レビューする4モデルは、左上から時計回りにエプソン「EH-TW5825」、Anker「Nebula Capsule 3 Laser」、エプソン「EF-12」、BenQ「GS50」
今回は、価格.com「プロジェクタ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングを席巻しているプロジェクター一斉比較のパート3。パート1は割り切りのよい格安モデル、パート2は老舗を中心としたソツのないモデルが並びましたが、パート3は価格.com最安価格10万円超えのモデルが登場します。
格安4Kモデルも射程内に見えてきそうな価格帯ですから、画質には期待したくなるところです。パート1/2同様に実機をお預かりし、自宅でその画質と使い勝手を試してみました。
今回テストしたのは、価格.comの最安価格が10万円越えのフルHD(1,920×1,080)解像度4モデル(2023年7月30日現在)です。
まずはプロジェクター単体で、内蔵のアプリを使ってAmazonプライム・ビデオを視聴。プロジェクター単体で、音楽ライブ、新作映画、フィルムグレインが目立つ旧作映画がどれぐらい楽しめるのかをチェックします。
使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げ式モバイルタイプ、グランヴュー「GFP-80HDW」。幕面はマットタイプのため素直な色表現で、背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手のよさとリーズナブルな価格設定が魅力です。
次に、HDMI接続でUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を視聴。リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋を「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」にした3パターンで、「映画」ないし「シネマ」モードで映したシーンをカメラで撮影した画像も掲載します。いずれもテーブル設置で台形補正なしです。
撮影に使ったのは一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」で、絵作りは「フラット」、すべて1/80 F8.0 ISO6400の同一露出にこだわって撮影していますが、人間の視覚は瞳孔や暗順応など非常にすぐれたアイリスを持っていますので、実際にはもっときれいに見えます(外光入りのcも時間帯によっては明暗差が……)。というわけで、あくまで参考程度とお考えください。
比較参考用の撮影に使ったのは、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」。高野山の四季を8K/60fpsで撮影、4Kにダウンコンバートして収録された映像作品です
リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋で「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」の3パターンで視聴しました(一部撮影忘れや、当該機種の撮影時間帯によって外光の明暗差があります)
白い箱形はちょっと素っ気ない印象もあります。背後の比較対象は530mlペットボトル
「EH-TW5825」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:2,700ルーメン
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:3LCD
●コントラスト:70,000対1
●光源(ランプ):UHE(高圧水銀ランプ)
●ランプ寿命: 4,500時間(明るさ:高)、7,500時間(明るさ:低)
●スピーカー出力:10W
●寸法:309(幅)×308(奥行)×107(高さ)mm
●重量:約3.8kg
●電源:電源ケーブル(電源内蔵)
●投写距離:176〜286cm(60インチ)、235〜382cm(80インチ)、295〜478cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi、Bluetooth対応
本体背面マグネットキャッチのカバーを開けたところにHDMI入力、アナログ音声出力(3.5mmステレオミニ)があります
取り扱い説明書には「プロジェクターリモコン」と「Android TV用リコモン」が商品に同梱されているとありますが、デモ機には写真の「プロジェクターリモコン」のみが同梱されていました。これひとつでもプロジェクターの基本操作からAndroid TV関連の操作までできて、スムーズでした
光学レンズが単焦点&ズーム固定が一般的なこの価格帯で、唯一、光学式ズーム&シフト(縦方向15%のみ)が手動ながら行えるモデル。目の前のテーブル上に置いて少し上の方向に映像をシフトさせて投写する使い方もできますし、視聴位置の背面に本棚などに置いて少し見下ろすように投写もできます。ただし、下シフトの量は制限されますので、天井吊り下げ設置のように、上下逆に置いて上下反転&上シフトすることになるでしょう(逆さ設置用ゴム足が同梱されます)。
