独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping(サンロクマル スぺーシャルサウンドマッピング)」を使い、たった4本のスピーカーで広大なサラウンド空間を手軽に作り出すことできることで大きな話題となったソニー「HT-A9」。2021年の発売から約3年が経ちましたが、そんな「HT-A9」の後継モデルがついに登場します。
最新モデルの型番は「HT-A9M2」。“BRAVIA Theatre Quad”というペットネームを冠し、薄型テレビブランド「BRAVIA」との組み合わせをよりプッシュした形で展開されます。発売日は2024年6月1日で、市場想定価格は33万円前後(税込)です。
ソニー「HT-A9M2」
なお、同時発表されたサウンドバー「HT-A9000」「HT-A8000」、ワイヤレスネックスピーカー「HT-AN7」については下記の記事で詳しく紹介しています。
新たに登場する「HT-A9M2」は、文字どおり“マーク2”と呼ぶのにふさわしい進化を遂げています。なかでもいちばんの注目は大きく変わったスピーカーデザインでしょう。
「HT-A9M2」のパッケージ内容。スピーカー4本とテレビに接続するセットトップボックス、リモコンが付属します
セットトップボックスの背面端子。HDMI入力や出力、BRAVIAのアコースティックセンターシンク用出力や有線LANなどが用意されています
先代の「HT-A9」のスピーカーは円筒形ボディを採用。天面にイネーブルドスピーカー×1、正面にツイーター×1とウーハー×1の2Way構造スピーカーを配置し、4本のスピーカー合計で12スピーカーユニットとなっていました。
いっぽう、今回登場する「HT-A9M2」は、本体デザインを板状の薄型ボディに刷新。天面にイネーブルドスピーカー×1というのは先代の「HT-A9」と同じですが、正面はツイーターとミッドレンジ、ウーハーの3Way構造スピーカーへとアップデート。4本のスピーカー合計で16スピーカーユニットとなったことで、薄型でありながら迫力の低音と立体的な音の広がりを楽しめるようになりました。
「HT-A9M2」ではスピーカーが板状の薄型ボディに刷新されました
スピーカー天面のメッシュ状の部分にイネーブルドスピーカーが配置されています
「HT-A9M2」のスピーカー展開図。上から36mm×79mm X-Balanced Speaker Unitフルレンジイネーブルドスピーカー、19mmツイーター、60mmミッドレンジスピーカー、85mm×85mm X-BalancedSpeaker Unitウーハーとなっており、ミッドレンジスピーカーとウーハーの脇にはバスレフが用意されています
また、スピーカー底面のスタンド部がそのまま壁掛け金具になるギミックを取り入れ、壁掛け設置が簡単にできるようになったのも大きなポイントです。薄型ボディ、かつ台置き/壁掛け両対応となったことで、リビングに溶け込むように設置できるようになったのは大きな魅力と言えます。
スタンドを使って設置した様子。電源ケーブルは底面から出す形です。フットプリントは289(幅)×129(奥行)mm
「HT-A9M2」はスタンド部分がそのまま壁掛けブラケットになり、壁掛け設置を簡単に行えます。壁掛けブラケットで壁とスピーカーの間にすき間を作ることで、壁に振動が直接伝わらないようになっているのもポイントです
ちなみに、先代の「HT-A9」では、視聴位置に向けてフロント側のスピーカーにある程度角度をつけて設置する必要がありましたが、「HT-A9M2」ではスピーカー構成の変更により音の広がりがアップしたことで、壁掛け設置の場合にテレビ画面とスピーカー位置が並行になるようなケースでも十分立体的なサウンドが楽しめるようになったとのこと。
音の広がりがアップしたことで、スピーカーの角度を気にせずにテレビとスピーカーの両方を壁に設置することもできるようになりました
実際に70V型超の大型テレビの両脇にツライチに「HT-A9M2」を配置した状態で映像コンテンツを中心に体験してみましたが、大画面テレビを余裕で飲み込むほどの広大かつ立体的なサラウンド空間を形成し、サブウーハーなしの状態でも迫力のある低音をしっかりと楽しめました。先代の「HT-A9」を体験した際もかなり驚きましたが、「HT-A9M2」は音のクリアさがさらに増し、臨場感のあるサウンドになっていました。これだけのリアルなサラウンド空間をたった4本のスピーカーだけで実現してくれるのだから驚きです。
薄型ボディとなり、音質と設置性が大きく向上した「HT-A9M2」ですが、それ以外の機能性もなかなかの進化を遂げています。
