レビュー

約3万円! XiaomiフルHDプロジェクターは本当に高コスパなのか?

Xiaomiのプロジェクター「L1」をレビュー。公式サイトでの販売価格は29,980円(税込)ながら、オートフォーカスや自動台形補正機能を持った充実した1台です

Xiaomiのプロジェクター「L1」をレビュー。公式サイトでの販売価格は29,980円(税込)ながら、オートフォーカスや自動台形補正機能を持った充実した1台です

なんと3万円弱で買えるフルHD(1,920×1,080解像度の)プロジェクター、Xiaomi(シャオミ)の「L1」をレビュー。2023年にレビューした同社「Mi Smart Projector 2」がなかなかの出来だったので、カタログスペック上の輝度が200ルーメン(ISO)とはいえ、どこまでの画質なのか見物です。

Xiaomi スマートプロジェクター L1 Pro XMTYY03PFMGの製品画像
  • Xiaomi
  • Xiaomi スマートプロジェクター L1 Pro XMTYY03PFMG
  • 価格.com最安価格39,980 ( 発売日:2025年2月25日 )
  • 売れ筋ランキング43
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用途
ホーム(家庭用)
タイプ
ポータブル
パネルタイプ
液晶(透過型3LCD)
光源
最大輝度
400ルーメン
パネル画素数
1920x1080
4K
短焦点
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手軽に大画面を実現できる小型のプロジェクターは一体どれほどの明るさで投写できるのでしょう? フルHD解像度の小型プロジェクター4モデルをレビューします。
2023/07/18 11:00

「L1」の主要スペック
●本体色:グレー
●明るさ:200ルーメン(ISO)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式:LCD
●光源:LED
●スピーカー出力:3W×2
●OS:Google TV
●寸法:118(幅)×142(奥行)×176(高さ)mm
●重量:約1.2kg
●電源:電源アダプター付属
●投写距離: 159cm(60インチ)、212cm(80インチ)、265cm(100インチ)※概算表記
●備考:Wi-Fi、Bluetooth(5.0)対応

レンズから映像が“まっすぐ”出ることには注意

大きな単焦点レンズ。説明書記載の投写距離は、100インチの場合2.65m 。短めの距離で大画面を実現できます。レンズ下にあるのがセンサーのようです

大きな単焦点レンズ。説明書記載の投写距離は、100インチの場合2.65m 。短めの距離で大画面を実現できます。レンズ下にあるのがセンサーのようです

マットなグレーの外観は、丸みを帯びた一つ目小僧のような愛らしさ。重量は1.2kgで、片手でひょいと持てるほど軽いです。そのかわり電源は外付けACアダプターに委ねられています。

パネルはDLPではなく、LCDとのこと。映像を投写してみると、DLP機特有の仰角の打ち込みがなく、直投(レンズ中心軸から真正面に映像が投写される)! 低いテーブルなどに置いて視線の高さに映像を投写しようとする場合、本体に仰角を付けることになります。この場合、大きく台形補正がかかって画素がむだになってしまいます。

多くのDLPプロジェクターとは違い、レンズ中心軸からまっすぐ行ったところに映像が表示されました。画質最優先で台形補正を避けるなら、視線と同じ高さまでかさ上げして設置しましょう

多くのDLPプロジェクターとは違い、レンズ中心軸からまっすぐ行ったところに映像が表示されました。画質最優先で台形補正を避けるなら、視線と同じ高さまでかさ上げして設置しましょう

画素のむだをなるべく防ぐなら、分厚い辞典などを積んでかさ上げしなければなりません(三脚設置が便利かも)。このあたりは、冒頭の関連記事で「Mi Smart Projector2」と一緒にレビューしたLCD機Emotn(エモートン)「N1」に似ています。

