左から、「Nebula Capsule Pro」「Nebula Capsule 3」「Nebula Capsule 3 Laser」。「Nebula Capsule Pro」は「Nebula Capsule」より少し映像が明るい、ほぼ同グレード品と考えられます
Ankerが展開するプロジェクターブランド「Nebula(ネビュラ)」の中でも、バッテリー技術を生かしたハンディなモバイルタイプが「Nebula Capsule」シリーズ。
最新作「Nebula Capsule 3」のレビューを先行公開しましたが、このたび本機を含む画質比較動画をYouTubeで公開しました。これを機に、「Nebula Capsule Pro」「Nebula Capsule 3」「Nebula Capsule 3 Laser」3機種を改めて比較しながらまとめてみましょう。最もコストパフォーマンスにすぐれる製品はどれなのでしょう?
今回比較するのは、「Nebula Capsule」シリーズのエントリークラス「Nebula Capsule Pro」、最新の中堅モデル「Nebula Capsule 3」、上位グレードのレーザー光源搭載モデル「Nebula Capsule 3 Laser」。
“ポン置き”ですぐ投写できるモバイルプロジェクターにとって、設置性はとても重要。この点では最後発の「Nebula Capsule 3」に最新機能が盛り込まれています。投写面に正対して投写できない場合でも四角い画面を維持する自動台形補正が垂直/水平方向ともに自動なだけでなく、自動障害物回避も行います。
3モデルの主な相違点はこちら
リモコンもバックライト点灯機能がある「Nebula Capsule 3」(中央)が有利。Android 7.1搭載の「Nebula Capsule Pro」(左)とAndroid TV 11.0搭載の「Nebula Capsule 3 Laser」(右)のリモコンはよく似ている
3機種のACアダプターの違い。「Nebula Capsule Pro」(左)のみUSB Type-A端子で、ほかの2モデルはUSB Type-C対応
「Nebula Capsule 3」「Nebula Capsule 3 Laser」は本体を動かすと調整画面が出て、随時フォーカスと台形補正を自動で行います。リモコンのフォーカスボタンを押しても駆動可能。「Nebula Capsule Pro」は垂直方向の台形補正のみ自動です。
写真は「Nebula Capsule Pro」の画面。垂直方向の台形補正は「オートキーストーン補正」で自動/手動を切り替えできます
「Nebula Capsule Pro」のみフォーカス合わせは手動。本体脇のダイヤルを操作します。そのほかの製品も光学式ズームやレンズシフト機構はない単焦点レンズなので、できるだけよい画質で見るためには、できるだけ画素がムダにならないよう、つまり台形補正が少なくなるように設置したいところです
「Nebula Capsule Pro」のOSは、Android 7.1、「Nebula Capsule 3 Laser」はAndroid TV 11.0。「Nebula Capsule 3」は、より新しいインターフェイスとパーソナライズ機能を持つGoogle TVを搭載しています。この点でも、最新モデルの「Nebula Capsule 3」に優位性があります。
「Nebula Capsule 3」は、Google TV搭載
次に、画質の違いをチェックしていきましょう。明るさは「Nebula Capsule Pro」が150ルーメン、「Nebula Capsule 3」が200ルーメン、「Nebula Capsule 3 Laser」が300ルーメン。光源は「Nebula Capsule 3 Laser」のみレーザーで、ほかはLED。
ソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」でUltra HDブルーレイ&ブルーレイを再生し、映画作品がどれぐらい楽しめるのかをチェックしています。各種映像設定は「自動」にしています。
使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げで式モバイルタイプ、グランヴュー「GUP-80HDW」。幕面はマットタイプのため素直な色表現で、背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手のよさとリーズナブルな価格設定が魅力です。
まず、「Nebula Capsule Pro」の画質に関わる設定メニューは、明るさを変える「画像モード」と、作品の絵作りを変える「色温度」の2点があります。
