レビューする4モデルは、左上から時計回りにXGIMI(エクスジミー)「Halo+」、BenQ(ベンキュー)「GV30」、エプソン「EF-11」「EF-100」
今回は、価格.com「プロジェクタ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングを席巻している10万円以下プロジェクターレビューのパート2。パート1では潔い割り切りで格安をアピールしたモデルが並びましたが、パート2ではそれらよりすこし高価な製品も登場します。あれもこれもとじっくり検討したくなる価格帯です。
その分、ピカピカの新製品とは言えないながらよく練られた画質と使い勝手のよいウェルバランスなモデルが並んでいます。パート1同様、実機をお預かりし、自宅でその画質と使い勝手を試してみました。
今回テストしたのは、価格.comの最安価格が10万円までの4モデル(2023年7月20日現在)。パート1よりすこし価格が上の製品も含む10万円以下モデルです。
長寿命で明るいことが特徴のレーザー光源を搭載するモデルも登場しますが、いっぽうで解像度がフルHDに満たない場合もあります。スペックでクオリティが決まるわけではありませんが、何を優先するかを決めて検討するとよいでしょう。
まずはプロジェクター単体で、内蔵のアプリを使ってAmazonプライム・ビデオを視聴。プロジェクター単体で、音楽ライブ、新作映画、フィルムグレインが目立つ旧作映画がどれぐらい楽しめるのかをチェックします。
使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げ式モバイルタイプ、グランヴュー「GFP-80HDW」。幕面はマットタイプのため素直な色表現で、背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手のよさとリーズナブルな価格設定が魅力です。
次に、HDMI接続でUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を視聴。リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋を「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」にした3パターンで、「映画」ないし「シネマ」モードで映したシーンをカメラで撮影した画像も掲載します。いずれもテーブル設置で台形補正なしです。
撮影に使ったのは一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」で、絵作りは「フラット」、すべて1/80 F8.0 ISO6400の同一露出にこだわって撮影していますが、人間の視覚は瞳孔や暗順応など非常にすぐれたアイリスを持っていますので、実際にはもっときれいに見えます(外光入りのcも時間帯によっては明暗差が……)。というわけで、あくまで参考程度とお考えください。
比較参考用の撮影に使ったのは、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」。高野山の四季を8K/60fpsで撮影、4Kにダウンコンバートして収録された映像作品です
リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋で「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」の3パターンで視聴しました(一部撮影忘れや、当該機種の撮影時間帯によって外光の明暗差があります)
ブラックの四角い筐体は滑りにくい梨地仕上げ。背後の比較対象は530mmペットボトル
「EF-11」の主要スペック
●本体色:ブラック
●明るさ:1,000ルーメン
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:3LCD
●コントラスト:2,500,000対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:1.5W
●寸法:175(幅)×175(奥行)×58(高さ)mm
●重量:約1.2kg
●電源:付属電源アダプター
●投写距離:133〜181cm(60インチ)、179〜243cm(80インチ)、224〜304cm(100インチ)
●備考:80インチ未満はデジタルズームで対応、Wi-Fi対応
映像入力端子として側面にHDMI1系統を備えます
マットで滑りにくいシンプルなリモコン
本体は四角い薄型の黒い「Mac mini」といったサイズ感で、その代わり電源は外出しのACアダプターに委ねられています。
スペックを参照すると、投写距離が調整できるかのような表記がありますが、光学式ズームレンズを搭載しているわけではなく、デジタルズームで縮小する方向でしか調整できません。画素をむだにせず全部使って投写するには、壁からの距離を本体の置き場所で調整し、80インチスクリーンピッタリに収めます。フォーカス合わせは手動。
