レビュー

2024年No.1多機能モデル JBL「TOUR PRO 3」をいろいろ試してみた

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2024年もそろそろ終わりが見えてきたが、今年発売されたワイヤレスイヤホンを振り返ってみると、意外にも3万〜4万円クラスの主力製品の発表が少なかったことに気づく。そんな2024年に登場した数少ない主力モデルの中でも大本命と言えるのが、10月に発売されたJBL「TOUR PRO3」だろう。

4万円近くするハイエンドモデルではあるが、特徴をひと言で表すなら“とにかく多機能”ということに尽きる。先代の「TOUR PRO 2」から継承したスマート充電ケースに始まり、ノイズキャンセリング機能の強化、空間オーディオのヘッドトラッキング対応、さらにはスマート充電ケースにトランスミッターを搭載……とその全貌を語るのも大変なのだが、これこそ2024年の完全ワイヤレスイヤホンの進化を象徴するモデルである。

2024年10月3日に発売されたJBL「TOUR PRO3」

2024年10月3日に発売されたJBL「TOUR PRO3」

そんなJBL「TOUR PRO3」を全方位にレビューしていこう。

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2024/09/14 12:00

便利すぎる1.57インチタッチスクリーン付きスマート充電ケース

「TOUR PRO 3」の特徴を語るうえで、まずスマート充電ケースを語らないわけにはいかないだろう。「TOUR PRO 3」では、先代の「TOUR PRO 2」からタッチスクリーンサイズが約29%アップの1.57インチに拡大。もちろんこのタッチスクリーンはただの装飾ではなく実用性のあるもので、タッチ操作で音量操作や音楽再生時の再生コントロール、ノイズキャンセリング機能や空間オーディオ機能のオン/オフ、イコライザー調整などの操作が行える。さらに、「TOUR PRO 3」からの新機能としては、待ち受け画面にバッテリー残量や接続コーデックを表示できるようになったほか、スクリーンサイズが大きくなったことで、再生楽曲の曲名だけでなく、アーティスト名やアルバム名など、表示できる情報量も大きく向上している。

「TOUR PRO 3」の大きなウリのひとつ、1.57インチのタッチスクリーン付きスマート充電ケース

他社にはあまりない機能なので「充電ケースで操作する必要ってある? スマートフォンで音楽を聴くなら、スマートフォンで操作すればよくない?」という疑問も出てくるところではあるが……その答えは、「TOUR PRO 3」を使い始めるとすぐに出る。「充電ケースのボタンは、あれば必ず使うくらい便利」だ。

実際に持ち出しで使うと、スマートフォンがなくても操作できるというのは本当に便利

実際に持ち出しで使うと、スマートフォンがなくても操作できるというのは本当に便利

完全ワイヤレスイヤホンを持ち出す際、おそらく大半の人が充電ケースをポケットなどに入れて一緒に持ち歩いているはずだ。完全ワイヤレスイヤホンの中には、イヤホン本体で操作できる機能を自分好みにカスタマイズできるモデルがあり、そういったモデルではタップ回数によってさまざまな操作が行えるわけだが、イヤホン本体の複数回タップを駆使していろいろな機能を操作するよりも、スクリーンで内容を確認しながら操作できるほうがやはり直感的だ。

しかも、「TOUR PRO 3」の充電ケースには、スマートフォンアプリ「JBL Headphones」とほぼ同じ内容のものが組み込まれている。音楽はともかく、動画視聴やゲームプレイ中はスマートフォンでアプリを起動するのも手間なので、充電ケースでサクっと操作できてしまうのはととても便利。一度使うと「スマート充電ケース最高!」となるはずだ。

YouTubeで動画視聴中は動画タイトルもしっかりと表示される(本来は再生中の曲名表示機能)

YouTubeで動画視聴中は動画タイトルもしっかりと表示される(本来は再生中の曲名表示機能)

ちなみに、スマート充電ケースは好きな画像を待ち受けにしてスクリーンに表示することもできる。最近流行りの“推し活”用アイテムとして価値を見出す人もいるかもしれない。

装着感も良好。ノイズキャンセリング機能も優秀

「TOUR PRO 3」は装着感も良好だ。イヤホン本体の外見は先代の「TOUR PRO 2」に近い短いスティック型だが、耳のくぼみに収まる部分の厚みがわずかに増したようだ。先代の「TOUR PRO 2」は装着が浅く感じられたが、「TOUR PRO 3」はよくフィットしてくれる。イヤーチップが標準のシリコンイヤーチップ(5サイズ)とウレタンフォームイヤーチップ(1サイズ)から選べるところもよい。

