レビュー
どんな音楽ジャンルにマッチする?

ゼンハイザーの音楽リスニング向け有線イヤホン「IE 300」「IE 900」を聴き比べてみた

ゼンハイザー「IE 300」(写真左)と「IE 900」(写真右)

ゼンハイザー「IE 300」(写真左)と「IE 900」(写真右)

ゼンハイザーは有線・無線合わせて多数のカナル型イヤホンをラインアップしているが、そのなかでも中核をになう存在なのがIEシリーズだ。現在、1.2万円前後の「IE100 PRO」からフラッグシップモデル「IE 900」まで、6モデルほどのラインアップを有しているが、厳密にいえば“IE”と“IE PRO”という2つのシリーズにわかれている。

「IE100 PRO」などのPROを冠する製品群は、ライブステージやミキシング用途などプロ向けにデザインされたモニターイヤホンだが、「IE 300」や「IE 900」などのPROの付かないモデルはリスニング用途にフォーカスしたサウンドを持つ製品となっている。コンパクトサイズのイヤホン本体や耳掛け型の着脱式ケーブルという共通の特徴を持つものの、ユーザビリティ、サウンドともにまったくといっていいほど違う方向性を持つ製品にまとめられているのだ。

今回の記事では、リスニング向けのIEシリーズ製品である「IE 300」「IE 900」の2つを取り上げ、それぞれのサウンドの特徴を評価表などを交えてわかりやすく紹介していきたいと思う。なお、IE PROシリーズ製品については以前比較試聴を行っている(「IE40 PRO」をほとんどそのままにリプレイスしたのが「IE100 PRO」)ので、こちらの記事を参考にしていただければ幸いだ。

「IE 300」と「IE 900」の特徴をおさらい

まずは、「IE 300」と「IE 900」の特徴をおさらいしておこう。

「IE 300」は2021年1月に、「IE 900」は2021年5月に国内発売された、どちらもゼンハイザーの最新モデル。このうち「IE 300」は、「IE400 PRO」のリスニング向け製品といえるポジジョンにあるが、7mm口径のダイナミック型XWB(ExtraWideBand)ドライバー(上級機「IE800」採用ユニットのため「IE400 PRO」発売当時はとてもハイコスパなモデルとして注目を集めた)はさらなるリファインを敢行。イヤホン本体も新たにデザインして音質面での向上を押し進めたほか、着脱式ケーブルにはパラ-アミド繊維素材や「gold-plated Fidelity+MMCX」コネクターを採用することで耐久性と低損失を両立するなど、さまざまな部分で最新モデルならではのグレードアップが施されている。また、ブラック地にシルバー系のスプラッシュが散りばめられたイヤホン本体のカラーリングもなかなかに個性的で上質感がある。

ストーンマーブルの個性的なカラーリングが目を惹く「IE 300」

ストーンマーブルの個性的なカラーリングが目を惹く「IE 300」

いっぽうの「IE 900」は、「IE800」のさらなるクオリティーアップを追求した新しいフラッグシップモデルで、個性的なイヤホン本体だった「IE800」とは異なり、「IE 300」に近いイヤーモニター調のデザインが採用されている。とはいえ、アルミ削り出し加工の見栄えを巧みにデザインに取り込んでいたり、個性的な外観を持つことには変わりない。

アルミ削り出しの重厚感のある筐体を採用する「IE 900」。「IE 800」と比べると、IMEらしいオーソドックスなデザインとなった

アルミ削り出しの重厚感のある筐体を採用する「IE 900」。「IE 800」と比べると、IMEらしいオーソドックスなデザインとなった

加えて、その内部にはドライバーユニット前部分に「トリプルレゾネーターチャンバー」と呼ばれる3つの溝を設けた構造が採用されている。また、ドライバーユニットも7mm口径のダイナミック型と、単なる「IE800」のグレードアップ版ではなく、「IE 300」からの最新技術も取り込んだ最新最高峰のゼンハイザーイヤホンに仕上がっている。なお、着脱式ケーブルは「IE 300」と同じく「gold-plated Fidelity+MMCX」コネクターやパラ-アミド繊維素材を採用している。別売だった4.4mmバランス/2.5mmバランスケーブルが同梱されているのはうれしいポイントだ。

「IE 900」はフラッグシップモデルらしく、付属ケーブルもかなり充実している

「IE 900」はフラッグシップモデルらしく、付属ケーブルもかなり充実している

肝心のサウンドをレビューする前に、装着性について気がついた点を紹介しよう。まず「IE 300」は、装着していることを忘れてしまうくらいに小さく軽い筐体となっていて、とても快適な装着感をもたらしてくれる。それ自体は大歓迎なのだが、あまりに小さすぎて装着ポジションが理想の位置からズレてしまうことがままあった。

