レビューする4モデルは、左上から時計回りにViewSonic(ビューソニック)「M2e」、Emotn(エモートン)「N1」、Xiaomi(シャオミ)「Mi Smart Projector2」、XGIMI(エクスジミー)「MoGo 2 Pro」
今回は、価格.com「プロジェクタ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングを席巻している小型プロジェクターにスポットライトを当てます。従来のイメージからすると、高級でも頑張って明るさ(光出力)1,000ルーメン以上のレーザー光源プロジェクターを選んだほうが、格安プロジェクターより長い目で見れば幸福になれると思っていました。
ところが、最近のLED光源のコンパクトなプロジェクターはOSにAndroid TVなどのスマートプラットフォームを採用している場合もあって、Wi-FiにつなぐだけでAmazonプライム・ビデオやYouTubeを大映しして楽しめるみたい。ホントにそんなにうまくいくの? 安物買いの銭失いなんてことにならない? 耳なじみの少ない新興ブランドも含めて実機をお借りし、自宅でその画質と使い勝手を試してみました。
まず集めたのは上記のとおり小型プロジェクター8製品。いずれも価格.comの最安価格が10万円以下の製品です(2023年7月18日現在)。その中から、今回はレンズズームなしのフルHD解像度、LED光源搭載の据え置き型プロジェクター4モデルをピックアップ。順にテストしていきます。
また、バッテリー搭載など、少しキャラクターの異なる残りの4モデルは次回記事にて紹介します。
まずはプロジェクター単体で、内蔵のアプリを使ってAmazonプライム・ビデオを視聴。プロジェクター単体で、音楽ライブ、新作映画、フィルムグレインが目立つ旧作映画がどれぐらい楽しめるのかをチェックします。
使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げ式モバイルタイプ、グランヴュー「GFP-80HDW」。幕面はマットタイプのため素直な色表現で、背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手のよさとリーズナブルな価格設定が魅力です。
次に、HDMI接続でUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を視聴。リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋を「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」にした3パターンで、「映画」ないし「シネマ」モードで映したシーンをカメラで撮影した画像も掲載します。いずれもテーブル設置で台形補正なしです。
撮影に使ったのは一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」で、絵作りは「フラット」、すべて1/80 F8.0 ISO6400の同一露出にこだわって撮影していますが、人間の視覚は瞳孔や暗順応など非常にすぐれたアイリスを持っていますので、実際にはもっときれいに見えます(外光入りのcも時間帯によっては明暗差が……)。というわけで、あくまで参考程度とお考えください。
比較参考用の撮影に使ったのは、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」。高野山の四季を8K/60fpsで撮影、4Kにダウンコンバートして収録された映像作品です
リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋で「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」の3パターンで視聴しました(一部撮影忘れや、当該機種の撮影時間帯によって外光の明暗差があります)
「Mac mini」のような外観。背後の比較対象は530mlペットボトル
「M2e」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:400ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:DLP
●コントラスト:3,000,000対1
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:3W×2
●寸法:184(幅)×184(奥行)×54(高さ)mm
●重量:約1.0kg
●電源:付属電源アダプター、USB Type-C端子でバッテリー駆動(USB PD/45W以上)も可能
