ここで紹介するサービスは「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」「Disney+」「Apple TV+」の5つ
この記事では、数ある動画配信(ネット動画)サービスから5サービスを厳選し、それぞれの特徴解説やほかのサービスとの比較などをしていきたい。紹介するサービスは「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」「Disney+」「Apple TV+」の5つ。
筆者はこれまで計13の動画配信サービスを横断的に使ってきたが、現在も解約せず利用し続けているのがこの5サービスである。その大きな理由は、スマホから大型テレビ、あるいはプロジェクター&スクリーンの大画面まで、幅広い環境での鑑賞に堪えられる高画質&高音質を担保したサービスであるからだ。つまり、“AV的にも楽しめる動画配信サービス5選”ということになる。
各サービスの主要スペックは図のとおり。プランにもよるが、すべてのサービスで4K&HDR映像とDolby Atmos音声を楽しめる。より広い明暗差を再現するHDR、三次元立体音響フォーマットDolby Atmosの詳細は以下関連記事を参照のこと
いまやサブスクリプション方式の動画配信サービスは、動画コンテンツを楽しむための“インフラ”と言ってよいほど大きな存在になっている。ブルーレイやDVDなどの物理メディアを購入して所有するのではなく、月額または年額で料金を支払うことで、ユーザーは膨大なライブラリーにアクセスする権利を得る。
この数年の間に、日本でもたくさんの動画配信サービスがスタートした。ざっと数えるだけでも20以上のサービスが、日々ユーザー獲得のためにしのぎを削っている。インターネットさえつながれば、テレビやスマホで瞬時に見たいコンテンツをストリーミング再生できるし、ダウンロード/オフライン再生機能に対応しているサービスなら外出時も通信料を気にすることなく視聴できる。テレビ番組のように放送時間が決まっているわけではないし、(基本的に)レンタルビデオのように返却期限があるわけでもない。一度この便利さを知ってしまうと、動画配信サービスのない世界に戻るのは難しい。
配信作品のタイトル近辺をよく見ると「4K」や「HDR」そして「Dolby Atmos」などの文字が並ぶ。「4K」は高解像度、「HDR」はより広い明暗差、「Dolby Atmos」は臨場感のある立体音響を期待できる。HDRの一種「Dolby Vision」のほか「IMAX ENHANCED」などの要素もあるが、ここでの説明は割愛する
ただ、サービスごとの提供内容や月額は千差万別と言えるほど多様なわけではない、というのが悩ましいところ。アニメやスポーツに特化したサービスなどを除けば“似たり寄ったりのサービス”が多いというのが現状だ。これは動画配信サービスに限らず、音楽・書籍・ビジネスアプリ・衣服・食材・家具・家電・インテリア・生花・自転車・クルマなど、あらゆるジャンルで乱立するサブスク事業全般に言える。ユーザーは、大体同じように見えるこれらのサービス群の中から、より自分の求めるサービスに近いものを見つけ出さなければならない。
冒頭で触れたように、今回ご紹介する5サービスは高画質&高音質を基本とした“AV的にも楽しめる動画配信サービス”という切り口で選んだものだ。ここでの高画質&高音質の定義は、「画質は4KやHDR(Dolby Visionを含む)、音質は5.1chサラウンドやDolby Atmos対応の作品が多く配信されている」ということ。つまり、スマホやPCでカジュアルに楽しめるだけでなく、リビングの大画面テレビやプロジェクターを使った本格的なホームシアター環境で高品位な映像と音にじっくり浸れるクオリティを備えた動画配信サービスということになる。
それでは以下に各サービスの概要と仕様、配信されている作品の傾向を見ていこう。サービスの仕様は「オリジナル作品の充実度」「オリジナル作品以外の充実度」「料金プランのバリエーション」「画質&音質への配慮」「視聴機能」という5項目で5点満点の採点を行っている。