台形補正機能としては「自動タテ補正」が備わっており、天井に向ければその仰角に合わせてカクカクと映像が長方形になるよう補正が行われます。
このモデルでうれしいのは、本体を「垂直に」しての天井投写を想定して設計されていること。使用イメージは、ベッドにごろ寝の天井投写です。ただし、メーカーが推奨するのはオプションのマウントプレートを介して三脚などに取り付ける方法です。「筐体が薄いため」とありますから、本体の安定性を考慮してのことでしょう。
縦に置いた状態を天面から見たところ。上が投写方向
そのため、端子類は写真左側面に集められていますし、「自動タテ補正」機能が備わっているわけです。ただ、スピーカーは背面に配置されているので、音質的観点からも本体を直接縦に置いてしまうのは望ましくありません。
映像モードである「カラーモード」は「シネマ」のほか、「ブライトシネマ」「ナチュラル」「ダイナミック」「ビビッド」とエプソンおなじみのラインアップ。今回はちょっと色温度の低い「シネマ」を選択。「ブライトシネマ」もよいのですが、ちょっと明るくなる分だけ陰影で描く映画では色が浅目に見える印象です。
デモ機のランプ使用時間はわずか20時間。初期値では「レーザーライト出力」が100%ですが、特に明るすぎることもなかったのでこのままで最後まで見ることになりました。また、映像に応じてリアルタイムで光量を調整する「ダイナミックコントラスト」は「高速」「標準」「オフ」がありますが、初期値の「高速」のままで見てみます。
「EF-11」のOSはAndroid TVではないので、HDMI端子に接続したソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」でブルーレイディスクを鑑賞します。出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「EF-11」は2Kで受けています。
音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、肌の色、スポットライト、緞帳(どんちょう)や衣装の描写、アイキャッチも印象深く、インフォーカスとアウトフォーカスの違いもよくわかります。このサイズと価格で大したもの。
古いモノクロ映画「薔薇の葬列」では、フィルムグレインの塩梅はよいのですが、エプソンのほかモデルと比較しても色味がちょっと茶色いかもしれません。
Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」は、2Kで受けています。明るさは抑えめで、暗いシーンの表情はもうちょっと見えるようにしたいところです。アイキャッチが良好なので、表情から心情は読み取れます。決闘の荒涼とした中でのシーンは寒々としてよい感じです。
映像に応じてリアルタイムで光量を調整する「ダイナミックコントラスト」。ランプ光源製品のオートアイリスと似た機能です。もし動きに不自然さを感じた場合には「標準」や「オフ」に変更してみましょう
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。
やや赤いと感じる部分も時折ありますが、朝もやや雪の場面の描写は雰囲気がありますし、水しぶきや葉の描写も端正。ホームプロジェクターらしい味わいです。階調も滑らかで明るい部分(ピーク)の階調表現も頑張っています。
映像モードを「シネマ」から「ブライトシネマ」にすると赤みと黒沈みがほんのすこし和らぐ印象で、同じくエプソンの「EB-L200W」のような業務用レーザー光源プロジェクターの画調に近づきます。明るいビデオ系映像メインのユーザーには「ブライトシネマ」のほうが好きな人も多いかもしれないなと、ここまで見て思いました。
クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)やジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)は、厳しい目で見ればちょっと目に付く場面もありました。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
内蔵スピーカーの出力は1.5W。スピーカー構成は2ウェイとのことですが、そのこだわりは感じられませんでした。なお、「サウンドモード」は「スタンダード」「ボーカル」「ミュージック」「ムービー」に切り替えできます。
黒い重箱のようなキュービックスタイルでかわいらしく、本のように片手で気軽に持てる本体。リビングからベッドルームまで、手軽にレーザー高画質をという向きにはすすめられる一品です。
ただ、電源オン時の騒音は22dB(標準時)とありますが、ファンの音なのか「ジーッ」というのがちょっと耳障り。放熱の本体を小型にするためにやむを得なかったのでしょうが、ベッドルームシアター用としてはちょっと興ざめかも。