●投写距離:161cm(60インチ)、214cm(80インチ)、268cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(4.2)対応
映像入力端子としてHDMIのほか、スマートフォンなどのコンテンツを直接投写できるUSB Type-C端子も用意されています。また、microSDメモリーカードのスロットからデータを読み込んで静止画や動画の再生も可能です。音声出力は3.5mmアナログ音声出力のほか、Bluetoothスピーカーの利用もできます
リモコンは抗菌仕様で、使い勝手も良好
ViewSonic(ビューソニック)の「M2e」には専用のキャリーバッグが同梱されており、モバイル用途を意識していることがわかります。オートフォーカスは、ほぼリアルタイムで、このような技術をToF(Time of Flight)テクノロジーと称するそうです。しかもチェッカーフラッグのような画面が出ることもなくこなします。
台形補正も垂直方向は自動ですが水平方向は手動。ほかの機種もそうですが、自動台形補正は段階的に大雑把に合わせに行くので画素が盛大にむだになりやすく、三脚などを使ってできるだけ補正しなくて済むような設置位置を探りたいところです。今回はいずれのモデルも台形補正なしの画像になるよう設置してから、視聴・撮影しています。
天井に斜め投写して台形補正された様子。グレーの部分が映像非表示部分。あまり考えずに自動台形補正機能をむやみに使うとせっかくのフルHD画素が盛大にむだになります
キャリーバッグも同梱
のっけから申し訳ないのですが、ダウンロード可能なアプリにAmazonプライム・ビデオが発見できず、代わりにHDMI入力でブルーレイソフトを視聴。手軽さを求めるならば、「Fire TV Stick」などを使うのも有効でしょう。
音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、肌の色、ブルーのスポットライト、赤の緞帳(どんちょう)、サテン生地の描写、アイキャッチも良好。明るく清廉で、赤被りもレインボーノイズもたいへんよく抑えられて驚きの高画質。
古いモノクロ映画「薔薇の葬列」では、フィルムグレインをうるさくない程度に抑えつつも、その質感はきちんと残されています。
映像モード(カラー設定)は「テレビ」(9300K)「映画」(6500K)のほか、「明るい」「ゲーム」があります。「ユーザー」では「詳細設定」から細かい設定が可能ですが、「詳細設定」の中の「光源出力レベル」は「フル」のままにしました。「エコ」にすると色のバランスが崩れてしまうからです。
「M2e」のホーム画面
映画を見るならば「色温度」が「6500K」の「映画」を選ぶのが基本。そのほかのプロジェクターでも、映画を見る場合には「映画」や「シネマ」という名称の映像モードを選ぶとよいでしょう
色調や彩度などの調整も可能です
画質に不満があれば、もちろん調整してみてもかまいません。簡単にリセットも可能です
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「M2e」では2Kで入力されている様子。
画面全体の均一感は良好。朝もやや雪の場面の描写は雰囲気がありますし、水しぶきや葉の描写も精錬で良好です。明るさを感じる映像ですが、最も明るい部分(ピーク)の階調はあまり出ておらず、ややベタッとするようです。
クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)やジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もほんのわずか。動いている映像を普通に見ている限りではほぼ気になりません。
写真は「秋」から2つのカットをabcそれぞれのシーンで撮影したものです。撮影時は夕方になっていたので外がかなり暗く、aとcの違いはかなり微妙ですが……。
内蔵スピーカーの出力は3W×2とのことですが、Harman/Kardonチューニングのおかげかクリアで聞きやすい音でした。設定もイコライジング可能で、これだけコンパクトなのに音作りはうまいと感じました。もっとも、この機種に限りませんが、プロジェクター内蔵スピーカーはいずれも小型ポータブルBluetoothスピーカーレベルであって、「迫力の映画サウンド」とはいきません。
5帯域で周波数特性を調整できる、オーディオイコライザーを装備していました
Amazonプライム・ビデオが見られなかったものの、のっけから明るい映像が出て驚嘆しました。しかも結構明るいので、寝室よりも照明を残したリビングで実用になりそうです。放熱の騒音は26dB(標準時)左側面排気で、一般的な形。
白くつるつるした箱形で「Mac mini」のような外観も目障りでないため、底面の三脚用ネジ穴にミニ三脚でも取り付けて、できるだけ台形補正による“画素のむだ”が出ないように角度を調整しながら、いろいろなシーンに使ってよいのではないでしょうか。