ここで紹介するサービスは、どれも筆者が厳選の末にたどり着いた充実したプラットフォーム。どれがいちばんすぐれているというものではないので、採点はひとつの基準として、要望にフィットしたサービスを探し出していただきたい。
筆者の主観で、5項目を5点満点で採点。それらを総合した個人的満足度は別途5点満点で記した
動画配信サービスの老舗にして最大手の「Netflix(ネットフリックス)」は、2023年時点の全世界の有料会員数が2億3250万人。日本国内の会員数も2020年8月時点で500万人を超えている。一時期は他サービスの台頭、会員数の伸び率鈍化などにより、相対的に存在感が薄まった印象があったものの、2022年に会員数は再び増加傾向へ。現在も動画配信サービス界のトップランナーとして君臨している。
「Netflix」の特徴は、なんと言っても自社製作によるオリジナル作品の多さである。映画では、2018年に映画「ROMA/ローマ」が動画配信作品として初めてアカデミー賞にノミネート。「映画はまず映画館で上映されるもの」という従来の常識が覆るきっかけとなった。
「Netflix」ブレイクのきっかけとなった2013年のオリジナルシリーズ(ドラマ)「ハウス・オブ・カード 野望の階段」以降、オリジナル作品のジャンルは映画・シリーズ(ドラマ)だけでなく、アニメやバラエティなど全方位に及ぶ。マーティン・スコセッシ監督の3時間を超える大作「アイリッシュマン」と「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」、韓国ドラマの「愛の不時着」「梨泰院クラス」、日本製作の「全裸監督」「浅草キッド」「T・Pぼん」「地面師たち」、実写版「ONE PIECE」、トークバラエティの「トークサバイバー」、世界的ベストセラーの映像化「三体」など、お目当てのオリジナル作品を見るために「Netflix」に入った、という人も少なくないだろう。
料金プランのバリエーションや画質・音質への配慮、視聴機能なども手厚いが、ひとつ注意すべきはオリジナル作品以外の画質・音質について。4K解像度&Dolby Atmosの再生に対応する「プレミアムプラン」を契約していても、他社制作作品(たとえばソニーピクチャーズ系の作品など)の多くはフルHD解像度&5.1chまでの対応となっているので、クオリティ重視のユーザーは注意したい。また、最近では料金プランの見直し(「ベーシックプラン」の新規受付終了)、別世帯とのアカウント共有の禁止など、サービス内容がこまめに更新される点にも気をつけたいところだ。
4Kを楽しめる「プレミアム」プランはやや高額に見えるが、作品の充実度や画質・音質への配慮を考えれば納得の内容。個人的な総合満足度が最も高いのがNetflixだ
オリジナルシリーズの「ハウス・オブ・カード」を皮切りに、映画では「ROMA/ローマ」「ドント・ルック・アップ」「アイリッシュマン」「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」「浅草キッド」、オリジナルシリーズでは「バスターのバラード」「コブラ会」「愛の不時着」「梨泰院クラス」「火花」「全裸監督」「サンクチュアリ-聖域-」「ONE PIECE」「T・Pぼん」「三体」「地面師たち」、バラエティでは「トークサバイバー」など、巨額の製作費を惜しみなく投じた作品が揃っている。
Netflixはオリジナル作品の充実度が最大の特徴。主要カテゴリーとして編成され、作品のサムネイルには「N」マークが付いている。また、最新作は4K解像度&Dolby Atmosで配信されることも多い
一貫してオリジナル作品の配信を最優先しているため、洋邦問わず「話題の新作」「大ヒット作」「名作」とされる映画は後述する「Amazonプライム・ビデオ」や「U-NEXT」などと比べると少なく感じられる。過去に見て気に入った作品を繰り返し見たいリピータータイプのユーザーよりも、現代を生きるクリエイターによる話題作をいち早く見たい先物買いタイプのユーザーに向いた動画配信サービスと言ってよいだろう。