本体色は梨地のアイボリーっぽいホワイト。シンプルながらカタツムリのようなデザイン
「GV30」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:300ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,280×720(HD)
●方式:DLP
●コントラスト:100,000対1
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:20,000時間(標準モード時)、30,000時間(エコモード時)
●スピーカー出力:4W×2 + 8W
●寸法:120(幅)×185(奥行)×196(高さ)mm
●重量:約1.6kg
●電源:付属電源アダプター/バッテリー内蔵2.5時間駆動
●投写距離:159cm(60インチ)、213cm(80インチ)、266cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth対応
映像入力端子はHDMIのほか、USB Type-Cも用意されます。USB Type-Cの右側は3.5mmのステレオミニプラグ仕様のアナログ音声出力
専用リモコンは白いので、薄暗い部屋でも見つけやすいというメリットがありました。基本的な設定ボタンのほかに「PROJECTOR MENU」があるのが便利
キャンバス生地のキャリングケースも付属します
カタツムリ型の本体は台座にポンと載せているだけのシンプル構造。台形補正は、「EF-11」と同じく垂直方向にはオート補正が効きます(水平方向は手動)。「GV30」では補正画面がいったん出て、すこし待って補正が完了するタイプ。本体と台座はマグネットキャッチになっており、無段階に上下角度を任意に設置できます。ごろごろして天井に映すにはまさにピッタリ。
ピント合わせはオートフォーカス。微調整もできるとありますが、手動では結構大きく動いてしまい難易度は高かったです。
本体は「EF-11」より大きく感じますが、レザーストラップが付いており、持ち運び自体はやりやすい洒落たデザイン。また、次回レポートする同社の上位モデル「GS50」のような防滴ではありませんが、70cm耐落下を謳っています。
便利なオートフォーカス機能を搭載。手動での微調整にも対応します
「GV30」のOSはAndroid TV。そこで、アプリを使ってAmazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」といった音楽ライブ作品を視聴します。
制作者の意図どおりの色再現を目指す「CinematicColor」に根ざした映像モードの搭載、Rec.709色域97%の色再現を謳っているのは同社上位モデル「GS50」と同じ。映像モードは、やはり「シネマ」がオールラウンダー。「リビング」も悪くありません。「明るく」以外は、プロジェクターの老舗BenQらしいこなれた絵作りで安心感があります。
この「GV30」の解像度は1,280×720。とはいえ、普段動画を見ている分には、フルHDのモデルとの差はさほど感じません。ただ、文字テロップや、精細感が欲しい遠景、精細感の高い風景画ではちょっと甘いのがわかります。細かく見ていくと、衣装の繊維や引きの景色の葉や直線がちらつくシーンがあります。
いっぽう、ステージ映像暗部のノイズ感や、「フィールド・オブ・ドリームス」のようなフィルム時代の映画の粒状感は、ざらざらとしたノイズでなく立体感の表現に貢献しており、ちょうどよい塩梅。古い映画好きはあえて4K、8Kプロジェクターを使わないという人がいるのも納得です。
明るさ300ルーメンとのことですが、明かりを残した部屋でもそれなりに見られるのでスペック表記ほど暗いという印象はありません。ただやはりリビング用途というより、寝室や窓のないロフトなど、比較的暗い場所でリラックスしながら使うイメージでしょう。
Amazonプライム・ビデオなどの視聴時はソース(入力)切り替えで「Android TV」を選びます
映像モードの切り替えは「画像モード」から
映像モードの中で常用したいのは「シネマ」。部屋が明るめの場合は「リビング」を選ぶなど、使い分けるとよいでしょう
映像モードの微調整にも対応します
次に、HDMI端子に接続したソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」で、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を鑑賞します。出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「GV30」は4Kで受けています。
