テレビレス派も必見! ホームシアターの世界

本当の高コスパプロジェクターを選ぶ! 映画のための業務用機一斉テスト

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価格.com「プロジェクタ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングを席巻している小型プロジェクターの画質比較テストはいかがでしたか?

本連載では、10万円前後の家庭用プロジェクター12モデルをレビューしてきましたが、価格.comの「プロジェクタ」カテゴリーランキングには、格安の業務用(データ)プロジェクターも散見されます。

これらは映画鑑賞にどれほど使えるの? という視点から、安価で購入できる業務用プロジェクター4機種をレビュー! 言わば、以前の連載で紹介した「業務用と家庭用プロジェクターの違い」概論の“実践編”です。集めたのは、解像度や光源の違いで各種ラインアップを揃えるエプソンの業務用プロジェクターたち。参考として人気の家庭用格安モデルアンカー「Nebula Capsule」と比較しながら、価格とスペックともども見ていきましょう。

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テストの方法

業務用プロジェクターのOSは基本的にAndroid TVなどを採用していません。そのため、コンテンツの再生にはプレーヤーやレコーダーとの接続が前提となります。また、本体の音質については製品の特性上ほぼ期待できません。音質を求めるならば、AVアンプやプロジェクターのアナログ音声(多くは3.5mmステレオミニ)出力の活用が必須と考えますので各論では割愛します。業務用プロジェクターを検討する場合はまずここに注意しましょう。

キモとなるのは、インテリアデザインよりも、画質とモバイル設置性といった機能性に対するコストパフォーマンスです

まずは、HDMI接続したソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」でフルHD画質のブルーレイを再生し、音楽ライブ、新作映画、フィルムグレインが目立つ旧作映画がどれぐらい楽しめるのかをチェックしています。

使用したスクリーンは、キクチの80インチ立ち上げで式モバイルタイプ、グランヴュー「GFP-80HDW」。幕面はマットタイプのため素直な色表現で、背後のつっかえ棒で高さを変えられる使い勝手のよさとリーズナブルな価格設定が魅力です。

次に、HDMI接続でUltra HDブルーレイ「四季 高野山」を視聴。リビングルームに見立てた漆喰壁の部屋を「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」にした3パターンで、「映画」ないし「シネマ」モードで映したシーンをカメラで撮影した画像も掲載します。いずれもテーブル設置で台形補正なしです。

撮影に使ったのは一眼レフカメラPentax「K-3 Mark III」で絵作りは「フラット」、すべて1/80 F8.0 ISO6400の同一露出にこだわって撮影していますが、人間の視覚は瞳孔や暗順応など非常にすぐれたアイリスを持っていますし、解像度も掲載用に下げていますので、実際にはもっときれいに見えます。というわけで、あくまで参考程度とお考えください。

比較参考用の撮影に使ったのは、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」。高野山の四季を8K/60fpsで撮影、4Kにダウンコンバートして収録された映像作品です

比較参考用の撮影に使ったのは、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」。高野山の四季を8K/60fpsで撮影、4Kにダウンコンバートして収録された映像作品です

リビングに見立てた漆喰壁の部屋で「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」の3パターンで視聴しました

リビングに見立てた漆喰壁の部屋で「a 全暗」「b スクリーンから遠い視聴側のみ照明あり」「c 南向きの窓からの外光あり」の3パターンで視聴しました

明るさにも解像度にも限界がある
アンカー「Nebula Capsule」

まずは基準として家庭用プロジェクターの人気モデル「Nebula Capsule」を見てみます。小型の金属筐体で本体色はブラックのほかにレッドも用意されます。背後の比較対象は530mlペットボトル

まずは基準として家庭用プロジェクターの人気モデル「Nebula Capsule」を見てみます。小型の金属筐体で本体色はブラックのほかにレッドも用意されます。背後の比較対象は530mlペットボトル

「Nebula Capsule 3 Laser」(右)とのサイズ比較。同じような形状ではありますが、結構サイズは違います

「Nebula Capsule 3 Laser」(右)とのサイズ比較。同じような形状ではありますが、結構サイズは違います

「Nebula Capsule」の主要スペック
●本体色:ブラック、レッド
●明るさ:100ルーメン(ANSI)
●表示解像度:854×480(SD)
●方式:DLP
●コントラスト:400対1
●光源(ランプ):LED
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:5W
●寸法:68(幅)×68(奥行)×120(高さ)mm
●重量:約0.47kg
●電源:付属ACアダプター+USB Type-B Micro充電ケーブル、内蔵バッテリーモードで3時間(無線LAN接続で映像再生時)
●投写距離:173cm(60インチ)、246cm(80インチ)、308cm(100インチ)
●備考:Bluetooth(4.0)対応

入力端子はHDMI(1.4仕様)のみ。左のUSB端子は充電とデータストレージ接続の兼用

入力端子はHDMI(1.4仕様)のみ。左のUSB端子は充電とデータストレージ接続の兼用

リモコンは操作しやすいのですが、OSがAndroid 7.1。動作がややもっさり感じてしまうでしょう。パスワードなど文字入力する場合だけでなく、専用アプリ「Capsule Control」で操作したほうがスムーズでした

リモコンは操作しやすいのですが、OSがAndroid 7.1。動作がややもっさり感じてしまうでしょう。パスワードなど文字入力する場合だけでなく、専用アプリ「Capsule Control」で操作したほうがスムーズでした

【「Nebula Capsule」の設置性】基本的に手動ながら操作はわかりやすい

近年格安モデルでも主流となっている全自動フォーカス&全自動台形補正ではなく、レンズもズームなしの単焦点。もっとも、ピント合わせは手動ながら右手でつかんだ親指で回すスタイルで、とても使いやすくできていました。