いわゆるショートスティック型のイヤホン本体

いわゆるショートスティック型のイヤホン本体

パッケージにはシリコンイヤーチップとウレタンフォームイヤーチップが付属

パッケージにはシリコンイヤーチップとウレタンフォームイヤーチップが付属

装着感はかなり良好

装着感はかなり良好

ノイズキャンセリング機能も、「ハイブリッドノイズキャンセリング2.0」へと進化。これも先代の「TOUR PRO 2」では装着感との兼ね合いもあって個人的には効果を実感しづらかったのだが、「TOUR PRO 3」では評価が激変。まず、周囲の騒音を低減する性能は十分強力な部類に入り、すべての帯域で騒音を低減してくれる。電車内ではレールの擦れる音やガタガタと窓が揺れる音など耳に刺さるような中高域の低減が優秀だった。強度だけでも十分優秀な部類に入るし、騒音低減後に残る音の聴こえ方も自然。ノイズキャンセリング機能特有の違和感も少なく快適だ。

電車内に持ち出してテストしてみたが、騒音低減効果はかなり優秀だ

電車内に持ち出してテストしてみたが、騒音低減効果はかなり優秀だ

さらに、ノイズキャンセリング機能はユーザーがカスタマイズでき、リアルタイムで調整する「アダプティブノイズキャンセリング」と、装着時の密閉状態に応じて調整する「自動補正」を利用できる。個人的には「アダプティブノイズキャンセリング」は使わずに「自動補正」だけオンにして使っているが、これは好みに応じてカスタマイズしてみてほしい。もちろん外音取り込みも可能で、その切り替えをスマート充電ケースでできるところもとても便利だ。

アプリからノイズキャンセリング機能のカスタマイズが可能

アプリからノイズキャンセリング機能のカスタマイズが可能

ちなみに、バッテリー性能はイヤホン単体で最大8時間(ANCオン時、ANCオフ時は最大11時間)、充電ケース併用で最大32時間(ANCオン時、ANCオフ時は最大48時間)と、持ち出し用としても十分なスペックとなっている。

LDACコーデック対応、音質でも実力派。カスタマイズ機能の豊富さもポイント

「TOUR PRO 3」は、音質面でも大幅な進化を果たしている。なかでも、低音域を担当する10mmのダイナミックドライバーと、高音域専用のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーによるJBL初のデュアルドライバー構成は気になるところ。また、ハイレゾ対応のLDACコーデックをサポートしており、対応するスマートフォンと組み合わせることで、ワイヤレスでも高音質な音楽リスニングを楽しめるようになった点も見逃せないポイントだろう。

というわけで、まずはAndroidスマートフォンとLDACコーデックで接続して音質をチェックしてみたが、引き締まった低音から繊細な高域まで、全域にバランスのとれたサウンドだ。空間の広がりも自然で、ワイヤレスでもワンランク上の上質なサウンドを聴きたいという人にもマッチしてくれる。

対応するAndroidスマートフォンではLDACコーデックを利用可能。なお、LDACコーデックへの切り替えは現状だとアプリ経由でしかできないようだ

対応するAndroidスマートフォンではLDACコーデックを利用可能。なお、LDACコーデックへの切り替えは現状だとアプリ経由でしかできないようだ

Androidスマートフォンで音質をチェック。Amazon Musicの音源を再生してみたが、スマート充電ケースのスクリーンにも曲名がしっかりと表示される

Androidスマートフォンで音質をチェック。Amazon Musicの音源を再生してみたが、スマート充電ケースのスクリーンにも曲名がしっかりと表示される

なお、イコライザーはLDACコーデック接続時も利用可能なので、サウンドバランスを好みに合わせて調整できる。あらかじめアプリ経由でマイEQを登録しておけば、スマート充電ケースからも切り替えが可能だ。

さらに、「TOUR PRO 3」は音まわりに非常に多くにオプションが用意されているところも見逃せない。LDACコーデック接続の場合は機能が制限されているが、iPhoneユーザーなどLDACコーデックを用いない場合には利用できるオプションがグッと増える。

具体的には、音量や周囲の音に連動して低音補正などをする「アダプティブEQ」や、聴覚測定によるイコライザー「Personi-Fi」、JBL独自のヘッドトラッキングに対応した「空間サウンド」などがあげられる。「空間サウンド」機能は、音楽/映画/ゲームという3つの効果を選択可能で、特に映画/音楽の設定による音の広がりが強力だ。音質至上主義のポータブルオーディオ愛好家はLDACコーデックを使いたくなるところではあるが、これらカスタマイズも触れてみてほしい。

