サウンドファンから特許技術「曲面サウンド」を使ったサウンドバー「ミライスピーカー・ステレオ」が発表された。10月20日発売で、メーカー希望小売価格は39,600円(税込)。
本製品は、テレビ視聴時に人の声が「聞こえやすい」スピーカーとして展開されている「ミライスピーカー」のステレオ版。「ミライスピーカー」は1本で使うモノラル仕様だったが、「ミライスピーカー・ステレオ」はサウンドバータイプのステレオ(L/Rchの分離型)仕様となった。
単にステレオ化されただけでなく、リモコンの操作や光デジタルでの音声入力も対応したことがポイント。「ミライスピーカー」はアナログ音声入力だけ、という潔いシンプルさがあったが、機能性も拡充している。
542(幅)×160(奥行)×87(高さ)mmのサウンドバー形状をとる「ミライスピーカー・ステレオ」
一般的な最新サウンドバーとは違い、入力端子はあえてアナログ(3.5mmステレオミニ)と光デジタル各1系統のみ。わかりやすい表示がうれしい。もちろん、アナログ/デジタル接続用のケーブルはどちらも付属する
リモコンが付属。手元での本体音量調整と電源のオン/オフができる。光デジタル入力を使う場合は必須だろう
製品発表会が開催されたので、その模様と「ミライスピーカー・ステレオ」の概要をお伝えしよう。まず壇上に立ったのは、代表取締役社長の山地浩氏。
世界を通じて難聴報告が増えているとして、補聴器の普及率の低さも紹介。そこで「聞こえ」に困っている人の日常生活を助けるために「ミライスピーカー」があるとした。
左から、サウンドファン取締役/CMO金子一貴氏、取締役/CTO田中宏氏、代表取締役/CEO山地浩氏
そして「ミライスピーカー」「ミライスピーカー・ステレオ」の共通主要技術として紹介されたのが、「曲面サウンド」。オルゴールを下敷きのような薄いフィルム状の板に密着させて、その板を曲げると、音が会場中に広がるレベルに拡大される。
どちらもこの原理を応用していて、広い指向性と遠くまで減衰せずに音を伝えられるという特徴があるという。
「曲面サウンド」技術を使った「ミライスピーカー・ステレオ」は、人の声の帯域が強調されるバランスで、音量を上げすぎなくとも聞き取りやすいとしている
取締役/CMO金子一貴氏からは、モノラル仕様の「ミライスピーカー」でユーザーからフィードバックのあった要望と、それに応えた製品が「ミライスピーカー・ステレオ」であることが紹介された。
そもそも「ミライスピーカー」は音量を上げすぎなくても人間の声がしっかり聞こえることをテーマとした製品。その点、言葉が聞き取りやすいという満足度は高いけれど、「音」をもっと楽しみたい、という声が多かったのだという。
そこで、製品の根幹である人の言葉がはっきりと聞こえることを維持しつつ、効果音・BGMにも迫力がある、という製品を目指した。
ユーザーアンケートでは、モノラルではなくステレオを求める声があったという。それはかつてのオーディオブームを通ってきた人にとってはモノラルが物足りないという事情があるようだ。さらに、「健聴」である家族が音質に物足りなさを感じることもあるという
「聞こえ」だけでなく、ある程度の音質も求めたのが「ミライスピーカー・ステレオ」
最後に取締役/CTOの田中宏氏から、改めて製品技術についての解説がなされた。まず「曲面サウンド」の特徴については上記のとおり。人の声の帯域を強調することで言葉の聞き取りやすさを確保し、同時に広い指向性を得ている。
フィルムのような曲面振動板を使ったメリットとして、広い指向性を得られることを訴求する
オルゴールでの実験のように、曲面振動板へ端から音を伝えると、振動板を素早く伝い、一様に広がっていく。これが高域でも同じように起こるため、広い指向性を得られるのだという。一般的なダイナミック型スピーカーでは指向性が強く出てしまい、リスニングエリアが狭まってしまいがちなのだ
「ミライスピーカー・ステレオ」はその名前のとおり「ミライスピーカー」のステレオ版なのだが、企画開発には約3年もの時間を要したという。
構造的には「ミライスピーカー」を2つつなぎ合わせたような形状なのだが、キャビネット容積がアップしたことによる低域の再生能力強化に加え、実はユニット自体も異なる。さらに、主に低音を担当するダイナミック型ユニットの音がうまく抜けるようキャビネットにポートを設けたほか、曲面振動板の曲げ具合に調整が加えられるなど(2つのRが組み合わされている)など、「聞こえやすさ」を維持しつつ音質をアップさせるチューニングに苦労したそうだ。
フロントグリルを外すと、中にはダイナミック型の50mmコーン型フルレンジユニットと、そこにつながっている曲面振動板が見える。このペアがL/R(左/右)chそれぞれに搭載されている。上のオルゴールの実験におけるオルゴールがダイナミック型ユニットというわけだ ※写真は試作品のため、製品版とは異なります
発表会会場ではガヤガヤと音のする中ではあるが「ミライスピーカー・ステレオ」を試聴する機会を得られた。そのインプレッションもお伝えしておこう。
テレビの内蔵スピーカーと「ミライスピーカー・ステレオ」の音声(光デジタル入力)を比較すると、確かに「ミライスピーカー・ステレオ」のほうが映像作品の人の声/セリフが聞き取りやすい。外音がある中でも声だけが強調される印象だ。
同価格帯のサウンドバーと比べれば低音は出ない、とは担当者の談だが、「ミライスピーカー・ステレオ」は始めからそこは求めていないのだろう。ハイファイを目指したサウンドバーとはまったく製品企画が異なるが、広い指向性を売りにしたサウンドバーという意味でもとても珍しい。
「ミライスピーカー」のことは以前から名前だけを知っていたが、面白い製品だと感じた。近いうちに、実機のレビューをしてみたいと思う。