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映像ぼやけてない? プロジェクター「N1S」「N1S Ultra 4K」の“真の実力”の引き出し方

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JMGOのプロジェクター「N1S」と「N1S Ultra 4K」をレビュー。同時に、プロジェクターを高画質で投写する方法を教えます

JMGOのプロジェクター「N1S」と「N1S Ultra 4K」をレビュー。同時に、プロジェクターを高画質で投写する方法を教えます

JMGO(ジェイエムゴー)は2011年に設立されたプロジェクター専門メーカー。2023年にはRGBレーザー光源を採用した「N1 Ultra」を日本で発売して話題となりました。ここでレビューするのはその後継である「N1S」シリーズ。

「N1S」はフルHD表示モデルで、「N1S Ultra 4K」は上位機にあたる4K表示モデルです。いずれもジンバルスタンド一体型で、まるでスポットライトのように、投写したい面に向けるだけで、台形補正やピント合わせまで自動で行います。

一般的なプロジェクターのように、スクリーンと本体をまず設置し、レンズで光学的にシフトとズーム、ピント合わせを行うというプロジェクターの概念を覆すもの。それこそが真骨頂なのですが、そうした点はすでに多く語られているところですので、本稿ではあえて「高画質」に力点を置き、「N1S」シリーズの底力をあぶり出していきましょう

3色レーザー光源で差別化を図ったフルHDのスタンダードモデル「N1S」

3色レーザー光源で差別化を図ったフルHDのスタンダードモデル「N1S」

「N1S」の主要スペック
●明るさ:900ルーメン(ANSI)
●表示解像度:1920×1080(フルHD)
●表示素子:0.33インチDLP
●コントラスト:1600対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:5W×2
●サイズ:187(幅)×165(奥行)×191(高さ)mm
●重量:約2kg
●投写距離:2.1m(80インチ)、2.6m(100インチ)
●備考:Wi-Fi6、Bluetooth(5.1)対応

4K表示に対応するJMGOの最上位モデル「N1S Ultra 4K」

4K表示に対応するJMGOの最上位モデル「N1S Ultra 4K」

「N1S Ultra 4K」の主要スペック
●明るさ:3000ルーメン(ANSI)
●表示解像度:3840×2160(4K)
●表示素子:0.47インチDLP
●コントラスト:1600対1
●光源(ランプ):レーザー
●ランプ寿命:30,000時間
●スピーカー出力:10W×2
●サイズ:241(幅)×203(奥行)×236(高さ)mm
●重量:約4.5kg
●投写距離:2.1m(80インチ)、2.6m(100インチ)
●備考:Wi-Fi6、Bluetooth(5.1)対応

スタンドジンバル一体型で天井投写も簡単

「N1S」シリーズ最大の特徴は、ジンバルスタンド一体型ゆえの柔軟な設置性。スポットライトのように任意の場所に投写できる仕組みで、「N1S Ultra 4K」は左右360度 、上下にも135度回転できます(「N1S」は上下方向のみ)。また、投写面に対して斜めに投写した場合でも自動台形補正で自動的にまっすぐな映像が投写でき(自動台形補正し)、ピントも自動で調整します。レンズは光学ズーム機能がない単焦点。いずれも投写距離は、今回の100インチスクリーンに対して約2.6mです。

「N1S」のレンズ。投写距離は100インチで約2.6m。やや短焦点で、DLP機では一般的な数値

「N1S」のレンズ。投写距離は100インチで約2.6m。やや短焦点で、DLP機では一般的な数値

ジンバルスタンドを上向きにして天井に投写すれば、ベッドルームシアターにも好適

ジンバルスタンドを上向きにして天井に投写すれば、ベッドルームシアターにも好適

ジンバルスタンドは持ち運ぶときのハンドルにもなります

ジンバルスタンドは持ち運ぶときのハンドルにもなります

「N1S」の背面。基本的には静かですが、時折ファンの音が気になりました。入力端子は、HDMI入力(eARC対応)1系統を装備。右は3.5mmステレオミニタイプのヘッドホン出力

「N1S」の背面。基本的には静かですが、時折ファンの音が気になりました。入力端子は、HDMI入力(eARC対応)1系統を装備。右は3.5mmステレオミニタイプのヘッドホン出力

