最新テレビには液晶テレビと有機ELテレビの2つがありますが、主流はコストパフォーマンスにすぐれた液晶テレビ。とにかく価格を抑えたモデルから高画質・高音質を目指した高級モデルまで、幅広い製品が用意されています。
その性能は年々向上しているうえ、選択肢が豊富でどれを選べばよいのか迷う人も少なくないはず。そこで、ここでは液晶テレビの基本的な特徴や選び方、そしておすすめ製品を紹介します。価格.comの人気製品を実際に見て、聴いて「これは買い!」という製品を選出したので、ぜひ購入の参考にしてみてください。
〈レビュー・監修〉ホームシアターコンシェルジュ 遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
【価格.comマガジンがおすすめする理由】
1.明るく鮮やかな映像をあくまで上品に見せてくれる
2.mini LEDテレビのなかでも随一と言える画質のよさ
3.人の声や中継の臨場感を正確に伝える音質のよさ
【ただし、こんな人には向きません】
1.画質よりはコストパフォーマンスを重視したい人
2.あまり大きなテレビを置けない人
現行の液晶テレビで最もおすすめしたいのはソニー「BRAVIA 9(XR90)」シリーズです。絶対的な画面の明るさを生かして、液晶テレビとは思えないほど濃厚な色合いを上品に見せてくれます。映像作品の意図を浮かび上がらせる技術は唯一無二。高価ですが、高画質液晶テレビのお手本と言えます。
「BRAVIA 9(XR90)」シリーズは、ソニーのフラッグシップ(最上位)モデルとして位置づけられている液晶テレビ。2024年に発売された製品ながら、変わらずその座に留まり続けています。
「BRAVIA 9」シリーズの魅力はその画質。数あるmini LEDバックライト搭載テレビの中で、いちばんの品質と言ってよいでしょう。ソニーのテレビの中でも特にすぐれた明るさが、白の伸びだけでなく、各色の鮮やかな発色に貢献しています。映像補間・生成は控えめで自然。特に高画質コンテンツで伸びやかな表現が目を惹きます。
視野角が広く、極端に斜めから見ても色味が大きく変わらないことも魅力です。広いリビングルームなどで使う場合にも、どこから見ても高画質を楽しめます。
サウンドも完成度が高く、男性アナウンサーの声の太さや、スタジアムの歓声の臨場感をていねいに表現します。
「BRAVIA 9」シリーズは、暗くした部屋で映画を見ても、明るいリビングルームでバラエティやスポーツを見ても、その実力を遺憾なく発揮してくれます。どんな環境にも、どんなコンテンツにも対応できるすぐれた液晶テレビが欲しい人におすすめしたい1台です。
現在のテレビは、有機ELと液晶の大きく2つに分けられます。2つを分けるのは発光方式の違い。有機ELテレビでは画素の1つひとつ(4Kテレビならば約800万画素)すべてが個別に自発光するため、映像の明るさや色を細かくコントロールできます。
有機EL最大のメリットは、グレーではない黒らしい黒を再現できること。正確な光の表現ができるため、映像に臨場感が出るのです。また、視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)ことも大きな特徴です。ひと昔前の有機ELテレビは液晶テレビよりも暗いと言われていましたが、最新モデルでは明るさに不足はありません。
いっぽうで液晶テレビにも得意があります。それは明るい映像を表示しやすいこと。高価なテレビではなくとも、画面全体を明るくすることは液晶テレビが得意とするところです。
また、有機ELとの比較で言えば、消費電力や価格では有利なことが多く、総じてコストパフォーマンスが高い製品が欲しいならば、液晶テレビを選ぶとよいと言えるでしょう。
視野角(斜めから見たときの色の変わりにくさ)は不利ではありますが、製品によってはしっかりと対策がされています。正面以外からテレビを見ることが多いと想定されるならば、視野角の対策がされた(斜めから見ても色が変わりにくい)液晶テレビを選ぶことも心掛けましょう。
画質だけで言えば有機ELテレビが有利ですが、それは主に「部屋を暗くして」「映画を見る」ときに発揮されるもの。そういったケースがないのであれば、コストパフォーマンスにすぐれた液晶テレビを選択肢にするとよいでしょう。