梨地のホワイトにシンプルな曲線のデザイン。大きなレンズが画質への期待を高めます。「Netflix公式ライセンス取得」と謳うだけあり、Netflixアプリがプリインストールされていることが特徴のひとつです
「N1」の主要スペック
●本体色:ホワイト、ダークグレー
●明るさ:500ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:LCD
●HDR対応:HDR10、HLG
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:5W×2
●寸法:127(幅)×182(奥行)×203(高さ)mm
●重量:1.92kg
●電源:付属電源アダプター
●投写距離:167cm(60インチ)、220cm(80インチ)、265cm(100インチ)
●デジタルズーム:0.5〜1.0倍
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
HDMI入力のほか、3.5mmステレオミニの音声出力があります。Wi-Fiには対応しますが、有線LAN端子も用意されています
専用リモコンのダイレクトキーは、中央のフォーカスボタンが地味に便利でした。「Netflix」「Amazon Prime Video」「YouTube」のダイレクトキーがあるのは、一見便利なようで、音量調整や設定ボタンのすぐ隣にあるため、うっかり暗闇で触ってしまうと見ていた映像がシャットダウンしてしまうことがしばしば。ダイレクトキーがあるのも善し悪しですね
このモデルの最難関は設置性。一般的なDLPモデルのようにレンズオフセット(本体から若干上に向けて映像を投写する仕組み)がありません。本連載の第6回で述べたように、デジタル台形補正を使わず“画素をむだにしない”映像を見るためには、いわゆる「直投」(レンズセンターがスクリーンセンター位置になるよう設置すること)が必要です。要するに、視聴ベスト(画質を最優先した)ポジションは必ずプロジェクターに奪われてしまう設計になっているわけです。
しかし、後で述べるように、その投写映像自体は、価格を超えたパフォーマンスを見せてくれました。
このモデルもViewSonic「M2e」と同様、最先端のToFセンサーによるレーザーオートフォーカスを搭載しているとの謳い文句があり、デフォルトで“ほぼリアルタイム”のオートフォーカスがオン。でもこの「N1」はちょっとスタンスが違います。
本体を動かすたびにすぐフォーカスを合わせようとするよりも、きちんとフレーミングが決まってから落ち着いてフォーカスを合わせたいことってありますよね。そんなとき、カメラのオートフォーカス機能のように、リモコンのフォーカスボタン長押しで自分の意思でオートフォーカスをかけ、続いてスクリーンに近づいて上下キーで微調整するフローを想定しています。この点で「流れがよくわかっているな」と感心します。
ほかのモデル同様、動かすとほぼリアルタイムに機械が勝手にオートフォーカスを調整してくれます。その間数秒は専用の画面が表示されます
リモコンのフォーカスボタンを押せばいつでもフォーカスを調整できます。機械側でオートフォーカスしたあと、「手動」にてリモコンの上下キーで微調整できるのはマニア心がわかっている証拠
台形補正も水平・垂直ともに全自動。チェッカーフラッグの画面を見せることなく台形補正をします。メニューのキーストーンから「高級設置」(!)で「移動中の自動補正」をオンにすると、本体を動かしながらも自動補正が可能。反応および補正結果は良好h>でした。
「移動中の自動補正」オンにもできます
OSはLinuxとのこと。洗練されておりNetflixにも対応、操作はサクサクと動きますが、フォントと日本語の表現にはツッコミどころ満載。“決定”すべきところを「オッケー」とか言われると、思わず「ローラかよ」とツッコミたくなります。
OSはLinuxとのことですが、Android TV採用モデルと操作感に大差はありません
まずは内蔵アプリでAmazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」といったライブを表示。ぱっと見、すでに画質はかなり高くてビックリ。
「ピクチャーモード」の初期値「標準」に対して、「対比」(『コントラスト』のことだと思われます)と「シャープネス」を少し下げた「シネマ」は、ほんのわずかの味付けの違いですが、確かに映画によくなじみ、画質調整がよく詰められていることがうかがえます。吉田美和や中村正人ら演奏者の肌の色も、ブルーのスポットライトも、4モデルの中でいちばん自然な色再現で驚かされました。
旧作「フィールド・オブ・ドリームス」でも、ケヴィン・コスナーの肌の色やフィルムグレインの粒状表現も良好で、じっと見入ってしまいました。