電源供給用のACアダプター差し込み口は、ジンバルスタンドの根元にあります

電源供給用のACアダプター差し込み口は、ジンバルスタンドの根元にあります

「N1S Ultra 4K」は明るさなどの自動補正機能も搭載

また、「N1S Ultra 4K」には、スクリーン補正(使うスクリーンの枠を自動で感知し映像をフィットさせる仕組み。「N1S」も対応)のほか、明るさ自動調整(視聴環境の明度に合わせて輝度を調整する仕組み)、壁面自動適応機能(部屋の壁面の影響を感知して映像の色味を正しく補正する仕組み)といった高度な追加機能があります。

「N1S Ultra 4K」もズーム機能のない単焦点モデル。投写距離は「N1S」と同様ですが、レンズはより大口径です

「N1S Ultra 4K」もズーム機能のない単焦点モデル。投写距離は「N1S」と同様ですが、レンズはより大口径です

スクリーン補正機能を利用するには、スマートフォンにインストールしたJMGOアプリを使います

スクリーン補正機能を利用するには、スマートフォンにインストールしたJMGOアプリを使います

壁面自動適応機能は、白壁へ投写する場合に有効な機能。壁の色に応じて、正しい色に投写できるよう補正をかけてくれます

壁面自動適応機能は、白壁へ投写する場合に有効な機能。壁の色に応じて、正しい色に投写できるよう補正をかけてくれます

ACアダプターの差し込み口は、「N1S」同様ジンバルスタンドの脇

ACアダプターの差し込み口は、「N1S」同様ジンバルスタンドの脇

「N1S Ultra 4K」は「N1S」より大きく重いため、横方向に首を振るための回転盤が底面に備えられています

「N1S Ultra 4K」では、横方向に首を振るための回転盤が底面に備えられています

内部にファンが見える「N1S Ultra 4K」の背面。無音と言ってよいほど静かですが、わずかに排熱を感じました。HDMI入力は2系統(1系統はeARC)を装備

内部にファンが見える「N1S Ultra 4K」の背面。無音と言ってよいほど静かですが、わずかに排熱を感じました。HDMI入力は2系統(1系統はeARC)を装備

本体だけでなく、ACアダプターの大きさもかなり違います。上が「N1S Ultra 4K」用で、下が「N1S」用

本体だけでなく、ACアダプターの大きさもかなり違います。上が「N1S Ultra 4K」用で、下が「N1S」用

どちらもOSはGoogle TVのため、リモコンはおそらく同じ。ダイレクトボタンから、NetflixやYouTubeにアクセスできます

どちらもOSはGoogle TVのため、リモコンはおそらく同じ。ダイレクトボタンから、NetflixやYouTubeにアクセスできます

テストの方法

MAGNETAR(マグネター)のUltra HDブルーレイプレーヤー「UDP800」でUltra HDブルーレイを(ソースダイレクト、HDMIケーブルで直結)、内蔵アプリで映画作品がどれぐらい楽しめるのかを、チェックしています。

使用したスクリーンは、キクチの100インチ立ち上げ式モバイルタイプ「GFP-100HD」。幕面はマットタイプの「グランヴューホワイト」で素直かつ適切な拡散具合です。この製品は、油圧式リフトアップで平面性を保つうえ、任意の高さで止められます。リーズナブルな価格設定も魅力です。

スクリーンはキクチの100インチ立ち上げ式モバイルタイプ「GFP-100HD」。幕面はマットタイプで素直な画質が得られます

スクリーンはキクチの100インチ立ち上げ式モバイルタイプ「GFP-100HD」。幕面はマットタイプで素直な画質が得られます

白っぽい壁に投写して気軽に使うのもよいのですが、ここでは高画質を目指して、立ち上げ式スクリーンに投写してみます

白っぽい壁に投写して気軽に使うのもよいのですが、ここでは高画質を目指して、立ち上げ式スクリーンに投写してみます

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台形補正とフォーカス合わせは必ず再確認すべし

両モデルとも、最初はガイドに沿ってWi-FiやGoogle TVの設定などが必要。それが終われば、YouTubeやNetflixなど各種動画配信サービスを基本的にこれ1台で見られます。わずか数秒で、フォーカス合わせも台形補正も全部自動でやってくるので、初めてプロジェクターを使おうという人にやさしい設計です。

まず「N1S」をポン置きして、自動設定された状態のまま映像を見ていきます。ユニフォーミティー(画面全体の均一性)は良好。明るい白と黒はやや潰れ気味ながら、コントラスト(明暗の階調表現。公称値は1600:1)はなかなか滑らかできれいです。

もっとも、自動で合わせたフォーカスがやや甘いのと、時折モアレ(本来はないはずの模様)っぽく見える こともあるという2点が気になります。貸出機そのままの状態で台形補正やフォーカス合わせを自動機能に任せてしまうと、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)が目立ったり、ピントが合いにくくなったりするのは致し方ないところ。