まずは基本的な液晶テレビの選び方を確認してみましょう。これから選ぶならば、まずは4Kテレビを検討すべきです。そのうえで高画質を求めるならば55V型以上がおすすめ。小さいテレビが欲しい場合の有力候補は43V型、さらに小さいテレビならば4Kよりも解像度は下がりますが32V型がおすすめです。
部屋の広さや用途に合ったサイズを選ぶのが基本ですが、サイズによって選べる製品が異なることに注意しましょう。
※データは2025年6月時点のもの
4Kテレビとは、水平(横)方向の解像度が4,000画素(実際には3,840)のテレビのこと。従来の一般製品で採用されていたフルHD(1,920×1,080)よりも約4倍細かく、高精細な映像を映し出せます。地デジ放送の解像度はHD(1,440×1,080)なので、4Kは必要ないと思われるかもしれません。それでもこれからテレビを購入するならば、4Kテレビがおすすめです。
その大きな理由は、42V型以上の最新テレビは、基本的にすべて4K解像度だから。あえて旧モデルなどの低解像度のテレビを選ぶ必要はありませんし、低解像度の大型テレビが安いということもありません。また、4K放送を見ないのであれば、専用アンテナの設置は不要です。
今やAmazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどでは4K解像度のコンテンツは珍しくありません。それらを100%楽しめるのが4Kテレビなのです。さらに、地デジ放送などHD以下の解像度コンテンツであっても、4Kテレビは映像の解像度を4Kに変換(アップコンバート/アップスケーリング)して高精細化します。
すぐれた映像処理能力を持っていることも4Kテレビのよいところ。4Kテレビに買い替えれば、何気なく見ていたいつものコンテンツをより楽しめるかもしれません。
今や42V型(インチ)以上のテレビは基本的に4K。どうしても小型がよいとき以外は、4Kテレビを前提として考えましょう。
テレビを選ぶときに真っ先に考えるのは、サイズのことではないでしょうか。
最新のテレビは画面周辺の額(ベゼル)が細くなっており、とても省スペース。もし10年ほど前のテレビからの買い替えならば、思っていたよりも大きなサイズが候補になるはずです。
具体的には、
・6畳ほどの部屋であれば43V型まで
・8〜10畳ほどの部屋であれば43〜60V型
・12畳以上の広い部屋出あれば60V型以上
がひとつの目安になるでしょう。
なお、サイズ選びには「適正視距離」から逆算するという考え方もあります。「適正視距離」とは、画面に近づいた場合にテレビのメッシュ状の画素が見えない(最短)距離のこと。たとえば、4Kテレビを視聴する位置が画面から1m程度の場合、55V型以上が「適正」となります。最も大きな没入感を得られる距離、ならびにサイズ選びの仕方とは言えるのですが、普段使いの距離としてはあまりに近くなります。推奨サイズも過度に大きくなりがちなため、実生活や部屋に合ったサイズから考えたが現実的でしょう。
「適正視距離」という考え方もありますが、この方法では想定視距離があまりに近く、推奨のテレビサイズは大きくなりがち。実生活や部屋にあった無理のないサイズを考えるほうが現実的でしょう。
※データは2025年6月時点のもの
部屋の広さ以外にも、テレビのサイズ選びで重要なことがあります。高画質・高音質のテレビを求めるならば、メーカーの主力と言える55V型以上のモデルがおすすめです。
テレビは年々大型化していて、現在メーカーの主力サイズは55V型と65V型。高画質モデルはそもそも55V型もしくは65V型以上のモデルしか展開されていないこともよくあります。50V型以下のサイズを検討すると選択肢が減ってしまうため、コストパフォーマンスと高画質を考えるなら、いちばん有力になるのが55V型以上のサイズです。
メーカーが力を入れているのは55V型と65V型。最高画質・音質のテレビを求めるならば55V型以上のサイズを選ぶ必要があります。
55V型が大きすぎると考える人にちょうどよいのが43V型の4Kテレビ。4K液晶テレビとしては最小サイズであり、選択肢が多く、価格もリーズナブルです。
40V型よりも小さなサイズのテレビは、解像度がフルHD(1,920×1,080)以下になることには注意が必要です。それでも小さなテレビが欲しいという人には32V型フルHD解像度のテレビがおすすめ。小型テレビのなかでは高画質を期待できるため、一人暮らし向けやサブテレビとして人気があります。