台形補正は、垂直方向は自動調整可能。水平はスライダーで手動。もっとも、画素がもったいないのでおすすめはしません。
このモデルの光源は、高圧水銀ランプ(UHE)。LEDやレーザーと異なり放熱上の問題があるため、大きく傾けて設置することは故障の原因となります。「10度以上傾けない」ようにとの注書きがあり、同社「EF-11」や「EF-12」、「EF-100」などのように天井(垂直方向への)投写には向かないことがわかります。
本モデルには、エプソン製メディアストリーミング端末が本体に格納されており、Wi-Fi接続できればさまざまな動画のストリーミングサービスを楽しめます。これを使い、Amazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」を見ます。
見る前から予想はしていましたが、のっけからすでにめちゃくちゃ明るい&格が違う安定画質で改めて面食らいます。
映像モード(「カラーモード」)は、エプソンおなじみの「ダイナミック」「ブライトシネマ」「ナチュラル」「シネマ」を用意。このモデルでもひとまず「シネマ」を選択。すると「明るさ切替」は「低」、「オートアイリス」は「高速」が初期値になります。これで視聴を開始すると、1人ひとり異なる肌の色も、青や赤、ハイライトまで成熟の域であることを再確認できました。
映像モードは映画向けの「シネマ」を基本に視聴しました。初期値のままで、とてもバランスのよい映像を楽しめます
「シネマ」以外のモードでも破綻しないので、映像モードは好みで選べます。「ブライトシネマ」は比較的明るい環境でもテレビのように普段使いできてバランスよい絵を楽しめますが、ランプの明るさが変わってしまうため、放熱のためのファンの音は大きめ。
やはりちょっと部屋の明かりを落として、「シネマ」(「明るさ切替」を「低」)にして静かに楽しむのが、ランプ寿命も延ばせることもありおすすめです。
映像モードは写真の4種類。好みや周囲の明るさに応じて切り替えながら使うとよいでしょう
上記のとおり、「シネマ」モードでは「明るさ切替」が「低」になります。ランプ寿命が気になる場合は、この項目も気にするとよいかもしれません
ちなみに、気になる本モデルのランプ寿命は「明るさ切替」「高」で4,500時間、「明るさ切替」「低」で7,500時間。ランプは交換可能で、メーカー希望小売価格は10,780円(税込)。家庭用プロジェクターの光源はいずれレーザーに置き換わっていくのだと思いますが、毎日テレビのように使っても交換は数年に一度で、入れ替わると新品のようにフレッシュな絵になります。ファンの音がすごく気になる人を除けば、個人的にはそれほどLEDやレーザーにこだわる必要もない気がします。
「オートアイリス」は、シーンに合わせて人間の瞳孔のように自動でシャッターを調整する機能。明暗の激しいシーンでもさほど不自然ではないのですが、静かな映画ではカチャカチャという動作音が気になる人もいるかも。元々黒は十分に沈んでいるので「オフ」でよさそうです。また、色やガンマなど細かいカスタマイズも可能ですが、ウェルバランスなのであえて調整する必要はありませんでした。
映画「AMY」は、エイミーが若干紅潮して見えるなど鮮やかな印象。とても明るいため、スポットライトも美しく映えます。
ブルーレイで古いモノクロ映画「薔薇の葬列」も確認。しっかりとフィルムの粒状(グレイン)が見えて、色被りもなく価格を考えれば申し分ないと言ってよいでしょう。フィルム映画を見ているという印象がきちんと伝わります。
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。4Kソースも2Kで受けています。
明るい映像で白はやや飛び気味で頭打ちのイメージですが、オートアイリスが「オフ」でも黒側はさして浮くことなくしかも階調はしっかりと出ています(ビデオレンジ「リミテッド」から「フル」に変更しても同じでした)。
色も赤に寄るあざとい表現もなく、晴天の昼間から、しっとり日が落ちる夕方、照明のある夜まで自然で見事な描写を見せます。葉の一枚一枚まで十分解像し、今回視聴した80インチの画面ではフルHD解像度表示の本モデルでも4Kプロジェクターと遜色ないように思えます。
クロマエラーもなし。縦横線ジャギーはフルHD機なのでそれなりに見えますが、それだけ映像がシャープな証拠とも言えるでしょう。それなのにまろやかで自然な描写が実に心地よいのです。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
音質は凡庸。10Wスピーカーが背面に配置されていますがややこもり気味で、あまり期待しないほうがよいと思います。外部スピーカーを検討するならば、リップシンク(映像と音声のズレ)が気になるBluetoothスピーカーを使うより、3.5mmのステレオミニ(アナログ音声)出力を活用するほうがよいかも。
ビジネスプロジェクターがベースで視聴位置より前にテーブル置きすることを想定していると思われ、排熱は後方吸気前面排気。レンズから離れた位置からの排気なので「映像に陽炎が出そう」という問題はありません。騒音26dBと表記があり「ランプ=高」では正直ちょっとうるさいので、「ランプ=低」で使いましょう。