せっかく3色レーザー光源とHDRの画質がウリのこのモデル、本来の実力はこんなものではないだろうという予想のもとに、部屋を全暗にして、できるだけ電気的補正が施されないよう調整してみることに。

できるだけ電気的補正を使わないことは、すべてのプロジェクターの高画質化に通じています。特にスタンド一体型のプロジェクターではどの程度台形補正を施すかがポイント。JMGO以外のメーカーの製品でも同じことが言えますので、ぜひ試してみてください。

できれば台形補正はオフに! もしくは「台形補正アライメント調整」を

まず、「すべての設定」から「プロジェクター設定」、「台形補正」と進み、台形補正自体をオフにしてみます。すると、さきほど気になったモアレっぽいところがピタリと消えます。

しかし、台形補正をしないとなると、スクリーンに対して真正面から投写をしないと映像がゆがんで表示されてしまうことになります。そこで折衷案として「シームレス台形補正」をオフ。さらに「台形補正アライメント調整」をして、台形補正の精度向上を図りました。これだけでもかなり画質の向上が認められます

「N1S Ultra 4K」でも「台形補正アライメント調整」をやり直すのがよい

「N1S Ultra 4K」でも「台形補正アライメント調整」をやり直すとよいでしょう

「オートフォーカスの調整」もやり直してみよう

次に「フォーカス」。これも「オートフォーカス」をあえてやめて、「手動フォーカス」で追い込み“ジャスピン”にすると、視力が2.0にでもなったかのようになかなかの描写力が姿を現しました。

もっとも、毎回「手動フォーカス」で調整をするのでは、「N1S」が備えるせっかくの利便性を損ないます。そこで、「オートフォーカス」のままでもジャスピンになる方法を探ると、「フォーカス設定」の「オートトリガーフォーカス」から、「オートフォーカスの調整」をしっかり設定し直せばよいことがわかりました。

「オートフォーカスの調整」画面。これをやり直すことでオートフォーカスの精度が上がります

「オートフォーカスの調整」画面。これをやり直すことでオートフォーカスの精度が上がります

このように、台形補正をなるべく使わず、オートフォーカスの調整を行うだけで、ジャギーなどがピタリと消えてフォーカスもクッキリ。フルHD&4Kプロジェクターとしては文句ない映像に仕上がります。もし、「N1S」シリーズを買ってみたけど、なんだか映像が寝ぼけてるんだよなあ、という人は、「オートフォーカス」の基準値がズレているかも。「オートフォーカスの調整」だけでもやり直してあげてください

DLP機にしては自然な色味で滑らかな階調も印象的

こうしてデジタル補正がかからない設置を行い(スクリーン真正面からの“直投”)、オートフォーカスの調整を施して“ジャスピン”の状態に整えて見てみましょう。

まずはフルHD機の「N1S」。

雪や雲、朝もやなどの極端に明るい部分(白ピーク)はやや頭打ちの印象ながら、特に明るい場面は清々しい映像。ごくわずかに赤みがかる場面はあるものの、クローズアップなら4Kプロジェクターとそん色ないと思わせる場面もありました。

色のトーンは自然で、階調も良好。黒みも浮くことなく自然で、夜景のビルの煌めきなどは、これが10万円台!? と隔世の感があります。気になるのは、葉のグリーンがやや薄目に感じることぐらい。

画質に関わる主な設定メニュー(「画像モード」)はいくつか用意されていますが、コンテンツに応じて「標準」か「映画」を選ぶのがよさそう。「ユーザー」設定を掘っていくとかなり本格的な調整値が表れることから、それぞれよく練られた調整値であることがうかがえます。

各モードの違いは、国産機で主流となっている輝度やHDR効果の違いというよりは、“派手め”か“枯れめ”かといった色味の違いをターゲットにしている印象です。

基礎体力があり、絵作りもよく練り込まれているように見込まれたので、ここからはUltra HDブルーレイで実力を徹底的にあぶりだしてあぶり出してみます(Dolby Vision、HDR10+のソフトはHDR10で再生)。

いっぽうの4Kハイエンドモデル「N1S Ultra 4K」は明るさが3000ルーメンと高出力であるため、「画像モード」を「標準」にした場合「明るさ」が「10」では眩しいほど。いくつかディスクを見ながら最終的には「明るさ」を「7」に設定しました。

