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超ハイファイアンプにDACも入ったお買い得プリメイン「PMA-3000NE」

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デノンがD/Aコンバーターを内蔵するプリメインアンプ「PMA-3000NE」を発表した。発売日は2024年9月中旬で、メーカー希望小売価格は528,000円(税込)。デノンのプリメインアンプと言えば、最高級モデルとして「PMA-SX1 LIMITED」が人気を得ていたが、現在は生産終了。しばらくは「PMA-3000NE」がデノンの最高級プリメインアンプということになる。

D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプ「PMA-3000NE」。USB DAC機能で最大384kHz/32bit(PCM)/11.2MHz(DSD)信号に対応する

D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプ「PMA-3000NE」。USB DAC機能で最大384kHz/32bit(PCM)/11.2MHz(DSD)信号に対応する

RCAアンバランスのアナログ音声入力に加え、フォノ入力(MM/MC対応)、USB Type-Bを含むデジタル音声入力を装備。アナログレコードからハイレゾファイルまで、幅広い対応力を持っている

RCAアンバランスのアナログ音声入力に加え、フォノ入力(MM/MC対応)、USB Type-Bを含むデジタル音声入力を装備。アナログレコードからハイレゾファイルまで、幅広い対応力を持っている

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「PMA-A110」の機能はそのままに音質をブラッシュアップ

デノンファンの方ならばおわかりのとおり、「PMA-3000NE」は「PMA-2500NE」の上級機に当たるプリメインアンプだ。型番に「SX」を冠する高級製品が生産終了となってしまったため、「PMA-3000NE」がひとまずの最上位モデルということになる。

「PMA-SX1 LIMITED」に続き、「PMA-SX11」「PMA-A110」が2024年内に生産終了予定。「PMA-3000NE」がデノンプリメインアンプの最上位モデルとなる

「PMA-SX1 LIMITED」に続き、「PMA-SX11」「PMA-A110」が2024年内に生産終了予定。「PMA-3000NE」がデノンプリメインアンプの最上位モデルとなる

「PMA-A110」(左)と「PMA-3000NE」(右)。本体サイズなどは共通。「PMA-3000NE」はディスプレイが液晶から有機ELになり、表示窓が少し大きくなった

「PMA-A110」(左)と「PMA-3000NE」(右)。本体サイズなどは共通。「PMA-3000NE」はディスプレイが液晶から有機ELになり、表示窓が少し大きくなった

「PMA-3000NE」は、「PMA-A110」をベースに総合的ブラッシュアップを図ったと考えれば間違いなさそうだ。USB DAC機能で最大384kHz/32bit(PCM)/11.2MHz(DSD)信号に対応すること、MM/MC対応のフォノイコライザーを内蔵すること、デジタルオーディオ回路をオフにして高音質化を図る「アナログモード」を持つことなど、機能的な部分は「PMA-A110」をそのまま継承している。

細かな仕様変更はあるようだが、おおまかに言えば変わったのは音質と本体色ということになるだろう。

フロントパネルにはデジタルオーディオ回路をオフにする「アナログモード」やトーンコントロールをバイパスする「ソースダイレクト」のスイッチを備える。どちらも「原音忠実」再生のための機能だ

フロントパネルにはデジタルオーディオ回路をオフにする「アナログモード」やトーンコントロールをバイパスする「ソースダイレクト」のスイッチを備える。どちらも「原音忠実」再生のための機能だ

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シンプルさを追求した新型パワーアンプ回路

さて、上述のとおり“ガワ”こそ「PMA-A110」とほぼ同じだが、その“ナカ”はまったく異なると言ってよい。以下に、「PMA-A110」との違いを列挙していこう。

「UHC MOS FET」によるシングルプッシュプル回路は差動2段から差動1段構成へ

「UHC MOS FET」によるシングルプッシュプル回路は差動2段から差動1段構成へ

いちばん大きな違いは、パワーアンプ回路が刷新されたこと。「PMA-A110」や「PMA-SX11」で使われていた差動2段アンプをさらにシンプルな差動1段回路へ改めた。これにより、発振に対する安定性が高まり、すぐれたスピーカーの駆動力を得られるという。

ここでベースとなっているのは1993年のパワーアンプ「POA-S1」以来30年以上伝統的に使われている大電流増幅素子「UHC(Ultra High Current) MOS FET」によるシングルプッシュプル回路だ。1ペアによる最小単位での半導体素子による増幅を行うことにより、素子の個体差によるブレを回避し、安定した増幅を実現することがこの趣旨。「PMA-3000NE」では原点回帰的に「高忠実駆動力とミニマムシグナルパス」を掲げてこのシングルプッシュプル回路のブラッシュアップに取り組んだ。