また、テレビのサイズが小さくても、録画やネット動画の再生機能など、できることには大きな差がないことがほとんど。価格を抑えたいという場合にも、4Kならば43V型、フルHDならば32V型がそれぞれ狙い目のサイズと言えます。

たとえば40V型テレビの場合、最高解像度は2K(フルHD)。少し大きめの43V型4Kテレビを選んだほうが、解像度が高く画質的に有利と言えます。
高画質テレビの最新技術として注目されているのがmini LEDバックライトを搭載した液晶テレビです。
有機ELテレビには「焼き付き」と呼ばれる現象(※)や寿命の面で心配する声もあります。そこで、価格的に有利な液晶テレビのなかで高画質を実現するための技術が注目されているのです。実際に、mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビは、有機ELテレビよりも安い(一般の液晶テレビよりは高い)ことがほとんど。画質とコストのバランスがよい選択肢だと言えます。
※同じ画像を長時間表示し続けた場合、その部分に残像が生じたり、劣化が進行したりする症状のこと。最新製品での実使用上はそれほど気にする必要はありません。
液晶テレビは画面の裏に設置されたバックライト(光源)で映像の明暗を再現します。このバックライトを細かく区切り、エリアごとに別々に動かす(ローカルディミングする)ことで、コントラストの高い(明暗差がはっきりした)映像を表示できるのです。
mini LEDバックライトの分割エリア数は数百から数千。画素単位(4Kならば約800万画素)で光をコントロールする有機ELテレビには及びませんが、映像の明暗のより正確な再現性を期待できます。
最新のテレビでは、外付け(別売)HDDを接続すれば地デジなどの番組を録画できます。テレビ番組を録画する方法としてはDVD・ブルーレイレコーダーを使う方法もありますが、録画番組をディスクに残したり、DVDなどのディスクを再生したりという予定がないならば、テレビだけでも十分でしょう。
DVD・ブルーレイレコーダーを使わずに録画機能を充実させたい場合は、3チューナーを搭載したテレビがおすすめ。3チューナーのテレビならば、テレビと外付けHDDを接続するだけで2番組の同時録画(と同時の別番組視聴)が可能。録画したい番組が重なる場合でも困ることがありません。
最新のテレビは、基本的にほとんどがネット動画の視聴に対応しています。つまりDVDプレーヤーやFire TV Stick、Chromecastなどのストリーミング端末がなくても、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどの動画を楽しめるということ。
上記3つはすべての製品が対応していると思って間違いありませんが、TVerやDAZNなどに対応しているかどうかは製品次第。リモコンにショートカットボタンを搭載していることもあるので、自分が利用するサービスに対応しているかどうか、リモコンにボタンがあるかどうか、確認するとよいでしょう。
ひと昔前はこうした製品を「スマートテレビ」と呼びましたが、今ではそう呼ぶことは少なくなりました。世の中のテレビほとんどが「スマートテレビ」化したからです。
地デジなどの放送番組を見ない人は、地上デジタル放送、CS/BS放送の受信機能を持たない「チューナーレステレビ」を選ぶという方法もあります。放送番組の受信はできませんが、インターネット環境があればネット動画は手軽に視聴できます。一般的なテレビと比べるとやや価格が抑えられてはいますが、画質・音質を含めた機能性も控えめ。
Xiaomiの「Xiaomi TV A Pro 43 2025」は価格.comの人気モデル。発売からしばらく経ったこともあり、2025年11月19日時点での価格.com最安価格は30,800円。43V型の4Kテレビが驚くほどの低価格で購入できます。
・〈基準1〉放送番組やYouTubeの画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を自動調整や「標準」「スタンダード」などにして、放送番組やYouTubeを視聴。自然な補正や色再現ができているかをチェックしました。
・〈基準2〉映画の画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を映画再生向きの「映画」や「シネマ」などにして、Ultra HDブルーレイを中心に再生。4K解像度のコンテンツを自然な解像感、色再現で見せられるかをチェックしました。