料金プランは、4K対応の「プレミアム」プラン(月額税込1,980円)、フルHD(1080p)対応の「スタンダード」プラン(月額税込1,490円)、1時間に平均4〜5分の広告が表示されるフルHD対応の「広告つきスタンダード」プラン(月額税込790円)の3つ。HD(720p)対応の「ベーシック」プランは、2023年10月に新規受付を終了している。年額払いによる割引、ファミリー・学生を対象とする割引は用意されていない。
料金プランに応じて画質・音質も異なるのが「Netflix」の特徴。大きめの最新テレビは基本的に4Kテレビなので、「プレミアム」プランの4K解像度がむだになることは少ないだろう
「プレミアム」プランを契約の場合、オリジナル作品の多くは映像が4K&HDR、音声はDolby Atmos(Netflixでは「空間オーディオ」と呼んでいる)もしくは5.1chでの配信となり、大画面やマルチチャンネルを使ったホームシアター環境を持つユーザーも満足のいくクオリティで楽しめる。ただし、自社オリジナル以外の作品はフルHD&5.1ch再生までの対応がかなり多いので、その点は注意する必要がある。
Dolby Atmos対応作品は「空間オーディオ」というバッジが付いている。サウンドバーやAVアンプは言わずもがな、最新のテレビはDolby Atmosに対応した製品も多数。作品を十分に楽しみたいならば、やはり「プレミアム」プランがベター
視聴中の画面操作は、再生中の字幕・吹替の切り替えや0.5〜1.5倍の倍速再生、10秒単位のスキップ再生、ドラマのシーズンの選択、連続再生、エンディングのスキップなどに対応。操作性の高さは数ある動画配信サービスの中でも随一だ。同時視聴が可能なデバイスは「プレミアム」プランが4つ、「スタンダード」プランと「広告つきスタンダード」プランが2つまで。別世帯とのアカウント共有は禁止されている。
「Amazonプライム・ビデオ」は、アマゾンの提供するプライム会員特典のひとつ。「お急ぎ便」目当てでプライム会員に登録したら、いつの間にか膨大な数の映画やドラマが見放題になっていて驚いた……という方も多いだろう。
「Netflix」や「U-NEXT」とは違って“専業”のサービスではないこと、あくまでも会員特典のオプション的なサービスであることから、ここで紹介する動画配信サービスの中で(何度か値上げは行っているものの)今も月額がいちばん安い。どのサービスに入るか迷ったらとりあえず「Amazonプライム・ビデオ」を選ぶのが無難だろう。
ただ安いだけでなく、話題の新作映画がいち早く独占配信されるケースが多く、コスパは高い。近年では「007」シリーズ(現在は独占配信は終了)や庵野秀明関連の「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン 劇場版」「シン・ウルトラマン」「シン・仮面ライダー」などが劇場公開からさほど間を置かず独占配信された。
アマゾン製作のオリジナル映画/ドラマ作品も驚異的なペースで増えており、いよいよ動画配信サービスの分野でも本気を出していることがうかがい知れる。映画やドキュメンタリーのオリジナル作品に関しては4K作品(サムネイルに「UHD」の表示あり)が多いが、旧作の配信についてはSD画質のものも少なくない。
「Amazonプライム・ビデオ」の4K解像度配信作品は「UHD」と表記される
ちなみにアマゾンは「Fire TV Stick」「Fire TV Stick 4K MAX」「Fire TV Cube」といったストリーミングプレーヤーを自社で提供している。手持ちのテレビが動画配信サービスに対応していなくても、USB端子にこれらのストリーミングプレーヤーを接続するだけで「Amazonプライム・ビデオ」だけでなくさまざまな動画配信サービスを楽しめるようになる。
「Apple TV+」のところでも触れるが、今回ご紹介する5サービスのうち、アマゾンとアップルは自社でストリーミングプレーヤーを含むワンストップ体制を整えていることも大きな特徴になっている。