大きめの素子2つが「UHC MOS FET」。銅板を介してヒートシンクに取り付けられている

大きめの素子2つが「UHC MOS FET」。銅板を介してヒートシンクに取り付けられている

パワーアンプブロックを引きで見ると、その全貌がよくわかる。左右のチャンネルが完全に分かれたハイファイオーディオ流儀のぜいたくな構成だ。パワーアンプ基板は2層基板(「PMA-A110」は単層基板)を採用し、可能な限りワイヤーを使わない工夫も施された。これは後述する「ミニマムシグナルパス」徹底の一環だ。また、基板の箔厚を140μmに増したことで、これもS/N改善に役立っているという

パワーアンプブロックを引きで見ると、その全貌がよくわかる。左右のチャンネルが完全に分かれたハイファイオーディオ流儀のぜいたくな構成だ。パワーアンプ基板は2層基板(「PMA-A110」は単層基板)を採用し、可能な限りワイヤーを使わない工夫も施された。これは後述する「ミニマムシグナルパス」徹底の一環だ。また、基板の箔厚を140μmに増したことで、これもS/N改善に役立っているという

MOS FETを駆動するための電圧増幅段をパラレル化したことも改良点のひとつ。シングルプッシュプル動作をより安定して行えるようになったそうだ

MOS FETを駆動するための電圧増幅段をパラレル化したことも改良点のひとつ。シングルプッシュプル動作をより安定して行えるようになったそうだ

「ミニマムシグナルパス」の徹底

「ミニマムシグナルパス」つまり信号経路の最短化はパワーアンプ回路だけでなく、全体に及ぶ。多層基板の採用やワイヤーの廃止(バスバーの採用)などを駆使して回路の最適化を図っている。ワイヤーの廃止は個体差を避けるほか、ワイヤリングの状態を検討しなくてよいというメリットがあるそうだ。信号経路を短くすること自体は、ノイズの飛び込みを防ぎ、S/Nを改善する正統的な工夫だと言えるだろう。

可変ゲイン型プリアンプを使った2段構成をとることは「PMA-A110」と同様。それほど音量の大きくない常用時のノイズ低減を期待できる構成だ。これを維持しつつ4層基板を採用(「PMA-A110」は2層基板)し、プリアンプ基板を1枚に凝縮。可能な限りワイヤーを廃止してS/Nを改善したという

可変ゲイン型プリアンプを使った2段構成をとることは「PMA-A110」と同様。それほど音量の大きくない常用時のノイズ低減を期待できる構成だ。これを維持しつつ4層基板を採用(「PMA-A110」は2層基板)し、プリアンプ基板を1枚に凝縮。可能な限りワイヤーを廃止してS/Nを改善したという

フォノイコライザーとヘッドホンアンプを独立させたこともポイント。いずれも経路最短化が趣旨だが、ヘッドホンアンプは専用アンプを用意したという意味でも音質改善に効果がありそうだ

フォノイコライザーとヘッドホンアンプを独立させたこともポイント。いずれも経路最短化が趣旨だが、ヘッドホンアンプは専用アンプを用意したという意味でも音質改善に効果がありそうだ

デジタル系/アナログ系の電源を分けて干渉を避けるのは常套手段だが、「PMA-3000NE」ではデジタル系/アナログ系/プリアンプ部/スタンバイ時用に各種電源を用意。さらに配置を再検討して信号経路の最適化を図った

デジタル系/アナログ系の電源を分けて干渉を避けるのは常套手段だが、「PMA-3000NE」ではデジタル系/アナログ系/プリアンプ部/スタンバイ時用に各種電源を用意。さらに配置を再検討して信号経路の最適化を図った

電源部には、カスタムブロックコンデンサーを搭載。「PMA-3000NE」用に新規開発したもので、「PMA-A110」採用品とはメーカーも異なる。スリーブが短めにかかっているのは、音質検討の結果だという

電源部には、カスタムブロックコンデンサーを搭載。「PMA-3000NE」用に新規開発したもので、「PMA-A110」採用品とはメーカーも異なる。スリーブが短めにかかっているのは、音質検討の結果だという