・〈基準3〉視野角がすぐれているか
画面を斜めから見たときにも色が大きく変わらないかをチェックしました。視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)と、リビングルームなど広めの部屋でも使いやすいと言えます。
・〈基準4〉音質がすぐれているか
ニュースやドラマでの人の声が聴き取りやすいか、スポーツ中継や音楽ライブに臨場感があるか、映画での低音に迫力があるかをチェックしました。
・〈基準5〉操作性がすぐれているか
操作時の動作が機敏か、リモコンの利便性がよいか、インターフェイスは使いやすいかをチェックしました。
以下の表で紹介するテレビは、各シリーズの代表機種です。個別の製品紹介項目にそのシリーズにどのサイズが展開されているか、併記しています。シリーズによってサイズ展開が異なることに注意しましょう。
| 製品 価格.com最安価格 | 画像 | ショップリンク | 画面サイズ | 解像度 | 種類 | 地デジチューナー数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 9(全録対応) |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 9(全録対応) |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 65V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 2 | |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 32V型(インチ) | フルHD | 液晶 | 2 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |

数あるmini LEDバックライト搭載テレビの中で、いちばんの品質と言ってよいのがソニーの「BRAVIA 9(XR90)」シリーズです。ソニーでは、「BRAVIA 9」シリーズを、有機EL「BRAVIA 8」シリーズよりも上のフラッグシップ(最上位)モデルと位置づけており、高額なプライシングにも自信が表れています。
各色、特に赤がしっかりコッテリしていながら飽和しません。ドレスの赤やドレープの影を正確に描き、一見黒に潰れがちな小豆色のズボンの色合いなど、スタイリストの意図まで浮き彫りにするよう。一般的には有機ELの独壇場といった夜間戦闘シーンでも、暗部の落差や色味をていねいに表現します。動きボケも自然で、ハロ(不要部分への光漏れ)も皆無。映像補間による意図せぬ映像生成やエラーもなく作品に集中できます。
視野角が広く、ほぼ真横から見ても色味が崩れませんし、正対して見た映像のクッキリ感も犠牲になっていません。
音質もきちんとツボを押さえているのは立派。男性の甲高い声と野太い声の描き分けが随一で、スポーツ中継を再生した際のスタジアムでの「わあっ」という歓声も臨場感豊かに広がります。

「有機ELも本気、mini LED液晶も本気」だというTVS REGZAの液晶フラッグシップ(最上位)モデルが「Z9(Z970R)」シリーズです。もちろんmini LEDバックライトを搭載。「Z9」シリーズならば、部屋を暗くしなくても映画作品の意味を存分に味わえます。画質も音質も充実しているため、“サウンドバーいらず”で環境を問わずに映画を楽しみたい人にぴったりの1台です。
同社の有機ELテレビ譲りの映画画質に加え、「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」)も利用可能。普段使いの明るいテレビとしての使い勝手を考えると、コストパフォーマンスは高いと言えます。
再生コンテンツの内容と環境に合わせて自動画質調整をしてくれる「おまかせAI」モードでの映像は、有機ELに見劣りしない色数と破綻のない自然な動き。一目で魅了されます。印象的なのは、地上波のような画質的に厳しいソースの処理。見栄えをよくするため映像補間を強くしすぎたり輪郭を誇張したりノイズを消してツルツルにしすぎたりしません。赤いドレスのドレープや黒ベタに見えがちなスーツの小豆色、それらと対比する水色の衣装の柄や素材感といった、元ソースを尊重しつつ破綻しないギリギリで処理する塩梅はさすが匠の技です。
