レビュー
価格もお手頃で音もいい!

真空管搭載サウンドバー、ORION「SBS-900BT」は昭和のレトロフューチャーが面白い

ガラス管の美しさ、そしてアナログ的な温かみのある音色によってハイエンド・オーディオの世界で独特の地位を獲得しているのが“真空管アンプ”。真空管と聴くと、いかにも趣味性の高いHi-Fiオーディオの世界……と思いきや、そんな真空管を搭載したサウンドバー「SBS-900BT」がドウシシャのORIONブランドから発売された。さっそく実機をお借りしたので、詳しいレビューをお届けしよう。

ORION「SBS-900BT」。900(幅)×65(高さ)×127(奥行)mmと、50V型のテレビと組み合わせるのにぴったりのサイズ感だ

ORION「SBS-900BT」。900(幅)×65(高さ)×127(奥行)mmと、50V型のテレビと組み合わせるのにぴったりのサイズ感だ

ORION「SBS-900BT」は、技術的にユニークなポイントは2つある。

ひとつは製品の名前に由来のある“真空管ハイブリッドアンプ”。これはアンプの音質を左右する1次段に真空管回路を組み込み、信号を増幅する最終段に10W+10Wのデジタルパワーアンプを組み合わせたアナログ・デジタルのハイブリッド構成であること。なお、ヘッドホン出力は真空管部のみ通る形だ。

サウンドバーの天面中央部の窓から見える真空管

サウンドバーの天面中央部の窓から見える真空管

ちなみに、真空管を使ったオーディオというと、真空管をLEDでライティングして目立たせる機能があったりするが、ORION「SBS-900BT」ではほんのりと光がわかる程度。テレビのすぐ下で光ったら気になって仕方ないというための配慮だろう。

電源をONにするとオレンジ色でライトアップされる

電源をONにするとオレンジ色でライトアップされる

もうひとつのポイントは、スピーカー振動板に“和紙”を使っていることだ。スピーカーユニットに紙というのは伝搬速度が高く、内部損失が大きいため利用例は多いのだが、和紙はその中でも高剛性、そして日本由来の素材でもある。この和紙の振動板は、上向きについているW-RPMスピーカー(ウーハー)で用いられている。ちなみに、フロントスピーカーは4.5mmのフルレンジを2基搭載しているが、こちらは和紙ではない。

上向きのウーハーのスピーカーユニット部に和紙を使用

上向きのウーハーのスピーカーユニット部に和紙を使用

前面向きのフルレンジスピーカー。サイドにはバスレフポートもある

前面向きのフルレンジスピーカー。サイドにはバスレフポートもある

そして、サウンドバーの筺体も、指で叩くと”コンコン”と、いい響きの音がする。表面に木目調の加工が施されており、どこかなつかしいアナログ的な方向性でまとめ上げられている。

ちなみに、ORION「SBS-900BT」にはCLOCK、つまり時計表示機能がある。これが前面のデジタル液晶表示と相まって、デザインとしていい味の昭和感を出している。

電源OFFの際にはデジタル時計が表示される

電源OFFの際にはデジタル時計が表示される

ORION「SBS-900BT」のデジタルや機能的な部分に触れておくと、テレビとの接続はしっかりHDMI(ARC)による接続に対応。光デジタル入力(リニアPCM 専用)もあるため、古い機器との互換性もある。ほかにもAUX 2系統(RCA)、USB端子、3.5mmステレオヘッドホン端子、そしてBluetoothも搭載している。

テレビとの接続はHDMI(ARC)

テレビとの接続はHDMI(ARC)

今回はORION「SBS-900BT」を僕の自宅リビングのレグザX9400と組み合わせてみた。接続はHDMI(ARC)1本で、普通に外部のサラウンドシステムとして認識してくれる。ちなみに、サラウンドシステムという言葉を使っているが、メーカーのホームページや製品仕様に“サラウンド”や“ドルビー”などの用語は登場しないようで……少し心配になってきた。ちなみに、説明書を確認すると「テレビのデジタル音声出力は、必ずリニアPCMに設定してください」と記載がある。

デジタル音声出力の設定はテレビのメーカーごとに異なるが、すべての音を問題なく出力するには説明書どおりリニアPCMに固定するしかないし、それがメーカーの推奨だ。今回はサラウンド対応にわずかな期待を残してレグザ側の設定は“ビットストリーム”の“オート”で利用している。

実際にレグザX9400とORION「SBS-900BT」を接続してみると、音声フォーマットの互換性としては次の動作がわかった。まず、デジタル音声信号をそのまま出力する“ビットストリーム”かつ“デジタルスルー”の設定では、地デジ音声のみ再生可能。“ビットストリーム”で、出力フォーマットを自動で変える“オート”では、地デジとNetflixのドルビーデジタルは再生できる。ただし、4K放送の音声は再生不可といった具合だ。

なお、HDMI ARC接続時の動作として、HDMI端子を通したテレビ側との音量動作は可能。ただし、レグザX9400との組み合わせでは、テレビ→ORION「SBS-900BT」の電源連動がうまく動かなかった。つまり利用の際には付属リモコンで電源操作が必要になる。これだけが少々面倒だった。