カスタマイズ機能が非常に豊富なので、利用シーンに合わせてうまく活用していきたい

カスタマイズ機能が非常に豊富なので、利用シーンに合わせてうまく活用していきたい

「空間サウンド」は動画視聴やゲームプレイにもおすすめ

「空間サウンド」は動画視聴やゲームプレイにもおすすめ

「TOUR PRO 3」はマルチポイント接続にも対応しているので、スマートフォンとパソコンの2台に接続し、パソコンではオンラインミーティングで活用したいという人もいるだろう。「TOUR PRO 3」の通話マイクは左右合わせて合計6つのマイクが搭載されており、AIによるノイズ低減機能も盛り込まれている。Macとペアリングして通話マイクの性能をテストしてみたが、声の質感がしっかりと出て聴き取りやすく、周囲の騒音に対しても強いことを確認。通話相手の声の大きさを最適なレベルに調整してくれる「サウンドレベルオプティマイザー」、通話相手の声のトーンをブライト/パワフル/ナチュラルの3種類から調整できる「サウンドの設定」、通話中の自分の声の大きさを調整できる「ボイスアウェア」などの各種カスタマイズ機能も充実しており、音声コミュニケーション目的でも十分使えそうだ。

通話マイクの音質も良好。オンラインミーティングにも積極的に活用できそうだ

通話マイクの音質も良好。オンラインミーティングにも積極的に活用できそうだ

スマート充電ケースにトランスミッター機能を搭載。ゲーム機やパソコンにも手軽に接続できる

「TOUR PRO 3」にはまだまだ機能が盛りだくさん。なかでも特にユニークなのが、スマート充電ケースに搭載された独自のトランスミッター機能だろう。Bluetooth非対応のデバイスの音声をスマート充電ケース経由でイヤホン本体に飛ばすというもので、おそらくいちばんは電波発信に制限のある飛行機でのエンタメシステムでの活用を想定したのだろう。

スマート充電ケースから接続デバイスにつなげるケーブルの先端は3.5mmだけでなく、USB-C、USB-Aと3種類用意されており、飛行機でのエンタメシステムだけでなく、ほかにもさまざまな使い方ができる。わかりやすい用途だとNintendo Switchなどのゲーム機との接続。ゲーム機とわざわざBluetoothでペアリング設定をしなくても、付属のケーブルを使ってスマート充電ケースとつなぐだけで簡単に利用できてしまうのだ。

しかも、これだけ手軽に接続できるのに、音声遅延も非常に小さい。テレビのヘッドホン出力につなげればテレビの音声もワイヤレスで送信できるので、「TOUR PRO 3」を手元スピーカーのように活用するのもアリだろう。

Nintendo Switchのゲーム音声もスマート充電ケース経由でイヤホン本体にすぐに飛ばせる

Nintendo Switchのゲーム音声もスマート充電ケース経由でイヤホン本体にすぐに飛ばせる

またUSB-Aケーブルを使ってパソコンに接続した場合、パソコンからはUSBオーディオ(ちなみに名前はそのまま「JBL Tour Pro 3」 として認識)として扱える。Bluetooth接続とは別扱いとなり、本機能を有効化するとBluetooth接続していた機器との接続は切れてしまうが、スマート充電ケースをタップすればBluetooth接続への切り戻しも簡単に行える。特にBluetooth機能のないデスクトップPCとの組み合わせなどでは大いに役立ってくれそうだ。

なお、今回はテストできなかったが、「TOUR PRO 3」にはAuracastの機能が盛り込まれており、イヤホン本体だけでなく、Auracastに対応した複数デバイスへの同時送信も行えるという。先進的な機能をここまで盛り込んだ完全ワイヤレスイヤホンというのはほかになく、「TOUR PRO 3」はまさにオンリーワンな1台と言えそうだ。

【まとめ】多機能を極めた、2024年の“全部入り”完全ワイヤレスイヤホン

JBL「TOUR PRO 3」は、多機能かつ使い勝手のよさを追求した完全ワイヤレスイヤホンとして、まさに2024年に求められる機能がすべて詰まった“全部入り”モデルだった。LDACコーデックで高音質音楽リスニングを楽しめ、カスタマイズ機能も盛りだくさん、スマート充電ケースを使えば手元で手軽に各種機能を操作できる利便性も兼ね備えている。Bluetooth非対応の機器とも接続できるトランスミッター機能もよくできており、従来の完全ワイヤレスイヤホンの域を超えた1台として、さまざまなシーンで活躍してくれるだろう。

「TOUR PRO 3」は12月16日時点の価格.com最安価格でも3万円台中盤と完全ワイヤレスイヤホンとしてはなかなか高価な製品ではあるが、全機能を使い倒せれば十分元が取れるだろう。2024年の完全ワイヤレスイヤホンで迷ったらコレ! というおすすめ完全ワイヤレスイヤホンにあげたいモデルだ。

折原一也
Writer
折原一也
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家。「オリチャンネル」主催。IT系出版の編集者出身で、2004年に独立後はモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌で活動。2009年より音元出版主催のVGP審査員。画質・音質にこだわるAV評論家ではあるが、ライフスタイルになじむ製品、コスパにすぐれた製品を評価する庶民派。2022年に立ち上げたYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、取材メディアの人間として一次情報の発信、検証と測定データに基づくレビューなど独自の発信も行っている。最近のマイブームはAI全般。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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