なかでも音場最適化技術は要注目! 先代の「HT-A9」も内蔵の計測用マイクと測距音で設置したスピーカー間の距離や天井までの距離を計測し、部屋に合わせた音場空間を生成する機能はありましたが、「HT-A9M2」ではスマートフォンアプリ「Sony |BRAVIA Connect」を活用した視聴位置に応じた最適化と、部屋にある家具やカーテンなどの状態を検出して理想的な音響特性に最適化する機能が新たに追加され、よりきめ細やかな最適化が行えるようになりました。
スマートフォンアプリ「Sony |BRAVIA Connect」を活用した視聴位置に応じた音場生成の最適化機能のイメージ。スイートスポットが広めの製品ですが、視聴位置に合わせてより細かく追い込むことが可能になりました
部屋にある家具やカーテンなどの状態を検出し、理想的な音響特性に最適化する機能も新たに追加されています
また、「HT-A9M2」ではテレビ放送やYouTubeなどのストリーミングサービスなどで多いステレオコンテンツをリモコンのボタンひとつで立体音響化して楽しめるアップミックス機能も進化。新たにリアルタイム分析とAI解析を用いた音声抽出が追加され、より高精度な没入感の高い立体音響を楽しめるようになっています。
「HT-A9M2」の付属リモコンは、同時発表された「HT-A9000」「HT-A8000」と共通のデザイン。ステレオコンテンツを立体音響化するアップミックス機能は、リモコンに用意された「SOUND FIELD」ボタンで有効化できます
さらに、「HT-A9M2」はテレビに接続したセットトップボックスから4本のスピーカーに無線で接続するため、接続安定性が重要な要素となりますが、こちらについてもしっかりとケアしたそう。具体的には、「HT-A9M2」ではスピーカーに内蔵した受信アンテナ本数を「HT-A9」から2倍に強化するとともに、周囲の電波状況に合わせて空いている周波数帯域に自動で切り替える「チャンネルホッピング」と呼ばれる技術を新たに導入することで、接続安定性を大きく向上させることに成功したそうです。テレビはもちろん、家庭用ゲーム機やブルーレイプレーヤー/レコーダーといったテレビ周りの周辺機器まで常時インターネットにつながる時代なので、こういった進化は大いに歓迎したいところです。
先代の「HT-A9」は価格.com最安価格で一時は20万円を切るときもありましたが、昨今の物価高の影響で値上げが実施され、2024年4月19日現在、ソニーストアでは286,000円、価格.com最安価格でも23万円超となっています。最新モデルの「HT-A9M2」はそこからさらにワンランク上の価格になり、市場想定価格で33万円(税込)と大台の30万円オーバーとなってしまいました。
なかなか手が出しにくい価格になってしまったのは少々残念ですが、いっぽうで音質や設置性、機能性は着実に進化し、“マーク2”の名にふさわしい仕上がりとなっていました。視聴者の周囲に4本の物理的なスピーカーを配置することによるシームレスな音のつながりや音の回り込みのよさは、サウンドバー単体では実現できない「HT-A9M2」ならではの魅力。お金と4本のスピーカーを配置するスペースに余裕があるなら、「HT-A9M2」を導入するのも大いにアリでしょう。
●ソニー「HT-A9M2」の主な仕様
実用最大出力合計値(非同時駆動、JEITA):504W
本体サイズ:289(幅)×275(高さ)×55(奥行)mm(スピーカー本体のみ)、160(幅)×56(高さ)×160(奥行)mm(セットトップボックス)
重量:約2.4kg(スピーカー1本、本体のみ)、約0.77kg(セットトップボックス)
HDMI:入力1系統、出力1系統(8K/4K120、eARC、ARCサポート)
対応音声フォーマット:DTS:X、DTS:X Master Audio、DTS-HD MasterAudio、DTS-HD High Resolution Audio、DTSExpress(DTS-HD LBR)、DTS 96/24、DTS、Dolby Atmos-Dolby TrueHD、Dolby Atmos-DolbyDigital Plus、Dolby TrueHD、Dolby Digital Plus、Dolby Digital、MPEG-4 AAC、MPEG-2 AAC、リニアPCM(2ch/5.1ch/7.1ch)
無線LAN内蔵/LAN端子:〇/〇
アプリ操作対応:Sony | BRAVIA Connect(Wi-Fi経由)
Bluetooth受信:〇
Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
その他:Apple AirPlay 2、Spotify Connect対応