150ルーメンという明るさは、「Nebula Capsule」の100ルーメンよりスペックアップしていますがまだまだ暗め。部屋は全暗にして「標準モード」を選びましょう。「オート」としておくと、バッテリー駆動のときに「バッテリーモード」になりさらに映像が暗くなってしまうので、できれば電源を接続した「オート」か「標準モード」で視聴したいところです。
「Nebula Capsule Pro」の「画像モード」は、映像の明るさを調整する機能。「標準モード」がいちばん明るい設定ですが、バッテリー消費が激しくなります
「Nebula Capsule Pro」「色温度」は「ノーマル」「寒色」「暖色」の3つ。そもそもの映像が暗いため、どれを選んでもやや枯れた色味の印象。「ノーマル」はグリーンが強く、「寒色」は青が強いため、映画作品や音楽ライブでは「暖色」がいちばん穏当です
「Nebula Capsule Pro」は、映像の四隅が暗いいっぽう、コントラストの公称値は400:1でほかモデルと遜色なく、実際の印象も滑らかできれいです。
もっとも、解像度がSD(854×480)ということもあり、クロマエラーやジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)が散見され、ドットが潰れたり意図せぬ箇所がチェック柄に見えたりします。
全暗でないと映像がよく見えませんし、色もくすんでしまっています。「Nebula Capsule」の100ルーメンから150ルーメンへ明るさがアップしているとはいえ、以前レビューした「Nebula Capsule」と印象はあまり変わりません。
基礎的な明るさが足りないため、常に曇天のような景色で、紅色もドライチェリーのよう。空のグラデーションはバンディング(濃淡の縞)がたびたび表れ、マクロっぽい精細な画像では終始あちこちがチラチラとします。もっとも、映像補間的な処理がないのか、動きの描写自体はカクカクすることもなく滑らかで自然です。なお、4Kの映像ソースは1080pで受けていました。
「Nebula Capsule 3」の画質に関わる設定メニューは、明るさを変える「輝度」と、作品の絵作りを変える「画像モード」の2点があります。
「輝度」は、映像の明るさの設定。「自動」の状態でバッテリー駆動すると、バッテリーを節約する「エコ」モードになり明るさが下がってしまいますので、こちらもできれば電源を接続した「自動」か「標準」モードで使いたいところです。
「Nebula Capsule 3」の映像の明るさ調整は「輝度」から行います。「標準」がいちばん明るい設定です
「Nebula Capsule 3」の「画質モード」は、バランスのよい「標準」または、やや色温度が低めになる「ムービー」をお好みで。映画や雰囲気のあるアコースティックライブなどは「ムービー」、ビデオ映像や最近の作品を見るにはブルーがパリッとする「標準」と使い分けるのがよいでしょう。なお、「カスタム」や「エキスパート設定」などもありますが、「Nebula Capsule 3」のコンセプトを考えれば、十分完成度が高い上記2つのプリセットで十分です
「Nebula Capsule 3」の視聴作品別の詳しい画質については、先行して公開した単体レビューを参照いただきたいのですが、ここでも要約して記します。
ユニフォーミティー(画面全体の均一性)は良好。コントラストも控えめな公称値(400:1)以上にきれいで滑らか。クロマエラーやジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もさほど目立ちません。
明るさ200ルーメンという公称値は「Nebula Capsule Pro」の150ルーメンとさほど変わらないかと思いきや、実際見てみると、数倍の落差を感じます。全暗にせずとも、手元くらいであれば明かりを残した状態で使えます。
大半のシーンにおいて、色のトーン、階調も良好で、目立つ黒浮きもなく、曇り空のグレーのコントラスト感、夜景シーンの濃紺の空に対してビルの明かりが飛びすぎるようなこともありません。動きもカクカクすることなく、作られた動きもなく自然です。4Kのソースは1080pで受けているようでした。
「Nebula Capsule 3 Laser」の画質に関わる設定メニューも、明るさを変える「輝度」と、映像の絵作りを変える「画像モード」の2点があります。
「輝度」は「Nebula Capsule 3」同様に「自動」にしておけば電源接続時は最大300ルーメンを生かした「標準」の明るさになります。バッテリー駆動時は40%の「省電力」になってしまうので、できれば電源は接続した状態で余裕のある視聴をしたいところです。
