TCLのテレビは、日本での知名度を徐々に上げている注目株と言えます。元々、グローバル市場で見れば、世界トップクラスの台数シェアを誇っていますが、日本市場でも本格的に展開を始め、大量生産のスケールメリットを生かした価格戦略で日本でのシェアも高めています。
ここでは、TCLが力を入れるmini LEDバックライト搭載液晶テレビを中心に、TCL製テレビの選び方とおすすめモデルを紹介します。実際に見て、聴いて「これは買い!」という製品を選出したので、ぜひ購入の参考にしてみてください。
〈レビュー・監修〉ホームシアターコンシェルジュ 遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
まずはTCLに限らない基本的なテレビの選び方を確認してみましょう。これから選ぶならば、4Kテレビを検討すべきです。
部屋のサイズや用途合ったサイズを選ぶのが基本ですが、サイズによって選べる製品が異なることに注意しましょう。
※データは2025年6月時点のもの
4Kテレビとは、水平(横)方向の解像度が4,000画素(実際には3,840)のテレビのこと。従来の一般製品で採用されていたフルHD(1,920×1,080)よりも約4倍細かく、高精細な映像を映し出せます。地デジ放送の解像度はHD(1,440×1,080)なので、4Kは必要ないと思われるかもしれません。それでもこれからテレビを購入するならば、4Kテレビがおすすめです。
その大きな理由は、42V型以上の最新テレビは、基本的にすべて4K解像度だから。あえて旧モデルなどの低解像度のテレビを選ぶ必要はありませんし、低解像度の大型テレビが安いということもありません。また、4K放送を見ないのであれば、専用アンテナの設置は不要です。
今やAmazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどでは4K解像度のコンテンツは珍しくありません。それらを100%楽しめるのが4Kテレビなのです。さらに、地デジ放送などHD以下の解像度コンテンツであっても、4Kテレビは映像の解像度を4Kに変換(アップコンバート/アップスケーリング)して高精細化します。
すぐれた映像処理能力を持っていることも4Kテレビのよいところ。4Kテレビに買い替えれば、何気なく見ていたいつものコンテンツをより楽しめるかもしれません。
※データは2025年6月時点のもの
高画質・高音質のテレビを求めるならば、メーカーの主力と言える55V型以上のモデルがおすすめ。
テレビは年々大型化していて、現在メーカーの主力サイズは55V型と65V型。高画質モデルはそもそも55V型もしくは65V型以上のモデルしか展開されていないこともよくあります。50V型以下のサイズを検討すると選択肢が減ってしまうため、コストパフォーマンスと高画質を考えるなら、いちばん有力になるのが55V型以上のサイズです。
TCLのラインアップで言えば、後述するmini LEDバックライトを搭載したモデルは55V型から。「プレミアム 量子ドット Mini LED TV」と位置づけられる高級テレビ「C8K」シリーズは65V型以上の展開です。こうした上位シリーズはスピーカーの品質も高く、音質的にも有利です。
55V型が大きすぎると考える人にちょうどよいのが43V型の4Kテレビ。4Kテレビとしては最小サイズであり、選択肢が多く、価格もリーズナブルです。
40V型よりも小さなサイズのテレビは、解像度がフルHD(1,920×1,080)以下になることには注意が必要です。それでも小さなテレビが欲しいという人には32V型フルHD解像度のテレビがおすすめ。小型テレビのなかでは高画質を期待できるため、一人暮らし向けやサブテレビとして人気があります。
また、テレビのサイズが小さくても、録画やネット動画の再生機能など、できることには大きな差がないことがほとんど。価格を抑えたいという場合にも、4Kならば43V型、フルHDならば32V型がそれぞれ狙い目のサイズと言えます。
高画質テレビの最新技術として注目されているのがmini LEDバックライトを搭載した液晶テレビです。
有機ELテレビには「焼き付き」と呼ばれる現象(※)や寿命の面で心配する声もあります。そこで、価格的に有利な液晶テレビのなかで高画質を実現するための技術が注目されているのです。実際に、mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビは、有機ELテレビよりも安い(一般の液晶テレビよりは高い)ことがほとんど。画質とコストのバランスが取れた選択肢だと言えます。
