にマランツサウンドを享受できる新しい入門モデル2機種に、ぜひ注目されたい。
オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。