比較的低額ながら、作品の充実度が高く、とにかく無難なのが「Amazonプライム・ビデオ」。「お急ぎ便」を便利に使っていることもあり、個人的満足度も高め
「Amazonプライム・ビデオ」のオリジナル作品と言えば、「風雲!たけし城」など国内制作のバラエティ作品がよく知られているが、「トム・クランシー/CIA分析官ジャック・ライアン」以降、「高い城の男」「シルバー 夢の扉」「007クイズ!100万ポンドへの道」「Saltburn」など海外製作のオリジナル作品もAV的に質の高い作品がハイペースで配信されている。
「Amazonオリジナルと見放題独占配信作品」の項目が用意され、ここだけでしか見られない作品があることをアピールしている
配信作品は、よくも悪くも“広く浅い”という印象。特に往年の名作と呼ばれるような映画品は「U-NEXT」などに比べるとかなり少なめだ。そのいっぽうで最新の話題作などはいち早く配信&レンタルで登場することが多い。過去作を何度も見返すようなマニア層には物足りないかもしれないが、話題作やヒット作を見られればとりあえずOKというカジュアル層にとってはコスパも含めて「Amazonプライム・ビデオ」一択だろう。
料金プランは基本的に1つで、月額は税込600円、年額なら税込5,900円(学生向けプランのPrime Studentは月額が税込300円、年額が税込2,950円)。この金額でAmazon Music PrimeやPrime Reading、Amazon Photosなど、アマゾンの提供するサービスがいろいろと利用できてしまうのだから、とにかくコスパが高いのは間違いない。ほかの動画配信サービスとの“かけもち”もしやすい価格設定である。
「Amazonプライム・ビデオ」で配信されているコンテンツの画質&音質は、とても幅が広い。映像は4K&HDRからSDまで、音声はDolby Atmosから2chまでと、後述する「Apple TV+」などと比べるとクオリティにかなりバラつきがある。このことには注意したい。
いっぽうで、アマゾンの展開する自社デバイスのうち「Fire TV Cube」はHDMI入力端子を搭載。AVアンプや各種プレーヤーとの接続が可能で、動画配信サービスの高品位再生と親和性が高いデバイスとなっている。
「UHD」(4K)以外の解像度表記はないが、特に旧作の場合SD(垂直解像度480)品質配信が散見される。解像度だけで言えば地デジ以下であることに注意。写真は「Apple TV 4K」で「お茶漬けの味」(1952年作品)を再生、解像度を確認したところ。4:3映像のため、垂直解像度は640と表示された
視聴中の画面操作は、10秒単位のスキップ再生やドラマの連続再生機能はあるものの、音声や字幕の再生中の切り替えや倍速再生には非対応。使いにくいと感じるほどではないが、「Netflix」に比べると機能性はやや限定的だ。しかし、オフライン再生やピクチャ・イン・ピクチャ再生、縦画面再生といった機能が充実しており、通勤時や移動時にスマホで見たいというユーザーには使いやすい仕様となっている。
2022年12月14日時点の発表によると、2018年2月の調査開始時より動画作品「見放題作品数No.1」を維持しているという(GEM Partners調べ)
「U-NEXT」は、日本発の動画配信サービスとしては最古参のひとつであり、国内では現在「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」に次ぐ人気サービス。見放題とレンタル扱いの新作を中心とした「ビデオ」に加え、書籍や雑誌、漫画、ライトノベルなどが読み放題の「ブック」が含まれているのが大きな特徴だ。見放題作品数は、国内最大級の290,000作品以上。複合型サービスという点では「Amazonプライム・ビデオ」とも共通するが、動画コンテンツ数の量と幅広さは他を圧倒している。
