Xiaomi(シャオミ)からチューナーレステレビ「Xiaomi TV A Pro」シリーズが発売された。“あのXiaomi……?”と思う人も多いかもしれないが、あのスマホで有名なXiaomiだ。同社はスマートテレビ出荷台数で世界第5位*に入る大手の一角。日本では“チューナーレステレビ”は大手ディスカウントストアや家電量販店のプライベートブランド製品が多いこと、またau(KDDI)が販売を手がけることもあり、予想外の大手ブランド参入ととらえた人も多いことだろう。
*Sigmaintell調べ
「Xiaomi A Pro」シリーズは、HD解像度の32V型、4K解像度の43/55/65V型の計4サイズ展開。市場想定価格は32V型が32,780円、43V型が54,870円、55V型が76,780円、65V型が109,780円(いずれも税込)だ。今回は55V型モデル「Xiaomi TV A Pro 55」の実機レビューをお届けしようと思う。
最初に「Xiaomi TV A Pro 55」のプロフィールを簡単に紹介しておこう。パネルは4K解像度/60Hzの等速パネルで、パネル方式については公式スペックに記載はないものの、実機を確かめてみるとVAパネルのようだ。色域はDCI-P3 90%と公開されている。
Google TV搭載のチューナーレステレビであるほか、Xiaomi製品らしくシステム周りのスペックも公開されており、プロセッサーはMediaTek A55のクアッドコア、GPUはMali G52 MC1を搭載。メインメモリーは2GB、ストレージは16GBだ。Wi-Fiは2.4GHz/5GHz対応で有線LAN端子も備わっている。
Google TV搭載でアプリによるネット動画視聴もばっちり対応
Xiaomiが“ベゼルレスのフルスクリーンデザイン”とアピールする本体デザイン。実機を眺めてみると、確かにベゼルは細くスタイリッシュだ。スタンドもループしている形状にヘアライン風で高級感があるような演出。あえて演出と呼ぶのは、55V型で重量11.23kg(スタンド含む)と意外と軽量級テレビだからだ。
映像が浮かぶように見えるベゼルレスデザイン
ループ型のスタンドも表面仕上げはスタイリッシュ
リモコンはテレビの操作性を大きく左右するものだが、「Xiaomi TV A Pro」シリーズに付属するリモコンは思った以上にシンプル。再生や一時停止、スキップなどの再生コントロールボタンもないボタン数が限りなく少ないタイプだ。
ちなみに、ボタン配置はややクセがあり、ホイール型のカーソルボタンの周囲は右に「ホーム」、中央に「戻る」、左に「設定」が並ぶ。ネット動画サービスへのダイレクトボタンは、YouTube、Amazonプライム・ビデオ、Netflixとスタンダードな顔ぶれに加え、アプリ一覧へのショートカットにあたる「APPS」ボタンも用意されている。なお、外部入力(HDMI入力)への切り替えボタンが存在しないところは少々気になった。
ボタン数を抑えた付属リモコン。ネット動画サービスへのダイレクトボタンも最低限のものになっており、まるで数世代前のAmazon「Fire TV」シリーズのリモコンを彷彿させる
「Xiaomi TV A Pro」シリーズのソフトウェアは、独自カスタマイズなども行われていないピュアなGoogle TVだ。GoogleアカウントでログインしておければYouTubeの登録チャンネル等は共通化が行える。
Google Playストアによるアプリ導入も可能で、ネット動画サービスの拡張性も文句ナシに高い。Hulu、Disney+、ABEMAやTVerなど日本国内で人気のアプリはセットアップ途中に導入も可能だ。
操作性については他社と変わりないはずなのだが……実際に触れてみると、ホーム画面の操作などでも動作がもたついていて、ややレスポンスが遅いのでは? と気づいてしまった。そこで、さまざまな条件で「Xiaomi TV A Pro 55」のレスポンス速度を測定してみた。
コンセントを抜いて電源投入からの初回起動は約55秒(ホーム画面を表示して操作できるまで)、一度起動した後のスタンバイからの復帰は約4.8秒。ダイレクトボタンからのネット動画サービスの起動は、YouTubeアプリが約18秒、Netflixが約22秒、Amazonプライム・ビデオが約17秒だった。価格.comマガジンで過去に検証した機種と比べると遅い部類に入る。ここれは単純にプロセッサーやメモリーなどのハードウェアスペックが控えめであることが影響しているのだろう。
画質についてもチェックしていこう「Xiaomi TV A Pro」シリーズはチューナーレステレビなので、価格.comマガジンのYouTubeチャンネルで公開されている動画コンテンツを使った画質チェックからスタート。
なお、映像モードは出荷時の「標準」のほかに「ビビッド」「映画」「スポーツ」(外部入力時は「ゲーム」「モニター」も利用可)が用意されているのだが、すべて見比べて上で「標準」を基準とした。バックライトの明るさは初期設定で最大値の「100」だが、「グローバル調光」という設定によって明るさセンサーによる画面の明るさ調整が有効になっている。