ユニフォーミティー(画面全体の均一性)がよく、明るく堅実な絵作りは見て取れますが、白(ピーク)は飛び気味で階調は控えめ。ある意味、割り切って切り捨てている感じで普通にビデオ映像を見ている分には不満はなく、むしろ見やすいというのが率直な感想です。クロマエラーもなく中間の階調もよく出ており、縦横線ジャギーもほぼ見られません。総じて堅実な絵作りと言えるでしょう。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
スピーカーについては同社の「GS50」よりやや控えめのスペックで、4W+4W出力のスピーカーと8Wウーハーによる2.1ch構成です。しかし、ドリカムのベースも小気味よくてよい感じで、ファンの排気音もかき消されます。
4種のモードを試して好ましかったのは「シネマ超低音」。ネーミングとは裏腹に整ったバランスで、「標準」よりも好ましく感じました。
テストでは基本的に「シネマ超低音」モードを使いました。ほか製品での「映画」や「シネマ」モード相当だと考えてよいでしょう
騒音は同社「GS50」と同じ29dB(通常)。左排気のため、視聴位置である背面方向への音は控えめですがすこし甲高いのでやや耳につくかもしれません。ただ、2.1ch再生の音が比較的パワフルなので、気になるのは静かなシーンに限られるでしょう。
スペック上は同価格帯ではやや見劣りするものの、手堅い絵作り、なによりこのかわいらしいデザインは、家族の寝室にピッタリではないでしょうか。バッテリー内蔵のポータブルモデルという機動性を生かした使い方を検討したいところです。
「EF-11」同様の梨地仕上げの本体。本体の色によって型番が「EF-100W」「EF-100B」に分けられているほか、オリジナルのメディアストリーミング端末を同梱したバリエーションモデル「EF-100WATV」「EF-100BATV」をラインアップ。本体の機能自体はどれも同じです
「EF-100」の主要スペック
●本体色:ブラック(B)、ホワイト(W)
●明るさ:2,000ルーメン
●表示解像度:1,280×800
●方式:3LCD
●コントラスト:2,500,000対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:12,000時間(レーザーライト出力100%)、20,000時間(レーザーライト出力50%)
●スピーカー出力:5W
●寸法:210(幅)×227(奥行)×88(高さ)mm
●重量:約2.7kg
●電源:付属電源ケーブル
●投写距離(16:9):138〜186cm(60インチ)、185〜250cm(80インチ)、233〜314cm(100インチ)
●備考:100インチ未満はデジタルズームで対応、Bluetooth(3.0)対応
映像入力端子はHDMI1系統で、入力可能な音声フォーマットはリニアPCMのみ。同機種のバリエーションモデル「EF-100BATV」「EF-100WATV」に同梱されるメディアストリーム端末を挿してしまうと、外部入力が埋まってしまいます
今回お預かりしたデモ機は「EF-100B」で、付属していたのは「EF-11」と同様のシンプルなリモコン。ただ、一般に家庭用として市販されている「EF-100BATV」や「EF-100WATV」では、写真と異なる「プロジェクターリモコン」とメディアストリーム端末用の「Android TV用リモコン」の2個が付属しています(次回紹介する「EH-TW5825」付属と同等品と思われます)
箱形の筐体は、「EF-11」同様、テーブルに対する垂直(縦)置きを想定して設計したのだと思われますが、端子位置はまだ一般的なプロジェクターと同じ背面のまま。そこで構造としては背面に空間を設けてHDMI端子を延長ケーブルで横出しする仕組みになっています(「EF-100BATV」「EF-100WATV」では同梱のメディアストリーム端末を接続します)。
ズームは「EF-11」同様光学式ズームレンズ非搭載で、デジタルズームのみ。「ズーム」から「テレ」側にずらしていくと画面が縮小される仕組みで、パネル周辺の画素がむだになってしまいます。
台形補正は「自動タテ補正」が効きます。次回レビュー予定の同社上位機種「EF-12」のような調整画面は出ず、数秒待つと補正完了です。
ズームの項目で調整できるのはデジタルズームのみ。便利な機能ですが、画質を優先するならばワイド端で利用しましょう
縦方向の台形補正は自動で対応可能です。横方向はメニューの「ヨコ補正」で実施しましょう
お預かりしたデモ機の光源使用時間は1,640時間。初期設定の映像モード(「カラーモード」)は「ブライトシネマ」のようです。「シネマ」にすると、「レーザーライト出力」も60%になり、ファンノイズもぐんと静かになります。
デモ機「EF-100」には「EF-100BATV」「EF-100WATV」のようなメディアストリーム端末がないので、Ultra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」とHDMI接続してブルーレイを視聴します。出力側の設定は「オート」として最大解像度で受けられるようにします。