ハンディという商品企画がわかりやすく、人気があるのもうなずけます。台形補正は水平/垂直があり、垂直はオートで補正可能ですが、デジタル補正のため、持てる画素を最大限活用するためにはできるだけ使わずに済む位置を探しましょう。総じて、置くだけですぐ投写したい壁に映像を出すのは難しく、垂直方向の台形補正を使ってでも仰角をつけたい場合にはミニ三脚などが必要になります。

【「Nebula Capsule」の画質】映像を大きくすると暗く、近づくと画素が目立つ

「Nebula Capsule」はAndroid TV搭載機なので、本機単体でも無線LAN接続すればAmazonプライム・ビデオなどが楽しめます。しかし、コンテンツ云々以前に、用意した80インチのマットスクリーンに投写すると、部屋を全暗にしても映像が薄暗い

焦点距離固定の単焦点プロジェクターなので、本体をスクリーンから離せば離すほど画面は大きくなりますが、映像はさらにどんどん暗くなります。明るさの点から実用なのは60インチぐらいまででしょうか。

いっぽうで、映像から2〜3mは離れて見ないと、今度は画素の格子が目立ちます。垂直解像度480とはいえ、気軽に動画を見る分には案外気にならないかと思っていたのですが……。

そうすると、60インチの薄暗い映像を2〜3m離れて見るために購入する道具としてどうか、考えてしまいます。

映像自体は特に破綻もなく、少し前の世代のDLPプロジェクター画質と言ったところ。暗部の階調が出る代わりに黒が浮き、赤などの色は若干渋めに振れます。

後で紹介する業務用プロジェクターとは違い、Android OSを搭載。これひとつでAmazonプライム・ビデオなどを見られるのはうれしいポイントではあります

後で紹介する業務用プロジェクターとは違い、Android OSを搭載。これひとつでAmazonプライム・ビデオなどを見られるのはうれしいポイントではあります

映像の明るさを優先したい場合は「画像モード」を「標準モード」にするのがよいでしょう。ただし、バッテリー消費は大きくなります

映像の明るさを優先したい場合は「画像モード」を「標準モード」にするのがよいでしょう。ただし、バッテリー消費は大きくなります

「四季 高野山」はちょっと荷が重い

次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。本モデルは2Kで受けています。

ユニフォーミティー(画面全体の均一性)は良好。パネル解像度がSD(垂直解像度480)ですが、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)は案外わずか。ただ、今回視聴した80インチマットスクリーンではかなり薄暗い。階調も出ておらず、色がひっくり返っているような場面も……。

「四季 高野山」のような映像の“ハイファイ”再生が求められるコンテンツは、「Nebula Capsule」には荷が重いようです。「Nebula Capsule」は無線LAN接続し、内蔵アプリでとにかく気軽に動画を楽しむべきモデルだと思いました。

以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。

【「Nebula Capsule」のまとめ】検討するならば寝室や隠れ部屋での“チョイ使い”用

とにかくモバイル&ハンディという商品企画の勝利。ビール缶より少し細い250ml「ソーダ缶サイズ」で、金属筐体の質感も思わず手に取ってしまいたくなります。ボタンの配置も天面に集まっていてわかりやすい。「Nebula」のLEDランプが充電状態(赤、緑)、プロジェクターモード(白)、Bluetoothスピーカーモード(青)などをシンプルに伝えてくれます。

放熱のための排気は背面上部から。公称騒音30dBですが、「シャー」というノイズの周波数帯域が高めなので、同社上位モデル「Nebula Capsule 3 Laser」より耳に付くかもしれません。

発売から期間が経過し、格安プロジェクターが増えてきた現状では物足りない印象です。もし初めてプロジェクターというものを試してみようと考えた人がこれを購入してしまうと、「やっぱりプロジェクターって暗いんだね」で終わってしまうのではないかと……。

寝室/ワンルーム向けプロジェクターを検討した回でも述べたように、プロジェクターの特性をよくわかったうえで、コンパクトなセカンドモデルとして“チョイ使い”するなら買ってもよいかもしれません。

4万円以下で得られる画質としては及第点
エプソン「EB-E01」

データプロジェクターらしい白い箱形。光沢仕上げの家庭用プロジェクターと異なり、滑りにくいエンボス加工がされています

データプロジェクターらしい白い箱形。光沢仕上げの家庭用プロジェクターと異なり、滑りにくいエンボス加工がされています

「EB-E01」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:3,300ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,024×768(XGA)
●方式:3LCD
●コントラスト:15,000対1
●光源(ランプ):UHE(高圧水銀ランプ)
●ランプ寿命:約12,000時間(明るさ:低)
●レンズ:デジタルズーム、手動フォーカス
●スピーカー出力:2W
●寸法:302(幅)×234(奥行)×77(高さ)mm
●重量:約2.4kg
●電源:付属電源ケーブル(電源内蔵)
●投写距離(16:9投影サイズ):192〜259cm(60インチ)、256〜346cm(80インチ)、321〜433cm(100インチ)
●備考:パネルは4:3

本体サイズは解像度の高いWXGAモデル「EB-W06」と同じ。映像入力端子としてHDMI1系統のほか、D-Sub15ピン(アナログRGB)があります

本体サイズは解像度の高いWXGAモデル「EB-W06」と同じ。映像入力端子としてHDMI1系統のほか、D-Sub15ピン(アナログRGB)があります

【「EB-E01」の設置性】単焦点、手動フォーカスのベーシック仕様

リモコンはずんぐりむっくりした小型サイズで、ボタンがぎっしりと詰め込まれています

リモコンはずんぐりむっくりした小型サイズで、ボタンがぎっしりと詰め込まれています

「EB-E01」は、光学式レンズシフトや光学式ズームは付いていない単焦点モデル。フォーカス合わせも手動で、近時の10万円以下の家庭用プロジェクターと比べても、設置性がよいとは言えません