動画コンテンツの傾向としては、まず旧作映画の充実度がすごい。見放題作品数が「国内No.1」(※)と謳っているだけあって、黒澤明やジャン=リュック・ゴダール、フェデリコ・フェリーニ、ビリー・ワイルダーといった巨匠の監督作品のほか、ラース・フォン・トリアーやウディ・アレン、ヴィム・ヴェンダースなどのミニシアター系の作品も驚くほど豊富に揃っている。
※GEM Partners調べ/2023年12月 国内の主要な定額制動画配信サービスにおける洋画/邦画/海外ドラマ/韓流・アジアドラマ/国内ドラマ/アニメを調査
ドラマでは米ネットワークテレビHBOのオリジナル作品を配信しており、大人気ドラマシリーズの「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」などが独占配信中だ。国内ドラマに目を向ければ「VIVANT」や「半沢直樹」シリーズ、古いものでは「トリック」シリーズや「高校教師」「とんぼ」など、テレビ局を横断したラインアップが並ぶ。
アニメの配信数も「No.1」とのことで、名作系を中心に幅広く揃っている。そのいっぽうでライブもの、特に国内アーティストによる音楽ライブや、芸人のお笑いライブの有料配信がコンスタントに行われていたり、今回紹介する5つの動画配信サービスでは唯一アダルト動画も見放題に含まれていたりと、全方位的に充実したサービスを展開している。
月額は他サービスに比べると高めだが、毎月付与される1,200円分のポイントを利用してレンタルの新作や書籍を実質無料で楽しめると考えればコスパは高い。独占配信作品も多く、古今東西の映画を見たい熱心な映画ファンから圧倒的な支持を得ているのも納得だ。個人的にも現在は利用頻度が最も多いサービスである。
オリジナル、非オリジナルを問わず、とにかくコンテンツが充実しているのが「U-NEXT」。月額が高そうに見えるが、「ブック」なども含めたサービスを考えればコスパは高い。無料のお試し期間も設けられているので、映画ファンは一度試してみるとよいだろう
ここで紹介しているほかの4サービスとは異なり、映画やドラマの「U-NEXT製作オリジナル作品」はほとんどない(音楽やお笑いのライブはオリジナル作品あり)が、「U-NEXT独占配信作品」はきわめて多い。サムネイル左上にロゴが付いている作品はすべて「U-NEXT独占配信作品」であり、国内外の新作映画、韓流・アジア作品も含むドラマの数は圧倒的。特にHBO作品を独占配信しているのが大きなポイントだ。
「U-NEXT独占配信」作品は充実しており、しっかりコーナーも設けられている。海外ドラマや音楽/お笑いライブなどコンテンツの幅も広い
旧作映画の充実度は圧倒的。「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」にはないが「U-NEXT」にはある、という作品を数多く見つけられる。大ヒット作よりミニシアター系、インディペンデント系の旧作映画を見返すことが多いマニアックな映画ファンには最も頼れるサービスである。新作映画は「Amazonプライム・ビデオ」がいち早く見放題で配信される場合が多いのに対して、こちらはレンタル扱いの場合が多い。
現在の料金プランは、税込2,189円の月額利用のみ。そう言うとほかのサービスよりもずいぶん高いように感じるが、毎月付与される1,200ポイント(1ポイント1円)は新作映画のレンタル視聴や書籍のダウンロード購入、映画館チケットのクーポンとして利用できるので、見放題サービスそのものは実質989円で提供されていることになる。うまく利用すれば、この月額に見合った楽しみ方が十分できるはずだ。
数年前までは「配信作品は多いけれど画質&音質は並」という印象だった「U-NEXT」だが、近年はフルHD(1080p)を基本として映像は4K&HDR、音声はDolby Atmosの高画質&高音質作品も急速に増加中だ。ライブ配信についても2020年に松田聖子の1080p映像&448kbps音声による「PREMIUM LIVE EXPERIENCE」を皮切りに高品位なコンテンツを配信しており、AV的な物足りなさもかなり解消されつつある。
