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明るくて高画質! TCLのMini LEDバックライト搭載チューナーレステレビ「C845」レビュー

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明るくて高画質! TCLのMini LEDバックライト搭載チューナーレステレビ「C845」レビュー

中国発の世界的テレビメーカーTCLが5月に発売した同社のハイエンド4K液晶テレビ「C845」シリーズ。同社公式サイトには“史上最高4K Mini LED”という言葉が躍り、液晶テレビの高画質トレンドであるMini LEDバックライトと量子ドットの両方をしっかりと押さえたモデルとなっている。しかも、これだけハイスペックなモデルでありながら、日本のテレビ放送波のチューナーを搭載せず、Google TVプラットフォームを採用した“チューナーレステレビ仕様”とかなり尖ったモデルだったりもする。

Google TVプラットフォームを採用したチューナーレステレビでもある「C845」シリーズ

Google TVプラットフォームを採用したチューナーレステレビでもある「C845」シリーズ

TCLブランドと言えば、なんと言っても価格の安さが大きな武器だ。2023年10月26日時点の価格.com最安価格は、Mini LEDバックライト搭載のハイエンドモデルでありながら、55V型で14万円台というお手ごろ価格。めざといAVファンからは、Mini LEDバックライト搭載4K液晶テレビのハイコスパモデルとしても注目を集めている。今回は「C845」シリーズの55V型モデル「55C845」をお借りしたので、実機レビューをお届けしよう。

Mini LEDバックライトを搭載し、2,000nitを達成。高級感のあるデザインも○

製品のプロフィールから紹介していこう。「C845」シリーズは65/55V型の2サイズで展開する4K液晶テレビだ。2023年モデルとしては98V型の「C955」シリーズ(記事はこちら)が登場したこともあり、シリーズの位置づけ的には最上位ではなく上から2番目となるが、通常サイズのテレビとしてはハイエンドモデルという位置づけだ。

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2023/07/05 22:00

画質スペックはもちろん最上級のものが備わっている。液晶パネルはVAで、これにMini LEDバックライトを組み合わせている。以前、同社を取材した際に輝度スペックが2,000nitという情報を得ている。量子ドットによるDCIカバー率97%の広色域、HDR規格のDolby Vision IQ/HDR10+/HLG対応も揃う。製品コンセプトとしてはゲーミングも重視しており、4K VRR 144Hz、1080pでは240Hz表示までカバー。映像エンジンも同社最上位の「Algo Engine Max II」を搭載している。

自宅のリビングに「C845」シリーズの55V型モデル「55C845」を実際にセットしてみたが、まず気づいたのはTCLの安っぽいイメージ(失礼!)を覆す外装の高級感。ベゼルは狭く画面をぐるりと取り巻くフレーム部はヘアライン仕上げ。スタンド部も同じくヘアライン仕上げで、ハイエンドモデルとしてデザインもしっかりと作り込んできたことがわかる。

「C845」シリーズのデザイン。フレーム部はヘアライン仕上げで高級感がある

「C845」シリーズのデザイン。フレーム部はヘアライン仕上げで高級感がある

リモコンについても先に紹介しておこう。「C845」シリーズはチューナーレステレビだけあって、放送波のチャンネル切り替えボタンがないこともあってシンプル。日本語表記がないところはグローバルブランドらしい。また、チューナーがない=録画機能がない割には、再生系のボタンが豊富というところは珍しい。ちなみに、リモコンの感度は若干弱めだったことは報告しておこう。

「C845」シリーズに付属するリモコン。チューナーレステレビながら、再生系ボタンも充実

「C845」シリーズに付属するリモコン。チューナーレステレビながら、再生系ボタンも充実

YouTubeでも明るい高画質を発揮

「C845」シリーズの画質をチェックする前に、電源オフ状態での画面への映り込みもチェックしてみた。あえてテレビ正面の窓が映り込む位置から見比べてみると、となりに設置したTVS REGZA「Z970M」シリーズより映り込みが少ないことがわかる。「Z970M」シリーズもある程度は低反射のクリアパネルなので、「C845」シリーズの映り込み対策はなかなか優秀だ。

TVS REGZA「65Z970M」(写真左)とTCL「55C845」(写真右)の映り込みを比較した様子。ほんのわずかだか、「C845」シリーズのほうが映り込みは少ない

TVS REGZA「65Z970M」(写真左)とTCL「55C845」(写真右)の映り込みを比較した様子。ほんのわずかだか、「C845」シリーズのほうが映り込みは少ない

いつもは画質チェックの最初は地デジとYouTube動画で行っているが、「C845」シリーズはチューナーレステレビということもあり、今回は地デジ放送チェックをスキップし、価格.comマガジンのYouTubeチャンネルの動画を使った画質チェックからスタート。