しかもアスペクト比16:9の映像を投写するには、画角4:3のパネル画素の上下を大幅にトリミングして使うことになるため、かなりの画素がむだになってしまいます。垂直解像度は768ではあるものの、水平解像度が上位モデル「EB-W06」の1,280画素に対し、1,024しかないことにも注意です。

騒音レベルは26dB(標準時)。正面から向かって右側面吸気の左前面排気で、一般的な形。「明るさ切替」を「低」にするとかなり静かになりますので、ホーム用と比べてことさらうるさいとは感じません。

天面からレンズ周辺をみたところ。単焦点なので光学式ズームのための機構はなく、手動のフォーカスレバーのみ

天面からレンズ周辺をみたところ。単焦点なので光学式ズームのための機構はなく、手動のフォーカスレバーのみ

【「EB-E01」の画質】明るい分、解像度不足がつるりとした印象に

業務用のデータプロジェクターは、基本的に単体ではコンテンツを再生できないので、Ultra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」とHDMIで接続してブルーレイを視聴します。もしプロジェクター単体で済ませたいなら、「Fire TV Stick」などドングル型のメディアプレーヤーをHDMI端子につないでおくのもよいでしょう。

「UBP-X800M2」のHDMI出力解像度オートでの信号を、本モデルはフルHDで受けています。さっそく映像を投写すると、本体がしょっちゅう「カラカラ」と音を立てます。壊れたかと思うかも知れませんが、映像の明暗に合わせて人の瞳孔のように自動的に明るさを調整する「オートアイリス」が「高速」で動作している、業界ではおなじみの音なのです。虫でも入り込んだかのように軽い音が不規則かつひんぱんに響くので、初体験の人は少しとまどうかもしれません。

映像モード(「カラーモード」)は「ダイナミック」から「シネマ」にし、節電メニューの「明るさ切替」を「低」にします

「ダイナミック」は、映画を見るには大味な絵で、明るすぎて黒が浮き大味の映像になることと、ランプ寿命を延ばして騒音を抑える「明るさ切り替え」設定の「低」モードを選べないからです。これはここで紹介するすべてのエプソンプロジェクターで映画を見るための最初のお作法とも言えるので、覚えておきましょう。ランプはまだ14時間しか使用していないフレッシュな状態のデモ機です。

エプソンのプロジェクターで映画を見るならば、映像モード(「カラーモード」)でまず選びたいのが「シネマ」。名前のとおり、映画再生向きのモードです

エプソンのプロジェクターで映画を見るならば、映像モード(「カラーモード」)でまず選びたいのが「シネマ」。名前のとおり、映画再生向きのモードです

明るすぎて黒が浮いてしまう(グレーがかってしまう)ことを防ぐために、「明るさ切替」は「低」に設定。この設定は、光源(ランプ)の寿命も延びるというメリットもあります。リビングルームなどの明るい環境であっても、この「シネマ」+「低」モードで十分鑑賞できるレベルの映像の明るさでした

明るすぎて黒が浮いてしまう(グレーがかってしまう)ことを防ぐために、「明るさ切替」は「低」に設定。この設定は、光源(ランプ)の寿命も延びるというメリットもあります。リビングルームなどの明るい環境であっても、この「シネマ」+「低」モードで十分鑑賞できるレベルの映像の明るさでした

音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、エイミーがアップになったときの描写やスポットライト、緞帳、サテン生地の色味は正確で、解像度の低さもあまり感じさせません。

もっとも、WXGAの上位モデル「EB-W06」と比べて明らかに違うのは、どこかエイミーのアイキャッチが甘いこと。かつ、ステージが引きの映像になったとき、急に画面全体のピントが甘くなるような見え方になることです。ほぼ顔がアップになることがないバックコーラスの女性2人は、常にソフトフォーカス(笑)。たとえばスポーツでもサッカーなど、引きの多いコンテンツを80インチで見るのは、ちょっとキツい印象です。

明暗を自動調整する「オートアイリス」機能は、「EB-W06」と同等なのでしょうが、「高速」設定にしても、体感では若干効き目がおっとりしている印象。ただ、客席の暗い部分の黒浮きを頑張って抑えているのがうかがえます。

古いモノクロ映画「薔薇の葬列」冒頭の裸の2人が交わる純白のシーンでは、フィルムグレイン効果(フィルムの粒子で立体感を出す)は出ず、のっぺり。加えて画素の格子が気になります。展示会などに置かれた業務用プロジェクターそのものといった印象で、芸術作品鑑賞には物足りません

Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」では、暗い室内でろうそくの灯りがチラチラするシーンを見ると「オートアイリス」の動きが気になります。これでは少し落ち着きに欠けるので、映画ではやはり「オートアイリス」を「オフ」にしたくなります。

ソースが変わってもパネル解像度が低いことからディティールが欠落し、映像が明るくクリアーなのと相まって、映像全体がつるりとした印象になってしまいます。

近作ブラッド・ピット主演「ブレット・トレイン」のような書き割りアニメ調の映像ならよいのですが、「最後の決闘裁判」のような実写かつ繊細な美術や風景描写で心情を魅せる映画では込められている表現が十分伝わらない印象です。決闘者2人のプライドを表す盾や甲冑の繊細な細工、2人以上に葛藤に苦しみつつ見ているしかないマルグリットの心情をも表すような荒涼とした寒々しさに満ちた闘技場の描写などがそれです。