「Amazonプライム・ビデオ」と同様、視聴中の10秒単位のスキップ再生やドラマの連続再生機能といった基本的な操作は可能だが、音声や字幕の再生中の切り替えでは再生が一時停止する。操作性という意味では平均的で「Netflix」ほど使いやすいわけではない。しかし、オフライン再生や縦画面再生には対応しているので、スマホでの視聴もストレスなく楽しめるだろう。
※初出時、「ピクチャ・イン・ピクチャ再生は非対応」としていた点を修正いたしました。関係各位にお詫びして訂正いたします。(2024年9月9日)元々日本独自の動画配信サービスだった「Disney DELUXE」が、世界統一サービスの「Disney+」に進化する形で2020年6月にスタート。現在は「ディズニー」「ピクサー」「スター・ウォーズ」「マーベル」「ナショナル・ジオグラフィック」「STAR」という6つのコンテンツハブで構成されている。
熱心なファンの多いディズニーやピクサーの諸作、「スター・ウォーズ」シリーズやマーベルのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品に縦横無尽にアクセスできるわけだ。
「ディズニー」「ピクサー」「スター・ウォーズ」「マーベル」「ナショナル・ジオグラフィック」が言わば“固定客”を相手にしたコンテンツハブであるのに対して、2021年より提供が始まった「STAR」は「ダイ・ハード」シリーズや「プリティ・ウーマン」「タイタニック」「ムーラン・ルージュ」「24 -Twenty Four-」「X-ファイル」といった21世紀FOXの大ヒット作品群を数多くラインアップした“一般客”向けのコンテンツハブである。
この合わせ技により、「Disney+」は「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」に比肩し得る巨大サービスへと拡大しつつある。今後のさらなるユーザー数の増加は、「STAR」の拡充ぶりにかかっていると考えてよいだろう。「ザ・ビートルズ:Get Back」の独占配信や国内制作のオリジナルシリーズ「ガンニバル」といった話題作が次々と配信されている。
「ディズニー」「ピクサー」「スター・ウォーズ」「マーベル」それぞれのコンテンツハブ内でも、ここでしか見られないスピンオフ作品やドラマシリーズがコンスタントに配信されている。「スター・ウォーズ」では「マンダロリアン」、「マーベル」では「ロキ」や「ワンダヴィジョン」などが記憶に新しい。
とはいえ、「Disney+」の配信作品数は16,000作品以上(2021年10月の発表)とほかのサービスに比べて圧倒的に少ない。6つのコンテンツハブに含まれない作品も幅広く楽しみたいという人には、コスパにすぐれた「Amazonプライム・ビデオ」などとのかけもち利用も考えたいところだ。
「スター・ウォーズ」や「マーベル」という強力なコンテンツを楽しめることが「Disney+」の何よりのメリット。ただし、映画ファンが「Disney+」だけの契約で満足できるかと言うと難しいところだ
どこまでを「Disney+」のオリジナル作品とするか定義が難しいところだが、「STAR」以外は基本的にここでしか見られないものばかりなので、6つのコンテンツハブのどれか1つでも好きな人は入会を検討する価値がある。それぞれのコンテンツハブに、ファンでもフォローしきれないほどの配信限定作品が揃っているからだ。注目は今後の「STAR」ラインアップの拡充。“一般客”が「Disney+」だけで満足できるサービスになるかどうかは、その一点にかかっている。
非オリジナル作品の定義も難しいところだが、たとえば国内アニメの「名探偵コナン」「呪術廻戦」「ONE PIECE」、国内ドラマの「逃げるは恥だが役に立つ」「ドラゴン桜」などが「Disney+」で配信されているのは意外と知られていないかも。とはいえ「Amazonプライム・ビデオ」や「U-NEXT」に比べると一般作品の配信数は圧倒的に少ないので、幅広い作品を見たい人は、いずれかのサービスとのかけもち利用が必須だろう。
