Technicsブランドより、完全ワイヤレスイヤホンの新モデル「EAH-AZ60」「EAH-AZ40」の2機種がついに発売された。こちら、Technicsブランドとして初の完全ワイヤレスイヤホンとして2020年に発売された「EAH-AZ70W」に続く第2弾の製品群で、モデルナンバーから「EAH-AZ60」はミドルクラス、「EAH-AZ40」はスタンダードクラスに位置付けされる製品だと推測ができる。
実際、パナソニックブランドから「EAH-AZ70W」登場とほぼ同じタイミングで「RZ-S50W」「RZ-S30W」という2製品が登場しており、最初は筆者もこれらのTechnicsブランド版かな? といった程度の認識だった。しかしながら実機を見てみると、「EAH-AZ60」はアクティブノイズキャンセリング機能搭載モデル、「EAH-AZ40」はコンパクトモデルといったように製品キャラクターこそ近いものの、まったくの別物であり、機能性に関しても大きくグレードアップを果たしていた。あくまでも“Technicsとしての完全ワイヤレスイヤホンの新提案”といったおもむきを持ち合わせている製品と言えそうだ。
さらに、「EAH-AZ60」に関しては1年半以上前に発売されている「EAH-AZ70W」と価格がほとんど変わらず、現在のところは上級機種が2モデル並ぶ状況となっている。どちらを是とするかは、あくまでも音の好み次第といったところだろうか。
ということで、今回は「EAH-AZ70W」との機能性や音質の違いを比較しつつ、「EAH-AZ60」と「EAH-AZ40」、それぞれの特徴やサウンドについて紹介していこうと思う。
まずは「EAH-AZ60」の機能面についてピックアップしていこう。
「EAH-AZ60」はブラックとシルバーの2色展開
「EAH-AZ60」最大の注目ポイントといえば、やはりアクティブノイズキャンセリング機能だろう。「EAH-AZ60」に搭載されているシステムは、フィードフォワード(イヤホン本体外側)マイクによるデジタル制御と、フィードバック(内側)マイクによるアナログ制御を組み合わせた「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」となっている。こちらは、Technics(およびパナソニック)独自のもので、「EAH-AZ70W」にも採用されているもの。本来の目的は、自然で良質なサウンドを実現するために採用したシステムだったようだが、同時に業界最高クラス(2021年8月14日時点、同社調べ)のノイズキャンセリング性能も実現しているという。
アクティブノイズキャンセリング機能を搭載した「EAH-AZ60」。専用アプリからノイズキャンセリングを100段階で調整できる点は最上位モデル「EAH-AZ70W」と同様だ
また、マイク性能の良質さも「EAH-AZ60」の特徴のひとつといえる。デジタルコードレス電話などで培った独自の通話音声処理技術やビームフォーミング技術、風切り音対策の構造など盛り込むことで、明瞭なマイク集音を実現。通話はもちろんのこと、オンライン会議などでも十分活用できるクオリティを確保している。ユニークなことに、この通話音声についてはアプリを使って相手に届く声を事前にチェックできたりもする。こちらを活用することで、自分の声がどんな品質/声色で伝わっているか、確認することができるようになっているのだ。
実際に試してみたところ、自分の声がかなり明瞭に伝わってくれていることがわかった。Bluetoothならではの圧縮感はわずかに残っているが、確かにオンライン会議などでも活躍できそうな良質さを持ち合わせている。完全ワイヤレスイヤホンは、耳穴に収まる形ゆえに通話品質については現時点で満足のできる製品は非常に少ないため、なかなか希少な製品といえる。
「EAH-AZ60」には片側に発話検知マイクと3つの高性能MEMSマイクを搭載。これらをフル活用し、高品質なマイク性能を実現している
専用アプリを使って、自分の声が相手にどのように伝わっているかを確認できるユニークな機能も新たに搭載された
このほかにも、2つの外音取り込みモードやマルチポイント(2台の機器と接続して同時待ち受けできる)対応、通話時に便利な片耳モード、Androidスマートフォンで簡単にペアリングが行える「Google Fast Pair」対応、「タッチセンサーアンテナ」や左右独立受信方式の採用による音切れの低減、IPX4相当の防滴仕様など、最新モデルならではの充実した機能性を持ち合わせている。バッテリー持続時間も、アクティブノイズキャンセリング機能オンの状態でも約7時間、専用ケースからの充電を合わせて約24時間と必要十分な性能だ。