「映画プロ」モードで見る映画作品の暗い部分の描写力も十分。黒浮きやハロ(不要部分への光漏れ)や映り込みが気になることが驚くほどありません。明かりを残した夜のリビング環境なら、有機ELより好適かと思わせるほど。人物ごとの肌の質感の違いや顔への照明の当たり具合が示す映画言語的表現を正しく伝えてくれます。

万能画質で、明るいリビングなどで総じて使いやすいのがシャープ「HP1」シリーズ。シャープの液晶テレビのなかで、最上位のプレミアムラインに属するモデルです。
有機ELの「HS1」シリーズと双璧をなす液晶の最上位モデルだけあって、液晶らしい明るさと有機ELに近い色表現が印象的で、特に部屋を明るくして見る「AIオート」画質の万能ぶりに驚かされました。ただし、「人間の感覚にとってナチュラル」な絵作りなので、ギラギラと濃厚な絵を求める人にはやや物足りないかも。
パネルは量子ドット+mini LEDバックライトによるもので、エリアごとのバックライト制御をより緻密にしているのがポイント。さらに「HP1」は低反射「N-Black Wideパネル」を採用し、視野角が広く、(液晶テレビとしては)斜めから見ても色が変わりにくいという特徴があります。このことは、量販店などで確認してもすぐにわかるでしょう。
サウンドは、画面下に正面に向いて配置されたスピーカーと画面上に20度傾斜して配置されたスピーカーが画面を挟み込むことで中央にファントム音場を作り出す(画面中央から音が出ているように感じられる)実直さが快感。男性アナウンサーの太い声がしっかり出て聴き取りやすく、Dolby Atmos音声の映画作品での旋回音や銃撃音も臨場感豊かでした。

mini LEDバックライトを搭載したうえ、「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」)にも対応したコストパフォーマンスの高さでは群を抜くモデルがTVS REGZAの「Z8(Z875R/Z870R)」シリーズ。同社の上位グレードモデル「Z9(Z970R)」シリーズのサイズは65V型からですが、こちらは43V型や50V型、55V型もラインアップ。予算やサイズ選択の都合で「Z9」を選べない、という人におすすめです。
TVS REGZAのハイグレードクラスに属するだけあって、フォーカス感と色の多彩さは上位グレードの「Z9」シリーズ譲り。ピントが合ってクッキリ映る顔と、背景のボケたところの差がしっかり出るのが印象的です。また、衣服のドレープが作る影や少しくすんだ色のニュアンスも、まるで有機ELのよう。見せ方が巧みだなと感心します。
暗いシーンが多い映画でも精細感が高く、mini LEDバックライト搭載モデルらしさを存分に発揮していました。暗闇に光る照明や戦闘シーンの銃弾の光跡も、青白い光からオレンジに寄った燈色まで無段階に描き分けます。ピカリとする光線も眩しいほど鮮やかです。ただし、「Z9」シリーズとの差はしっかりあり、「Z8」シリーズは若干華美で黒も浮きます(ややグレーになる)。
音質は、下位モデル(「Z7」「Z6」シリーズ)よりも広がりと伸びやかさを感じさせるもの。ヘリの旋回音もスムーズです。
特に注目なのは、mini LEDテレビとしては小型の43V型「43Z870R」があること。同じ「Z8」シリーズでも低反射コートと広視野角対応がない点で55V型以上のモデル「Z875」とは異なりますが、大きなテレビを置きたくない(置けない)場合でも画質を諦めずに済む好例です。解像度はそのままに画面が小さい分、引き締まって見えるという利点もあります。書斎のデスクトップモニターとしてぜいたくに使うのにもぴったりでしょう。

シャープのmini LEDバックライト搭載テレビを手ごろな価格で購入したいならば、「HV1」シリーズがおすすめ。画質や視野角(斜めから見たときの色の変わりにくさ)では上位グレードモデル「HP1」に及びませんが、85V型を含む大画面を選択できます。
mini LEDバックライトを使った液晶テレビらしい明るさが特徴で、上位モデル「HP1」「HP2」シリーズと比べると眩しさや色の鮮やかさでは及びませんが、85V型くらい画面が大きいのならば、色が少し薄いぐらいがちょうどよいかなとも思わせます。