2023年11月に料金プランを改定。フルHD&5.1ch再生までに限られる月額税込990円(年額税込9,900円)の「スタンダード」と、4K&Dolby Atmos再生まで対応する月額税込1,320円(年額税込13,200円)の「プレミアム」の2プランとなった。従来は月額税込990円で4K、Dolby Atmos再生に対応していたわけで、価格改定は事実上の値上げ。ほかサービスとのかけもち利用のハードルがやや上がった印象だ。
「Disney+」には2つの料金プランが用意される。画質・音質を考えるならば断然「プレミアム」が有利。4Kテレビを使っているならば検討してみよう
「Disney+」の画質&音質は、2020年6月のスタート当初は前身の「Disney DELUXE」を踏襲したフルHD&2chが基本だったが、ユーザーからのリクエストを踏まえて2021年10月の「STAR」追加を機に映像は4K/HDR(Dolby Visionを含む)、音声は5.1ch/Dolby Atmosまでの対応にアップグレード。先述のように、現在は4K&Dolby Atmos再生には「プレミアム」プランでの契約が必要となる。
「プレミアム」プランの契約であれば、4K(「4K ULTRA HD」)やHDR(「HDR10」「Dolby Vision」)、Dolby Atmosを再生可能。「Apple Vision Pro」向けとして、3D映画作品の配信を開始したことも話題となった
「Disney+」の視聴機能はおおむね好印象で使いやすい。再生中の字幕/吹替の切り替え、10秒単位のスキップ再生、ドラマの連続再生機能などにまんべんなく対応する。操作性に関しては「Netflix」に次いでユーザーフレンドリーと言ってよいだろう。そのいっぽうで、PCやタブレットで再生していると突然プラットフォームのすべての言語がスペイン語に変わってしまうなどのバグがたまに見られた。
「Apple TV+」は、アップルの提供する映像コンテンツ視聴アプリ「Apple TV」のオプションとして組み込まれる動画配信サービス。「Apple TV」は映画のダウンロード購入/レンタルをメインとした、かつての「iTunes Video」を原型とするサービスで、アップルの映像コンテンツ事業の主軸は現在もダウンロード購入/レンタルにある。「Apple TV+」は、オリジナル作品に特化しているのが他社サービスとの最大の違いだ。
コロナ禍で劇場公開がキャンセルされたために権利を買い取り、独占配信したトム・ハンクス主演の「グレイハウンド」や「フィンチ」のほか、スヌーピーのアニメシリーズ「ピーナッツ」などいくつかの例外はあるものの、基本的には「自社製作のオリジナル作品のみを配信する」という方針をとっている。
そのため、2019年のサービス開始当初は数えるほどの作品しか配信されていなかったが、その後めざましいスピードで作品数は増加。2022年の第94回アカデミー賞では「Coda コーダ あいのうた」と「マクベス」が複数の部門でノミネート。「Coda コーダ あいのうた」は動画配信サービスのオリジナル作品として初の作品賞を受賞した(日本では権利関係の問題で「Amazonプライム・ビデオ」で配信。
「Apple TV+」での見放題配信はないが、ダウンロード購入/レンタルは可能)。ほかにもゲイリー・オールドマンが老齢のスパイを演じるドラマシリーズ「窓際のスパイ」、ジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンのコンビによるドラマシリーズ「ザ・モーニングショー」、マイケル・ダグラス主演の「フランクリン」などが人気だ。
なお、アップルはアマゾンと同様に自社デバイスの開発にも注力しており、ストリーミングプレーヤー「Apple TV 4K」は熱心なAVファンにとっては高品位再生に欠かせないコンポーネントとして重宝されている。「Apple TV 4K」とAVアンプと組み合わせることで、サービスの母体である「Apple TV」でダウンロード購入した作品やほかの動画配信サービスもシームレスに再生して楽しめる。