自動フォーカス&台形補正全盛の今、画質よりも設置性、「ポン置きですぐ絵が出る」ことこそスマートだと考えるなら、ほかの比較的新しいブランドのモデルを選ぶのがよいでしょう。
そんなことや4K/HDRといった最新スペックにこだわらず、「コストをできるだけ画質に振りたい」なら、同価格帯で本モデルに勝るものはないと言えるでしょう。投写サイズ100インチ未満で視聴距離2m以上という一般的な使い方で、コンテンツの大半がフルHD以下の解像度なら、4Kとの違いもわずかでベストバイと言えます。
前回のレビューで取り上げたエプソンの「EF-11」を2つ重ねたような箱形形状の「EF-12」
「EF-12」の主要スペック
●本体色:ブラック
●明るさ:1,000ルーメン
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:3LCD
●HDR対応:HDR10、HLG
●コントラスト:2,500,000対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:12,000時間(レーザーライト出力100%時)、20,000時間(レーザーライト出力50%時)
●スピーカー出力:5W×2
●寸法:175(幅)×175(奥行)×128(高さ)mm
●重量:約2.1kg
●電源:付属ACアダプター
●投写距離:133〜270cm(60インチ)、179cm(80インチ)、224cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
映像入力端子としてHDMIを2つ装備。しかも1系統はARC対応。AVアンプやサウンドバーとHDMIで接続しておけば、「EF-12」で再生した音声を接続したアンプやサウンドバーで楽しめます
Android TV関連の機能設定や電動での設置調整までこなせる万能リモコンが付属します
「自動設置調整」をオンにすると、台形補正だけでなくフォーカスも自動で補正されます。リモコンにもオートフォーカス機能を駆動させるボタンがあります。フォーカスも電動なので、スクリーンに近づいてリコモンでマニュアル微調整も可能です。
「EH-TW5825」よりも設置性に重きを置いた各種機能を搭載します。なかでも台形補正・オートフォーカスを同時に行う「自動設置調整」に注目です
ズームは光学式ではなく、80インチより小さいサイズはデジタルズームで縮小表示されるだけです。画素を有効に使いたいなら、デジタルズームを使わない範囲で設置位置を調整しましょう。
本モデルの特徴はやはり前回レビューした「EF-11」や「EF-100」と同様、天井(垂直方向に)投写できるよう設計されていること。台形補正時は、画面がグリーンのドット表示となり補正が自動で行われ、天井投写時にも難なく対応します。取り扱い説明書には背面を10cm以上空けるようにとの注意書きがあるので、スペーサーを置くなどの対応をするのがよいでしょう。
台形補正時には、写真の専用画面が表示されます
本機のOSはAndroid TV。このアプリで、Amazonプライム・ビデオの「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」といったライブを再生してみます。
映像モード(「カラーモード」)は、「ダイナミック」「ビビッド」「ブライトシネマ」「シネマ」「ナチュラル」があるので、「EH-TW5825」と同じように「シネマ」を選択。映像の明るさに合わせてレーザーの光量をリアルタイムで調整する「ダイナミックコントラスト」は、調整が強めに入る「高速」のままで見てみます。
映像モード(「カラーモード」)は5種類。「EH-TW5825」と比べると、明るい部屋でのビデオ系(テレビドラマや音楽ライブなど)のコンテンツ再生向けと思われる「ビビッド」が追加されています
吉田美和と中村正人、青と赤の照明もきれいに描き分けます。ただし、「レーザー光源」だからといって、「EH-TW5825」など従来のランプ光源モデルに対して格別の違いは感じません。ノイズは抑えめで安心感があります。
続いて、Ultra HDブルーレイプレーヤーソニー「UBP-X800M2」のHDMI出力とつないでブルーレイを再生してみます。古いモノクロ映画「薔薇の葬列」では、「EF-11」で感じられた赤茶けた色味は解消されました。フィルムグレインもよく出ており、粒状性による立体表現も優秀なのですが、ノイズレスのデジタル収録映像を見慣れた人にとっては、かえって、ざらざらしたノイズの多い映像に感じられるかもしれません。
Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」は「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「EF-11」ではフルHDでの入力が限度でしたが、「EF-12」は4K/HDR10で受けています(内部でダウンコンバートされ、最終的にはフルHDでの表示になります)。
もっとも、「EF-11」同様、室内のシーンではもっとベースとなる光出力(映像の明るさ)があったらどうなるのだろうという欲も。暗部の階調はよく出ていますが、その分、黒が浮いてしまう感じなのです。レーザー光量自体を自動調整する「ダイナミックコントラスト」のさらなる洗練が期待されます。