予想以上によかったのが、部屋を暗くして見た映画。「映画」モードで見た夜間の戦闘シーンは、液晶っぽい黒浮きが少なく、明るいところを“飛ばす”こともありません。また、暗いところをしっかり見ようとする人の視覚特性を考慮した絶妙な塩梅で明暗と色の濃さをコントロールしています。ナチュラル志向の画質には、先行して発売された「HP1」「HP2」シリーズのノウハウが生かされていると感じます。
「4T-C85HV1」のスピーカーシステムを見ると、アンプは総合出力40Wと控えめのシンプルな2.1ch仕様ですが、無理をしない自然な音作り。しっかりと戦闘シーンの衝撃音を再現してくれました。男性アナウンサーの声も、アコースティックギターの音色も中低域がしっかりとニュアンスを伝えます。

ソニーmini LEDバックライト搭載液晶テレビシリーズの末弟「BRAVIA 5(XR50)」シリーズは、2025年夏に追加された唯一の最新モデルです。
2023年モデル「X90L」シリーズと同程度の価格に抑えつつ、画質の印象は上位モデル「BRAVIA 7(XR70)」シリーズに近く、コストパフォーマンスはかなり高いと言えます。したがって、予算を抑えつつより大型のソニーmini LEDテレビを狙う人にぴったり。ネームバリューと性能を重視するならシャープのAQUOS(アクオス)「HV1」シリーズとガチンコ対決になりそうです。
確かに、「BRAVIA 7」シリーズと見比べても、赤いドレスのドレープが作る影やくすんだ小豆色、青空と白いユニフォームといった色の鮮やかな描き分けは、「BRAVIA 7」シリーズに劣るとまでは言えません。
倍速パネルの素のよさをそのまま生かし映像補間を控えめにした処理も自然で、過度な書き割り感もありません。視野角による色味の低下や外光の映り込みは、「BRAVIA 9」シリーズと比べると確かに感じられますが、それでも十分実用の範囲に収まっています。
サウンドシステムは「BRAVIA 7」シリーズ同等というスペックどおり、音域を中域中心に絞ることで人の声をしっかり聴かせて好印象です。

ハイセンスの「U9R」シリーズは同社トップモデルのmini LEDバックライト搭載液晶テレビ。ハイセンスのテレビは全モデルを通じて絵作りが一貫しており、このトップモデルが画質も音質も最もすぐれています。
映像は、ひと言で表せば「有機ELのようなリッチな発色」。赤を中心に鮮やかな色が目に飛び込み、黒もよく沈み、ハロ(不要部分への光漏れ)もほとんど感じません。さらによく見ていくと、色使いが正確なことに気づきます。赤いドレスとドレープの影、一見黒に見える小豆色のくすんだズボンも明確に描き分けるのです。
また、低反射パネルの効果が強力で、部屋を明るくして見るテレビ番組でも映り込みがほとんどみられません。これは大型テレビになればなるほど重要なポイント。視野角も有機EL並みに広くなっています。
いっぽう部屋を暗くして見ると、映像の暗い部分のていねいな描写が浮かび上がり、有機ELっぽい濃厚で見た目のコントラストが高い絵作りが顔を覗かせます。そのため、特に明るい部屋では黒が潰れがちに見えるきらいもありました。
さらに特筆すべきは音質で、テレビにおいて重要なアナウンス、特に声が高めの男性と、野太い男性の声をきちんと描き分けました。スピーカーの数や出力値といったスペックばかりでなく、こうした基本を押さえたチューニングがされているのは好感が持てます。75V型よりも85V型のほうが音質は有利で、セリフやアナウンスも画面の中心に定位しました。

「W95B」シリーズは、パナソニックVIERA(ビエラ)液晶テレビの最上位モデル。正統派高コントラストのmini LEDテレビが手ごろな価格で手に入ります。
画質は、同時期発売の有機ELテレビ「Z95B」シリーズに近い積極的な鮮やか画質を液晶テレビにも及ぼそうという意図を感じさせるもの。液晶っぽい白浮きは徹底的に抑え込まれ、動画を見る限り有機ELだと言われても気づかないのではというほどハロ(不要部分への光漏れ)も意識させません。mini LEDバックライトの「分割制御(ローカルディミング)」の分割数向上が奏功しているのでしょう。
色も鮮やかで、やや朱に振れるものの赤いドレスのドレープの濃淡を描き分け、黒い上下服の生地色の違いも明せき。最新VIERAに共通した「新世代AI高画質エンジン」が奏功して、動きの速いスポーツやカメラが素早く動く場面での斜め線のギザギザ(ジャギー)、強めにかけられている映像補間によるバタつきや輪郭ボケもうまく抑えられているので、地デジのような情報量の少ない映像でも作品に集中できます。