再生中の映像に応じてリアルタイムで絞りを変えるのが「オートアイリス」機能です。映像によってはフワフワと明暗が変わってしまうのが気になることもあるので、その場合は「オフ」にしましょう

再生中の映像に応じてリアルタイムで絞りを変えるのが「オートアイリス」機能です。映像によってはフワフワと明暗が変わってしまうのが気になることもあるので、その場合は「オフ」にしましょう

「四季 高野山」解像度不足がより顕著になる

次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「EB-E01」では2Kで入力されています。

ユニフォーミティー(画面全体の均一感)は良好なので自然の色味や遠景の描写はまあよいとして、葉が重なるような細かい描写はさすがに解像不足でつらいものがあります。夕焼けや朝もやなどは雰囲気があるのですが、明るい白側の階調が飛んでしまっていて、白昼の白い雲や雪、波しぶきなどは真っ白なベタ塗り風になってしまいます。行灯(あんどん)の表面に描かれた家紋が飛んでしまっています。

クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)についても、上位モデル「EB-W06」よりかなり目に付きます。ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)は、解像度が少ないぶん厳しいかと思いきや、動画を普通に見ている限りでは意外と気になりません。動きが自然で輪郭線もガタガタしない画像処理には巧みさを感じました。

もっとも、プロジェクターを見慣れている目から見ると解像度の低さはところどころで気になります。静止画に近いゆったりした明るいシーンや文字テロップが多い作品ということもあり、画素の格子が目立ちました。

以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。

【「EB-E01」のまとめ】素っ気ないけれど、ひと通りのことはできてしまう凄さはある

「EB-E01」では、次に紹介するWXGAパネルの上位モデル「EB-W06」などと比べると、画面全体でちょっとピントが外れているかのようなボケを強く感じました。予想以上に、水平解像度が映像全体の印象に大きく影響するなと実感しました。

先述のとおり、画質を真剣に見れば、「EB-E01」は物足りないと言わざるを得ません。しかし、「EB-E01」の存在意義がないかと言われれば、そうではありません。

コスパという観点から言えば、価格.comの最安価格4万円以下(2023年10月10日現在)で、明るく、ひと通りの映像をそれなりに再生できる本モデルの存在意義はとても大きいでしょう。家庭用プロジェクター「Nebula Capsule」のように映像は暗いがオシャレなプロジェクターと対極にあるものとしてとらえるべきだと思います。

つまり、オシャレでもないし新しさもないけれど、映像は明るく、プロジェクターとしての本質的な機能が担保されているしっかりした製品なのです。

「明るさ切替」を「低」にして黒浮きとファンの騒音を抑えていますが、明るさ3,300ルーメンという絶対的な明るさの基礎体力はむだではありません。騒音が気にならないならば、環境に応じて「明るさ切替」を「高」にする方法もあるでしょう。

いずれにせよ、この価格でこの画質は新興メーカーの製品では得られるものではありません

明るいHDモデルの決定版的存在!
エプソン「EB-W06」

「EB-W06」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:3,700ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,280×800(WXGA)
●方式:3LCD
●コントラスト:16,000対1
●光源(ランプ):UHE(高圧水銀ランプ)
●ランプ寿命:約12,000時間(明るさ:低)
●レンズ:1.2倍光学手動ズーム、手動フォーカス
●スピーカー出力:2W
●寸法:302(幅)×234(奥行)×77(高さ)mm
●重量:約2.5kg
●電源:付属電源ケーブル(電源内蔵)
●投写距離(16:9):172〜208cm(60インチ)、231〜278cm(80インチ)、289〜348cm(100インチ)
●備考:パネルは16:10

本体サイズは「EB-E01」と同じ。映像入力端子としてHDMI1系統、ミニD-Sub15ピン(アナログRGB)のほか、コンポジット映像入力(RCA)も装備

本体サイズは「EB-E01」と同じ。映像入力端子としてHDMI1系統、ミニD-Sub15ピン(アナログRGB)のほか、コンポジット映像入力(RCA)も装備

リモコンについても「EB-E01」と共通。上下キーの反応などは良好で、サクサク動きます

リモコンについても「EB-E01」と共通。上下キーの反応などは良好で、サクサク動きます

【「EB-W06」の設置性】画面の大きさ調整に便利な光学式ズームレンズ搭載

単焦点でXGA解像度仕様の下位モデル「EB-E01」と異なり、光学式ズームレンズを搭載。本体を動かさずに画面の大きさを調整できるので、とても便利です。手動でフォーカスを合わせると、とにかく明るい鮮明な画像が表れました。

台形補正は垂直方向が自動。水平方向はスライダーを手動で動かして調整します。画質優先なら、光学式ズームと手動でのピント合わせだけ使い、デジタルズームと台形補正はできる限り使わないようにしましょう。

天面から見たレンズ周辺。「EB-E01」と比較すると、光学式ズーム用のレバーと台形補正、「A/Vミュート」のレンズカバー操作部が増えています

天面から見たレンズ周辺。「EB-E01」と比較すると、光学式ズーム用のレバーと台形補正、「A/Vミュート」のレンズカバー操作部が増えています

【「EB-W06」の画質】解像感もグッと高まりリアルに

「EB-E01」同様、本体のアプリなどでのコンテンツ再生機能を搭載していないので、ソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」とHDMIで接続しブルーレイソフトを視聴します。

「EB-E01」同様、エプソンプロジェクターで映像作品を見るのに最適なお作法をします。映像モード(「カラーモード」)を「シネマ」にし、さらに「明るさ切り替え」を「低」にすると、ファンの音が静かなホームシアター仕様となります。デモ機のランプはまだ48時間しか使われておらず、フレッシュな状態でした。

