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デノンCDプレーヤー「DCD-3000NE」を聴いてデジタル機器の進歩を痛感してきた

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デノンがSACD/CDプレーヤー「DCD-3000NE」を発表した。発売日は2024年12月下旬で、メーカー希望小売価格は462,000円(税込)。先立って発表されたD/Aコンバーター内蔵プリメインアンプ「PMA-3000NE」と対になるプレーヤーだ。

「DCD-3000NE」は、アナログ音声出力1系統(RCA)とデジタル音声出力2系統(同軸、光)を備える単機能のディスクプレーヤー

「DCD-3000NE」は、アナログ音声出力1系統(RCA)とデジタル音声出力2系統(同軸、光)を備える単機能のディスクプレーヤー

上位モデルが生産終了したため、「PMA-3000NE」はしばらくデノンプリメインアンプの最高級モデルとなることをお伝えしたが、「DCD-3000NE」も同様。「DCD-SX1 LIMITED」などの高級ディスクプレーヤーがすでに生産終了しているため、「DCD-3000NE」がデノン最高級SACD/CDプレーヤーとなる

「DCD-SX11」と「DCD-A110」が2024年内で生産終了予定。入れ替わるように「DCD-3000NE」が発売される

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2024/07/25 11:00

「DCD-A110」をベースモデルとして作り込まれたのが「DCD-3000NE」

下がプリメインアンプ「PMA-3000NE」

下がプリメインアンプ「PMA-3000NE」

先行したプリメインアンプ「PMA-3000NE」は、ニュース記事で紹介したように「PMA-A110」の音質をブラッシュアップした製品と言える内容だった。この「DCD-3000NE」も立て付けは同じ。

デノン110周年モデルであるSACD/CDプレーヤー「DCD-A110」をベースモデルとして、回路の大幅変更はせずに細部をブラッシュアップした製品が「DCD-3000NE」だと言える。

デノン110周年モデル「DCD-A110」で「次の十年に繋がる技術」として達成されたのが上記3つの重要な要素だという。これらをそのまま受け継ぎ、基板やパーツの厳選によってブラッシュアップを図ったのが「DCD-3000NE」だ

デノン110周年モデル「DCD-A110」で「次の十年に繋がる技術」として達成されたのが上記3つの重要な要素だという。これらをそのまま受け継ぎ、基板やパーツの厳選によってブラッシュアップを図ったのが「DCD-3000NE」だ

製品のコンセプトは、「オーディオ的快感と、音楽的感動の両立」。これは「PMA-SX1 Limited」と「DCD-SX1 Limited」発売の際に掲げられたものと同じテーマであるという。このときのように、ベースモデルの“積み残し”を解消するように作り込まれた製品なのだ。通常のレギュラーモデル開発時よりも音質検討に時間をかけ、パーツなどを精査。担当者いわく、そうしてできあがった「DCD-3000NE」は「DCD-A110 LIMITED」と表現してもよいとのこと。

改善のためのハイライトとしてあげられたのは以下の4点。「DCD-A110」との相違点を順に追っていこう。
●オーディオ基板の刷新
●ミニマムシグナルパス
●最適化したD/Aコンバーター回路
●ViVid & Spaciousサウンド

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2019/10/15 07:01

回路は同じだがオーディオ基板は刷新されている

確かに回路の大幅変更はしていないものの、基板は新たに起こされており、メインのオーディオ基板が2層から4層へ変更されている。グランドの強化に役立てるとともに、D/Aコンバーターの放熱にも寄与しているという。ディスク読み取りのためのピックアップは熱に弱いため、耐久性にも影響があるそうだ

確かに回路の大幅変更はしていないものの、基板は新たに起こされており、メインのオーディオ基板が2層から4層へ変更されている。グランドの強化に役立てるとともに、D/Aコンバーターの放熱にも寄与しているという。ディスク読み取りのためのピックアップは熱に弱いため、耐久性にも影響があるそうだ

ミニマムシグナルパスをさらに徹底

「DCD-3000NE」の内部には、大きくわけて3つの基板が縦に並んでいる。この“橋渡し”をしていたワイヤーを廃止。ミニマムシグナルパス、つまり信号経路を最短化してよりストレートに音声信号を伝送することを徹底した