オリジナル作品の配信が基本の「Apple TV+」のチャート形状は「Disney+」と似ている。どうしても本サービス単独で満足するのは難しいため、総合満足度は低めとした。“かけもち”や“ついで”の契約候補として、一度検討してみていただきたい
「Apple TV」アプリのオプションサービスでありながら全作品をオリジナルで揃えているところに「Apple TV+」にかけるアップルの本気度がうかがえる。2019年のサービス開始時には数えられる程度だった作品数は、ここ数年で急速に増加。先述のように賞レースに絡む作品も出てきている。AV的クオリティと作品性を最重視し、数ある動画配信サービスの中でも独自のポジションで存在感を示すようになっている。
「Apple TV」において、オリジナル作品の配信は「Apple TV+」のみ。サービスの主軸は自社製作以外のコンテンツのダウンロード購入とレンタルである。見放題の配信ではないのでほかの4サービスとは位置付けが異なるが、ダウンロード購入した作品をアプリ内の「ライブラリ」に蓄積できる。ダウンロード作品は常時何らかのセールが行われており、4Kクオリティの話題作や名作を500円以下で購入できるのがうれしい。
「Apple TV+」はオリジナル作品の配信プラットフォームだが、「Apple TV」アプリでは一般映画作品をダウンロード購入/レンタルも可能。購入した作品が後日リマスターされるなどで(2Kが4Kへなど)アップグレードされた場合、自動でアップグレード後の作品へアクセスできるようになる
税込900円の月額課金により「Apple TV」内に「Apple TV+」が実装される。また、この「Apple TV+」のほかにアップルが提供する音楽配信サービス「Apple Music」、ゲームサービス「Arcade」、クラウドサービス「iCloud+」をまとめて税込1,200円の月額で利用できるサービス「Apple One」もあり、アップル製品の使用頻度が高いユーザーにとってはこちらのコスパが圧倒的に高い。
「Apple One」を契約すれば、「Apple Music」も「Apple TV+」も楽しめる。「iCloud+」が必要ならば、“ついで”に「Apple TV+」もという発想で「Apple One」を選ぶことも考えられるだろう
「Apple TV+」で配信されるほとんどの作品の映像は4K+HDR(Dolby Vision)、音声はDolby Atmosまで対応。“量より質”を徹底して他サービスとの差別化を図っている(先述のように、コロナ禍で劇場公開がキャンセルされたために権利を買い取り、独占配信した作品なども含まれる)。「Apple TV」内でダウンロード購入できる作品も4Kが基本なので、AV的なクオリティ重視のユーザーとの親和性がきわめて高い。
視聴機能については、再生中の字幕/吹替の切り替えや0.5〜2.0倍の倍速再生、10秒単位のスキップ再生、ドラマなら連続再生、オープニング/エンディングのスキップなどに対応。操作性はきわめて快適で、「Apple TV」アプリ内では「Apple TV+」以外の動画配信サービスの再生もできる。やはりストリーミングプレーヤー「Apple TV 4K」との連携がスムーズで、同機のリモコンの操作性も良好だ。
近年は「Netflix」だけでなく、「Amazon プライム・ビデオ」「U-NEXT」「Disney+」「Apple TV+」でも、オリジナル作品の数が急速に増加している。しかも、その多くが予算をふんだんに投入した大作映画級の作品なので、それらをまんべんなくフォローしようと思うと複数のサービスを掛け持ちせざるを得ないというのが現状だ。
たとえば、月額が比較的安価でラインアップが広範にわたる「Amazon プライム・ビデオ」や、少々月額は高いがポイントを活用すれば新作映画や電子書籍をおトクに楽しめる「U-NEXT」をレギュラーで契約しながら、話題のオリジナル作品が配信された時だけピンポイントで「Netflix」「Disney+」「Apple TV+」に都度契約する、といったやり方もアリだと思う。今回の記事が、自分に合った動画配信サービスとの付き合い方を考えるヒントになれば幸いだ。