なお、映像モードはカスタマイズしていない出荷状態では「標準」だが、これは省エネを意識したモード。パネルのポテンシャルを最大限引き出すため、今回は「スマートHDR」設定としたうえで、輝度を初期値の90から最大の100に引き上げて画質チェックを行っている。

「C845」シリーズ(写真左)の画質をチェック。左に見切れて映っているのはTVS REGZAのMini LED液晶テレビ「Z970M」シリーズ

「C845」シリーズ(写真左)の画質をチェック。左に見切れて映っているのはTVS REGZAのMini LED液晶テレビ「Z970M」シリーズ

画質の第一印象はとにかく画面が明るい。光の当たるハイライト部分がまれに白色っぽく見えてしまうことはあるが、目に見えて明るく、パッと見たときのインパクトがとにかくすごい。テロップの発色もやや鮮やかだ。そして、ネット動画の視聴時には映像エンジンの働きも求められるが……海外メーカーはYouTube画質ががっかりということあるなかで、「C845」シリーズは画質の出来も悪くはない。

映像エンジン「Algo Engine Max II」がしっかりと効果を発揮していて、特にノイズ低減は4K大画面でも十分耐えられるものに仕上がってるし、初期設定で有効な「ダイナミックカラー」が見栄えよく見せてくれる。「動的コントラスト」を有効にすれば立体感も出せる。欲を言えば解像感はもう少しほしいが、これらに必要な超解像系技術は日系メーカーのほうが一日の長がありそうだ。

ちなみに、価格.comマガジンのYouTubeチャンネルで公開されている動画を再生した際の画面の明るさを計測してみたところ、ハイライト部は約1007lux、人物の顔が約695luxと画面の明るさは相当なものだった。

VAパネルなので視野角は広くはなく、斜め位置からの視聴では全体的に色が薄く白く見えてしまう。画質の観点からは画面の幅から外れない正面視聴を推奨したい。

斜めから視野角を確認。「C845」シリーズ(写真右奥)は視野角による色変化が大きい

斜めから視野角を確認。「C845」シリーズ(写真右奥)は視野角による色変化が大きい

4K/HDR映像でも明るさを発揮。漆黒の再現も十分

続いて、PS5をプレーヤーとして「C845」シリーズに接続し、Ultra HDブルーレイ『The Spears & Munsil UHD HDR Benchmark』の4K/HDR映像を使って画質をチェックしてみた。なお、撮影の際には分配器との相性で正しいHDR信号でとなりに設置した「Z970M」シリーズと同時に映せなかったため、「C845」シリーズ単独の表示となっている。

「C845」シリーズではHDR10の4K/HDR映像が入った際もSDRと同じ映像モードを引き継ぐ仕様のようで、YouTubeを使った画質チェック同様、映像モード「スマートHDR」で視聴をスタート。「スマートHDR」は4K/HDR映像でこそ実力を発揮するようで、画面全体の明るさ、鮮やかさだけでなく、中間輝度の色までていねいに再現してくれる。背景が真っ黒の沈むようなシーンでは、漆黒を再現できていた。いっぽう、明暗が混ざる夜景のような映像では黒色がややグレーがかかってしまう。このあたりはバックライトエリア駆動の限界なのだろう。

4K/HDR映像で「C845」シリーズの画質をチェック。明るい白色の中でもていねいに色階調を再現

4K/HDR映像で「C845」シリーズの画質をチェック。明るい白色の中でもていねいに色階調を再現

映像のきめ細かさと色再現のバランスも良好

映像のきめ細かさと色再現のバランスも良好

映像の輝度感と精細感がしっかりと感じられる

映像の輝度感と精細感がしっかりと感じられる

夜景の映像をチェック。黒色は漆黒ではないが必要十分には沈む

夜景の映像をチェック。黒色は漆黒ではないが必要十分には沈む

Mini LEDバックライト液晶の弱点であるハロー(光漏れ)については、暗室にして真正面で視聴した状態だと、Netflixの起動ロゴや字幕、エンドロールなど黒バックの細部を注視していると気づく程度。ただ、視聴位置を多少なりとも上下左右にずらすと視野角の影響もあってやや目立ってくる点は注意したい。

写真ではわかりにくいが、肉眼では被写体周辺にうっすら白いハローが現れた

写真ではわかりにくいが、肉眼では被写体周辺にうっすら白いハローが現れた

「C845」シリーズの輝度特性を調べるべく、4K/HDRのテストパターンで画面の明るさを測定してみた(※)。結果は、白の面積10%で約3390lux、白の面積100%で約993luxだった。今年測定したMini LED液晶テレビの中でトップではないが十分な明るさだ。「C845」シリーズの価格を考えるとコスパのよさが光る。