映像モード(「カラーモード」)は、ホームシアター用として使うなら「シネマ」一択です。ほかは「ダイナミック」「プレゼンテーション」など、オフィスユース向けの明るいモード。パラメーターも調整できますが、「シネマ」のデフォルトは非常に良好なバランスです

映像モード(「カラーモード」)は、ホームシアター用として使うなら「シネマ」一択です。ほかは「ダイナミック」「プレゼンテーション」など、オフィスユース向けの明るいモード。パラメーターも調整できますが、「シネマ」のデフォルトは非常に良好なバランスです

音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、エイミーのアイキャッチ、スポットライトが明るく爽やか。「EB-E01」と比べると髪の毛1本1本や産毛まで解像し、そばかすもずいぶんリアル。

業務用プロジェクターは総じて高い光出力値(明るさ)を持っていますが、「EB-E01」のとき以上に、「明るさ」という基礎体力の重要性を再認識させてくれました。もっとも、全体が明るい分黒は浮きやすく、ライトが当たらない客席などの黒はちょっと抑えたいと感じたので、「オートアイリス」はできる限り「高速」で使い、明暗の動きが気になる作品では「オフ」にしました。

古いモノクロ映画「薔薇の葬列」では、冒頭の純白な世界の中で2人が絡むシーンのフィルムグレイン(フィルムの粒状性による立体感ある描写)が抑えめ。場面転換したあとの日常のシーンではグレインが出て映像も立体的になるので、白(ピーク)側だけ階調が頭打ちなのだと思われます。

「オートアイリス」を使うと、明度の変わる場面ではカチャカチャとの動作音がします。また、映像に追従する際の動きが気になる場合は「オフ」にしましょう。このあたりの作法は「EB-E01」と同様です

「オートアイリス」を使うと、明度の変わる場面ではカチャカチャとの動作音がします。また、映像に追従する際の動きが気になる場合は「オフ」にしましょう。このあたりの作法は「EB-E01」と同様です

「四季 高野山」フルHD機に劣らぬ解像感とていねいな描写

次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「EB-W06」では2Kで入力されています。

ユニフォーミティー(画面全体の均一性)は良好。明るくフレッシュなため一見テレビ的にも見えるのですが、カリカリした描写ではなく、水しぶきや葉の細かい描写もきちんと雰囲気が残されます。ただ、最も明るい部分(ピーク)の階調はあまり出ていないようで全体的に明るい側が飛び、暗部は階調が保たれるものの夜景までも明るく浮いた調子。ややノイズ感があるシーンも見られました。

色味は赤被りもなく良好。特に白は真っ白とクリーム色の違いもていねいに描き分けます。

クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)はあるものの、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)は比較的少なめ。動画として見る限りではフルHD機とさほど遜色はありません

以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。

【「EB-W06」のまとめ】画質で考えれば今回のコスパNo1!

「EB-E01」(XGA=1,024×768画素パネル)、「EB-W06」(WXGA=1,280×800画素パネル)、さらに上位の「EB-FH52」(フルHDパネル)という兄弟機の中間に位置するこのモデルは、価格対性能のバランスがよく、ビジネスだけでなく映画も無難にこなすすぐれた製品だと思いました。

業務用プロジェクターならではの明るさに加え、ひと昔前に20万円ほどした液晶プロジェクターのような成熟した絵作りの魅力があります。

確かに画質はよいがコスパには疑問符が付く
エプソン「EB-FH52」

「EB-E01」「EB-W06」とはレンズ周りの意匠が若干異なり、奥行きも5cmほど長くなっています

「EB-E01」「EB-W06」とはレンズ周りの意匠が若干異なり、奥行きも5cmほど長くなっています

「EB-FH52」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:4,000ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●方式:3LCD
●コントラスト:16,000対1
●光源(ランプ):UHE(高圧水銀ランプ)
●ランプ寿命:12,000時間(明るさ:低)
●レンズ:1.6倍光学手動ズーム、手動フォーカス
●スピーカー出力:16W
●寸法:309(幅)×282(奥行)×90(高さ)mm
●重量:約3.1kg
●電源:付属電源ケーブル(電源内蔵)
●投写距離(16:9):176〜286cm(60インチ)、235〜382cm(80インチ)、295〜478cm(100インチ)

映像入力端子としてHDMIを2系統備えることが「EB-W06」EB-E01」との大きな違い。ミニD-Sub15ピン(アナログRGB)、コンポジット(RCA)のアナログ映像入力もあります

映像入力端子としてHDMIを2系統備えることが「EB-W06」EB-E01」との大きな違い。ミニD-Sub15ピン(アナログRGB)、コンポジット(RCA)のアナログ映像入力もあります

ダイレクトボタンが凝縮されたリモコンは「EB-FH52」でも共通していました

ダイレクトボタンが凝縮されたリモコンは「EB-FH52」でも共通していました

【「EB-FH52」の設置性】光学式ズーム領域もさらに広がる

「EB-W06」と同様、手動による光学式ズームとフォーカスを持っており、レバーで手動操作します。ただしズームが「EB-W06」の1.2倍に対し「EB-FH52」は1.6倍になっている分、画素をむだにしない高画質での設置の自由度は高まったと言えます。

天面から見たレンズ周り。「EB-W06」と同様、ズームとフォーカス、台形補正のレバーが見えます

天面から見たレンズ周り。「EB-W06」と同様、ズームとフォーカス、台形補正のレバーが見えます

【「EB-FH52」の画質】解像度だけでなく細かい色の描き分けも段違い

このモデルもソニーのUltra HDブルーレイプレーヤー「UBP-X800M2」からのHDMI入力でブルーレイソフトを視聴。HDMI入力が2系統あるので、片方に「Fire TV Stick」などのメディアプレーヤーをつないでも、レコーダーなどと接続するための端子がふさがらないので安心です。