※同じ画像を長時間表示し続けた場合、その部分に残像が生じたり、劣化が進行したりする症状のこと。最新製品での実使用上はそれほど気にする必要はありません。
液晶テレビは画面の裏に設置されたバックライト(光源)で映像の明暗を再現します。このバックライトを細かく区切り、エリアごとに別々に動かす(ローカルディミングする)ことで、コントラストの高い(明暗差がはっきりした)映像を表示できるのです。
TCLは有機ELテレビを販売していないため、映画をじっくりと高画質テレビで楽しみたい、という人はmini LEDバックライトを搭載したテレビ「C6K」「C7K」「C8K」シリーズを選ぶとよいでしょう。
最新のテレビは、基本的にほとんどがネット動画の視聴に対応しています。つまりDVDプレーヤーやFire TV Stick、Chromecastなどのストリーミング端末がなくても、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどの動画を楽しめるということ。
上記3つはほぼすべての製品が対応していると思って間違いありませんが、TVerやDAZNなどに対応しているかどうかは製品次第。リモコンにショートカットボタンを搭載していることもあるので、自分が利用するサービスに対応しているかどうか、リモコンにボタンがあるかどうか、確認するとよいでしょう。
また、テレビ番組の録画ができるかどうか、気になる人がいるかもしれません。最新テレビであれば外付け(別売)HDDをつなぐだけで録画が可能な製品がほとんどなので、この点も安心してよいでしょう。TCLの製品を見ると、2番組録画と同時に1番組視聴を行える3チューナーモデルはありませんが、やはり録画対応はしています。
製品 価格.com最安価格 | 画像 | ショップリンク | 画面サイズ | 解像度 | 種類 | 地デジチューナー数 |
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| ![]() | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 75V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 85V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 98V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 75V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 85V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 98V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場 | 75V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 85V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 32V型(インチ) | フルHD | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 40V型(インチ) | フルHD | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 75V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 85V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 98V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 43V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 50V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 43V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 75V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
ここからは、ホームシアターコンシェルジュ遠藤義人さんが実際に見て聴いて、“これは買い!”とおすすめする製品を紹介します。
