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“空間オーディオモード”搭載に進化! Shure担当者に聞いた「AONIC 50 (第2世代)」

ドイツ・ベルリンで2023年9月1日から開催されたエレクトロニクスのイベント「IFA 2023」のプレイベントにShure(シュア)が参加し、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載するワイヤレスヘッドホン「AONIC 50」の第2世代機(以下、「AONIC 50(第2世代)」)を披露した。

IFAの会場でShureのプロダクト・マーケティング・マネージャーAlex Kolb氏に、「AONIC 50(第2世代)」の開発コンセプトを聞けたので、その内容をお伝えしよう。

Shureのプロダクト・マーケティング・マネージャーAlex Kolb氏に「AONIC 50(第2世代)」の魅力を聞いた

Shureのプロダクト・マーケティング・マネージャーAlex Kolb氏に「AONIC 50(第2世代)」の魅力を聞いた

新チップの搭載により多彩な機能が加わった

「AONIC 50」は2020年にShureが発売したブランド初のANC搭載ワイヤレスヘッドホンだ。新製品の第2世代機に関する機能の詳細についてはニュース記事を参照してほしい。

今回約3年ぶりのアップデートを遂げる「AONIC 50」について、Kolb氏は『既存のユーザー、またはShureの製品に関心の目を向けてくれる方々からのフィードバックを得て、音質や使い勝手を高めたワイヤレスヘッドホンのフラグシップ』だと話す。

50mm口径のドライバーユニットやハウジングの構造などは先代の「AONIC 50」から変えずに、クアルコムによる最新鋭のBluetoothオーディオのチップを載せたことで機能まわりを充実させた。

IFAのプレイベントに展示された「AONIC 50(第2世代)」

IFAのプレイベントに展示された「AONIC 50(第2世代)」

『aptX HDやLDACに対応することにより、高品位なワイヤレスオーディオ再生が楽しめる機能は初代の「AONIC 50」から好評でした。今回はチップセットの性能が向上したことで、クアルコムのSnapdragon Soundに対応しました。aptX Adaptiveコーデックによる最大96kHz/24bit対応のハイレゾワイヤレス再生を、同じ96kHz/24bit対応のLDACコーデックとともに対応するワイヤレスヘッドホンは数少ないと思います。また、USBによる有線接続を選択したときには、前世代のモデルから最大384kHz/24bitのデジタル音声信号入力に対応しています。プレミアムグレードのワイヤレスヘッドホンを求めている人に、ぜひ第2世代の「AONIC 50」を試してほしいと思います』(Kolb氏)

ノイズキャンセリングに加わった新機能「MaxAware」

新しく追加された機能に「MaxAware」がある。ANCを働かせながら、周囲の人に話しかけられる場合などを想定して人の声など周囲の音をある程度聞こえるようにするANCのバリエーション的なモードだ。アプリから選択できるANCの強度の中に「Light(弱)」「Moderate(標準)」「Max(強)」と並んで「MaxAware」が入っている。

『パンデミックの期間に、自宅でのリモートワークにShureのヘッドホンを使ってくれたユーザーなどからリクエストが多く寄せられたことから、「MaxAware」を開発しました』とKolb氏が経緯を語る。

ANCのレベル設定の中に「MaxAware」がある

ANCのレベル設定の中に「MaxAware」がある

筆者もIFAの騒がしいイベント会場で本機のANC効果を試した。モバイルアプリ「ShurePlus PLAY」からモードを「MaxAware」に切り換えるとANCによる消音効果がしっかりとかかる。さらに、取り込み量を最大レベルまで上げると人の話し声だけでなく環境音もよく聞こえてくる。

別途設けている「外音取り込み」モードもアプリからレベルを切り換えられるが、外音取り込みを最大にしたほうが外の音はよく聞こえるようだ。本機を使う場面に応じて「MaxAware」と外音取り込みをうまく選び分けたい。

なおANCのレベルを「Max」にすると非常にうるさいIFA会場の騒音が「ググっ」と抑えられて静まりかえる。イベントスタッフがデモ用として「AONIC 50(第2世代)」にペアリングしたスマホで音を聞いたが、AONICシリーズらしいバランスのよさに加えて、低音域の彫りが初代機よりも深くなった印象を受けた。