さらに、「EAH-AZ60」は音質面での大きなトピックもある。それは、LDACコーデックに対応していることだ。先日、ソニー「WF-1000X」が完全ワイヤレスイヤホンとしては世界で初めてLDACに対応したが、それに続く製品となっている。高音質コーデックに対応しているのは、うれしいかぎりだ。
同社の完全ワイヤレスイヤホンとして初めてLDACに対応したのも「EAH-AZ60」の大きな特徴だ
イヤーピースも新型のものに変更され、付け心地や遮音性も向上している
続いて、「EAH-AZ40」を紹介していこう。こちらにも「EAH-AZ60」同様「アコースティックコントロールチャンバー」や「ハーモナイザー」などの独自音響技術を搭載。同時に、直径6mm口径のダイナミック型ドライバーと音響構造を一体化したモジュールを新開発することで、良質なサウンドを確保しつつイヤホン本体の小型化を実現。加えて、人間工学に基づいたデザインを採用することで、安定した装着とともに、長時間装着していても疲れにくい製品に仕上がっているという。
「EAH-AZ40」はコンパクトなデザインが特徴。写真のローズゴールドのほか、ブラック、シルバーの全3色のカラーバリエーションが用意されている
口径6mmの小型ドライバーユニットを組み合わせることで、イヤホン本体も非常にコンパクトなデザインに仕上がっている
左から「EAH-AZ40」「EAH-AZ60」「EAH-AZ70W」の順でイヤホン本体を並べたところ。「EAH-AZ40」のコンパクトさが際立っている
加えて、独自の通話音声処理技術による良質なマイク音声を実現。2つの外音取り込みモードや片耳モード、マルチポイント(2台の機器と接続して同時待ち受けできる)対応、Androidスマートフォンで簡単にペアリングが行える「Google Fast Pair」対応、「タッチセンサーアンテナ」や左右独立受信方式の採用による音切れの低減、IPX4相当の防滴仕様など、「EAH-AZ60」と同様の充実した機能背を持つ。バッテリー持続時間は、イヤホン本体で約7.5時間、専用ケースからの充電と合わせて約25時間と、アクティブノイズキャンセリング機能がない分少し有利なスペックとなっている。
「EAH-AZ40」の充電ケース。「EAH-AZ60」よりもひと回りほどコンパクトだ
さて、肝心のサウンドはいかがなものだろうか。まずは「EAH-AZ60」からチェックしてみた。
新モデルの「EAH-AZ60」「EAH-AZ40」と、最上位モデル「EAH-AZ60W」を用意し、サウンドをじっくりとチェックしてみた
ひと言で表現するならば、とてもていねいな表現の音。基本的にはメリハリのしっかりした、ダイレクト感の高いサウンドで、低域の量感も充実した落ち着きのあるサウンドだが、抑揚表現がきめ細かくていねい、高域のざらつき感はなく、音色もニュートラルと素性のよいサウンドを持ち合わせているため、楽曲それぞれの魅力を存分に楽しむことができる。LDACの恩恵ともあいまって、完全ワイヤレスイヤホンであることを忘れてしまいそうなくらい、上質な解像度も持ち合わせている。
特に聴き応えがあったのは、女性ボーカルだ。ダイアナ・クラールはハスキーで深みのある歌声を、アリアナ・グランデは甘い響きを持つ歌声を存分に楽しませてくれる。「EAH-AZ70W」はクラシックとの相性が抜群によかったが、「EAH-AZ60」はもう少しオールラウンダーになったイメージ。もちろんクラシックも楽しいが、Jポップなどもよく聴く人などは、こちらのほうが向いていそうだ。
いっぽう「EAH-AZ40」のサウンドは、クリアでメリハリのよい表現こそ変わらないものの、勢いのよさがさらに増し、ポップスやロックなどがずいぶんとノリのよいサウンドに感じられる。低域の量感も「EAH-AZ60」に比べて一段と増しているので、ポップスやEDMなど現代音楽との相性は「EAH-AZ70W」も含めて一番よいかもしれない。ただし、6mmドライバーの特徴か(コーデックの問題も多少あるだろう)、低域のフォーカス感が少々甘くなっている。また女性ボーカルも一段とハスキーさが強まっていたりもする。
イヤホンの大きさやフィット感、ノイズキャンセリング機能の有無、音質面での違いなど、それぞれキャラクターが異なるTechnicsブランドの完全ワイヤレスイヤホン。両者それぞれに魅力があるので、機能性や音の好みなどを実機で確認し、お気に入りの1台を見つけてほしい。
ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。