価格.com「プロジェクタ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングを席巻している小型プロジェクターの画質比較テストはいかがでしたか? 個々のモデルの画質や機能についてはそちらをご参照いただくとして、ここでは実際のアウトドアシーンを前提に、主に使い勝手に焦点を当てて、アウトドアシーンでの留意点を述べてみたいと思います。
本稿では、一斉視聴したモデルのうち、ANKER「Nebula Capsule」「Nebula Capsule 3 Laser」、XGIMI「Halo+」、BenQ「GS50」のバッテリー内蔵タイプを実際に視聴しつつ記します。
アウトドアシーンでプロジェクターを使う場合に留意したいポイントは以下の5つです。順に説明しましょう。
テストは、拙宅の庭の駐車スペースをアウトドアのキャンプ場に見立て、プロジェクター内蔵のアプリでAmazonプライム・ビデオを視聴。単体でどのぐらい楽しめるのかをチェックしました。今回は家のWi-Fiに接続しましたが、実際のアウトドアではスマホを使ったテザリングになるでしょうか。
使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げで式モバイルタイプ、グランビュー「GFP-80HDW」。本体幅1,930mmで、一般的な乗用車で助手席から右後部座席に向けて斜めに入れようとすれば運搬可能なサイズです。重は7.9kgで、中央のハンドルを握って片手で移動でき、カメラの三脚のような背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手とリーズナブルな価格が魅力です。
拙宅は都内の一戸建てですが、幹線道路を一本入った住宅地にあります。緑が多く、街灯からの光の影響も少ないので、複数のグループがキャンプしているようなアウトドアシーンに近いと考え、庭にスクリーンを立てて、折りたたみ式のテーブルと椅子でシーンを作りました。
したがって、目が慣れてくればなんとなく手探りで何かがあると分かるレベル。照明を消した室内と比べると、壁からの反射光(迷光)がないというのがいちばんの違いです。一般的なキャンプ場も、ほかに何らかの照明は近くにありますが、手元の明かりを消すと、室内なんかより断然暗いはず。さらに、本当に自分たちしかいない河原などの真っ暗闇で消灯すれば、理想的な“完全暗室”と言えるでしょう。
まずは、ANKER「Nebula Capsule」から試してみましょう。80インチの投写には、2m強の距離が必要です。
明るさ100ルーメン(ANSI)の「Nebula Capsule」では、80インチサイズのスクリーンに投写するには、残念ながら光量が足りません。握った右手親指の位置にあるダイヤルを回してマニュアルでピントを合わせようにも、合っているかどうかわかりにくい印象でした。このモデルはアウトドアないし全暗の寝室でもせいぜい60インチ程度で使うのがよさそうです。
そこで、上位モデルの「Nebula Capsule 3 Laser」にスイッチ。これは300ルーメン(ANSI)と「Nebula Capsule」とは光量が段違いで、まさに屋外映画館を楽しめそうです。色のりもよく、300ルーメンとは思えない明瞭な映像を映し出しました。
プロジェクターを折りたたみテーブルの上にセット。「FlexTILT Head」というカメラ用の台座のような製品で水平をとっています
「Nebula Capsule 3 Laser」のオートフォーカスは機械任せでうまく合わせられましたが、全自動での適切な台形補正は難儀しました。あまりにも暗い環境のため、どこからどこまでがスクリーンなのか判別ができないようでした。
「Nebula Capsule 3 Laser」のリアルタイムのオートフォーカスはアウトドアでも結構使えました
そこで、台形補正については、「高精度補正」にてスクリーンの四隅を指定してあげる必要がありました。手動ですが四隅の位置を十字キーで指定するだけなので、さほど手間ではありません。事前に「手動補正」の方法を確認しておいたほうが現場で慌てずにすみます。
「Nebula Capsule」「Nebula Capsule 3 Laser」での手動台形補の方法は、左上、右上、右下、左下の順に四隅を指定するだけ。調整は内側方向にのみ可能でした
また、やってみて思ったのは、小型の三脚を使うと便利だということ。
プロジェクターをテーブルに置くにしても、アウトドアですとそもそもスクリーンに対して地面自体が水平とは限りません。そこで、プロジェクター底面にネジ穴があれば、柔軟な設置が可能になるよう小型三脚を使うのがベター。そうしないと、現場で紙の端切れなどを挟んで高さと角度を調整するハメになります。
上記のとおり、ここでは水準器も付いた「FlexTILT Head」を使いましたが、マンフロットの小型三脚なども安価かつ便利に使えます
気をよくして、次に画質比較レビュー「よく練られた画質が光る! 10万円以下プロジェクター4モデルレビュー」でも上々の結果だったXGIMI「Halo+」を試します。
XGIMI「Halo+」も、モバイル三脚を使うと安定して調整・設置できます
こちらは、オートフォーカスのほか、台形補正も機械任せで結構いけました。80インチともなるとプロジェクターからスクリーンまでの距離は2m超にもなりますから、モデルによって得手不得手があるのかもしれません。