「MaxAware」モードに設定すると、外音取り込みのレベルが任意に調節できる

「MaxAware」モードに設定すると、外音取り込みのレベルが任意に調節できる

イマーシブオーディオを身近にする新しいEQ機能

クアルコムの新しいチップセットを採用したことで生まれたパフォーマンスの余裕により「Spatializer」(※日本語版では「空間オーディオモード」)の機能が新たに追加された。Shure独自開発のアルゴリズムによって音場や帯域バランスに変化を加える機能だ。アプリから「Music」「Cinema」「Podcast」を選ぶ。音楽を再生しながら試してみると、コンサートホールのような音場の広がりが自然に感じられるサウンドになった。

この機能を新しく加えた理由をKolb氏に聞いた。

『音楽ストリーミング、動画ストリーミングサービスによりイマーシブオーディオコンテンツが、スマートフォンやタブレットを使って手軽に楽しめるようになりました。Shureの「Spatializer」は、従来のステレオ録音のコンテンツも立体的なサウンドで楽しめる機能です。これからイマーシブオーディオコンテンツが増えるほどに、あらゆる形で立体音響体験を身近に感じてもらえることが、「AONIC 50(第2世代)」のようなプレミアムクラスのヘッドホンに求められると考えています』(Kolb氏)

「AONIC 50(第2世代)」には最初からハードウェアEQが搭載されている。「ShurePlus PLAY」アプリからプリセットのイコライザーを選べるほか、ユーザーが任意に設定した値を保存してカスタムEQとして繰り返し使える。

ハードウェアEQはより使いやすく進化した

ハードウェアEQはより使いやすく進化した

初代の「AONIC 50」は発売当初ソフトウェアEQ対応だったことから、都度アプリに音源を読み込んでEQ設定を反映させる必要があった。その後、初代機もファームウェアアップデートによりハードウェアEQを搭載したことで、現在はその手間が解消されて、「AONIC 50(第2世代)」もまたヘッドホンにペアリングしたデバイスで再生するあらゆる音源にEQ効果がかかる。ほかにも「LDAC使用時」、または「ノイズキャンセリング最大時」にもEQ効果がフルにかけられる。

あらゆる聞き方でShureのベストサウンドを追求した

USB接続によるハイレゾ再生は信号経路を簡略化。ノイズキャンセリングやEQをバイパスする仕様とした。多くのANC機能を搭載するヘッドホンは「ANCオン」の状態でリファレンスのサウンドを作り込んでいる。「AONIC 50(第2世代)」のチューニングについて考え方を聞いたところ、『Bluetooth接続、電源オンの状態でのアナログケーブル接続、そしてUSB接続のあらゆるモードで同様に、Shureのシグネチャーサウンドが楽しめるように設定している』という。

筆者がリスニングした手応えは、ANCオン時のパワフルでダイナミックなワイヤレス再生の印象に比べて、USB接続によるハイレゾ再生はサウンドがしっとりとする印象を受けた。それぞれのリスニングスタイルによって「シュアが目指すベストなサウンド」を追求したという意味なのだろう。

よりコンパクトになった専用ケース

よりコンパクトになった専用ケース

筆者としては本機の「専用ケース」がスリムに、かつ少しコンパクトになったことで、プレミアムサウンドをアウトドアや飛行機の中に持ち込んで楽しみやすくなることがとても頼もしく感じた。Kolb氏によると『初代機の発売後に多くのリクエストが寄せられたことからデザイン変更に踏み切った』という。

『時代に合わせて大きな進化を遂げたShureの「AONIC 50(第2世代)」を、ぜひ多くの音楽ファンの皆さまに体験してほしい」と語るKolb氏の笑顔が自信に満ちていた。

山本 敦

山本 敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。海外は特に欧州の最新エレクトロニクス事情に精通。最近はAppleやGoogle、Amazonのデバイスやサービスまで幅広く取材しています。

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