「カラーモード」は「シネマ」、「明るさ切り替え」は「低」にすれば、それでも家庭用としてはまだちょっと明るすぎる感はあるものの、たちまちホームシアター仕様に。

ちなみに今回視聴したエプソン業務用プロジェクターすべてに言えることですが、「カラーモード」「ダイナミック」は映像の色味やコントラスト感など、映像作品を見るには大味で、仮に明るい部屋で使うとしても、結局「シネマ」をベースにしたくなります。「オートアイリス」はとりあえず少しでも黒浮きを抑えるため「高速」のままで見てみます。「ビデオレンジ」は「オート」。

映像モード(「カラーモード」)はやはり「シネマ」を基本に考えましょう

映像モード(「カラーモード」)はやはり「シネマ」を基本に考えましょう

音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、ほぼ安定のホームシアター画質。ぱっと見でも下位モデルとはクオリティが段違い。解像度だけではなく、細かい色の描き分けが違うのです

瞳の中のアイキャッチ、エイミーのリップやチークまでが艶やかで生々しい。同じ白でも鍵盤と譜面の色味の違いにも気づかされます。明るさに余裕があるだけでなく、色味の出方も違うからか、スポットライトも映えます。暗い客席も「EB-W06」ほど黒みが浮く印象はありません。

古いモノクロ映画「薔薇の葬列」では、描写の難しい冒頭の真っ白なシーンでもきっちりとフィルムグレインが見て取れ、絡み合う2人の年齢差による肌質の違いまで描き出します。ちなみに、明暗差の大きいこの作品では「オートアイリス」のカタカタという動作音がひんぱんに聞こえるのは「EB-E01」「EB-W06」と同様でした。

Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」の暗い室内で灯りが揺らめくシーンでは、やはり「オートアイリス」が映像に追従するフワフワとした動きが気になります。これを「オフ」にしたいところですが、「オフ」にすると「EB-W06」のときよりずいぶん黒が浮く印象なので迷い、結局「標準」にして見ました。

「オートアイリス」は適応的に調整してくれる便利な機能です(特に、暗いシーンで黒がしっかり黒らしく沈むなどの効果を期待できます)が、本来の映像信号にはない動きが目に付く場合があります。バランスを見て設定しましょう

「オートアイリス」は適応的に調整してくれる便利な機能です(特に、暗いシーンで黒がしっかり黒らしく沈むなどの効果を期待できます)が、本来の映像信号にはない動きが目に付く場合があります。バランスを見て設定しましょう

「四季 高野山」スペック以上に感じられる手抜きのない画質

次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。再生機ソニー「UBP-X800M2」の出力解像度はオートとして、プロジェクター側で最大限受け入れられるソース(解像度、リフレッシュレート、HDR対応なども含む)を送り込みます。「EB-FH52」では2Kで入力されています。

朝もやや雪の場面の描写はその場の空気の香りまで感じさせる雰囲気がありますし、水しぶきや葉の描写もとても艶やかで良好です。最も明るい部分(ピーク)の階調はわずかに頭打ち気味に感じますが、紅葉の1枚1枚の違いまで描き分けるほど色数も階調も多くて滑らか。実際にお参りしているかのように心洗われます。

クロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)やジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もまったく気にならず、落ち着いて見られます。暗部はやや浮き気味ですが、ノイズはよく抑えられています。

以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。

【「EB-FH52」のまとめ】さすがの表現力。ただし価格が……

XGAパネル(1,024×768画素)の「EB-01」、WXGAパネル(1,280×800画素)の「EB-W06」と続けて見ると、フルHDパネル(1,920×1,080画素)という解像度だけでなく、色の描き分けも段違いなことに驚きました。

この3モデルの中で選ぶとするなら、そりゃあ買えるのなら「EB-FH52」がベストですが、価格.com最安価格で「EB-W06」の2倍近い価格差(2023年10月10日現在)があり、さらにこの価格なら同社家庭用製品の「EH-TW5825」を選べばよく、敢えて本モデルを選ぶ必要性は「?」です。

画質的には「EB-FH52」は「EH-TW5825」と同等で、「EB-FH52」は一般的なホームシアターユースではほぼ使わない機能がたくさん搭載されている分、高価になっているのでしょう。

繰り返しますが、「EB-01」「EB-W06」「EB-FH52」は、単に解像度の違いだけでなく、色の描き分けも想像以上にそれぞれレベルが違い、鑑賞作品の印象までも異なってきます。

レーザー光源だけでこんなに高品位!?
エプソン「EB-L200W」

業務用プロジェクターならではの滑りにくいマットな表面処理。「EB-L200W」はレーザー光源の製品で、ここまでで紹介したモデルとはずいぶん外観も異なります

業務用プロジェクターならではの滑りにくいマットな表面処理。「EB-L200W」はレーザー光源の製品で、ここまでで紹介したモデルとはずいぶん外観も異なります

「EB-L200W」の主要スペック
●本体色:ホワイト
●明るさ:4,200ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1,280×800(WXGA)
●方式:3LCD
●コントラスト:2,500,000対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:約20,000時間(光源モード:ノーマルもしくは静音)、約30,000時間(光源モード:ロング)
●レンズ:1.6倍光学手動ズーム、手動フォーカス
●スピーカー出力:16W
●寸法:325(幅)×299(奥行)×90(高さ)mm
●重量:約4.1kg
●電源:付属電源ケーブル
●投写距離(16:9):184〜300cm(60インチ)、246〜401cm(80インチ)、308〜502cm(100インチ)
●備考:パネル自体は16:10