さっそくYouTubeの動画を視聴してみたが、チューナーレステレビにしては明るさ重視で、濃いめの色で全体を整えている。画面全体の解像感やノイズについてはオリジナルから大きく手を加えていないようで、よくも悪くもYouTubeの動画をストレートに表示してくれる。色は映像モードにもよるが、画面の明るさに合わせて演出する形だ。
価格.comマガジンのYouTube動画。色が濃く、ハイライトはやや飛び気味
視野角もチェック。VAパネルのようで、斜めから見た際の色味の変化はやや大きい
ちなみに、価格.comマガジンのYouTubeチャンネルで公開されている動画を再生した際の画面の明るさを照度計を密着させて測定してみたところ、ハイライト部は約330lux、人物の顔が約235luxだった。
また、4K/HDRのUltra HDブルーレイ『The Spears & Munsil UHD HDR Benchmark』を視聴してみると……やはり液晶テレビとしては明るいのだが、初期設定の明るさ100の状態ではHDR信号に対して明部が潰れてしまうところがやや残念だ。また暗室で夜景の映像を暗室で視聴していると、暗部が白く浮いて見えてしまうこともあった。あくまでも価格に見合ったチューナーレステレビであることは留意しておきたい。
画面は明るいが明部がやや潰れ気味
色の鮮やかさはあくまでエントリーモデル級
液晶テレビらしく暗所はややバックライトの光が漏れて白く浮いて見える
なお、「Xiaomi TV A Pro 55」はDolby Visionにも対応。Netflixの視聴時には色はある程度整うのだが、やはりコントラスト、明暗部の再現には限界があるようだ。
NetflixでDolby Vision対応コンテンツをチェック。音声はDolby Audioの5.1chとして認識された
「Xiaomi TV A Pro 55」の特性も測定してみた。白の面積10%、100%とも約320lux(251cd/m2)だったので、ローカルディミングはまったく働いていないようだ。なお、グレースケールと色域も測定しているので下記に掲載しておく。
グレースケールは映画モードが最も素直。初期設定の明るさ100の設定ではサチレーションが起こったため、最も特性のよい明るさ80で測定したものを掲載する
最も特性のよかった映画モードでの色度図
「Xiaomi TV A Pro 55」のサウンドは、本体下に12W×2のハイパワーステレオスピーカーを配置、Dolby Audioと DTS:Xのデュアルデコーディングテクノロジーを搭載したのを特徴としている。
本体下部に下向きのステレオスピーカーを搭載
ただ、YouTubeを視聴してもNetflixで映画を見ても低音が弱く音のクリアさも物足りなかったので詳しく調べてみたところ、初期設定ではDTS Virtual:Xがすべて無効になっていることに気づいた。DTS Virtual:Xを使っていろいろと試行錯誤してみたが、これらの設定を活用するとかなりのサウンドクオリティアップを狙えることがわかったので、最後にこちらに関してお伝えする。
サウンド設定にあるDTS関連の項目は初期設定ではすべてオフになっているので、オンにするのを忘れずに
DTS Virtual:Xは「DTS低音強化」と「DTSサラウンドバーチャライザー」、DTSダイアログクラリティ」の3つの設定項目が用意されているのだが、「DTS低音強化」と「DTSダイアログクラリティ」はどちらも設定オンを推奨。テレビの音声の定位が画面の中央付近にきて、Netflixの5.1chのコンテンツは耳の横に回るようなサラウンド感も再現できる。ただ、低音は「DTS低音強化」をオンにしても物足りない。
人の声については、「DTSダイアログクラリティ」のほかに「DAC-4 ダイアログエンハンサー」という重複する機能もあり、オフ/低/中/高で設定可能。どちらもダイアローグ(人の声)を聴きやすくする効果で、どちらも細かなニュアンスに対して効果が働く。これはお好み次第で使ってみてほしい。
ちなみに、「Xiaomi TV A Pro 55」には3系統のHDMI端子があり、うち1系統はHDMI 2.1のeARCにも対応しているので、eARC対応の最新のサウンドバーとはHDMIケーブル1本で接続が可能。アナログ音声出力、光デジタル音声出力も備わっている。
付属リモコンに外部入力切り替えボタンがないため、外部入力切り替えは設定メニューから行う形だ
なお、画質評価の際の映像モード紹介でも軽く触れたが、外部入力接続時は「ゲーム」モードも選択可能だ。4K/60p信号での入力遅延は2.7msで、PCモニター並の低遅延表示が可能だ。
今回「Xiaomi TV A Pro」シリーズの55V型モデル「Xiaomi TV A Pro 55」を使ってみたが、レスポンスや画質などはハイスペックではないが“中身の世代の新しいモデルだな”と感じた。プラットフォームはAndroid TVではなく最新のGoogle TVだし、Dolby Vision&Dolby Audio対応にDTSの技術も備わっていて、HDMIもeARCまで対応して最新のサウンドバー接続も可能と、フォーマット面では2023年仕様がひと通り揃う。画質や機能性で実力十分かというとあくまでチューナーレステレビのレベルではあるが、総合的に見ると価格相応にはよくできたモデルと言えそうだ。