確認したのは55V型の「55C7K」。クッキリした明暗を背景に、鮮やかな赤と青が映える映像が印象的でした。視野角を拡げるために「WHVA」という液晶パネルを採用した「C8K」シリーズより、高コントラストパネルの本来のよさを発揮しているようです。
もし予算の制約がなく、TCLの製品から好ましいモデルはどれ? と聞かれたらこれを選びたいと思いました。Ultra HDブルーレイで映画を見ると、暗闇の深みや、輝く閃光の色の違いがよく伝わります。速い動きによって輪郭が乱れたり動きボケが生じたりすることもなく、人物の表情も克明でした。
「C8K」シリーズはより視野角が広いのですが、「C7K」シリーズでも45度以上斜め横から見てもあからさまに黒ずんだり青く反転したりといった映像劣化は大きくありません。この点は気にするほど大きな問題ではないでしょう。
音質については、もう少し中音域が充実してほしいと感じました。ここは今回視聴した本体サイズの違いも大きく影響しているものと思います。もっとも、音量を上げてもビビりや歪みが出ないのは立派でした。
なお、Amazon専売モデルの「Q7C」シリーズは、搭載するパネル自体が異なるとのこと。つまりスペックは似ていても画質はそれなりに異なることが予想されます。画質を最優先にするなら「C7K」が間違いなくナンバーワンコスパと言えるでしょう。
確認したのは75V型の「75C8K」。競合他社を意識した派手な絵作りなのではと思っていましたが、それはまったくの杞憂でした。色合いも動きも至極穏当で、TCLプレミアムラインならではの誇りを感じさせる仕上がり。
部屋を暗くして見たUltra HDブルーレイの映画作品では、夜の暗闇と明るい光のコントラストを明晰に表現し、パネル性能の高さをうかがわせます。速い動きに対しても、いかにも液晶っぽい動きボケは皆無。
部屋を明るくして見たUltra HDブルーレイのビデオ映像でも、ゆっくりとズームインしたときの細かい葉や残雪の点の滲み、縦スクロールするときの格子模様、異なる建築の赤色や自然界の緑の微妙な違い、青空のヌケなどを正確に再現していました。
さらに印象的なのは音質です。高さの異なる男性の声をきちんと区別して再現してみせ、聴き取りやすい。このすぐれた音質も下位モデルにはない魅力です。
視野角が広いところもよいのですが、映像のキレや鮮やかさは「C7K」のほうが有利な印象。ここでは音質のよさと視野角の広さを合わせて考え、使いやすい“全部入り”テレビとしておすすめします。
確認したのは55V型の「55P8K」。「P8K」シリーズはあくまでスタンダードな液晶テレビで、mini LEDバックライトを搭載しませんし、LEDバックライトをエリアに分けて個別に制御する「ローカルディミング」にも対応していません。そのため、暗い映像を再生すると本来は黒の部分がグレーっぽく“浮いて”しまいます。
しかし、最も難しい人の肌色が自然で、動きが速い映像で見られる液晶特有の白い尾引きが少ない。極端に明暗差がある場面ばかりを厳しい目で見ない限り、明るい部屋で見るテレビとしては十分な画質でしょう。
下位モデルである「P7K」や「P6K」シリーズでは、この再現性でかなりの落差を感じました。速い動きに対応できる「倍速パネル」と、高精細な映像を生成するプロセッサー「AiPQ Pro」の採用が結果を分けたのかもしれません。下位モデルとそれなりに価格差があるのは納得できるし、それでも「P8K」シリーズはリーズナブルに感じます。
もっとも、暗いシーンが多い映画の鑑賞に力点がある方は、光漏れを抑えられるmini LEDバックライトを採用した「C6K」や「C7K」シリーズを選択肢にするとよいでしょう。Amazon専売ではありますが「Q7C」「Q6C」シリーズではさらに価格差が小さくなります。それでも、普段使いのテレビとして熟れた絵作りを求めるなら「P8K」がおすすめです。
貴重な存在である32V型のフルHDモデル「32S5K」をチェック。不思議と落ち着いた色合いで、動きもどっしりとしてバタつかないところが好ましく感じました。Ultra HDブルーレイで風景のビデオ画像を見ると、上位の4Kモデルほどには赤や青空が眩しく映えないものの、それが逆に映像作品として落ち着きをもたらしています。
映像処理エンジン「AiPQ Lite」と映像に彩りを加える「量子ドット」シートが功を奏しているのでしょう。液晶パネルは速い動きを意識した「倍速駆動」ではないので、厳しい目で見れば液晶テレビらしい白い尾引(残像感)はわずかに残るし、斜めの輪郭や震える線が太めではあります。しかし、全体をうまくまとめているため、細かいところを気にせず安心して作品に集中できました。
おすすめ4選のほかにも、TCLのテレビには多くのラインアップが用意されています。ここからは、シリーズ間での選び分け方をどう考えるべきか? どういう人がどの選ぶべきか? TCLの主要シリーズを解説します。