映像入力端子としてHDMI2系統を装備します。さらにUSB Type-B端子とPCをつないで映像と音声出力が可能なほか、有線/無線LAN経由でも同じようにPCと音声出力できます

映像入力端子としてHDMI2系統を装備します。さらにUSB Type-B端子とPCをつないで映像と音声出力が可能なほか、有線/無線LAN経由でも同じようにPCと音声出力できます

リモコンはほかのエプソン業務用モデルと共通

リモコンはほかのエプソン業務用モデルと共通

【「EB-L200W」の設置性】垂直自動台形補正あり。設置角制限なしはレーザーならでは

光学式ズーム、ピント合わせは手動ですが、垂直方向自動台形補正が効きます。水平方向の補正は手動のスライダーで。また、レーザー光源なので、水平/垂直ともに、ランプ光源のような設置角度の制限はありません。

天面からレンズ周りを見ると、この部分は「EB-W06」「EB-FH52」と同様。垂直方向の台形補正は自動設定もできます

天面からレンズ周りを見ると、この部分は「EB-W06」「EB-FH52」と同様。垂直方向の台形補正は自動設定もできます

自動での垂直方向台形補正が必要な場合は「自動タテ台形補正」を「オン」にしておきましょう

自動での垂直方向台形補正が必要な場合は「自動タテ台形補正」を「オン」にしておきましょう

【「EB-L200W」の画質】ランプ光源との違いを見るためだけのはずが……

このモデルを取り上げた意図は、高圧水銀ランプ光源中心の現行業務用プロジェクター群にあって、今後の中心となるであろうレーザー光源モデルは、また違った見え方をするのかを知りたかったから。もっとも、フルHD機はまだまだ価格が高すぎるので、比較的安価なこのWXGA機「EB-L200W」を選んだ次第です。

このモデルもアプリでのコンテンツ再生はできないので、HDMI入力でブルーレイソフトを視聴します。台形補正なし、「カラーモード」は「シネマ」、ランプ光源の「オートアイリス」に相当する「ダイナミックコントラスト」は「高速」のホームシアター仕様でスタート。なお、「光源モード」はファンの音が小さくなる「静音」を選択しました。

レーザー光源の明るさよりも静音を重視する「静音」モードを選択。ホームシアター用として暗い部屋で使うならば、このモードがよいでしょう

レーザー光源の明るさよりも静音を重視する「静音」モードを選択。ホームシアター用として暗い部屋で使うならば、このモードがよいでしょう

映像モード(「カラーモード」)はほかのモデルと同様「シネマ」を選択します

映像モード(「カラーモード」)はほかのモデルと同様「シネマ」を選択します

音楽ライブ「Peter Cetera with Amy Grant / Live in Concert」では、これまで見たエプソンのランプ光源機よりやや赤の緞帳や絨毯、顔色に赤みを感じますが、エイミーとコーラス女性の肌の微妙な違いも描き分けています。

「EB-W06」と同じ解像度のWXGAパネルですが、見た目の印象はフルHDのよう。アイキャッチ、髪の毛1本1本や産毛、そばかすまでリアルに見せます。ランプ光源機と比べ、客席の黒浮きもほぼ気になりません。「ダイナミックコントラスト」機能がうまく効いているのでしょう。

レーザー光源は瞬時に光量を調整できるため、高圧水銀ランプ機のようなオートアイリス機能はありません。映像に応じた瞬時のレーザー光源出力調整機能が「ダイナミックコントラスト」というわけです。この追従性は良好で、ランプ光源の「オートアイリス」のように選択に迷うこともなく、終始「高速」で使えました

レーザー光源は瞬時に光量を調整できるため、高圧水銀ランプ機のようなオートアイリス機能はありません。映像に応じた瞬時のレーザー光源出力調整機能が「ダイナミックコントラスト」というわけです。この追従性は良好で、ランプ光源の「オートアイリス」のように選択に迷うこともなく、終始「高速」で使えました

スクリーンに寄って至近距離で見ると画素の格子はフルHD機よりも荒いのがわかりますし、引きの画の描写も若干甘い。ところが、スクリーンから2〜3mほど離れた位置から動画を見る限りでは、WXGA解像度を感じさせないきれいな描写です。光源をランプからレーザーに替えただけでこれだけ違うのか疑問で、パネル自体の世代が違うのか、映像回路が違うのか……。

古いモノクロ映画「薔薇の葬列」でも、見た目の印象ではランプ光源のWXGA機「EB-W06」よりフルHD機「EB-FH52」に近いフィルムグレインの出方と明るいシーンの描写です。明暗の変化が非常に多く、それが作品上も重要な意味があるのですが、そんな意図も明確に描き分けます。

Ultra HDブルーレイ「最後の決闘裁判」を再生すると、「EB-L200W」は4K入力で受けていました。画面全体が黒で覆われる室内の灯り揺らめくシーンはさすがに黒が浮く印象ですが、続く躍動感あふれる決闘シーンの迫力は、確かに4Kソースを見ているのだと実感させる流麗なもの。フルHDの家庭用プロジェクターと遜色ない描写力と言っても過言ではないでしょう。

「四季 高野山」WXGA解像度であることを忘れそうな高画質

次に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生。ユニフォーミティー(画面全体の均一性)は良好。朝もやや雪、雲の白い描写は雰囲気があって安定しており、風格すら感じられます。背景のレンズボケまで美しい。黒浮きもほとんど感じられず余裕があります。ランプ光源で感じられた最も明るい部分(ピーク)の頭打ち感もなく伸び伸び描くことに驚きます。