明るさ900ルーメン(ANSI)のスペックどおり、「Nebula Capsule 3 Laser」よりさらに明るい映像です。Amazonプライム・ビデオでSDRコンテンツを再生すると「Nebula Capsule 3 Laser」よりナチュラル志向の絵作りで色味は浅めですが、暗闇の中に大きな窓がひとつできたかのようなクリーンな映像が印象的でした。
アウトドアは理想的な“完全暗室”も実現できるシーンですが、やはりプロジェクターの明るさ(光出力)があったほうが画質のよい映像を見られます。スペックだけではわからない部分もありますが、「Nebula Capsule 3 Laser」のように最低でも300ルーメンの数値は確保できる製品を選びたいところです。
「Nebula Capusle 3」も「Halo+」も、アウトドアでのモバイル用途だけに買うのはもったいない、上質な映像でした
「Halo+」に付属する自照式リモコンが実用的。本体が白なうえ、電源ボタンが光ってくれるので暗闇で発見しやすくよいと思いました
そしてもう1モデル試したかったのが、BenQ「GS50」です。
同社の「GV30」が寝室のシーンにピッタリであるように、この「GS50」は各種入力端子にゴムのカバーが付いてIPX2防滴&70cm耐落下性能を持ち、アウトドア用途にピッタリというコンセプトなのです。
ストラップが付いたデザインもかわいらしい「GS50」
明るさは500(ANSI)ルーメンの本モデル。電源を入れると、室内で見たときより薄暗い。
設定を見てみると、内蔵バッテリー駆動時には自動的に電源モードが「低電源」になるからでした。もっとも、起動した後にメニューで「標準」に戻すことも可能です。
「GS50」に限らず、こうした配慮がされている可能性がありますから、バッテリー駆動でプロジェクターを使う際に映像が暗いと感じたら、電源や光源の「モード」を確認してみましょう。
AC電源を供給せず、バッテリー駆動する場合は自動で「電源モード」が「低電源」モードに切り替わります。それでも、「低電源」モードの映像だけを見ていれば暗いと感じるほど明るさが落ちるわけではありません
本体が大きめの箱形ということもあり、設置は三脚を使わなくても安定して行えます。がたつきを解消するために、四隅のどこかにちょっとちぎった紙でも挟んだりしたほうが楽かもしれません。オートフォーカスと自動縦台形補正もスムーズにできました。
画質は以前の連載「別格の画質が手に入る! 10万円超フルHDプロジェクター4モデルレビュー」に記したとおり、「シネマ」モードが万能画質。サウンドもベースが効いている2.1chサウンドで、かわいらしいデザインだけにとどまらない魅力を持った1台です。
水平方向の台形補正は手動なので、できる限りスクリーンセンターに合わせてプロジェクターを設置するとよいでしょう
「GS50」のリモコンは光りはしませんが、白いので暗い環境下でも視認性が高く便利です
そして最後にもうひとつ。
今回紹介したモバイルプロジェクターは、いずれもリモコンとはBluetooth接続。つまり、持ち運ぶ際に何らかの原因でリモコンのボタンが押されると、起動してしまう可能性があるのです。
もちろん、「Nebula Capsule 3 Laser」などはそうした事態を避けるべく、「シャットダウン」と「スリープ」の2つのモードがありますが、結局ちゃんと「シャットダウン」できているか心配に。部屋を移動するだけならよいのですが、鞄に入れて移動するなどの場合は、念のためリモコンの電池は外して持ち歩くことを推奨します!
なお、バッテリーを内蔵しないモデルの中には、外部モバイルバッテリーでの駆動対応を謳っているモデルがあります。今回の視聴では、ViewSonic「M2e」とXGIMI「MoGo 2 Pro」がそれですが、それぞれ45W以上、65W以上のモバイルバッテリーでの駆動(USB PD)も謳っています。
しかし、これほどの高出力バッテリーは高額で重くなりがち。個人的には別途持ち歩くメリットもあまり感じません。筆者が出張時に使っていた24W出力のモバイルバッテリーでは当然だめでした。安心、安全にアウトドアでの再生を楽しみたいなら、今回ご紹介したようなバッテリー“内蔵”プロジェクターをオススメします。
最大24W出力対応のANKER「PowerCore Speed 20000 PD」をVewSonic「M2e」につないでみましたが、カチッとはいうものの映像投写まではしませんでした
以上、モバイルプロジェクターをアウトドアで使うときに盲点になるポイントを記してきました。最後に、もう一度ポイントをおさらいしましょう。
●自動台形補正が効きにくいときは手動補正が必須
●安定設置には三脚を使う
●室内よりも結構暗いが、ある程度の映像の明るさは必要
●バッテリー駆動では“省エネモード”になっているかも
●念のためリモコンの電池は抜いて運搬する
今回のテストではアウトドアシーンを想定したコンセプトのBenQの「GS50」がウェルバランスでしたが、次点で「Nebula Capsule 3」も「Halo+」もなかなか良好でした。予算を優先するならば「Halo+」を選ぶとよいでしょう。
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。