映像に合わせた適応的な補正機能は、「シーン適応ガンマ補正」(入力信号自体の明暗の補正)と「ダイナミックコントラスト」(レーザーの光量の調整)の2つが用意されます
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生します。画面全体の均一感は良好。朝もやや雪の場面の描写は、空気のフワリとした感じまで伝わり、水しぶきや葉の硬質な部分と対比され、表現が「EF-11」とはずいぶん違って深い。明るい部分(ピーク)の階調もよく出ており、すがすがしく感じます。
クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)やジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)も極小。「EF-11」とはだいぶ違います。
この値段で期待しすぎかも知れませんが、総じてクリアな印象なのは予想どおりであるいっぽう、絵にもう少し力強さが欲しいところも。4K/HDRを信号のスケーリングの過程で丸めてしまった要素が多いのか、明るさがHDRに必要なレベルに追いついていないのか、「EH-TW5825」と比べるとややのっぺりとした印象なのがもったいなく感じました。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
本モデルのスピーカーはヤマハとの協業で仕上げられ、「Tuned by YAMAHA」を謳っています。内蔵スピーカーの出力は3W×2とのことですが、さすがというところか、ちょっとしたモバイルスピーカーぐらいの聞き応えはあります。ややこもり気味ではありますが、ワンルームで再生する分にはこれでも悪くはないと思います。
音楽から映画までいろいろ聞いてみて、「サウンドモード」は「シアター」が好ましいと感じました
「サウンドモード」以外の音質調整項目は、「バーチャルサラウンド」「高」、「クリアボイス」「高」、「オートラウドネス」オフ、「バスエクステンション」オンに落ち着きました
なお、本機のBluetooth接続とは、本機「を」Bluetoothスピーカーとして使用する場面を想定するもので、プロジェクターから外部のBluetoothスピーカーに音声を送ることは想定していません。もっとよい音を求めるならばHDMIのARCやアナログ音声出力(3.5mmステレオミニ出力)を活用することになります。
「EF-100」「EF-11」と見た後にこのモデルを見ると、まったくの別物。「EF-100」の弱点を克服し、「EF-11」の上位モデルとして位置づけている理由がよくわかります。最新の機能をサポートしながらこの価格とサイズにまとめ上げた企画力には敬服します。
放熱による騒音は22dB(標準時)。タテ置きの可能性があることから、吸排気は前面・側面吸気/側面排気。かつ視聴位置より前に置くことを想定して設計されています。
重箱のような形でかわいらしいデザインで、絵も音もこれ1台で完結させようというエプソンの気概あふれる「EF-12」。ほかのブランドのモデルに対しても、同社のモデルに対しても一日の長を感じさせる、すぐれた製品だと思います。
ランチバッグのような箱形にサイドストラップがキュート
「GS50」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:500ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:DLP
●HDR対応:HDR10、HLG
●コントラスト:100,000対1
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:20,000時間(標準モード時)、30,000時間(エコモード時)
●スピーカー出力:5W×2 + 10W
●寸法:186(幅)×146(奥行)×154(高さ)mm
●重量:約2.3kg
●電源:付属ACアダプター、内蔵バッテリーで2.5時間
●投写距離:161cm(60インチ)、214cm(80インチ)、268cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応、IPX2防滴
「GS50」はIPX2の防滴仕様。ごく少量の雨ならば降られても問題ないということです。そのため、端子部には防水カバーが被せられています。入力端子はARCに対応するHDMIのほか、USB Type-C(電源共用)、USB Type-A。アナログ音声出力として、3.5mmステレオミニ端子も備えています
白いリモコンは薄暗いアウトドア空間で使う場合にも目立って助かります。設定ボタン(歯車)のほかに「PROJECTOR MENU」があるのはありがたいのですが、せっかくなら「ピクチャーモード」へのダイレクトボタンも欲しいところでした
ピント合わせはオートフォーカス。設定メニューで「リアルタイム調整」に設定できるほか、リモコンのフォーカスボタンでも随時調整可能です。
台形補正もオートが可能で、補正画面がいったん出て調整します。台形補正は、垂直方向は自動でカクカクとデジタル補正してくれますが、水平方向は手動です。