映像モード(ピクチャーモード)は基本的に「シネマ」で視聴。Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」のようにHDR映像を入力した場合は「ムービー(HDR10)」という別のモードになります
「四季 高野山」の視聴では、白(ピーク)側は飛び気味ですが朝もやなどはきれい。ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もわずかに出ますが、気になるほどではありません。
特に調整する必要もない完成された画質ですが、リモコンの設定(三本線)ボタンを押すとすぐに「ピクチャーモード」に入れて、「カスタム」から実際に動画を流しながら調整をできます。
また、明るさ500ルーメンは必要十分。明るさの数値を稼ぐのではなく、資源をより画質に振った印象でこれみよがしな明るさを感じません。画質的には、寝室などで使うには十分すぎるほどで、薄明かりのリビングのメインディスプレイとしてもよさそうな、引き込まれる映像でした。
以下はa全暗、c外光あり、それぞれの環境での映像投写を2シーンで撮影した画像です。b照明ありの写真はありませんので、ご容赦ください。
サウンドはいたって普通。5W×2出力のスピーカー内蔵でメニューではいろいろな設定が可能ですが、両サイドでなく本体背面にスピーカーが配置されているため、拡がりは期待できません。セリフは比較的明瞭です。
音声のメニューはあるものの、過度な期待は禁物です
画質的には、寝室はもちろんリビングでも調整なしで鑑賞に堪える王道画質。ただしその能力を余すところなく発揮するためには、本体底にある三脚穴を使ってできる限り“画素のむだ”を避けて設置したいところです。光学ズームなしで、デジタル補正による“画素のむだ”は避けられないという潔さを受け入れられるかどうかが選択のポイントでしょう。
放熱は、珍しい後方吸気前面排気。それもあって耳に届く騒音は控えめですが、しばらく使ってそれなりに熱が上げってくると騒音が上がる場面もありました。またしばらく見ていると静かになります。公称値は26dB。レンズ下からの前面排気なので「映像に陽炎が出そう」と気にする人もいそうですが、それほど高温ではないので問題なさそうです。
前面はファブリック調の素材で覆われ、筒状だが縦長でないところが珍しい
「Mi Smart Projector 2」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:500ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式:DLP
●コントラスト:100,000対1
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:20,000時間
●スピーカー出力:5W×2
●寸法:115(幅)×150(奥行)×150(高さ)mm
●重量:約1.3kg
●電源:付属電源アダプター
●投写距離:投写距離:160cm(60インチ)、210cm(80インチ)、270cm(100インチ)※概算表記
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
接続端子はシンプルで、HDMI入力のほかには3.5mmステレオミニのヘッドホン(アナログ音声)出力を備えています
専用リモコンはアプリもサクサク動いて心地よいのですが、ボタンは限られています。少なくとも「設定」(歯車)ボタンに加え、フォーカス、台形補正、映像モードのダイレクトキーは欲しいと思いました
Xiaomi(シャオミ)の「Mi Smart Projector 2」では、デフォルトでオートフォーカス機能がオンになっています。ほかのモデル同様、本体の位置を動かすたびにほぼリアルタイムでオートフォーカスがかかりますが、常にピタッと合うとは限りません。
その点、Emotn「N1」同様、随時微調整可能なのはよい点です。ただしリモコンにダイレクトキーがなく、「設定」中の「焦点」から「フォーカスを実行する」必要があります。
台形補正も水平・垂直方向ともに全自動。本体を動かすと補正画面がいったん出るタイプですが、ほぼリアルタイムで素早く補正するのでストレスはありません。
オートフォーカス調整時の専用画面。リモコンの十字キー左右で微調整もできます
専用画面が表示されますが、台形補正も全自動で最適化されます
まず内蔵アプリで、Amazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」を見ます。ぱっと見、ブルーのスポットライトなやキラリと光る服のラメが鮮やかなのですが、吉田美和の顔は少し青っぽく顔色が悪く見えます。
そこで映像モード(画像モード)を初期値の「スタンダードモード」から、「ムービーモード」あるいは「チャイルドモード」にすると青みが抑えられて良好になりました。