「DCD-3000NE」の内部には、大きくわけて3つの基板が縦に並んでいる。この“橋渡し”をしていたワイヤーを廃止。ミニマムシグナルパス、つまり信号経路を最短化してよりストレートに音声信号を伝送することを徹底した

左が「DCD-A110」で右が「DCD-3000NE」。ワイヤーの代わりに基板を使っている。ワイヤーはノイズを拾うアンテナ的に働いてしまうこともあるため、こうした方法が採られたという

左が「DCD-A110」で右が「DCD-3000NE」。ワイヤーの代わりに基板を使っている。ワイヤーはノイズを拾うアンテナ的に働いてしまうこともあるため、こうした方法が採られたという

新DAC素子に合わせて回路を最適化

回路的な部分での大きな変更はD/Aコンバーター(DAC)周りにある。採用するDAC素子がESSテクノロジー製の2chモデル「ES9018K2M」に変更されたことにともない、それに合わせた最適化が図られたのだ。2ch素子を4つ並列で使う構成は「DCD-A110」と同じ

回路的な部分での大きな変更はD/Aコンバーター(DAC)周りにある。採用するDAC素子がESSテクノロジー製の2chモデル「ES9018K2M」に変更されたことにともない、それに合わせた最適化が図られたのだ。2ch素子を4つ並列で使う構成は「DCD-A110」と同じ

「DCD-A110」ではテキサスインスツルメンツ(TI)の「PCM1795」だったDAC素子は、ESSテクノロジーの「ES9018K2M」に変更された

「DCD-A110」ではテキサスインスツルメンツ(TI)の「PCM1795」だったDAC素子は、ESSテクノロジーの「ES9018K2M」に変更された

DAC素子の変更に合わせてポストフィルターを変更したほか、トランジスタの交換などに手が入ったとのこと。また、DAC素子近傍に基準となるクロックを置く「DACマスタークロックデザイン」を踏襲したうえで、PCM系のクロック2つに加え、DSD用のクロック系3つを搭載する

DAC素子の変更に合わせてポストフィルターを変更したほか、トランジスタの交換などに手が入ったとのこと。また、DAC素子近傍に基準となるクロックを置く「DACマスタークロックデザイン」を踏襲したうえで、PCM系のクロック2つに加え、DSD用のクロック系3つを搭載する

Vivid & Spaciousサウンドのために多くのパーツを入れ替えた

近年のデノンが掲げる音質のテーマが「Vivid & Spacious」(Vivid=「鮮やかな」、Spacious=「広々とした」の意)。しかし、音の最終決定者であるサウンドマスター山内慎一氏は、個々の音がどうというよりは、最終的には思わず音楽に引き込まれるような体験をしてもらうことが重要だと話してくれた

近年のデノンが掲げる音質のテーマが「Vivid & Spacious」(Vivid=「鮮やかな」、Spacious=「広々とした」の意)。しかし、音の最終決定者であるサウンドマスター山内慎一氏は、個々の音がどうというよりは、最終的には思わず音楽に引き込まれるような体験をしてもらうことが重要だと話してくれた

作り込みのために行われたのは、主にコンデンサーなどのパーツ検討だが、ディスクドライブのカバーなど、すでに相応の手入れがされている部分も再検討され、パーツ交換が施されている

作り込みのために行われたのは、主にコンデンサーなどのパーツ検討だが、ディスクドライブのカバーなど、すでに相応の手入れがされている部分も再検討され、パーツ交換が施されている

音声信号経路ではない電源部などについてもパーツを再検討し、カスタムコンデンサーを採用した

音声信号経路ではない電源部などについてもパーツを再検討し、カスタムコンデンサーを採用した

クリーム色のような背の高いパーツが「SYコンデンサー」。あまりのできのよさに、サウンドマスター山内氏が自分の頭文字を付けてしまったとのこと。パーツとしては非常に高価だという

クリーム色のような背の高いパーツが「SYコンデンサー」。あまりのできのよさに、サウンドマスター山内氏が自分の頭文字を付けてしまったとのこと。パーツとしては非常に高価だという