なんと言っても売りは、IPX2防滴と70cm耐落下筐体。ガッチリした筐体はラバーで覆われ、端子まわりと電源アダプターポートにもカバーが。タフガイをイメージさせます。
オートフォーカス時には専用画面が表示されます
画質面では、「CinematicColor」技術による独自の映像処理を施していること、Rec.709の色域97%の色再現などを謳っています。実際に見ていきましょう。
内蔵しているストリーミングデバイス(ATVハードウェアキー)を使い、Amazonプライム・ビデオの音楽ライブ「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」を見てみます。
映像モード初期設定は「リビング」。ちょっと青と赤のスポットライトがあざとい印象だったので「シネマ」に変更します。すると、BenQらしいこなれた万能な絵作りとなりました。
「キャンプファイヤー」モードというのがありそそられましたが、「シネマ」と比べると「色」の項目が「55」に対して「50」となるなど若干明る目になるだけで、あまり違いを感じませんでした。
そのほかにも近作から「フィールド・オブ・ドリームス」のようなフィルム時代の作品まで見ましたが、全般的に画素の格子が目立たないDLPらしい映像で、フィルムの粒状性とノイズの違いも自然に描き分けており見慣れた安心感があります。モノクロ映画でも色被りもなく良好です。
映像モードの「シネマ」と「キャンプファイヤー」モードの比較はこちら。取り扱い説明書によれば、「シネマ」は「低い輝度レベルで忠実な色再現と深いコントラストで、比較的明るい部屋でムービーを再生する」ためのモードで、「キャンプファイヤー」は「シネマよりも若干明るい」とあります。周囲の環境に合わせて使うのがよいでしょう
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。
ユニフォーミティー(均一性)、なだらかな階調表現、あざとすぎない色表現、キツすぎない解像感は予想どおり。4KでもAmazonプライム・ビデオ同様、安定したDLPらしい画質を見せます。解像度、色、ノイズの出方は見慣れたBenQ製品の印象どおりで、安心感があります。
逆に言うと、新興ブランドのモデルにあるような時折ハッとするようなキラリと光る新鮮な見え方はしません。
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
搭載するサウンドシステムは、比較的大きな箱形筐体を生かした5W+5Wスピーカーと10Wウーハーの2.1ch。本体左右と背面に配置されているようです。いろいろ試したところ、「シネマ」が万能と感じました。
音量を上げていくと、単体でもそれなりに楽しめる音質で、ドリカム中村正人のベースもよい感じ。駆動するファンによる排気音は静かなシーンや曲間には気になるかもしれませんが、通常は再生している音声にかき消されます。
音質モードには「標準」もありますが、使いやすかったのは「シネマ」です
持ち運び用のかわいらしいランチバッグのようなケースも付属しており、バッテリーも内蔵していることからみて、どう考えてもモバイル・アウトドア向けの商品企画でしょう。ボタンの配置もわかりやすく、マニアではない人でも操作にとまどうことはないはずです。
放熱のための排気は背面からで、騒音は29dB(通常)とのこと。起動時は大型プロジェクター並みの排気を感じますが、2.1ch再生の迫力ある音に普段はかき消されます。
なお、子どもが近づいてのぞき込むことを避ける「アイプロテクション」機能があります。動作する範囲はかなり限定的で、正面30cmまで近づかないと動作しないのは現実的でよいと思いました。
前回レビューした垂直720画素の同社「GV30」よりフルHD機の本モデルのほうが画質・音質面ともに上回っており、来客時のリビングルームやアウトドアでの単体使用など、さまざまな使用シーンを想像したくなる製品です。
本体はサテン調のガンメタっぽい上品な色で、スペックより重量感があります。従来モデルは天面にロゴランプがありましたが、背面の電源ボタンと天面に配置された十字キーや決定ボタンなどが星のようにわずかに光るだけに変更されています
「Nebula Capsule 3 Laser」の主要スペック
●本体色:ブラック
●明るさ:300ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式 DLP
●コントラスト:500対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:25,000時間
●スピーカー出力:8W
●寸法:83(幅)×83(奥行)×167(高さ)mm
●重量:約0.95kg
●電源:付属ACアダプター+USB Type-C充電ケーブル、内蔵バッテリーで3時間(Wi-Fi接続で映像再生時)
●投写距離:160cm(60インチ)、213cm(80インチ)、266cm(100インチ)
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.1)対応
