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スペックは変えずに音質を磨き上げた、デノンのCDプレーヤー「DCD-1700NE」

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デノンからミドルクラスのSACD/CDプレーヤー「DCD-1700NE」が発表された。発売日は2023年1月27日で、希望小売価格は198,000円(税込)。同じ「1700」を冠するプリメインアンプ「PMA-1700NE」が発売されたのが2022年5月なので、ずいぶんと遅れて発売されることになる。

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2022/05/17 11:00

「DCD-1700NE」はディスク再生に特化したシンプルなSACD/CDプレーヤー。アナログ音声出力(RCA)のほかにはデジタル音声入力(同軸、光)を備える

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従来モデルを徹底的にブラッシュアップした「SX1 LIMITED」と同様の開発手法

このタイムラグは、「PMA-1700NE」の製品企画時に「DCD-1700NE」の企画は存在しなかったことに由来するという。音楽リスニングのスタイルがストリーミング再生に移ろいつつある中、SACD/CDプレーヤーは必要ない、というのが海外市場を含めた判断だった。

しかし、日本国内の需要を見れば、CDプレーヤーはまだまだ需要がある。過去の資産を生かしたほうがよいという判断もあって日本発信の企画が通り、「DCD-1700NE」の発売にいたったそうだ。元々は「必要ない」とされた製品ということもあり開発リソースが限られている中、まったく新規の開発は不可能。そこで、採られた方法が、従来モデルを徹底的にブラッシュアップすること。現在デノンのフラッグシップモデルである「SX1 LIMITED」での開発同様の手法だ。

そうして従来モデル「DCD-1600NE」のブラッシュアップモデルを作ることになり、そこで実施されたのは、回路ではなくパーツの変更。すでに回路自体が完成されているところからのスタートだったので、じっくりと時間をかけて音質検討を実施できたそうだ。

音質に関わるパーツは80以上を変更。供給の都合など、音質に関わらないパーツを含めると、実際にはその倍以上の数のパーツが変更されている。そうしていくうちに、最終的には従来製品よりもコストをかけたパーツが投入された。特に大きいのは、TI製のオペアンプと、「SX1 LIMITED」開発時に生まれた“傑作”コンデンサー「PPSC-X」を採用したことだという。「PPSC-X」とは、音質検討の結果スリーブをはいで使うことになったフィルムコンデンサーのこと。当初は供給元から難色を示されたそうだが、粘り強い交渉の末、多くの部分で採用された。

そのほか、デジタル系のノイズ対策系部品を25個追加。さらにトランス固定ネジを銅に変更するなど、細部までこだわったチューニングを施された。

デノンの製品が目指す音のコンセプトは「Vivid &Spacious」。それは高級品でも廉価品でも変わらない

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「SX1 LIMITED」にも使用したELNA(エルナー)製カスタムコンデンサーなどを搭載する

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また、「DCD-1700NE」では「引き算」も行われていることにも注目してほしいという。「FFC」(フィルム状のケーブルでデジタル系信号伝送をするもの)の長さを最適化、ワイヤリングの再検討だけでなく、オーディオ基板と電源基板を一新したのだ。

上位製品である「DCD-2500NE」と一部パーツが共通化されているために「DCD-1600NE」では“使わない”部分が存在していたそうだ。回路としてはまったく変わらないものの、そこを取り除くために基板を改めてまで、シンプル&ストレートを追究。音質強化に努めた。

回路を変えないいっぽうで、よりシンプルな経路を実現するためにオーディオと電源の基板を一新した

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オリジナルのディスクドライブ「Advanced S.V.H. Mechanism」を搭載。ここでも使用していない部品を取り外して、ブラッシュアップを図った

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写真中央がフィルム状の「FFC」。従来はこの長さがあまり気味だったという

写真中央がフィルム状の「FFC」。従来はこの長さがあまり気味だったという

中央奥が「DCD-1600NE」で手前が「DCD-1700NE」。奥行が5cmほど伸び、余裕のある内部構造とすることが音質に寄与しているという。また、トップカバーを留めるネジがなくなったことも変更点のひとつ。これはコスト削減ではなく、あえてガチガチに固めないことでのチューニングを狙っているそうだ

中央奥が「DCD-1600NE」で手前が「DCD-1700NE」。奥行が5cmほど伸び、余裕のある内部構造とすることが音質に寄与しているという。また、トップカバーを留めるネジがなくなったことも変更点のひとつ。これはコスト削減ではなく、あえてガチガチに固めないことでのチューニングを狙っているそうだ

回路とスペックは同じでも、音質は確実に向上している

回路を変えず、パーツのグレードや信号経路を吟味した「DCD-1700NE」。「DCD-1600NE」との比較でその音に触れる機会を得られた。

初めに再生されたのはFourplayのCD。「DCD-1700NE」では、細かな弦の擦過音など、微細信号の再現力が上がっていると感じられる。ダイナミックレンジが広がり、空間表現の精妙さが増しているようだ。この手の(フュージョン系の)演奏家のうまさがより伝わると言ってもよい。響きの余韻の長さ、スラップベースのキレのよさ、ストップ&ゴーのコントラストがより強靱になる。

試聴をしたのはD&Mホールディングスの試聴室。リファレンス機器としてB&Wのスピーカー、プリメインアンプ「PMA-1700NE」を組み合わせて各種SACD、CDを再生した

試聴をしたのはD&Mホールディングスの試聴室。リファレンス機器としてB&Wのスピーカー、プリメインアンプ「PMA-1700NE」を組み合わせて各種SACD、CDを再生した

いろいろと再生される中で感心したのは、Katsuhiro Chibaのエレクトロニカ系音源だ。打ち込みの音楽にそう言うのもおかしな話だが、「DCD-1700NE」では空間から音場が直接発生しているような“自然さ”があったのだ。2ch音源でありながら、空間表現が緻密で「イマーシブ」感を堪能できた。これはデノン製品のテーマ「Vivid&Spacious」のイメージを伝わるためによく使った音源だという。

回路内容自体は変更されていないし、スペックについても寸法/質量以外はほぼ同じという「DCD-1600NE」と「DCD-1700NE」だが、音質には確実に違いがある。

そのほか、山下達郎の楽曲が聴けるのもCDのよいところ。いまのところ、山下達郎はストリーミングでの音楽配信をしていない。こうしてさまざまなSACD、CDを聞いていくと、音楽でも映画でも、安定した再生という意味でディスクにはまだまだ意義があると改めて感じさせられる。音源自体の規格もしっかりと決まっているうえ、ネットワーク環境などの外的な要因に影響されづらいというメリットは今なおありたがい。

「DCD-1600NE」の希望小売価格は141,900円(税込)だったので、「DCD-1700NE」の198,000円(税込)という値付けは大幅値上げだと思われるかもしれない。しかし、昨今の世界情勢や音質の向上を考えればリーズナブルだと思う。デノン(D&Mホールディングス)は、実はオーディオ用のディスクドライブメカの供給元でもあるわけで、そもそものCDプレーヤーの価格が海外製品よりも安めに設定されているとも感じる。今、よい音でSACD/CDを聞きたいならば、「DCD-1700NE」は有力な候補になるはずだ。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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