今回のレグザX9400との組み合わせでは、電源オンのためにはどうしても付属リモコンの操作は必要だった

今回のレグザX9400との組み合わせでは、電源オンのためにはどうしても付属リモコンの操作は必要だった

アナログっぽさのあるHi-Fi的な高音質サウンド

各種の動作確認をしつつ聴き始めたORION「SBS-900BT」。まず、地デジのニュース番組から聴いてみると、けっこういい音だ。音の鳴る位置はサウンドバーの置いているその場所と小細工なしだが、音のタイプとしてはHi-Fiオーディオのような、音の質感もあって情報量のあるタイプ。人の声は十分クリアに立つし、音の質感が出て奥行き感もある程度であるという、まるでテレビに小型Hi-Fiスピーカーを接続したようなサウンドだ。

地デジ音声の再現性としては、なかなか高音質

地デジ音声の再現性としては、なかなか高音質

テレビの内蔵YouTubeアプリで音楽を流して音量大きめにサウンドを確認してみても、音質の特徴としてはアナログっぽい適度な響き感が心地よい。最新のサウンドバーのような、うまく整理されたデジタルの音ではなく、アナログ感ある適度におおらかな音。ちなみに、今回組み合わせたテレビのレグザX9400は、有機ELのハイエンド機であって内蔵スピーカーも結構音質がよく、ORION「SBS-900BT」の音質はおおむね同程度か若干上回るくらい。これを十分ととらえるかは人次第だが、一般的なテレビ内蔵スピーカーと比べたらかなりの高音質化につながるだろう。

テレビ内蔵のNetflixアプリでサラウンド音声も検証。Netflixからは5.1chとして認識される

テレビ内蔵のNetflixアプリでサラウンド音声も検証。Netflixからは5.1chとして認識される

テレビ内蔵のNetflixアプリで『イカゲーム』の「だるまさんがころんだ」のシーンを見てみると、サラウンド効果としては……前方から耳の横まで使ってうまく作るようなイメージ。音の出どころはスピーカーの位置だし、正直言って音が回り込むサラウンド効果はないが、前方に音のフィールドができて左右の位置感や高さ、後ろもイメージできる。Netflixの『スパイダーマンファーフロムホーム』の火のエレメンタルズと対峙するシーンを見ても、音の迫力や臨場感は出るのだが、後ろまで音が広がるようなサラウンドではない。「高音質で情報量が多いステレオ再生によって、音の高さも広がりも、ある程度は再現できている」というくらいの効果だった。

『イカゲーム』のサラウンドとしての再現性はもう一歩といったところだろうか

『イカゲーム』のサラウンドとしての再現性はもう一歩といったところだろうか

続いてテレビ経由で接続したPS5で『Call of Duty: Black Ops Cold War』をプレイしてみると……やはりサウンドフィールドは前方と横には広がるが、音が後ろに回り込むことはない。爆音のボリューム感もしっかりと出るので迫力は足りている。また『原神』もプレイしてみても、キャラのボイスにはていねいな情報量があるので好印象だが、音に包み込まれるタイプではないようだ。

テレビ側にPS5も接続してゲームもチェック

テレビ側にPS5も接続してゲームもチェック

ゲームのサラウンドは横から前方まで広がる

ゲームのサラウンドは横から前方まで広がる

なお、ORION「SBS-900BT」にはFLAT/NEWS/MOVIE/GAME/S-BASS/LOUDNESSの音声モードが用意されている(ここまでのレビューはすべてFLATで試聴)。すべて試してみたが、音の帯域バランスが変わるだけで、サラウンド感には変化はないようだ。音の世界でお好み次第だが、個人的にはFLATのままが一番ORION「SBS-900BT」らしくバランスの取れたサウンドかなと感じた。

リモコン操作でサウドモードも変更可能

リモコン操作でサウドモードも変更可能

ORION「SBS-900BT」を実際に使ってみると、なかなか個性がハッキリしたモデルだということがわかった。まずサウンドバーでありながら、真空管や木目調の筺体などレトロフューチャーの面白さがある製品であること。サウンドバーの世界でデザインが語られることはあまりないし、個人的には存在感のなさを追求するより、昭和的なデザインで存在感を出す路線は大好きだ。もうひとつは、なかなか高音質であるということ。3万円以下程度のサウンドバーとなると、筺体が小さくデジタル技術でうまくチューニングしている機種が多いなか、ORION「SBS-900BT」は筺体にサイズに余裕があって、真空管や和紙のスピーカーと独自技術も効果を発揮し、独特の響きをともなったHi-Fiオーディオ的な音のよさをしっかり感じられるモデルに仕上がっていた。ただし、サラウンド効果は正直言って強くないので、映画やゲーム用というより、地デジや音楽リスニングのほうが向いているだろう。それを踏まえて、手頃な価格で音質がよくてデザインが面白いサウンドバーが欲しいなら、ORION「SBS-900BT」は、真面目に結構ありだと思う。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る