「標準」モードでは「モーション補正」の初期値は「高」でしたが、動きのばたつきが気になる人は「オフ」に。また、最高画質を目指して全暗環境で見るため、「適応明るさ」も「オフ」にしました。

「明るさ」を下げる、「モーション補正」を「オフ」とするなど、最高画質を目指すために少し手を加えていきます。「明るさ」を「7」に落とすと黒浮きせず、HDR効果がよく出るからです。「画像モード」は「標準」と「映画」で適宜切り替えました

「明るさ」を下げる、「モーション補正」を「オフ」とするなど、最高画質を目指すために少し手を加えていきます。「明るさ」を「7」に落とすと黒浮きせず、HDR効果がよく出るからです。「画像モード」は「標準」と「映画」で適宜切り替えました

総じて「N1S Ultra 4K」は、「N1S」よりクリアーで、4K表示の恩恵でしょう、線の太さの違いもクッキリと出ます。また、明るさに余裕が感じられ、階調も明らかにぐんと余裕があります

たとえば、雪や雲、朝もやなどの極端に明るい部分(白ピーク)はやや頭打ちの印象ながらとにかく明るく、HDR感が抜群。希望小売価格50万円に迫る国内メーカー4K表示モデルと伍する と言ってよいレベル。「N1S」では白く飛んでしまっていたところまで見渡せます。

赤の色味や暗部の黒みも、DLP特有の沈み方で上手に見せます。闇に光る煌めきなどは、視力が上がったかのよう。クローズアップの絵面では「N1S」とあまり違いがないのではと予想していましたが、「N1S」では見えなかったホコリまでハッキリ見えてしまうほどの解像感の違いを見せつけます。

ビデオ映像では「標準」が液晶テレビのようなパリッとした明瞭な映像で見栄えがよく、広いユーザーに好まれそうなことは「N1S」と同様。「映画」にすると「N1S Ultra 4K」のほうが奥行き方向にぐんと立体的になります。

以下に具体的なインプレッションを記します。

Ultra HDブルーレイ「トップガン・マーヴェリック」を再生してみる

まず、「N1S」。

画像モード「標準」で再生すると最新の作品らしくクリアーかつクリーン、鮮やかかつ精細感が得られます。もっとも、マーヴェリックがダークスターを操縦するシークエンスでは、機内や管制室の表示、ブルーや赤の色味、光の屑となって墜落する見せ方など「映画」モードが立体的で情緒的です。

続く上官ケインに呼び出されるシーンでも、「映画」モードのほうが演出意図が明快。ブラインドの影がケインの半顔を黒く塗りつぶし、ブルーの片目がギラリ睨みをきかせ緊張感が高まります。そしてトップガン送りを言い渡すや、一転して左目も露わになり穏やかでやさしい表情を見せます。このあたりの塩梅が「映画」モードのほうが適切なのです。

次に、「N1S Ultra 4K」にすると、明るさが十分にあるので、画像モード「映画」でも十分に鮮やかかつ4Kらしい精細感も得られます。「N1S」の「標準」の鮮やかさと「映画」の映画らしいトーンが両立する、“いいとこ取り”画質になるのです。

たとえば、ダークスターのシークエンスでは、機内や管制室の表示、早朝の空を切り裂く航跡、緊迫した表情、空中分解してキラキラと光の屑となって散っていくシーンのHDR効果は、国産定番プロジェクターブランドに引けを取りません。

Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」を再生してみる

「四季 高野山」より水場の氷結を「N1S Ultra 4K」で投写

「四季 高野山」より水場の氷結を「N1S Ultra 4K」で投写

ビデオ作品ですが、それでも「画像モード」を「標準」とすると、赤などが華やかで派手め。「映画」にすると、紅葉が少し枯れて茶色くなった葉もかなりあることが見て取れます。

「N1S」で見る秋のシークエンスでは、紅葉だけでなく、緑の葉ごとの色の違いや空のグラデーションを味わうという観点では「映画」が良好。夜景は、「画像モード」に関わらず、照明の当たる白と闇の黒みのコントラストにHDRらしさが出てきます。

いっぽう「N1S Ultra 4K」では、赤以外の色もまんべんなく立ってきます。特に黄色。「N1S」の「映画」モードで引きの映像のとき感じた「眠たさ」は、「N1S Ultra 4K」の「映画」モードでは感じられません。インフォーカスとアウトフォーカスの描き分けが見事で、ちょっと前ならば100万円クラスのプロジェクターの映像と言われても納得の画質です。