音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、エイミーやコーラス、バンドメンバーの肌の色、緞帳、衣装の生地の違いもきれいに描き分けます。明るさは十分なのにアイキャッチが思ったほど輝かない印象なのはHD解像度(垂直800画素)だからか? もっとも、赤や青のスポットライトの光は「EF-11」「EF-12」より自然な差し込み方でした。
古いモノクロ映画「薔薇の葬列」の冒頭2人が絡み合うシーンでは、人肌へのフィルムグレインの出方はよい塩梅ですが、全白のシーンではやや画素感が目立ちノイズっぽく見えてしまいました。
Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」は、本機は2Kで受けている様子。ランプ光源のアイリスに相当するような「レーザーライト出力」を自動で可変する機能がなく、「シネマ」では60%固定がデフォルト値なので、明るさ2,000ルーメンと言えども穏当な表現です。
かといって「レーザーライト出力」を上げてしまうと、灯り揺らめく室内のシーンや、寒い荒涼とした決闘の場面のイメージが損なわれてしまいすこし残念な印象でした。
部屋を暗くして、映像モード(「カラーモード」)には「シネマ」を選んで各種ソフトを視聴しました
「シネマ」モードでは、「レーザーライト出力」の初期値が60%。光源の寿命という観点では、出力は控えめで使うほうが有利ではあります
最後にUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生します。
画面全体のユニフォーミティー(均一感)は良好。ほんのわずかに赤みがかりますが朝もやや雪も表現もふわりと清らかで好印象です。
ただし、細かい水しぶきや葉の描写は、フルHD機に比べるとどうしても劣ります。全体として明るさを感じる映像ですが、最も明るい部分(ピーク)の階調は出にくい印象です。クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)は感じませんが、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)があるのは垂直800画素という解像度からして致し方ないところか。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
内蔵スピーカーの出力は3W×2とのことですが、「スタンダード」「ボーカル」「ミュージック」「ムービー」からモード選択ができます。
順次試した結果、「スタンダード」も普段使いには悪くありませんが、こもりが少なく音楽もセリフも自然な「ムービー」が好ましく感じました。。重低音は出ませんが、音の情報は聞き取りやすいと思います。
サウンドモードは4種。「ムービー」が好印象でした
エプソンの後発フルHDモデル「EF-11」「EF-12」と比較すると、端子周りやレーザー光源の使いこなしなどもこなれていない印象で、解像度の面でも不利。音声も筐体が「EF-11」より大きい割には豊かさを感じず、設計の古さは否めない印象でした。
価格にもよりますが、どちらか迷っているならば、最新機種の「EF-11」「EF-12」を選びたいところです。
プロジェクターレビューパート1で取り上げた、同じくXGIMI(エクスジミー)のバッテリー非内蔵モデル「MoGo 2 Pro」(左)との比較。よく似たデザインコンセプトですが、右の「Halo+」のほうが一回り大きくなっています
「Halo+」の主要スペック
●本体色:ブラック
●明るさ:900ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式:DLP
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:25,000時間
●スピーカー出力:5W×2
●寸法:145(幅)×113.5(奥行)×171.5(高さ)mm
●重量:約1.6kg
●電源:付属電源アダプター/内蔵バッテリーで2.5時間駆動
●投写距離:159cm(60インチ)、213cm(80インチ)、266cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
接続端子はHDMI入力のほか、ヘッドホン出力(3.5mmステレオミニ)があります
専用リモコンでの操作はサクサク動きます
一見同社「MoGo 2 Pro」の付属品とそっくりですが、まったくの別物。長所は、白くて光るので薄暗い部屋でも見つけやすい点です
微妙なのは、リモコンの底のスイッチを「Focus」に切り替えるとピント調整できるという仕様。上下キーはこの「Focus」と音量(「VOL」)が兼用なので、スイッチを戻し忘れてそのまま使うとボリュームでなくフォーカスがズレることに……