具体的には、ノズル部が奥に入り込み過ぎて、低音が抜け気味のスカスカな音になってしまうことがあった。そんな状況を回避するためにも(特にポジションがうまく定まらない人は)、付属のフォームタイプ・イヤーピースの利用をオススメしたい。また、ノズル部は耳穴の中に入る目一杯まで押し込むのではなく、やや浅め、入口あたりで落ち着く場所を探して欲しい。すると、力強い低音を持つ、迫力あるサウンドが楽しめるはずだ。

ちなみに、「IE 900」のイヤホン本体はほんの少し大きく重いため、ポジションは定まりやすいので、こちらはあまり心配はない。やや大きめのイヤーピースサイズをチョイスして、ノズル部を少しばかり浅めの位置にしておけばOKだ。

とはいえ、万全を期すためにも今回の試聴ではフォームタイプのイヤーピースを利用して行っている。

「IE 300」は「IE 900」よりもイヤホン本体が小さいため、耳のサイズに合わせてイヤーピースのサイズや位置をしっかりと調整したほうがいいだろう

「IE 300」は「IE 900」よりもイヤホン本体が小さいため、耳のサイズに合わせてイヤーピースのサイズや位置をしっかりと調整したほうがいいだろう

「IE 300」「IE 900」ともにシリコンタイプとフォームタイプのイヤーピースが付属しているので、自分にあったベストなものをチョイスしたい

「IE 300」「IE 900」ともにシリコンタイプとフォームタイプのイヤーピースが付属しているので、自分にあったベストなものをチョイスしたい

「IE 300」「IE 900」のサウンドの特徴は?

さて、ここからは肝心のサウンドについて触れていこう。今回、「IE300」と「IE 900」を改めて気比べて見たのだが、サウンドについては基本的なキャラクターは同じながら、クオリティの違いや表現の得手不得手など、などそれぞれの特徴が感じられて興味深かった。

「IE 300」は迫力のよさと音のクリアさが見事にバランスしているのが魅力的だった。ボーカルの位置はかなり近く、クリアでリアルな歌声を聴かせてくれる。Aimerもサラ・オレインも、ちょっとハスキーな傾向はあるものの、それぞれの声の魅力がしっかりと伝わってくる。

なかでも「うまぴょい伝説」の聴かせ方が面白い。拍手やファンファーレ&ストリングスの演奏が空間的な広がりを感じさせ、それに迫力あるボリューミーな低音が重なって疾走感のあるリズムを生み出し、声の特徴がしっかり伝わる歌声が代わる代わる届くという、臨場あるサウンドを楽しむことができるのだ。クラシック系との相性も決して悪くはないが、特にホップス系など現代音楽をよく聴く人にオススメしたいサウンドだ。

■IE 300の音質傾向
帯域バランス  重低音 ・●・・・ フラット
音色傾向   迫力重視 ・●・・・ 繊細・ていねい
音の広がり    広大 ・・●・・ センター集中

■IE 300の音質評価
解像感   4
高音の音質 4
低音の音質 4

いっぽう、「IE 900」のほうは万能選手といいたくなる表現力の高さがとても魅力的だった。フルオーケストラのクラシックも見事な空間的広がりを感じさせ、楽器のひとつひとつがディテールの表現までしっかり伝わってくる。「IE 300」に比べると高域がやや煌びやかで、その分クラリネットなどの金管楽器がヌケのよいピュアな音を聴かせてくれる。ヴァイオリンの演奏も雑味のない艶やかな音色が聴いていてとても心地よい。低域も最低域までしっかり伸びきったディープなキャラクターで、表現に深みがある。

先ほどの「うまぴょい伝説」を聴くと音のクリアさに驚く。すべての音が驚くまでのフォーカス感で、空間的に大きく広がりつつも、ダイレクトにこちらに伝わってくる。低域のフォーカス感もグッと高まっているので、一段とノリのよい演奏に感じられる。ボーカルは(「IE 300」より)さらに半歩前に出てきたかのようなダイレクト感、存在感の強さがあるが、どの声優の声もヌケがよいなどそれぞれの特徴がわずかながら平均化されるため、好みはわかれるかもしれない。そのいっぽうで、AimerやYOASOBIなどはとても印象的で魅力的な歌声を聴かせてくれたりもするので(何よりも圧倒的な情報量がある)、悩ましいところでもある。もしかすると、完全にリスニング向けな「IE 300」に対して、「IE 900」は多少なり高級スタジオモニターとしての利用も意識されているのかもしれない。

■IE 900の音質傾向
帯域バランス  重低音 ・●・・・ フラット
音色傾向   迫力重視 ●・・・・ 繊細・ていねい
音の広がり    広大 ・・●・・ センター集中
■IE 900の音質評価

解像感   5
高音の音質 5
低音の音質 5

生き生きとした表現と迫力の描写の、まさにゼンハイザーらしいいととたくなるサウンドキャラクターはどちらも持ち合わせているので、単純に予算次第で選んでも不満に思うことはないだろうが、せっかくの機会なので実機を試聴してみて、どちらがより好みか、しっかりとチェックしてほしい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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