映像入力端子として、ARC対応のHDMIのほか、USB Type-C(充電兼用)を備えます。左側は3.5mmステレオミニのアナログ音声出力
マットで滑りにくいリモコン。フォーカスボタン、ホームボタン、設定ボタン(歯車)に十字キーとシンプルな構成
本体正面にオートフォーカスおよび台形補正用のセンサーが付いており、ピント合わせ、水平/垂直台形補正をすべてオートでこなします。基本的にすべてお任せという感じ。
もっとも、オートフォーカスボタンを押せば随時ピントを合わせに行きます。また、設置場所を移動するたびに都度自動的に補正してくれるのはモバイルプロジェクターらしいところですが、いちいち煩わしいときは、起動時だけに設定したり、オフにも設定したりもできます。
場所を移動するたびに専用画面の表示とともにフォーカス合わせなどの自動調整が行われます。わずらわしい場合は設定を変えておきましょう
このモデルにはHDMI入力もありますが、Wi-Fi接続し、内蔵アプリでストリーミングサービスにアクセスするという使い方が基本でしょう。Amazonプライム・ビデオの音楽ライブ「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」「THIS IS IT」を見てみます。
「プロジェクター設定」から映像モード(「画像」)の設定に入り、「標準」「ムービー」「ゲーム」のプリセットから「ムービー」を選択しました。
映像モードは「ムービー」を選択しました
スペック表記の明るさ(光出力)300ルーメンでは映像が暗いかと心配していましたが、100ルーメンの同社「Nebula Capsule」と比べると実に3倍。薄暗い部屋で80インチの画面サイズに投写するのであれば実用レベルでした。
考えてみれば、ひと昔前のホームシアター向けDLPプロジェクタークラスのスペックです。もっとも、HDR対応するならばダイナミックレンジ確保のためまだまだベースとなる明るさが欲しいところではあります。
ユニフォーミティー(均一性)はよく、暗部も明部も階調はきわめて滑らかできれいです。コントラストも500対1と控えめな公表値ですが(この数値はいわゆるダイナミックコントラストではないのでしょう)、ライバル機と比べても見た目には遜色ありませんでした。「輝度」を「自動」としていたので、うまく調整してくれているのかもしれません。
もっと明るさがあれば高級プロジェクターの風格も見えてきそうな懐の深さすら感じます。ただし、明るさを欲張っていないからかレインボーノイズのようなものも見受けられません。
「輝度」の項目はレーザー光源の設定項目でしょう。「モード」の「自動」は映像に応じたリアルタイムでの光量調整と考えられます
次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。オートソーススイッチング機能があり、HDMI端子に信号入力があると自動で映像が切り替わります。「Nebula Capsule 3 Laser」も入力は4Kに対応していました。内部でスケーリング処理されてフルHD解像度の投写をする形でしょう。
朝もやや雪などの表現はきれいで、白のコントラストは良好。ここでもコントラストの弱さを感じさせません。ジャギー(縦横線のギザギザ)もほんのわずか。
限られた場面ではありますが、動きが急なオブジェクトがあるとやや動きがカクカクするところも。気になる人は、「詳細設定」の中にある「MEMC」(フレーム追加補正)で、「Effect」を「中」から「オフ」にすると不自然な動きが消えます。
動きの激しい場面での不自然さが気になったら、動画補間機能「MEMC」を「オフ」にしてみましょう
以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。
音は金属筐体のBluetoothスピーカーそのもので、本体下のほうから後方に向けて放たれている様子。出力値は8Wとのことですが、無難なバランス志向で何でもこなします。
「サウンドモード」は「ミュージック」「ムービー」「屋外」といったプリセットがあり、「ムービー」がウェルバランスでした。
騒音レベルは28dB。排熱は背面上部から行われているようで、「フィーン」という高めの音ながらさほど気にはなりませんでした。
スペックでは輝度、コントラストとも控えめな数値だったのですが、実際に絵を見てみると安定したまっとうな画質。単焦点でこの価格はちょっと高価に思えますが、レーザー光源の使いこなし、円筒の金属筐体やバッテリー駆動、音質など手堅くまとめている印象です。Ankerブランドを好きな人が手軽なモバイル用途に1台、というならばよい選択肢になりそうです。
今回取り上げた4モデルはプロジェクターレビューのパート1/2よりも高価格帯の製品たち。それだけあって、きちんと高品位になっていると感じました。「何かを切り捨てて価格を抑えた」というところがなく、各社が持てるデバイスで手堅くまとめた万能選手といった印象。1〜2万円の違いだったらパート2の4モデルより画質の点では間違いがなさそうです。
最後に、各モデルのキャッチフレーズを、スクリーンなしの白壁漆喰に投写した映像とともにお送りしましょう。
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。