冬の護摩供の場面では、僧侶の吐息や人々の祈りが遷った煙がお堂に立ち込めていくさまが神秘的。僧侶の耳も、アウトフォーカスながら派手すぎずよい塩梅で、赤くなっているのがきちんとわかり、寒さをよく伝えます。水場の氷結がキラリと光るシーンなどは、「N1S Ultra 4K」のHDR効果の面目躍如でしょう。

Amazon プライム・ビデオでアニメを再生してみる

ここまで“派手め”の「標準」モード、“枯れめ”の「映画」モードというすみ分けができていそうでしたが、アニメ作品ではどうでしょうか。内蔵アプリでAmazonプライム・ビデオを見てみます。

まずは「N1S」で「五等分の花嫁∬」から第4話「七つのさよなら 第三章」のラストを再生します。一花が借りたアパートに風太郎がサンタの格好で連れてこられる夜のシーンのフェイストーンは、「標準」より明らかに「映画」モードが適切。ゆらゆらと舞い散る雪や白い吐息も「映画」モードが自然で、飛び込んだ水中の描写もドラマティックです。

これを「N1S Ultra 4K」で見ると、「N1S」では輪郭線ばかり目立ち書き割り気味のフェイストーンも、実はとても滑らかな筆致なのが浮き上がります。白いフワリとした吐息や、雪のヒラヒラ舞う様子、水中の気泡もキラリとして、美化された風太郎の記憶とのコントラストも鮮やか。水から上がり寒い中照れて頬を赤らめる二乃の、微妙に紫がかった頬にも自然と目が行きます。これは「N1S」ではあまり意識しなかったところです。

これを見ると、やはりテレビ放送系のアニメーション作品でも「映画」モードを常用したいところ。次に述べるように、サウンドスタイルの設定も「映画」が圧倒的にすぐれています。

どちらのモデルも音質はサウンドバーより良好!?

音質モードである「サウンド スタイル」は4種

音質モードである「サウンド スタイル」は4種

「N1S」には5W×2のステレオスピーカーが内蔵され、再生周波数のスペックは下限55Hzまで再生可能、Dolby Audioに対応と説明されています。実際に音を聴いてみると、「サウンド スタイル」は「標準」でも「映画」モードでも自然。外部に小型のアクティブスピーカーをつないでいるのに近いイメージで楽しめました。

同価格帯の小型プロジェクターと比べても筐体サイズに余裕がありますし、初期設定のチューニングがうまいのでしょう。

いっぽう「N1S Ultra 4K」では、10W×2のステレオスピーカーを内蔵し、低域は45Hzまで再生可能と説明されています。また、Dolby Audioに加え、DTS HD(DTS-HD Master Audio)にも対応しています。

「N1S」よりもぐんとパワフルに感じたので、激しい銃撃戦で名高いUltra HDブルーレイ「ヒート」(DTS-HD Master Audio音声収録)を再生。「サウンドスタイル」は初期値「標準」でもオールラウンドで、一般的なテレビ内蔵スピーカーや多くのサウンドバーを超えています。

さらに「映画」にすると低域に広がりも出て、銃撃戦はなかなかの迫力。一般的な家庭であれば、音量は「50/100」ぐらいで十分な迫力が得られると思います。

【まとめ】直投でこそわかる真の実力! いずれも価格以上の完成度

本来はジンバルスタンドと自動台形補正を生かした柔軟な設置が魅力の「N1S」シリーズ。その点はすでにあちこちで語られているので、本稿では画質に焦点を当ててレビューをしました。

UHDブルーレイのチェックを通じてよくわかったのは、DLP方式をベースに3色レーザー光源を生かした映像の完成度が高いこと。これまで数々のプロジェクターを使ってきたマニア層から見ても、いくつかのポイントをおさえることで、いとも簡単に素の実力を引き出せます

プリセット画質もよく練られており、特に理想的な全暗環境で見る画像モード「映画」がすぐれています。

最後に、Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」秋の上映シーンを照明の具合に応じて一眼レフカメラでとらえた写真を付しておきます。カメラの設定は同一条件にこだわって撮影していますが、シャッターのタイミングによって外光の加減が違いうることをご了承ください。ご覧になるディスプレイの環境などによっても見え方は異なりますので、あくまでご参考程度に。(※ペンタックス「K-3 Mark V」カスタムイメージ「フラット」、焦点距離13mm、F2.8、1/15、ISO400で撮影)

●全暗環境

●外光あり(照明を消しているが窓から光が入る環境)

●明かりのついたリビング(照明のついた状態)

遠藤義人
Writer
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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