色も、赤、青、緑それぞれがきちんと立っています。「シネマ」ではやはり白がほんのわずかに赤みがかる印象ですが、紅葉や夜景の欄干の赤がピッと映えるのとトレードオフか。エプソンにしてはややメリハリのある色調と言えるでしょう。ちなみにこの個体の光源使用時間は99時間とまだまだフレッシュでした。

4KからWXGAまでスケーリング(解像度変換)しているのにクロマエラー(各色の輪郭線のにじみ)やジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)はほぼ皆無。動いている映像を普通に見ている限りではフルHDですらないWXGA機であるのを忘れそうです。

以下の写真は、「秋」から2つのシーンを、a全暗、b照明あり、c外光あり、それぞれの環境で投写した模様を撮影しています。

【「EB-L200W」のまとめ】光源の違いだけでは測れない魅力ある1台

光源の違いを知るための試金石としてお預かりした1台でしたが、WXGAという解像度の限界を超えた安定感ある映像が印象的でした。

解像度の割に価格が高いのは、デジタルサイネージ用のコンテンツ再生モードや複数台使ってひとつの大きな絵を映すマルチプロジェクションなど多彩な機能を持つうえ、デジタルからアナログまであらゆる映像入力に対応し、有線/無線LANを使った投写にも対応するなど、ビジネス向け=多機能を極めていることに起因すると思われます。

そこまで総合的に考えると、この価格はむしろ安いのかも……と思わせる説得力がありました

およそホームシアター用途には不要な機能を取り除いたレーザー光源のホームプロジェクター……エプソンでは「EF-12」がそれに該当しますが、その「EH-TW5825」版のような「画質特化型」スタンダードモデルの登場が待たれます。

エプソンの家庭用プロジェクターのレーザー光源モデル「EF-12」(左)と高圧水銀ランプ光源モデル「EH-TW5825」(右)。「EF-12」はAndroid TVで動くためこれひとつでネット動画にアクセスできるほか、自動フォーカスなどの最新機能を盛り込んだ好製品です。いっぽうで、映像品位という意味では枯れた技術をうまくまとめた「EH-TW5825」に一日の長があります

エプソンの家庭用プロジェクターのレーザー光源モデル「EF-12」(左)と高圧水銀ランプ光源モデル「EH-TW5825」(右)。「EF-12」はAndroid TVで動くためこれひとつでネット動画にアクセスできるほか、自動フォーカスなどの最新機能を盛り込んだ好製品です。いっぽうで、映像品位という意味では枯れた技術をうまくまとめた「EH-TW5825」に一日の長があります

まとめ:解像度×光源×明るさでは画質を単純に測れない

今回の合計5モデル視聴はいかがでしたか。「業務用プロジェクターは家庭用プロジェクターよりコスパがよい」とは一概には言えない、ただ、映像デバイスとして割り切って使う分には低価格でメリットを享受できる可能性があることはおわかりいただけたと思います。

そういった視点から、以前の連載「見事に一長一短! 10万円以下小型プロジェクター4モデルレビュー」「よく練られた画質が光る! 10万円以下プロジェクター4モデルレビュー」「別格の画質が手に入る! 10万円超フルHDプロジェクター4モデルレビュー」もあわせて読んでいただければ幸いです。

実際に映画を視聴してみて改めて驚いたのは、XGA、WXGA、フルHDという「解像度」の違い、高圧水銀ランプとレーザーという「光源」の違いだけでは、単純に映像クオリティは測れないということ。

今回取り上げたモデルで言えば、WXGA機の「EB-W06」が価格比でいちばんバランスがよいと思いました。しかしそれより上の10万円に近づいてくると、潔く割り切った新進のブランドから多数のモデルが登場しており、その中から選ぶのは至難。それならばもう少し予算を上げて、エプソンなら「EH-TW5825」、BenQ「GS50」のような老舗ブランドのスタンダードモデルから選んだほうが長く使えそうな気もしてきます。

明るければ「テレビのように映る」わけでもない

もちろん、明るさだけがプロジェクターにとって重要なことではないことも、解像度と同様です。今回見た業務用プロジェクターがいずれも高い光出力値なのは、オフィスのような明るい白壁の部屋に持ち込んで映しても、グラフの赤や緑や青、数字などが明確に読み取れることを第一義に作られているからです。

しかし、基礎体力としての明るさは、単なる数値としてだけでなく、明暗の階調表現といった絵作りのベースでもあり、とても大事であることを再認識させられました。今回視聴したエプソンの業務用プロジェクターのいずれもが、映像モードを「シネマ」にしたとたん、家庭用プロジェクターと遜色ない映像を見せてくれたのです。

かといって、家庭用よりも明るいこれらの業務用プロジェクターを使えば、ただちに明るい部屋でもテレビのようになんでも明るく正しい色に映してくれるわけではありません

プロジェクターは映像を射出するだけで、その反射映像を見ることで初めて「絵」になります。そこには、スクリーンやスクリーンに差し込む外光、迷光が大いに関係します。そうした要素から特に大きな影響を受けるのが、暗部コントラストと色味です。明るい部屋できれいな映像を見ようとするなら、周囲の影響を受けづらい耐外光スクリーンにも予算を割くことも考えなければなりません。

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プロジェクターで高画質を得るためのアプローチの基本は、視聴環境に応じたスクリーンにも予算を残しつつ、できる限り絵作りがしっかりしたプロジェクターを選ぶこと、数値としてのルーメン値はそのためのひとつの指標として参考にすることだと思います。

私も実機での映像を見るまで、どのモデルのコスパがよいのかはわかりませんでした。以前のレビューでは10万円前後のプロジェクター12機種の実写映像を掲載していますので、ぜひじっくりと見比べてみてください!

遠藤義人
Writer
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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