短いスリーブがかかったカスタムブロックコンデンサー。すぐ後ろにはワイヤー代わりに採用されたバスバーが見える

短いスリーブがかかったカスタムブロックコンデンサー。すぐ後ろにはワイヤー代わりに採用されたバスバーが見える

信号経路を最短化して凝縮していった結果、最終的には回路全体がひとつの「塊」のようにまとまったという。確かに、モジュールのようにまとまっている

信号経路を最短化して凝縮していった結果、最終的には回路全体がひとつの「塊」のようにまとまったという。確かに、モジュールのようにまとまっている

新D/Aコンバーターを4基パラレルで駆動

D/Aコンバーター部分についても変更が加えられている。主なポイントは、D/Aコンバーター素子の変更とさらなる多層基板の採用、低ジッターのクロックバッファーの採用だ。

「PMA-3000NE」で使うD/Aコンバーター素子はESSテクノロジー製の2chモデル「ES9018K2M」。これを4基パラレルで使い、S/Nを稼ぎつつ聴感上のパワー感を得ているという。なお、「PMA-A110」のD/Aコンバーター素子はTI製の2chモデル「PCM1795」だった。D/Aコンバーターの使い方自体は同じようだが、従来4層基板だったところ、新製品では6層基板を採用。信号経路の最短化という「PMA-3000NE」に通底するコンセプトのためもあるが、2層分をグラウンドとして使うことにより、ノイズ対策にもしている。

PCMのデジタル音声入力を1.536MHz/32bitへアップサンプリング/拡張処理を施す「Ultra AL32 Processing」は「PMA-A110」と同じ。理論上-3dBのS/N改善を期待できる技術だ

PCMのデジタル音声入力を1.536MHz/32bitへアップサンプリング/拡張処理を施す「Ultra AL32 Processing」は「PMA-A110」と同じ。理論上-3dBのS/N改善を期待できる技術だ

D/Aコンバーター素子は「ES9018K2M」。2chモデルをモノモードで4基パラレル駆動させる

D/Aコンバーター素子は「ES9018K2M」。2chモデルをモノモードで4基パラレル駆動させる

CDプレーヤー「DCD-A110」に採用されていた低ジッターのクロックバッファーを採用。純度の高いクロックをD/Aコンバーターに供給するという。「PMA-A110」では実装できなかったパーツのひとつだそうだ。D/Aコンバーターのすぐ近くにクロック発信器を配置し、D/A変換精度を高める「DACマスタークロックデザイン」は「PMA-A110」から継承している

CDプレーヤー「DCD-A110」に採用されていた低ジッターのクロックバッファーを採用。純度の高いクロックをD/Aコンバーターに供給するという。「PMA-A110」では実装できなかったパーツのひとつだそうだ。D/Aコンバーターのすぐ近くにクロック発信器を配置し、D/A変換精度を高める「DACマスタークロックデザイン」は「PMA-A110」から継承している

まとめ:“アナログアンプ”としてもかなりハイレベル!

試聴はディーアンドエムホールディングスの試聴室にて

試聴はディーアンドエムホールディングスの試聴室にて

最後に、短い間だが「PMA-3000NE」の実機に触れられたので、そのインプレッションをお届けする。今回試したのは主にCDプレーヤーからのアナログ音声入力について。

ピーター・ガブリエルの「i/o」はマニアの間でDolby Atmosミックスが話題となった作品だが、2chミックスでも音の広がりがあり、やはり没入感が高い。そういう音源の広がり、中央に定位するボーカルの明瞭さを「PMA-3000NE」はしっかり再現してくれる。Bowers & Wilkinsの「801 D4」を無理なくグリップする駆動力も感じさせる。

S/Nがよいこともあるのだろう、低音は深く沈み込むというよりは軽やか。楽曲のダイナミズムをハイファイ(高忠実)で再現するいっぽう、厳しすぎない弾力に富んだ表情が「PMA-3000NE」の魅力なのかもしれない。

「DP-3000NE」で再生したアナログレコードも「PMA-3000NE」で聴いてみると、中低域の充実した聴き応えで、やはり再生ソースに機敏に反応してくれる。ポリスの「Synchronicity」では「Walking in Your Footsteps」のキレのあるパーカッション、空間に広がる細かなリバーブがとても心地よい。

この日聴いたのはアナログ音声入力のみだが、試聴の途中まで「PMA-3000NE」にはハイレゾ対応のデジタル音声入力もあることを忘れていた。つまりアナログアンプとしてもかなりハイレベルにまとまっているわけで、ハイレゾ再生機能まで持ったオーディオシステムの中核として、かなりお買い得であると言えそうだ。

「PMA-2500NE」が登場した2016年当時、「なんてお買い得なプリメインアンプなんだ!」と思ったものだったが、「PMA-3000NE」は(価格はほぼ倍でも)それを上回る総合力なのではないかと感じた。オーディオシステムをあまり大がかりにしたくない人にとっての有力候補として、ぜひ検討していただきたい1台だ。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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