2025年3月13日にXiaomi(シャオミ)が行った製品発表会では、フラッグシップスマートフォン「Xiaomi 15 Ultra」や11.2インチのタブレット「Xiaomi Pad 7」などの日本導入が発表されたのだが、AV家電担当の筆者が密かに注目したのがちょっと高級な完全ワイヤレスイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro」。
このモデルにはBluetooth版とWi-Fi版があり、Wi-Fi版にはWi-Fiを利用した音声伝送ができるという機能がある。この音質が存外によかったのでテンションが上がってしまった。「ついにワイヤレスイヤホンに次のブレイクスルーが!」と感動したこの機能を紹介したい。
ただし、この機能が使えるのは現状では「Xiaomi 15 Ultra」との組み合わせのみ。対応機種は順次拡大していくとのことなので、この点にも期待したい。
「Xiaomi Buds 5 Pro」のWi-Fi版。Bluetoothではなく、Wi-Fiを使って音楽データを伝送できる
「Xiaomi Buds 5 Pro」の詳細は上記のニュース記事を参照いただきたいが、「Xiaomi Buds 5 Pro」(Wi-Fi版)と(Bluetooth版)の基本スペックは以下のとおり。アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能があることはもはや当然として、3つのドライバーを2つのアンプで駆動する、というオーディオ的にもコストのかかった高級機だと言える。
スペックシートには表記されていないが、ドライバーは自社開発品による3ウェイ方式。3つのドライバーが同心円状に配置される同軸型で、これらを2つのアンプで駆動する凝った作り
「Xiaomi Buds 5 Pro」は、Bluetooth版とWi-Fi版がラインアップされ、価格と本体色が異なる。Wi-Fi版はブラックのみの展開だ
ケースのボタンを3回クリックすると録音できるという変わった機能もある。さらに、「Xiaomi 15 Ultra」との組み合わせ時はAI翻訳と音声文字起こしに対応(2025年夏ごろから利用可能になるとのこと)。対応スマートフォンは増えていく予定だという
そして、本記事のメインテーマであるWi-Fi接続だ。以前関連記事で紹介したように、この機能は、「Qualcomm XPAN(エクスパン)」によるもの。
関連記事を引用すると、「Qualcomm XPAN」とは、「最新世代のSoC(システムICチップ)を搭載するスマホとワイヤレスイヤホン・ヘッドホンを組み合わせて使えるワイヤレスオーディオの技術」のこと。「Wi-Fiプロトコルによりデバイス同士が無線通信できる環境をつくり、そこにBluetoothのオーディオコーデックで圧縮した信号を伝送する」ことが特徴で、「最大96kHz/24bitから、将来は最大192kHz/24bitまでのハイレゾを非圧縮のロスレスで、極限まで遅延を抑えて伝送」することがメリットだ。
「Qualcomm XPAN」を提供するQualcommによれば、同技術が製品としてイヤホンに搭載されるのは初のことだという
「Xiaomi Buds 5 Pro」は最大4.2Mbpsの広帯域を使い、96kHz/24bitのハイレゾリューション音源を伝送できるとしている
新製品発表会会場に展示されていた「Xiaomi Buds 5 Pro(Wi-Fi版)」。「Xiaomi 15 Ultra」と接続して、音楽を再生してみた
さて、ここからはさっそく「Xiaomi Buds 5 Pro(Wi-Fi版)」で音楽を再生してみた、そのインプレッションを記していく。
試聴とは言っても、用意された「Xiaomi 15 Ultra」のローカルに保存された限られた楽曲を再生しただけ。それでもWi-Fi接続で聴いた音楽は明らかに音質的優位性を感じられたことをお伝えしておきたい。
そもそもの「Xiaomi Buds 5 Pro」自体の音質はどこかの帯域が不自然に強調されるようなことのない、フラット志向と言えるタイトな鳴り方。再生したSara.Kの「Stop Those Bells」という楽曲はアコースティックギターのライブ演奏なのだが、生演奏らしい響きの余韻をしっかりと再現する解像感が確保されている。
これだけでも2万円台のイヤホンとして上出来と思ったのだが、やはり感心したのはWi-FiとBluetooth接続を比較したときだ。
なお、アクティブノイズキャンセルの効果は強め。全帯域にわたってとにかく外音を抑えようとするタイプで、筆者は聴覚に違和感を覚えるため苦手な部類だ。とにかく静寂性を求める人は満足できるレベルだとは思う。
再生したのは、Sara.Kの「Stop Those Bells」。ハイレゾファイルのダウンロード購入サイトHDTracksのサンプラーに収録された96kHz/24bitの音源だ
始めにBluetooth(AptX Adaptive)接続で音楽を再生し、次に「Wi-Fiモード」をオンにしてWi-Fi接続を試してみる。その違いは「シビアに聴けばわかる」というレベルではなく、まずは得られる音量がまったく違うことに驚かされた。
Bluetoothでの接続時には音量を8〜9割に上げてやっとリスニング向けに満足できる音量になったのだが、Wi-Fi接続では6割前後で体感上は同程度。これは音に厚みが増して、聴き応えが得られたこととも関連しているとも思う。ただ通信方法が変わっただけとは思えないほどの変化だ。
「Qualcomm XPAN」は「Wi-Fiプロトコルによりデバイス同士が無線通信できる環境をつくり、そこにBluetoothのオーディオコーデックで圧縮した信号を伝送する」という機能のはずなので、ここまでの差が出ることは想像していなかった。
実際に圧縮方法、再生に関わる音声ファイルの処理フローが同じかどうかなど詳細は確認できていないのだが、帯域幅が広がった以上の何かがありそうだと想像している。このあたりは今後の記事で追いかけていきたい。
まずは一般的なワイヤレスイヤホンと同じように、Bluetooth設定でスマートフォンとイヤホンと接続
そのうえでイヤホンの設定から「Wi-Fiモード」をオンに。オフにもできるので、Bluetooth接続(AptX Adaptive)と簡単に聴き比べできる
というわけで、「Qualcomm XPAN」でのWi-Fi接続による音楽再生は、ワイヤレスでのオーディオ再生品質に大いに寄与しそうだということを実感できた体験だった。会場では確認できなかったメリットとしてはさらなる低遅延もあげられているので、音質以外のオーディオ体験にも期待できるはずだ。
冒頭のとおり、問題は対応機器が限られていること。すぐに体験できるWi-Fi接続は「Xiaomi 15 Ultra」と「Xiaomi Buds 5 Pro」の組み合わせのみ。今後は同機能に対応したイヤホン・ヘッドホン、スマートフォンともに増えていくはず。2025年は「Qualcomm XPAN」の動向に注意しておくとよいだろう。すぐに試してみたい、という人はこれからオープン予定のシャオミ常設店で聴いてみていただきたい。3月22日にはイオンモール浦和美園店が、4月5日にはイオンモール川口店がオープンする。