サウンドは、大型モデルになるほどアクション映画の低音域は良好で、音量を上げても破綻せずクリアーです。

TCLのmini LED液晶テレビには上位モデル「C8K」シリーズ、最も安い「C6K」シリーズがありますが、ここで推すのはその間に位置する「C7K」です。クッキリした明暗を背景に、鮮やかな赤と青が映える映像が印象的だったからです。視野角を拡げた「WHVA」パネルの「C8K」よりも、むしろ高コントラストパネル固有のよさを発揮している「C7K」のほうが、より個性が際立ち魅力的に思えました。
同じように高コスパmini LEDで人気のハイセンスはおおむねどのモデル(シリーズ)も絵作りや音作りに統一感があるのに対し、TCLは製品ラインアップが豊富で、モデルごとの絵も音もかなり異なり個性があります。そのなか「C7K」は、真正面で見る映像において、いかにも液晶らしい明るさと鮮やかさを前面に出し、徹頭徹尾クッキリハッキリ画調にまとめられていました。
音質もBang & Olufsenとのコラボレーションで武装し、全体として華やか系。ゴージャスな絵と音で、TCLをより上質なブランドに仕立てようという意図がうかがえます。

フルHD解像度(32V型と40V型のみ)の安定したスタンダード画質で、これ一台でネット動画なども快適に楽しめる希有な存在として、おすすめ製品に取り上げました。
映像を見ると、液晶パネル特有の黒浮き、スポーツ映像で気になりがちな白い尾引き、人の輪郭や流れるテロップ周りのノイズなどがうまく抑えられています。何より人の肌色が健康的に映るので、多くのコンテンツを安心して見られました。
ただし、「A4N」シリーズは上位モデルのようにmini LEDバックライトや色を鮮やかにする量子ドット、低反射広視野角パネルを使っているわけではありません。高級モデルと比較すればやや赤がくすんで、引きの絵での解像度不足は否めません。

mini LEDのようなハイスペックは必要ないけれど、画質がよいモデルが欲しい、という人におすすめなのがTCLの「P8K」シリーズ。
「P8K」シリーズはあくまでスタンダードな液晶テレビで、mini LEDバックライトを搭載しませんし、LEDバックライトをエリアに分けて個別に制御する「ローカルディミング」にも対応していません。そのため、暗い映像を再生すると本来は黒の部分がグレーっぽく“浮いて”しまいます。
しかし、最も難しい人の肌色が自然で、動きが速い映像で見られる液晶特有の白い尾引きが少ないです。極端に明暗差がある場面ばかりを厳しい目で見ない限り、明るい部屋で見るテレビとしては十分な画質でしょう。
TCLの下位モデルである「P7K」や「P6K」シリーズでは、この再現性でかなりの落差を感じました。速い動きに対応できる「倍速パネル」と、高精細な映像を生成するプロセッサー「AiPQ Pro」の採用が結果を分けたのかもしれません。下位モデルとそれなりに価格差があるのは納得できますし、それでも「P8K」シリーズはリーズナブルに感じます。
もっとも、暗いシーンが多い映画の鑑賞に力点がある方は、ハロ(不要部分への光漏れ)を抑えられるmini LEDバックライトを採用した「C6K」や「C7K」シリーズを選択肢にするとよいでしょう。それでも、普段使いのテレビとして熟れた絵作りを求めるなら「P8K」がおすすめです。
国内外でさまざまなメーカーのテレビは、できることがまったく違うということはありません。いっぽうでメーカーごとにしっかりと個性を持っていることも確か。以下に主要メーカーの特徴を紹介しましょう。
TVS REGZAは、REGZA(レグザ)ブランドでテレビやブルーレイレコーダーなどを販売するメーカーです。かつては東芝映像ソリューションという名称でしたが、現在の社名はTVS REGZA。中国ハイセンスグループの傘下にありますが、環境に合わせて画質を常に最適化する「おまかせ」機能などは「東芝」から継承されています。高級モデルに搭載されている「タイムシフトマシン」(全録)機能もREGZAならでは。指定した放送チャンネルの番組をすべて録画できるというほかにない特徴を持っています。