ピント合わせはオートフォーカスで、台形補正も水平/垂直ともにオート。Ankerのプロジェクターなどと同じくいったん補正画面が出て補正します。同社のより新しいモデル「MoGo 2 Pro」ほどのリアルタイム性はありませんが、早くて正確。十分快適です。
「Halo+」はXGIMI独自の「X-VUE2.0」色補正、フレーム補間「MEMC」などの高画質技術を謳っています。前回の記事で紹介した「MoGo 2 Pro」も健闘しただけに、こちらの画質ははたしてどうでしょう。
まず内蔵アプリでAmazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」と「THIS IS IT」を見てみます。
安定感ある自然でよい絵が出ています。ビデオ映像はキラリとしたハイライトの表現や、赤・青の輝きはうまくイメージさせます。
リモコンの設定ボタンから映像モードを見ると「映画」が初期値。黒浮きが気になる場面もありますが、これも本来のDLPっぽいところなのでこのまま映画を見てみます。
「フィールド・オブ・ドリームス」のようなフィルム作品では、赤が強めでざらざらとしたグレインの粒状性がノイズっぽく目立つ印象で黒浮きも感じます。
初期設定のままでも総じて良好ですが、画質設定には「詳細設定」があるので、この中の「ローカルコントラスト」「HDR」「動き補償」という項目に注目して気になるところを改善しようと試みました。
後述しますが、「MoGo 2 Pro」と異なり、こちらでは「HDR」のモードは「自動」ないし「オン」で問題なし。動画の動きは、スムージングがきつめか。カット割りの多い音楽番組や映画のパンニングなどでヌルヌルとした表現が気になる場面も。「動き補償」「弱」でも結構気になったので、最終的にこれだけは「オフ」にしました。
映像モードは「映画」を使用。自然さと安定感のある映像が投写されました。このほかに「輝度モード」という項目がありますが、そちらはあまりいじる余地がなさそうだったため、「標準」としました
ぜひ確認したいのが「詳細設定」です。特に「動き補償」による不要な“ヌルヌル”が気になる場合、ここは「オフ」にしましょう
続いてUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」とHDMI出力「オート」にて接続、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を視聴します。
画面全体のユニフォーミティーはよいのですが、スクリーン周りに光漏れが円形にほわっと出ます。明るさ表記400ルーメンの「MoGo 2 Pro」と比べ、900ルーメンの本機の映像が圧倒的に明るいかと言われると、「確かに明るいけれど倍以上という感じはしない」というのが正直な感想です。
もっとも、画質トータルの印象では、朝もやや雪などがきれいに解像し、白飛びも少なめでとても美麗。縦横線ジャギーはわずかに出ますが、全体として映像に余裕があります。明るさの違い以外に、DMDパネルのサイズが「MoGo 2 Pro」(0.23インチ)より一回り大きい(0.33インチ)こともあるかもしれません。ただやはりこのディスクでもスムージング(動き補償)の出来はいまひとつなので、「オフ」がよいと思いました。
いっぽうで、「MoGo 2 Pro」で目立ったHDRの階調潰れは本機では見られないため、あれはやはり初期のバグだったのではないかと思います。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
スピーカー出力は、5W+5W。重低音は望めませんが、Harman/Kardonのチューニングがよいのか、ボーカルもドラムの再現もバランスよくこなし、同サイズのBluetoothスピーカーだと言われても悪くないと思わせるほどのサウンドです。
本体のデザインや質感はメタルで上質。バッテリー内蔵なのに比較的軽いのもマル。また目の前のテーブル置きでの使用を想定すると、本体に目障りないランプ類がまったくないのは好感が持てます。
背面から排気し騒音は38dBとありますが、実際に映画を見ている限りさほど耳障りでもなく、気にならないレベルでした。
モバイルタイプとはいえ寝室やサブルームで使うには結構贅沢画質。友人知人が来たら、一緒にリビングダイニングで見せたら驚くだろうなあ、と想像したくなる製品です。
今回の4モデル、パート1ほどの割り切りはなくどれを買っても想定と大きく異なるような落胆をすることはないと思います。
製品によっては時折クーポンなどによる値引きもありますので、パート1の4モデルとも合わせて検討するのもよいと思います。
最後に、各モデルのキャッチフレーズを、スクリーンなしの白壁漆喰に投写した映像とともにお送りしましょう。
次回はこれよりさらに価格が上の、10万円超えモデルをレポートします。
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。