初期設定では自動で「キーストーン修正」がかかります。画質にあまり神経質にならずイージーに使う場合でも、キュッキュッと瞬時に正確な画角に合わせてくれて便利です。

側面には通気口。ファンの音は30dB以下とのことでさほど耳障りではありませんでした

側面には通気口。ファンの音は30dB以下とのことでさほど耳障りではありませんでした

背面下の端子。HDMI入力(ARC対応)1系統を装備します。左は3.5mmステレオミニのヘッドホン出力

背面下の端子。HDMI入力(ARC対応)1系統を装備します。左は3.5mmステレオミニのヘッドホン出力

Google TVデバイスでおなじみのリモコンはBluetooth接続。十字キーメインのシンプルな配置で、歯車が設定の呼び出しで、上下ボタンが音量調整用。YouTubeへのダイレクトキーがあるのが便利です

Google TVデバイスでおなじみのリモコンはBluetooth接続。十字キーメインのシンプルな配置で、歯車が設定の呼び出しで、上下ボタンが音量調整用。YouTubeへのダイレクトキーがあるのが便利です

付属のACアダプターで給電します。プラグがいわゆる3ピンタイプであることにも注意。使うタップやコンセントの形状によっては変換プラグが必要になります

付属のACアダプターで給電します。プラグがいわゆる3ピンタイプであることにも注意。使うタップやコンセントの形状によっては変換プラグが必要になります

本体底に三脚用の穴がありました。高さ調整には三脚を使うとよいでしょう

本体底に三脚用の穴がありました。高さ調整には三脚を使うとよいでしょう

購入したら最初はBluetoothリモコンをペアリングしてからガイドに沿ってWi-FiやGoogle TVの設定が必要。それが終われば、各種動画配信サービスやYouTubeまで基本的にこれ1台で見られます。この価格でNetflixやAmazonプライム・ビデオなどを含め1台で再生できるのですから驚きです。

できる限り高画質で見るならば「キーストーン修正」はオフ

「L1」をできる限り高画質で見るため、「キーストーン修正」をオフにし、「手動キーストーン修正」で「リセット」をかけ、壁に正対して設置しました。とはいえ、本モデルはカジュアルな使用スタイルが想定されるため、今回はスクリーンを使用せず、マットスクリーンに近い白の漆喰塗り壁に100インチ相当で投写しています。

最後の比較投写映像以外は、全暗で視聴しています。MAGNETAR(マグネター)のUltra HDブルーレイプレーヤー「UDP800」と直結してUltra HDブルーレイを視聴したほか(出力はソースダイレクトで、プロジェクターはHDR10/1080/60Hz受け)、内蔵Google TVのアプリでAmazonプライム・ビデオの映画作品をチェックしています。

自動でピント合わせを行う「オートフォーカス」は侮れない精度。ピントが合いにくいときは「手動フォーカス」を選ぶと、リモコンの左右キーで微調整できます。高級プロジェクターより大雑把な動作ではあるものの、3万円未満で電動フォーカスがアタリマエ とはすごい時代です

自動でピント合わせを行う「オートフォーカス」は侮れない精度。ピントが合いにくいときは「手動フォーカス」を選ぶと、リモコンの左右キーで微調整できます。高級プロジェクターより大雑把な動作ではあるものの、3万円未満で電動フォーカスがアタリマエとはすごい時代です

実用域を素直に再現するのはLCDならでは

独自設計という「L1」は、低価格プロジェクターには珍しくLCD(液晶パネル)を使った製品。多数派であるDLPよりも素直な色の再現性が特徴です

独自設計という「L1」は、低価格プロジェクターには珍しくLCD(液晶パネル)を使った製品。多数派であるDLPよりも素直な色の再現性が特徴です

明るさ公称値200ルーメン(ISO)のLED光源機ながら、以前レビューしたバッテリー内蔵モバイルプロジェクター群ほど薄暗い印象はありません。全暗の部屋にて、80インチほどの大きさでしっとり映画を見るなら“結構使えそうだな”というのが第一印象。価格.comで人気のポータブルプロジェクターAnker「Nebula Capsule 3」も公称値200ルーメンながら数値以上に使えるなと思いました が、それに近い印象です。