TCLの2025年テレビには、98V型のmini LEDモデル「98X11K」から32V型のフルHD(2K)モデル「32S5K」まで揃えられています。共通しているのは、関連子会社が開発した液晶パネル製造に磨きをかけ、採用していること。
上位モデルから「量子ドット」「HVAパネル」「AiPQ Pro」「Bang&Olufsenサウンド」といった技術をグレードに応じて段階的に投入して、ピラミッド状のラインアップを形成しています。
実際に各製品を見ると、クリアーに見せかけるために映像補間を強くかけたり、派手な絵作りをしたりする姿勢が見られません。液晶テレビ特有の問題であるハロ(光漏れ)を抑えるための努力がうかがえるうえ、上位モデルになるほどきめ細かいバックライトの分割制御(ローカルディミング)と相まって、不自然にならない工夫が施されているのが確認できました。
いずれのシリーズも、それぞれの価格帯でなし得る最良の製品づくりをした結果であり、ベースが同等なのに余計な便利機能を付けて価格差を作っているのとは真逆の製品企画と言えます。
なお、各シリーズで異なる技術チームが開発を担当する場合もあり、互いに切磋琢磨しているとのこと。そのためかシリーズごとに“ツボ”(得意)もあり、個性が明確。55V型前後のモデルを下位シリーズから順次見ていくと、技術が磨かれていくさまを目の当たりにする思いでした。
確認したのは55V型の「55C6K」。レギュラーモデルとしてはブランド最安のmini LEDバックライト搭載モデルです。上位の「C7K」シリーズと比較すると、明るさの最大値やバックライトの分割制御が控えめ。実際に見た印象もそのとおりで、明暗のクッキリ感、色の鮮やかさともに控えめとなり、全体の印象ではむしろ下位の「P8K」シリーズに近いと感じました。
スペック上はおすすめ製品としてあげた「P8K」シリーズよりも格上ですが、特に明るい映像の再生時は「P8K」シリーズを圧倒するほどすぐれているわけではありません。先に触れたとおり、普段使いのテレビとして熟れた絵作りを求めるなら「P8K」シリーズをおすすめします。明暗差が大きい映画の表現力を重視するなら、光漏れを抑えた「C6K」シリーズを選ぶのもアリでしょう。
Amazon専売モデル「Q6C」シリーズも、「C6K」シリーズとはパネル自体が異なるもののmini LEDバックライトを搭載していることに違いはありません。価格の動きをにらみながら、合わせて天秤に掛けたいところです。
なお、音質は上位モデルの声を重視した滑らかで華やかなトーンとは異なり、迫力重視で映画向きと言えるかもしれません。このオンキヨーによる2.1chシステムのほうが耳なじみもあって好ましいと感じる人も多そう。
確認したのは50V型の「50P7K」。上位モデル「P8K」シリーズとは異なり「倍速駆動」でないため、いかにも液晶っぽい動きボケが気になりました。また、「P8K」シリーズでは暗い映像でない限りそこまで気にならなかったバックライト全体の黒浮き(暗い場面で全体がグレーっぽくなってしまい、黒が沈みきらない現象)もより目立ちます。音質にしても、単独で映画を見るには迫力が物足りない印象でした。
確認したのは55V型の「55P6K」。上位モデル「P7K」シリーズとの最大の違いは、色を鮮やかにする「量子ドット」シートを省いていること。もっとも、明るい部屋でテレビの放送波のようなものを見る限り「P7K」シリーズとの差は少なく感じられました。視野角は懸念するほど狭くはありません。
55V型の「55P6K」と50V型の「50P7K」がほぼ同価格なので、さほど画質を落とさずに同じ予算で55V型を購入できることはメリットでしょう。
音質は「P7K」シリーズと似ていて、単独で映画を再生するには軽く、物足りなく感じました。
2025年7月24日時点の価格.com「TCLの液晶テレビ・有機ELテレビ 人気売れ筋ランキング」
価格.comでのTCL製テレビの売れ筋は、最も低価格なmini LEDバックライト搭載テレビとして紹介した「55C6K」。やはりユーザーの関心は高コスパなmini LEDテレビに集まっているようです。発売して間もない製品ですが、2025年7月19日大幅に最安価格を下げました。この価格は、下位モデル「P8K」の55V型よりも安いため、一時的な値下げの可能性はあります。
画質だけで言えば上位モデル「C7K」シリーズにはかないませんが、mini LEDバックライトを搭載した55V型のテレビがなんと85,932円で買えるのですから、驚くべきコストパフォーマンスの高さと言えるでしょう。