画質は「ユーザーモード」に入ると細かくカスタマイズできるのですが、メニューを表示すると肝心の映像がブラックアウトしてしまうし、リモコンにダイレクトキーもなく、ワンプッシュで入れるメニュー構造にもなっていないので調整は至難です。また、各画像モードのパラメーター参照値も表示されずブラックボックスです。
「ユーザーモード」の「色温度」設定を見ると、「標準」「ウォーム」「コールド」とあるので、おそらく「ムービーモード」「チャイルドモード」は「ウォーム」なのでしょう。そして、「チャイルドモード」は輝度控えめなのだろうと推察されます。
ともあれ、どの映像モードも調整を前提としない形でできあがってしまっているので、「ムービーモード」「スタンダードモード」を行き来するしかない。もうちょっとカスタマイズできたらすごく好みの絵(画質)が作れそうなのですが……。
新作映画は、最近の液晶テレビに似たクッキリ画質で肌の凹凸もよい塩梅に解像します。フォーカスとアウトフォーカスの違いもわかります。ただ、レインボーノイズが見えがちで、見えやすい人は気になってしまうかもしれません。
ステージ映像暗部のノイズ感や、「フィールド・オブ・ドリームス」のような古い映画の粒状(フィルムグレイン)感も汚くならず、ちょうどよい塩梅です。
基本OSはAndroid TVです。画面右側の歯車ボタンから、映像モード調整などの項目を呼び出せます
上の画面の「アプリ」から、「Launch Board」を開いた画面がこちら。「フォーカスを実行する」「キーストーン補正(台形補正)」といったよく使いそうなメニューが入っています
映像モード(画像モード)は色温度の高い「スタンダードモード」と色温度の低い「ムービーモード」をコンテンツに合わせて使い分けるとよさそうです
次にHDMI入力でUltra HDブルーレイの「四季 高野山」を見てみます。
すると、明るい雲や雪の中間調からピークにいたるところが少し赤みがかります。映像モードを変更したり、「ユーザーモード」にして「色温度」設定や各種パラメーターを調整したり試しても、この傾向は基本的に変わりません。
明るいところの階調に注目すると、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)は気にならないのですが、ブルーの力強さやクッキリしたイメージとトレードオフ。個体差なのかもしれませんが、極端な感じがもったいない気がしました。
以下がa全暗、b照明残し、c外光あり、それぞれの環境での投写映像を2シーンで撮影した画像です。
音質はやや軽めですが、小気味よく軽快な聞き疲れしないサウンド。音がこもることなく、限られた資源でそれなり聞かせるうまいチューニングです。音質の設定は「ドルビーサウンド」から「シネマモード」を選ぶと良好でした。
音質設定は「シネマモード」が良好でした
放熱の方式は、側面吸気背面排気で、騒音の公称値は28dBですが甲高い音ではないのでさほど耳障りではありません。
500ルーメンというスペックほどの明るさは感じませんが、ブルーが強いせいかちょっとクッキリ感があり、映像自体にどこか力強さがあります。あまり光の入らない寝室ならば十分な明るさ、頑張ればリビングルームでも使えるかな、という感じです。まさに、次に紹介するXGIMI(エクスジミー)「MoGo 2 Pro」の対抗かと思われます!
サテン調のガンメタっぽい上品な色の本体
「MoGo 2 Pro」の主要スペック
●本体色:ブラック
●明るさ:400ルーメン(ISO)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式:DLP
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:25,000時間
●スピーカー出力:8W×2
●寸法:119(幅)×108(奥行)×161(高さ)mm
●重量:約1.1kg
●電源:USB Type-C ※バッテリー駆動(USB PD/65W以上)も可能
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
接続端子はHDMI入力と3.5mmアナログ音声出力など。給電はUSB Type-C端子で行う形で、外部バッテリーで駆動することも可能です
付属リモコンのボタンは必要最小限に抑えられています
XGIMI(エクスジミー)「MoGo 2 Pro」は4モデル中では設置性が図抜けていました。ジャイロとセンサーが内蔵されているのか、オートフォーカス、台形補正(水平/垂直オート可能)ともに、移動させる毎に「ジーッ」とまるで動くロボットフィギュアのように、リアルタイムで素早く正確に合わせに行きます。