もっとも、映像の印象はだいぶ違います。「Nebula Capsule 3」はDLP機で赤など原色系が強くコッテリした印象でしたが、この「L1」はかなり素直。実用域で(BT.709で)素直に描写しているといった印象です。

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2024/03/17 07:00

プロジェクターを見慣れた目からすると、ユニフォーミティー(画面全体の均一性)もピントも、四隅に行くにつれて薄暗くぼやけて感じますが、描線自体は力強く輪郭もしっかりしてクセもなく見やすい。クロマエラー少なめなのが奏功しているのかも。

また、パネルがLCDということですが、エプソン製品のような明るさはないので、暗部になだらかなコントラスト(明暗差)があります。横テロップのジャダー(移動にともなうガタつき)も、ビデオ映像を見るのであれば許容範囲。

「画像モード」(いわゆる画質設定)の初期値は「標準」ですが、ほかにも多くのプリセットがあります

「画像モード」(いわゆる画質設定)の初期値は「標準」ですが、ほかにも多くのプリセットがあります

プリセットの「画像モード」は多彩ですが、まず初期値の「標準」で見てみます。ソツがない絵ですが、全体にあっさりめ。グリーンは黄色に寄っていて、夕日は赤というよりオレンジ。水しぶきや泡のような表現は、破綻なくできています。明るさそのものが控えめなため、明るい景色などでは白側がどうしても頭打ち気味。

得意なのは中心のクローズアップ。インフォーカスとアウトフォーカスの違いもとらえやすい……などと書いていますが、これは10万円ではなく約3万円の製品だった!

ほかの「画像モード」を試しましたが、テレビ的にさまざまなソースを楽しむなら「ビビッド」、映画ならば「映画」という使い分けで十分です。違いは、前者が色温度高め(青っぽい)で明るくちょっとメリハリ調、後者が色温度低め(茶色っぽい)でややトーンを抑えたしっとり調という程度。さほど極端な明るい/暗い、派手/地味といった違いはないので、どちらを選んでも作品に集中できるでしょう。

映画を見るときには暖色系の「映画」、テレビ番組などのビデオ系素材を見るときには彩度を上げて青みを持たせた「ビビッド」と使い分けるのがよさそう

映画を見るときには暖色系の「映画」、テレビ番組などのビデオ系素材を見るときには彩度を上げて青みを持たせた「ビビッド」と使い分けるのがよさそう

映画作品でも「ビビッド」がハマることもある

まずは「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(4K/Dolby Vison収録作品をフルHD/HDR10で再生)。夜間ワシントンD.C.に突入する終盤のシーン。画質モードは「標準」「ビビッド」「映画」で切り替えて見ます。

結論から言うと、画像モード「ビビッド」が、ブルーやグリーンなどそれぞれの色が立ち、控えめな本機の明るさを補ってくれて良好でした。

ちなみに「映画」にすると、色味が黄に寄り、相対的に青が弱まるからか、緊迫感が薄れてぼやけた印象に。そこで「明るさ」を少し上げて全体の見通しを改善しようとすると、今度は白茶けてしまいます。かといって「シャープネス」を上げてもさほど事態は変わりません。「標準」も同様です。

ビデオ系作品は予想どおり「ビビッド」が良好

次に「四季 高野山」(4K/HDR10+収録作品をフルHD/HDR10で再生)で、明るいナチュラルな映像を見てみます。

明るい夏の映像では、画像モードを「ビビッド」にすると青空が抜けて気持ちよく見られます。また、どの場面もさほど赤が過剰にならず、白い着物も過剰に青みがかる印象はありません。黄金の大仏や使い込まれた木の飴色の室内も絶妙なバランスを保っています。

青空に虹が架かるシーンがわかりやすいので、写真を載せておきます(※ペンタックス「K-3 Mark III 」カスタムイメージ「フラット」、焦点距離18mm、F4.5、1/20、ISO800で撮影。以下同様)。