左の「DCD-A110」で使っていたシールド(ノイズ対策)用のプレートを廃止。回転体を収めたディスクドライブにネジ留めされていたため、振動が伝播してしまうからだ

左の「DCD-A110」で使っていたシールド(ノイズ対策)用のプレートを廃止。回転体を収めたディスクドライブにネジ留めされていたため、振動が伝播してしまうからだ

ディスクドライブのケースは「DCD-A110」で1mm厚の銅を採用していたが、1.5mm厚のアルミ合金(A6061)に変更された。異なるアルミ合金(A5052)なども試したそうだが、最も音質がよかったものが最終的に選ばれた

ディスクドライブのケースは「DCD-A110」で1mm厚の銅を採用していたが、1.5mm厚のアルミ合金(A6061)に変更された。異なるアルミ合金(A5052)なども試したそうだが、最も音質がよかったものが最終的に選ばれた

デノンCDプレーヤー約20年分の進化を聴く

D&Mホールディングスの試聴室で「DCD-3000NE」を試聴できた。アンプは「PMA-3000NE」、スピーカーはBowers & Wilkinsの「801 D4」

D&Mホールディングスの試聴室で「DCD-3000NE」を試聴できた。アンプは「PMA-3000NE」、スピーカーはBowers & Wilkinsの「801 D4」

最後に、「DCD-3000NE」の実機を試聴できたのだが、この日は過去の高級モデル「DCD-SA1」(2004年発売)と「DCD-SX1」(2013年発売)も横に並べられていた。どちらも物量投入型のハイグレードモデルで、現在の物価上昇のことも考えれば格上感のある相手だ。

2つの旧製品は、それぞれ約20年前、約10年前のもの。10年ごとの進化を体感してもらう趣旨とのことだが、希望小売価格462,000円(税込)の「DCD-3000NE」は善戦できるのか……。

左の「DCD-SA1」は2004年発売で、発売時の希望小売価格は525,000円(税込)。右の「DCD-SX1」は2013年発売、発売時の希望小売価格は577,500円(税込)

左の「DCD-SA1」は2004年発売で、発売時の希望小売価格は525,000円(税込)。右の「DCD-SX1」は2013年発売、発売時の希望小売価格は577,500円(税込)


古い順ということで、まずは2004年の製品「DCD-SA1」から再生された。音源はジェニファー・ウォーンズのSACD「The Hunter」など。20年前のデジタルプレーヤーとはいえ、演奏や録音のよさは十分に伝わる。ドラムフィルインのタイトさ、ヴォーカルの自然な響きなど、わざとらしいところのないよい音だと感じる。

次に、2013年の製品「DCD-SX1」が再生されると、S/Nがよく、明らかにトランジェントが鋭い。出るべき音がより前に出る印象だ。それでいて音の余韻はより長く滞空していて、オーディオとしての実力が一段階上がっている。さすがにデジタル機器の進歩の速度はすさまじいということなのだろう。サウンドマスター山内氏も、この「DCD-SX1」はハードウェア的にもそれ以前とはかなり異なると話していた。

そして「DCD-3000NE」はどうか。驚いたことにさらにシャープでタイト。研ぎ澄まされたサウンドになっている。ドラムのフィルインの広さ、深さが印象的に響く。「DCD-SX1」には物量由来の厚みを感じるところだが、情報量の多さで言えば最新の「DCD-3000NE」なのではないか。

ボブ・ジェームズ・トリオの「Feel Like Making Live!」(2chバージョン)なんて、まさにVivid & Spaciousだ。やたら切れのよいドラム、枯淡の境地を思わせるピアノのコントラストを明瞭に描いてくれた。

「DCD-3000NE」のアナログ音声出力はRCAアンバランス出力のみ。ここに不満を感じる人もいるはずだが、クオリティとしてはデノンの最上位機種としてしっかり担保されているのはさすが。

SACD再生もできるCDプレーヤーはどこまで継続されるか心配なユーザーも多いだろう。しかし、安定した品質のSACD/CDプレーヤーをリリースし続けてくれるデノン(と姉妹ブランドのマランツ)の存在は心強いばかり。もちろん、こうした作り込みを生かしたうえでさらに物量を投入したハイエンドの登場にも期待したい。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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