「Nebula Capsule 3 Laser」の映像の明るさ設定は「輝度」から行います。「自動」は、電源接続時に最も明るい設定である「標準」に、バッテリー駆動時には映像を暗くしてバッテリーを節約する「省電力」に自動で切り替わるモードです
「画質モード」は、バランスのよい「標準」または、やや色温度が低めになる「ムービー」をお好みで。「Nebula Capsule 3」と同傾向なので、この2つを使い分けましょう
「Nebula Capsule 3 Laser」は、ユニフォーミティー(画面全体の均一性)やコントラストの出方が「Nebula Capsule 3」からワンランクアップ。クロマエラーやジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もほとんどないと言ってよい横綱相撲です。通常の映像では感じない「Nebula Capsule 3」との実力の違いが、再現の難しいシーンでは如実に表れました。映像回路の違いなのか、光源の違いなのか……。
雪や雲、朝もやなどの最も明るい部分(白ピーク)がやや頭打ちの印象なのは「Nebula Capsule 3」と同様ですが、「Nebula Capsule 3」より明るさに余裕があるからか、特に明るい場面で色や階調がパリッとして、夕焼けの森や山並みも腰が低くどっしりと構えます。動きもカクカクすることなく自然です。
「Nebula Capsule 3」と同じフルHD解像度ですが、よりヌケがよく、クリアでフレッシュ。アコースティックライブのスポットライトの出方やミュージシャンの肌などに、カリカリの精細感や力強さというよりも、きめ細かく滑らかな描写が見て取れます。なお、4K信号は4K入力で受けていました。
このように、委細に見ていくと確かに画質に違いはあります。もっとも、10万円を超えるプロジェクターとなるとほかに多くの選択肢があります。この「Nebula Capsule 3 Laser」が「Nebula Capsule 3」と価格差なりの画質差があると見るかどうか? 「Nebula Capsule 3」の性能が大きく向上しているだけに、「Nebula Capsule 3 Laser」はかなりマニアックな選択になると思います。
付録として、恒例の実写比較投写映像を掲載しておきます。以下は、私が旅先で撮影した静止画を、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で、各モデル推奨設定でスクリーンに投写し、同一カメラの同一設定にて撮影しています。ひとつの参考にしてください。
投写元画像イメージ(実際には1,920×1,080画素にリサイズしてPCからHDMI経由で投写しています)
ちなみに、音質については3モデルとも小型のモバイルBluetoothスピーカー程度の実力。せっかくプロジェクターで大画面を実現するのですから、画面サイズに合った音声クオリティにするには、アナログ音声出力で外部スピーカーにつなぐなど、ぜひ工夫したいところです。
「Nebula Capsule Pro」は音声モードの設定が見当たりませんでした。聞こえ方はほかの2モデルの「ムービー」モードと似たトーン。
「Nebula Capsule 3」「Nebula Capsule 3 Laser」の音声モードでは、「ムービー」が好ましく感じました。セリフやボーカルが立ち、広がりが出る分聞きやすく鳴ってくれるので、映画でもライブ作品でもフィットします。
「Nebula Capsule 3」の音質調整メニュー。項目は「Nebula Capsule 3 Laser」も同じでした
「Nebula Capsule」シリーズの3モデルを比較してきましたが、後発の「Nebula Capsule 3」のコストパフォーマンスが際立つ結果となりました。
厳しく画質を見れば、上位モデル「Nebula Capsule 3 Laser」の安定感は魅力ですが、普通に見ている限りでは「Nebula Capsule 3」と比べて価格差以上の価値があるか……はてなマークが付きます。
「Nebula Capsule Pro」は、「Nebula Capsule」と比べて「Pro」と言うほど性能に違いがあるかは疑問で、もう少し頑張って「Nebula Capsule 3」に手を伸ばしたほうが間違いなく幸せになると思います。
ほかのモデルも含め、注目のプロジェクターの画質比較動画をYouTubeチャンネルで公開しておりますので、ぜひご確認ください。