秋のシーンも見ましたが、赤や黄の葉模様も十分雰囲気が出ていて良好。「映画」モードにしてしまうと、グリーンの苔までもが朽ちて見えてしまいました。

異論はあるでしょうが、本機は明るさが控えめな分、「ビビッド」モードぐらい青が立っていたほうが見やすいと考えます。

モノクロ映像もいい味で再現

ここからは内蔵アプリでAmazonプライム・ビデオを見ます。これならばWi-Fiさえあれば、別途プレーヤーなどつながなくとも「L1」ひとつで映画などを再生できます。

「PERFECT DAYS」を再生してみましょう。画像モード「ビビッド」では、役所広司演じる平山が住むアパートのエントランスの明かりがオレンジに、部屋の中はブルーにすぎるように思えますが、むしろネオンのようなレトロ感を醸し出しており、いまだに昭和な生活をしている平山の日常をいい味で表現しています。また、平山が夢の中で見る回想シーンのモノクロ映像もムラのような色付きがありませんでした。

音質は一般的なテレビより素直。適度な音量で「シネマ」モードが吉

本機は、3W×2のステレオスピーカーを内蔵しています。不自然な広がりもなく、薄型テレビより筐体に余裕があるからか、無理のないふくよかなサウンドで聴きやすく感じます。

初期値では「ドルビーオーディオ処理」がオフだったので、オンにしましょう。すると複数のプリセット「サウンドモード」(音質モード)が選べます。

初期値では「ドルビーオーディオ処理」がオフだったので、オンにしましょう。すると複数のプリセット「サウンドモード」(音質モード)が選べます。

「サウンドモード」は多数ありますが、「シネマ」がオールラウンドに使えます

「サウンドモード」は多数ありますが、「シネマ」がオールラウンドに使えます

「サウンドモード」の初期値は「ソフト」。文字通り聴きやすい印象でした。音質には多くのモードがありますが、なかでも「シネマ」のキレが鋭くておすすめ。セリフはもちろん、スポーツアナウンサーの実況、音楽番組のボーカルもよく通り、大画面にはふさわしい印象です。

セリフなどを聴き取りやすくする「ダイアログ エンハンサー」機能も持っています

セリフなどを聴き取りやすくする「ダイアログ エンハンサー」機能も持っています

なお、「ダイアログ エンハンサー」は高域を持ち上げることでセリフを聴きやすくしているようで、音量を上げて聴くと“キンシャリ”してしまいかえって聴きづらいかもしれません。

【まとめ】3万円弱で大画面の楽しさ十分! 高コスパと言える1台だった

「L1」の明るさは200ルーメン(ISO)とて、全暗なら十分に映画が楽しめました。プロジェクターならではの大画面が目の前に立ちはだかる快感! “推し”が大映しになろうもんなら……。

なんたって3万円弱ですよ!? OSがGoogle TVなので、コレ1台でコンテンツの再生から映像表示まで完結するのもうれしい。プロジェクター最初の1台としてうっかり買っちゃえば感動すること請け合いです。

最後に、全暗、外光あり(映像には光が当たらない)、明かりの付いたリビングルーム、それぞれのシチュエーションを想定した写真を掲載します。繰り返しになりますが、映像の明るさは控えめですから、全暗環境で使うことを想定したほうがよいでしょう。

プロジェクターを見慣れた目で見ると、周辺輝度と精細感の低下が気になりますが、3万円弱でそこまでのレンズ性能を求めるのは酷というもの。画質に不満がある場合は、台形補正をせず、投写面に対して本体を正対させることも意識してみてください。三脚を使うなどして視線の高さに設置できれば、大画面ならではの楽しみを十分に味わえるでしょう。

●全暗

●外光あり

●明かりの付いたリビングルーム

遠藤義人
Writer
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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ホーム(家庭用)
タイプ
ポータブル
パネルタイプ
液晶(透過型3LCD)
光源
最大輝度
400ルーメン
パネル画素数
1920x1080
4K
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