謳い文句にある「毎秒10,000のデータセットを処理することで、より早く・より正確に、全自動の台形補正とオートフォーカスが可能になりました。視聴中のコンテンツを中断することなく調整を実行します。」という内容は大げさではありませんでした。
リビングダイニングなどで、見るたびにプロジェクターを取り出して手軽に使うにはたいへん便利。オートフォーカスが気になったらリモコンのフォーカスボタンを押してさらに自動/マニュアル微調整も簡単です。
(画素がむだになりますが)試しにスクリーンに対してかなり斜めに投写してみても、まるで真っ直ぐ投写しているように台形補正されたうえに四隅もきちんとピントが合っているように見えるのは驚きです。一体どういう構造? すごい時代になったものです。
なお、赤外線で人を感知し映像を暗くするアイプロテクション機能を搭載。「視力保護」の表示とともに画面が暗くなります。
本体を動かすと、専用画面が表れて随時ピントを合わせに行きます
左から人影が……という場合には、すぐにアイプロテクションが作動して映像を停止します
さっそく内蔵アプリでAmazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」を見ます。
プロジェクターの初期値である映像モード(輝度モード)「鮮やか」で見ると、色はやや浅いいっぽうで赤や青はものすごくクッキリと出てシャープ。ハイライトがピカッと出て見栄えのよい映像です。
コントラストも高めでクッキリと明るい絵は得意ですが、暗部はややガサついてDLP方式特有の赤みがかった特徴が見て取れます。「ホイットニーヒューストン | I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」のような新作では映えるのですが、「フィールド・オブ・ドリームス」のような旧作のフィルム映画は苦手。吉田美和は、やや顔色が悪くなってしまいます。
そこで映像モードを「シネマ」にすると、気になっていた肌の色は改善して自然に。黒浮きが気になる場面もあるも、これも本来のDLPらしいところ。映像補間のような不自然な動きも見えず楽しめました。
映像モード(輝度モード)の「鮮やか」は見栄え優先の設定です。特にフィルム撮影の映画などの再生時には「シネマ」モードを選ぶとよいでしょう
気をよくしてHDMI入力でUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を見てみます。このモデルはHDR10だけでなく、4K/60p入力を受け付けるようです。
画面は均一で、暗部階調もきれい、クロマエラー、縦横線ジャギーほとんどなし。よいことずくめかと思いきや、見進めていくと、朝もやや雪などの明るい部分が“ガサガサ”とグラデーションに欠け、モアレっぽく見えるところも。色表現が派手なのと相まって、書き割り風になってしまうのが気になりはじめました。
原因を探っていると、詳細設定の「HDR」を「オフ」にするとその点は改善しました。ただし、色味がかなり枯れてしまいます。
ちなみに、次回紹介予定の、先に発売された兄モデルXGIMIの「Halo+」では、この“ガサガサ”現象は起こりませんでしたので、ソフトウェアアップデートで解消されるのではないでしょうか。それ以外の点では、きわめて完成度の高い映像であることが確認できました。
以下がa全暗、b照明残し、c外光あり、それぞれの環境での投写映像を2シーンで撮影した画像です。
詳細設定から「HDR」「自動」を「オフ」にすると“ガサガサ”症状は改善されたものの、枯れた色になってしまいました
この本体サイズに、ちょっと前なら到底10万円以下では買えなかった明るさと画質が凝縮されているのは驚きました。しかもプレーヤーなしで映画を楽しめるのです。明るさは400ルーメンですが、明かりを残したリビングルームでも、80インチ程度の画面サイズならば結構イケそうです。
バッテリーを内蔵しないため、次回紹介予定の同社「Halo+」やAnkerの「Nebula Capsule 3」などより軽く、部屋から部屋の移動に便利。また、本体は目の前のテーブルに置かれることになりますが、目障りなランプ類が表面にまったくないのは好感が持てます。
放熱は背面排気で騒音公称値は38dB。ともあれ実際に使うとうるさいほどでもなく、映画の音があればさほど気にならないレベルでした。
今回は、以上4モデルを取り上げました。価格との兼ね合いもあるのでしょう、まさしく一点突破的な潔さすら感じさせる結果となりました。
最後に、各モデルのキャッチフレーズを、スクリーンなしの白壁漆喰に投写した映像とともにお送りしましょう。
次回以降では10万円前後までの製品を候補に、さらに多数のプロジェクターをレビュー予定です。実際の視聴では、それらの製品もほぼ同時期に視聴していますので、適宜比較しつつご紹介します。乞うご期待!
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。