※luxは本来1mの距離で測定するが、本測定は照度計を密着させて測定している

サウンドも実力十分。ゲーマー向けの低遅延機能も搭載

「C845」シリーズのサウンドもチェックしていこう。

スピーカーシステムは2.1chで、実用最大出力は60W。TCLのほかのモデルと同じく、Onkyoブランドの技術協力の入ったスピーカーシステムだ。サラウンド面ではDolby Atmosの立体音響とともに、DTS-HD、DTS Virtual: Xにも対応している。

スピーカーはスタンド部近くに下向きに配置、サブウーハーは背面に配置されている

スピーカーはスタンド部近くに下向きに配置、サブウーハーは背面に配置されている

実際のサウンドは、声のヌケこそよくないものの、中低域まで厚みがあるし、画面内に音も定位する。面白いのがYouTubeでサッカーのダイジェストを視聴したとき。元がステレオ音源なのに画面外まで広がる臨場感あるサウンドを再現してくれた。NetflixでDolby Atmos配信の海外ドラマを視聴した際も、画面サイズ以上の高さを含む音空間の広がりが生まれる。ホームシアター級のサウンドを求めるのでなければ、サウンドバーは不要だ。

Netflixの視聴ではDolby Vision、Dolby Atmosが揃う

Netflixの視聴ではDolby Vision、Dolby Atmosが揃う

続いて、ゲーマーが気になる表示遅延を「4K Lag Tester」で測定。ゲームモードの機能をオンにした状態だと、4K/60p信号に対する表示遅延は9.2msだった。なお、ALLMと4K 144Hz VRR、DLG 240Hz、さらにAMD FreeSync Premium Proまで揃うため、PCゲーマー向けの機能としてはよく整備されていると思う。

Google TV 11搭載。チューナーレステレビとしても十分実用的

「C845」シリーズのプラットフォームはGoogle TV 11。ネット動画対応についてはGoogle Playを使えることもあって、YouTube、Netflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオ、Disney+、U-NEXT、Apple TV+、TELASA、FOD、AbemaTV、TVerなどがすべて利用できる。もちろん、Googleアシスタント純正の音声検索も使用可能。これらのスマートな使い勝手に魅力を感じる人も多いだろう。

Google TVのトップ画面。おすすめコンテンツやアプリをメインに表示する

Google TVのトップ画面。おすすめコンテンツやアプリをメインに表示する

リモコンのダイレクトボタン。Amazonプライム・ビデオがないのは残念なところ

リモコンのダイレクトボタン。Amazonプライム・ビデオがないのは残念なところ

使い勝手を左右するテレビやアプリの起動時間も測定してみた。電源オフからホーム画面が起動までの時間は約3.2秒。チューナーレステレビなので、ここから操作がスタートすることになる。電源オフからNetflixをダイレクト起動した際の起動時間は約13.7秒と意外と時間がかかった。ホーム画面からYouTubeアプリの起動は約6.1秒、Amazonプライム・ビデオの起動は約9秒と、起動速度は平均的な水準といったところだ。

チューナーレステレビだが、TVerアプリを活用すればある程度の放送番組も視聴可能だ

チューナーレステレビだが、TVerアプリを活用すればある程度の放送番組も視聴可能だ

また、「C845」シリーズは出荷時からAirPlay対応ソフトを搭載しているので、iPhoneユーザーにとってもネット機能は使いやすいところも補足しておこう。

【まとめ】高画質なコスパ優秀モデル

「C845」シリーズをチェックしてみると、期待以上に面白いモデルだ。Mini LEDバックライト搭載の明るい高画質というだけでなく、サウンドもしっかり作り込まれているし、プレーンなGoogle TV搭載のチューナーレステレビというところもネット動画やモニター用途メインの人にもピッタリだ。そしてMini LEDバックライト搭載モデルの中でも上位クラスの性能が、55V型モデルで14万円台から手に入るという価格がなによりも魅力的だ。モニター代わりの高画質なチューナーレステレビを探している人はぜひチェックしてみてほしい。

折原一也
Writer
折原一也
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家。「オリチャンネル」主催。IT系出版の編集者出身で、2004年に独立後はモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌で活動。2009年より音元出版主催のVGP審査員。画質・音質にこだわるAV評論家ではあるが、ライフスタイルになじむ製品、コスパにすぐれた製品を評価する庶民派。2022年に立ち上げたYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、取材メディアの人間として一次情報の発信、検証と測定データに基づくレビューなど独自の発信も行っている。最近のマイブームはAI全般。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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