ハイセンスグループはTVS REGZAの親会社にあたります。両社はテレビ作りで協業しており、ハイセンスの映像処理エンジンはTVS REGZAと共同開発されています。ハードウェアのベーシックな部分は共用と思われますが、REGZAとハイセンスはあくまで別ブランド。TVS REGZAは有機ELとmini LEDバックライト搭載液晶テレビ両方を展開するいっぽう、ハイセンスはmini LED“推し”。明るさを生かした自然な映像再現性が特徴で、質のよいmini LEDテレビが手ごろな価格で手に入ります。
総合家電メーカーパナソニックはVIERA(ビエラ)というブランド名でテレビを販売しています。プラズマテレビの時代から自発光デバイスにこだわり、高級モデルでは画質を追求してきたため、現在も最上位モデルは自発光デバイスの有機ELテレビ。暗室で映画を見るための「ディスプレイ」としても定評があります。2024年モデルからはOSにFire TVを搭載したことがトピック。Amazonプライム・ビデオなど、サブスクの動画サービスとの親和性が高いテレビをラインアップしています。
ソニーのテレビはBRAVIA(ブラビア)というブランドで展開されています。認知特性プロセッサー「XR」などの映像処理エンジンを搭載することが特徴で、再生する映像を分析しつつ、表示の最適化を図ります。安定した品質が魅力ですが、価格設定が高めではあります。また、液晶テレビ、有機ELテレビともにラインアップしていますが、日本での製品リリースは鈍化しており、他社比較で必ずしも「最新」仕様でないことには留意しましょう。
シャープも日本でおなじみのテレビメーカーのひとつです。テレビ向けの液晶パネル生産は終了しましたが、テレビの展開はしっかり継続しています。シャープの製品で注目したいのは有機ELテレビ。最上位モデルには、発色のよさが特徴の量子ドット技術を使った有機ELパネル「QD-OLED」を採用しているのです。このパネルで毎年最新製品をリリースしているのは、日本国内ではシャープだけです。
TCLは、中国を本拠とする総合家電メーカーです。日本での知名度は高くありませんが、グローバル市場を見れば日本発祥のメーカーよりも大手だと言えます。そのスケールメリットを生かした製品価格、関連会社で液晶・有機ELパネル製造も行う技術力がTCLの特徴。ハイセンス同様にmini LEDバックライトを搭載した大画面テレビを手の届きやすい価格で多数展開し、日本でも少しずつシェアを拡大しています。高コントラストの映像がほしいけれど、価格は抑えたい、という人が注目するとよいでしょう。
韓国のLGエレクトロニクスは、すでに日本でおなじみの家電メーカーになったと言ってよいでしょう。グループ会社にLGディスプレイという液晶・有機ELパネルのメーカーを持つメリットを生かし、最新仕様のパネルを製品化し続けています。特に力を入れているのは有機EL。テレビだけでなく、PCモニターでも多くの有機EL製品を展開するメーカーとして注目される存在です。チューナー部分が別体となった「トゥルーワイヤレス」テレビシリーズなど、独自の製品企画にも積極的なため、有機ELテレビを検討するならば一度ラインアップを確認してみるとよいでしょう。
有機ELテレビ、液晶テレビ、どちらにも使われる画質向上のための技術のことです。色の純度(再現性)が高い、より色彩豊かな映像を期待できます。
まったく問題ありません。有機ELテレビは素早い動きのある表示に強いという特徴がありますが、それは“比較すれば”の話。液晶テレビでも有機ELテレビでも最新テレビの多くは「ゲームモード」を搭載しています。これは主に低遅延を実現したモードのことで、操作と映像表示のズレを最小に抑えようとするもの。ゲーム時はこの機能を利用するとよいでしょう。
4K/120Hz(fps)入力やVRR(可変リフレッシュレート)に対応している液晶テレビも多数あります。必要な機能に対応しているかどうかは個別に確認しましょう。
問題ありません。テレビの新製品は主に毎年、夏から秋にかけて発売されるのが一般的です。そのタイミングが、1つ前のモデル(型落ち)が値下がりするタイミングでもあります。発売されたばかりの高価な新製品よりもコストパフォーマンスが高い場合があるため、よい選択肢と言えます。
ただし、デジタルAV機器であるテレビは、基本的には「最新が最良」であることが多いと心得ましょう。液晶パネルが刷新されるなどのタイミングは必ず存在し、輝度(映像の明るさ)や視野角の広さ(斜めから見たときも色が変わらないこと)などの基礎的な能力に差がある場合もあります。